戦士開眼シンフォギアゴースト   作:メンツコアラ

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さて、今回はちょっとした問題から。

◯リスブリザード

◯に入る文字はなんでしょう?
答えは本文にて。







激凍! 燃やすは心の火!

「……い……おいッ! おいってばッ! 武瑠ッ!」

 

「んぅ……あと五分……」

 

「寝る必要ねぇのに寝言言ってんじゃねぇッ!」

 

「グレック……ッ!?」

 

 

 ユルセン……いや。ユルセン姿の奏の拳が武瑠の腹に突き刺さる。

 もうちょっと優しく起こしてよ……そんなことを思いながら体を起こすと、視界に写ったのはフロンティアのゴツゴツとした地面ではなく、赤や青、白など、大輪の花で全てが埋め尽くされた地平だった。

 似たような場所は知っている。

 だが、かつて魔術師と初めて会った場所とは全く違っていた。

 

 

「何処ここ……?」

 

「アタシに聞くな。アヴァr───じゃなかった……アタシや魔術師がいた場所とは違うみたいだが

 

「……まさかと思うけど、あの紋章の中、とか?」

 

「「…………まっさか~」」

 

 

 というか、紋章の中ってなんだよ。

 そんな事を思いながら笑っている二人だったが、

 

 

「……で、そろそろ反応した方がいいのかな?」

 

「いいと思う。あの人、お前が起きる前からスタンバってたし」

 

 

 武瑠は先程から視線を感じる後ろに顔を向ける。

 そこには言葉で表すことは到底不可能な程美しく、しかし、どこか現実離れした雰囲気を漂わせる女性が立っていた。

 

 

「あ、貴女は……?」

 

 

 流石に座ったままは失礼だと腰を上げながら女性に問いかける。だが、女性は名乗ることはせず、代わりに返ってきたのは、

 

 

「ようこそ、資格を持つ者。貴方は何を望みますか?」

 

「の、望み?」

 

「ここでは全ての願いが叶う場所。貴方はその資格を手にすることが出来ました。さあ、貴方の望みを」

 

「それって、つまり───」

 

「やったじゃねぇか、武瑠ッ! 生き返れるぞッ!」

 

 

 ───生き返れる。

 その事実が、武瑠の心を喜びで満たしていく。

 もしかしたら生き返る事は出来ないのではないか? そう考えた事が何度もあった。

 しかし、今は違う。心の中にあった不安が完全に消え去り、確信だけが残る。

 

 武瑠は自分の願いを叶えようとした。

 

 …………が、願いを言う直前、ふと武瑠の中に浮かび上がった疑問がそれを拒んだ。

 

 

(俺が願いを叶えたら、眼魂はどうなるんだ?)

 

 

 漫画や小説では、こういった願いを叶えるイベントは一度きり。そうではないにしても、次に願いを叶えるのに幾年の時間が必要となるパターンが多い。

 武瑠の中で思い返されるのは、調と切歌から聞いたマリアとセレナの人柄。

 

 

『……マリアはオカン。いつもわたしたちの事を心配してくれる』

 

『セレナはお姉ちゃんデスね。優しくて、いろんな事を教えてくれたデス』

 

『……でも、セレナが融合症例になってから、二人とも辛い表情をする日が多くなった』

 

『わたしたちが眼魂を集めてたのはフロンティアがダメだったときにエネルギーの代わりにするため。でも、マリアは、本当は融合症例で苦しむセレナを助けたかったんデス。血の繋がった唯一の家族だから』

 

 

「………………」

 

「武瑠? どうしたんだよ、早く願いを言えって」

 

「……奏さん。もし、俺が願いを叶えられなかったらどうなりますか?」

 

「(なに言ってんだ?)どうにもならねぇけど? ただ、今の状態が続くだけ。余程の事がない限り、幽霊のままでい続けるんだy───って、まさか」

 

「うん。多分、そのまさか」

 

 

 頷く武瑠に、奏は思わずため息を吐いた。

 

 

「……お前さぁ。前から思ってたけど、グラブジャムンに砂糖と蜂蜜とホイップクリームをぶっかけた位に甘すぎんだろ? なんで自分からチャンスを手放すんだよ」

 

「……自分でも人が良すぎるって思うよ。でも、家族を失う辛さは俺も知ってるから。だから───」

 

「あーはいはい。アタシは何も言わねぇよ。自分が思う通りにしな」

 

「……───ありがとう」

 

 

 武瑠は女性へと向き直り、自分の願いを口に出した。

 

「俺の願いは───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RUAAAA!?!!?

