戦士開眼シンフォギアゴースト   作:メンツコアラ

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すいませんでした。
前回の投稿から二週間以上、やっと投稿できました。
時間がかかったにしては、少しグダグタしてるかもしれませんが、楽しんでくだされば幸いです。
それではどうぞ。






歪鏡! シェンショウジン!

 小日向 未来という、武瑠と響にとっての太陽が彼らの元から消えた日から数日が経ち、今日もノイズが町に現れる。

 

 

『観測されたのは東側と西側の二ヶ所。おそらく、どちらかにドクター・ウェルやマリア・カデンツァナ・イヴ等が居るだろう。翼とクリスくんは東側を。そして……武瑠くん。辛いことがあったばかりで悪いが───』

 

「大丈夫です」

 

 

 弦十郎の言葉にはっきりと答える武瑠。

 まだ未来の消失から完全に立ち上がれた訳じゃないが、今の武瑠には迷いが無くなっていた。

 

 

(答えは貴方の心にある……か。

 俺はもう何も失いたくない。そして、俺みたいな思いを誰にもしてほしくない。目の前にある命を未来に繋げる。それが俺の心からしたいこと)

「俺は───もう迷わないッ!」

 

「武瑠くん。一人で騒ぐのもいいけど、早く行かないとヤバイんじゃない?」

 

「……ソウデスネ。イッテキマス」

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 十数分後。

 

 変身してから弦十郎に指定されたポイント……街中にある建設中のビルに向かっていたゴーストが漸く現場に到着するが、そこにノイズの姿は無く、あるのは鉄工の隙間から差し込む月明かりに照らされた重機と積まれた鋼材。

 すでに遅かったのかと考えもしたが、辺りに炭素の塊がないため、その可能性は消える。

 では何故?、と疑問が浮かび上がるが、ゴーストは取り敢えず、コンドルデンワーを召喚し、弦十郎たちがいる仮本部に通信、目の前の光景を報告した。

 

 

「風鳴さん。ノイズの姿が何処にも見当たらないんですけど……」

 

『なんだと? そんなバカな……まさかッ!? すでにもう───』

 

「いや。周りに炭の塊がありませんから、その可能性はないかと……そういえば、ノイズの探知ってどうやってしてるんですか?」

 

『ノイズはどの個体も共通した特殊な周波数を発している。我々が使用している装置はその周波数を探知ことでノイズの出現を知ることが出来ているのだ。了子くん曰く、携帯の電波みたいなものらしい』

 

 

「電波、か。なら、コンドルデンワーの能力を使えば……」

 

 

 黒電話を思わせるゴーストガジェット、コンドルデンワー。このガジェットは通話機能やガンガンセイバーと変形合体するだけでなく、索敵・探知機能も搭載され、電波や周波数を探し出し、その発信源に案内してくれるナビ機能まで備わっている。

 

 ゴーストは一旦通話を切り、コンドルデンワーをガジェットモードからアニマルモードに変形させ、自分が今いるビルの階層を索敵させた。

 僅か数秒後。何かを受信したコンドルデンワーが鋼材の方に飛び、その物陰に隠された謎の機械を見つけ、それをゴーストとの元へと運んできた。

 

 なんだこれ?、と受け取ったものをまじまじと見つめるゴースト。

 

 今まで工事に携わった事はないが、自分の手の中にある機械が工事に関係ないことだけは分かる。

 

 では、一体何なのか?

 

 ゴーストは試しに操作し、装置の電源を落としてみる。

 すると、コンドルデンワーが電波を受信。二課から通信が入った。

 

 

『武瑠くんッ! 今、そちらから出ていたノイズの反応が消えたッ!』

 

「え───ッ!?」

 

 

 急に消えたノイズの反応。しかし、ゴーストはノイズを倒してはいない。

 

 ───では、なんで消えた? 自分は何をした?

 

 

(……まさか───)

 

 

 ある可能性に至ったゴーストは手に持った装置を操作。

 再び電源をつけると、二課からノイズが再び現れたと連絡が入り、ゴーストは手の中にある装置がノイズの出現を誤認させる装置だと確信した。

 その事を弦十郎たちに伝え、一旦通信を切ったゴーストは装置が見つかった階層一帯を散策。他にないか探してみたが、これといった物はなかった。

 

 散策を終えたゴーストは見つけた装置について、改めて考え始める。

 

 何故、こんな物が置かれていたのか? そして、誰が置いたのか?

 後者は武装組織フィーネの者が置いたのだろう。

 では、前者の謎は?

 

 

(もし俺とクリスたちを分断する為だとしても、分断しただけで負けるほど俺たちは弱くない……と思いたい。

 それに、今向こうはそこまで戦力はない。なら、なんで───)

 

 

 考えを張り巡らすゴースト。

 そのときだった。

 

 突然、背後から光が放たれ、それがゴーストの持つ装置を貫通。そのままコンクリートの床に着弾した。

 

 

「……───はい? 今のはなんだりゃぁぁぁッ!?」

 

 

 すぐさま別の光線が頭上から迫り、ゴーストは装置を放り捨て、慌ててその場を飛び退くが、また別の光線が襲い掛かり、彼は一ヶ所に留まることなく飛んでくる光線を避け続けた。

 

 

(遠距離からの不意討ちって事は、(むこう)は近接に弱いはず。なら、接近して叩くッ!)