 

「なッ!? これは───」

 

 

 複数のネフィリムスペクターを相手していた翼とネクロム。

 突然、ネフィリムスペクターたちは頭を抑えて発狂。まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()フロンティアを砕き、その破片に喰らいつく奇妙な行動に翼たちは困惑していた。

 

 

「一体何が起こっているの?」

 

「分からんがチャンスだ。今のうちn「未来ッ! 翼さんッ!」──立花ッ!?」

 

 

 調と切歌、二人と共に来たリディアンの制服姿の響に驚いてしまう翼。

 

 

「何をしているッ! 今のあなたはギアを纏えない事を分かってい「いいんです、翼さん」……小日向。しかしだな……」

 

「なんとなくだけど、こうなるのは分かっていましたから。でもね、響。わたしも怒っているんだからね」

 

「あはは……ごめんなさい」

 

「だけど、じっとしていられなかった。そうでしょ?」

 

 

 ネクロムの言葉に頷く響。そんな彼女たちを見て、止まることはないと分かった翼は深くため息を吐いた。

 

 そんな時、調が空を……正確には空に浮かぶ紋章を指差し、声をあげた。

 つられて、響たちも見上げた瞬間、紋章は消え去り、その中心から十六の光がフロンティアに落ちてきた。そのうちの一つ、アルトリア眼魂が落下してきた。

 

 響たちはあの十六の光が眼魂であることを理解する。

 

 

「調ちゃん、切歌ちゃん。お願いがあるの」

 

「……言われなくても内容は分かる。だけど、それだとあなたの護衛は」

 

「それは大丈夫。ネクロちゃんッ!」

 

 

 ネクロムがその名を呼ぶと、近くで倒れていたマシンネクロムがひとりでに起き上がり、ネクロムたちの元に。途中でアニマルモードに変形。白と蛍光グリーンの、ネクロムを思わせる色合いの狼が姿を現した。

 

 

「響、この子を使って。わたしはあのネフィリムスペクターをどうにかするから」

 

 

 見れば、さっきまでフロンティアを貪っていたネフィリムスペクターたちが再び未来たちに狙いを定めていた。

 

 

「行って、皆ッ!」

 

「うんッ! ネクロちゃんッ、お願いッ!」

 

「健闘を祈るデスッ!」

 

 

 響がマシンネクロムに乗ってフロンティアの中心へ。調と切歌は光が落ちた方向へ向かう。

 

 ネフィリムスペクターたちは跡を追いかけようとするが、ネクロムが放った弾丸。そして、翼が投げた小刀がその足を止めた。

 

 

「わたしは残るぞ。この数、一人では辛かろうに」

 

「すいません。幼馴染みの前だから、ちょっとだけ格好つけたくて」

 

 

 翼は先ほど拾ったアルトリア眼魂で夢幻召喚を、未来は魔術師から渡されていた紫一色の眼魂『シェンショウジン眼魂』を使い、ゴーストチェンジを行った。

 

 

《テンガン! シェンショウジン!

 メガウルオウド!

 クレイジー・ラァブ!》

 

「Rei shen shou jing rei zizzl───♪」

 

 

 ネクロムの素体が変質し、胸の装甲、肘当てを残して全ての装甲が砕け散り、代わりに白を中心に蛍光グリーンと黒の模様が入ったボディスーツが彼女の体を包み込み、フルフェイスも砕け、彼女の顔が露になる。

 更に、装着される紫色のシンフォギア。唯一の違いはボディスーツとネクロムを思わせるヘッドギア。

 

 歪鏡・シェンショウジン。白き死霊遣いネクロム。

 シンフォギアと仮面ライダー。二つの力を併せ持つ彼女の名は、

 

 仮面ライダーネクロム シェンショウジン魂。

 

 

 

 ガンガンキャッチャーとシェンショウジンのアームドギアを構えるネクロム……いや。既に顔が露になっているため、未来と呼んだ方がいいだろう。

 

 その隣に並び立つ、青と銀の騎士甲冑を纏う翼。手には風でその姿を隠す武器が一振り。

 

 

「───いきますッ!」

 

「死力を尽くして来るがいいッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、その頃。全ての現況とも言うべきドクター・ウェルは飛び散った光を眼魂と判断し、それらを自ら回収するために司令室から離れていた。

 

 

「まだだ……まだ間に合う……眼魂を全て回収できれば、僕の願いは叶えられr「どこに行くつもりだ?」───ッ!」

 

 

 今、ドクター・ウェルが居るのは司令室のある階層から数段下にある薄暗い階層。その闇から姿を現したのは、イチイバルと仮面ライダーゴースト、二つの特徴を併せ持つギア『ゴーストギア』を身に纏ったクリスだった。

 

 

「……落とし前をつけに来た。ソロモンの杖を渡してもらおうか?」

 

「はッ! 誰が渡しますか。これは僕が英雄になるために必要な力ッ! お前みたいな奴に渡すわけないだろッ!」

 

「英雄、ね……───ふざけんなッ!」

 

 

 クリスの叫びが階層に響き渡る。

 