「アストルフォッ!」

 

 

 ゴーストはアストルフォ魂へゴーストチェンジ。すぐさまこの世ならざる幻獣(ヒポグリフ)を召喚。彼に跨がって、敵がいると思われるビルの上空へ向かった。

 

 鉄工のジャングルジムを潜り抜け、上空に到着したゴーストを待っていたのは、

 

 

「───シンフォギア装者、だとッ!?」

 

「……………………」

 

 

 紫と白をベースにしたボディスーツ。指先まで包む両腕のアームカバーの入れ口から伸びた帯。両足を包み込む機械的なレッグアーマー。左手に持った刃のない大剣のような鈍器型のアームドギア。

 獣の顋を連想させる形状をしたバイザーで顔はよく分からないが、初めて見るシンフォギアにゴーストは激しく動揺した。

 

 

「……我こそは、シャルルマーニュ十二勇士が一人、英雄アストルフォの魂を纏いし戦士、仮面ライダーゴーストッ! 汝、我と戦うつもりなら名を名乗って貰おうッ!」

 

 

 ガンガンセイバー ナギナタモードを召喚し、その槍先を少女に突きつける。

 

 それに対して、少女はこう答えた。

 

 

 

 

 ───わたしが分からないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉に……いや。その声にゴーストは驚愕した。

 ───そんなはずはない、と頭の中で否定するが、心がそれを許さない。

 その声はとても聞き慣れたもので、しかし、今この場で聞くことは絶対にないはずの……()()()()姿()()()()()()()()()()の物だったのだから。

 

 少女の顔を覆ってたバイザーが開き、少女の顔が露になると、ゴーストは……武瑠は彼女の名前を呼んだ。

 

 

「───未来……ッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

「武瑠くんのいる付近からアウフヴァッヘン波形を確認ッ!」

 

「データベースに情報なしッ! 未知のシンフォギアですッ!」

 

「まだ手札を隠し持っていたか、武装組織フィーネ……ッ!」

 

 

 友里、藤尭の声が飛び交うなか、弦十郎は腕を組み、現状に頭を悩ます。側に仕えていた緒川が翼たちを援護に向かわせるべきだと提案するが、今翼たちは大量のノイズと交戦中。今の翼たちにとって雑魚とはいえ、一人で対処するには難しい数を相手していた。

 

 

(明らかに分断を狙った配置。武瑠くんの力は我々の戦力の中でもトップクラスだ。それを倒せるほどの力を隠していたとは……───)

 

「し、司令ッ! 緊急事態ですッ!」

 

「どうした、藤尭ッ!」

 

「大天空寺に特殊な波形パターンを関知ッ! シャドウノイズですッ!!」

 

「なんだとぅッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり、武瑠」

 

 

 ゴーストが激しく動揺し、目の前の状況に困惑するなか、ハイライトが消えた瞳で彼をを見つめる未来。

 

 

「なん、なんだよ……なんなんだよ……ッ?」

 

「? ……ああ。この姿の事? これがわたしの新しい力。シンフォギア・シェンショウジン。響を救うことが出来る唯一の力……」

 

「…………ッ。俺が聞きたいのはそう言うことじゃないッ! なんで、なんで敵としているんだッ!」

 

「簡単な事だよ。そっちに居たって、二人を助けられないから」

 

「どういう意味だよ……ッ!?」

 

「そのまんまの意味だよ。あんな所に居るから響は戦わなくちゃいけないし、武瑠も眼魂を最後まで集めることが出来ないもん」

 

「それは違うッ! 俺も響も、自分で選択して戦ってるんだッ!」

 

 

 そんなゴーストの訴えも、今の未来には届かず、『でも、二人が救われていないのは事実じゃん』と言われ、自身はともかく、響の現状を考えると言い返す事も出来ずにいた。

 

 

「けど、こっちにいれば救うことが出来る。響を救うわたしが持ってるし、あのドクター・ウェルって人、最後の眼魂を……十六個目の眼魂を持っていたんだ」

 

「な───ッ!?」

 

「まだ二人を救う事は出来ないけど、そっちに居るよりも早く助けられる。

 そうしたら、わたしたちは一緒に居られる。

 そう……ずっと……ずっとずっと……ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと。

 だから頂戴。武瑠の持ってる眼魂を全部。

 なんか、必要なんだって。目的が果たせたら後は好きにしていいって言われたから、大人しくわたしに渡して」

 

「……断るッ!眼魂は絶対に渡さないッ! それに、ドクター・ウェルが使った後、眼魂はどうなるッ!? もしかすると消えるかも知れないんだぞッ!」

 

「もしそうなるなら、使われる前にそいつを殺して奪い取ればいいじゃん?」

 

「───ッ!? …………なおさら渡せなくなった。今の未来はおかしすぎるッ! 何時もの未来なら、そんな事は言わないッ! 本気で言っているのかッ!?」

 

「本気だよ。わたし、こういうときは嘘言わないって知ってるでしょ?」

 

 

 間髪を容れず答える未来に、ゴーストは言葉を失い、彼女が敵として立つことに絶望するが、すぐに気持ちを切り替えた。

 

 

「───なら、お前を止めるッ! この世ならざる幻獣(ヒポグリフ)ッ!!」

 

 

 ヒポグリフが雄叫びを上げ、空間跳躍を利用して一気に加速。未来に肉薄すると同時に、ゴーストはガンガンセイバーを振るい、その峰を彼女に叩きつける。

 

 しかし、その瞬間。彼女の体がガラスの如く砕け散り、ゴーストは今まで目の前にいたのは未来の姿を写した鏡であることに気づく。

 

 

 

 

~BGM 『歪鏡・シェンショウジン』~

 

 後方から聞こえ始める、何処か重苦しくも悲しいメロディー。

 それはシンフォギアの力を最大限に発揮するための合図。

 振り返ると、バイザーを閉じた未来がアームドギアを構え、冷たい笑みを浮かべていた。

 

 

「もう……急に攻撃してくるなんて、武瑠は酷いなぁ。

 でも、これでわたしも気兼ね無く攻撃できるよ。

 いくよ?」

 

 

 未来の口から紡がれる唄。

 

 アームドギアが鏡のように展開され、そこから多数の光線がゴーストに向かって放たれる。

 

───閃光…始マル世界 漆黒…終ワル世界♪

 

 ゴーストはヒポグリフを操り、紙一重で光線を避け、またはガンガンセイバーで光線を弾く。

 

───流星…アノ日ハ遠ク 追憶…全テガ遠ク♪

 

 しかし、未来は数で攻めて来るため、徐々に回避が苦しくなり、時々回避が間に合わず、二の腕やヒポグリフの翼に掠り、

 

 

「キュアアァァ……ッ!」

 

「どうした、ヒポグリフッ!?」

 

『ヤバイよ武瑠ッ! なんかヒポグリフが掠った所から壊れていってるッ!』

 

「アストルフォッ! 壊れてるってどういう意味だよッ!」

 

『そのまんまの意味だよッ! なんか、存在がどんどん消滅していってるッ! このままじゃ、ヒポグリフが消えちゃうよぉッ!』

 

「だったら、その前に決着をつけるッ! この世ならざる幻獣(ヒポグリフ)ッ!」

 

 

 ゴーストはヒポグリフの真名を唱え、空間を跳躍。一瞬で未来の背後に回り、振り向かない彼女にガンガンセイバーを振るった。

 

 

 

 

 

 

 ───しかし、

 

 

「───やっぱりね」

 

「な───ッ!?」

 

 

 未来の姿がゴーストの視界から消えた。

 

 ───否。瞬時に体を捻って、ゴーストの視界から外れたのだ。

 

 

「武瑠の考える事は全部分かるんだから。大丈夫。痛みは一瞬だよ?」

 

 

 ゴーストの上をとった未来がゼロ距離で光線を放つ。

 回避することも出来ずにいたゴーストは撃ち落とされ、そのまま地面に落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちッ! もっとスピード上がらねえのかッ!」

 

「無理を言うなッ! これが最大だッ!」

 

 

 街中をバイクで激走する翼。その後ろでもっとスピードを上げろと催促するクリス。

 

 ほんの数分前。弦十郎から未知のアウフヴァッヘン波形を関知したことを伝えられ、二人はノイズを片付けるとすぐさま街の東側、武瑠が戦っている場所へ向かい始めたのだ。

 

 

「……新たなシンフォギア。だが、何故に今現れたと思う?」

 

「大方、どっかで装者を調達したんだろ」

 

「では、一体誰が?」

 

「それは会えば分かるって奴だ……────ッ!? おいッ! 止まれッ!」

 

 

 クリスの大声に慌ててバイクを止める翼。何事かとに怒り気味に問いかけるが、彼女が地面に刻まれた何かの跡を指差している事に気付き、その跡が血であることを理解する。

 

 その跡は近くの電柱まで続き、その電柱には誰かが移動させ、そこを背もたれに座らせたとでもいうように、血塗れの武瑠がそこで気絶していた。

 

 

「天空寺ッ! 大丈夫か───」

 

「おい武瑠ッ! しっかりしろッ!」

 

 

 ベルトの回復機能によって傷自体はほぼ治っている。

 しかし、ボロボロの血に染まった服がどれ程酷い怪我をしていたのかを語っている。

 

 

「ちッ! 待ってろ、すぐに病院へ「ゆ、雪音」───なんだよッ! こんなときにッ!」

 

「こ、これを……」

 

「あ゛あッ!? ……───ッ!?」

 

 

 翼が示した物。電柱に、恐らくは武瑠の血で書かれた文章にクリスは己の目を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『眼魂は貰っていくよ。これで二人を助けられるね。

 だから、その時まで待ってて。

      二人の大切な幼馴染みより』

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 さて、ここでちょっとした予告。
 あと、少しで()()()()(※本人はそうじゃないと言いそうだけど)の眼魂を出します。
 お楽しみにぃ。




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