 

「てめぇが英雄? 自分の欲望を満たすために他人を容易く差し出して、自分は安全地帯ッ! それの何処が英雄だッ! 只の臆病な独裁者なんだよッ!」

 

「他人を容易く差し出す事に関して、貴方には言われたくありませんねッ! それにソロモンの杖だって、無知な貴方がフィーネに利用された結果ではありませんかッ!」

 

「……あぁ。その通りだ。あたしは光が当たる場所にいちゃいけねぇ。けどな、アイツは、アイツらは血に濡れているあたしの手を繋いで引っ張り出してくれるんだ。暖かい手で、暖かい場所に。

 そういう奴が本当の英雄なんだ」

 

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇぇッ! 誰になんと言われようが、僕は英雄になるんだぁぁぁぁッ!!」

 

 

 発狂したドクター・ウェルが持つソロモンの杖からノイズが放たれる。

 

 クリスは舌打ちし、襲い掛かるノイズを手に持ったガンガンセイバーとバットクロックで乱れ撃つが、突如ギアに違和感を覚えた。

 

 

「この感覚……まさか───ッ!?」

 

「アンチLiNKERは忘れた頃にやってくるッ! こんなこともあろうかと、そこら中に設置してあるんですよッ!」

 

 

 周りに転がる手のひらサイズの装置から散布される赤い薬品がクリスの体を蝕んでいく。いくらゴーストギアを纏っているといってもシンフォギアであることには変わらない。

 ならば、とクリスは鉛のように重たい体を動かし、奥の手を使った。

 

 

「───ぶっ飛べッ! アーマーパージだッ!」

 

 

 砕かれ、弾丸となって飛び散るシンフォギアの装甲はクリスを生まれた姿にする代わりにその場に出現していたノイズを蹴散らした。

 もちろん、それらはドクター・ウェルにも襲い掛かった。

 しかし───

 

 

「───シャドウノイズッ!」

 

「な───ッ!?」

 

 

 天井を突き破って現れたのは、二振りの戦斧を携えた黒い巨漢。爛々と禍々しく光る目が丸腰になったクリスを見つめる。

 

 

「さぁッ! そいつを握りつぶせ、シャドウノイズッ!」

 

「ムゥオオオオオオッ!」

 

 

 雄叫びを上げたシャドウノイズがクリスに迫る。

 逃げようとするが、シンフォギアを纏っていないクリスでは、その行為は無駄同然。あっという間に捕まってしまい、シャドウノイズの手に彼女の細い体を握り潰そうと力が込められる。

 

 

「がッ、あぁッ……」

 

 

 ミシミシと体の至る場所から聞こえてはいけない音が聞こえる。

 

 

「無様ッ! 実に無様ッ! 落とし前をつけると言いながら、この体たらくッ! 貴女には荷が重すぎたようですねッ! まぁ、利用されるだけのちっぽけな貴女には相応しい終わり方でしょうがねッ!」

 

「クソ、がぁ……ッ」

 

 

 全身を襲う痛みに顔が歪んでしまう。

 

 ───ちくしょう……あたしは、まだ……

 

 徐々に増す痛みに意識が遠くなっていく。

 ……だからなのか。聞こえることがないはずの彼女の声が聞こえたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───仕方ないわね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこからは一瞬だった。

 クリスの後方から放たれた()()()()()がシャドウノイズに直撃。衝撃でクリスを手放し、彼女にまた別の痛みが襲って来るかと思いきや、床に落ちる直前で何かに受け止められる。

 

 途絶えかけていた意識を取り戻し、それを見てみれば、

 

 

「まったく……貴方は余程無茶が好きなようですね」

 

「アナスタ、シア……?」

 

 

 ヴィイに指示を出し、クリスを優しく下ろすアナスタシア。

 突如現れた彼女にドクター・ウェルは驚きを隠せずにいた。

 

 

「何故だッ!? 何故実体化しているッ!?」

 

「あら? ここは完全聖遺物の中なのだから、魔力はそこら中に充満しているわ。ちょっと戦闘しても実体を保てるほどにはね」

 

「ッ───……まあ、いい。これで探す手間が省けたと思えばね。

 アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ。ロマノフ帝国の皇女よ。是非とも貴方の力をb「御断りよ」───何?」

 

「聞こえなかったかしら? 貴方に力を貸す事はないと言ったのです。(わたくし)だけではない。ここに集いし英雄の誰一人、貴方に力を貸す者はいません」

 

 

 それは武瑠たちと共にいるときのアナスタシアではなく、皇女アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァとしてこ言葉だった。

 それが分からなかったのか?

 ……いや。わかったのだろう。だからこそ、ドクター・ウェルは怒った。

 

 

「何を言っている……ッ! 僕は全ての眼魂を集めたッ! なのに力を貸さないだとッ!」

 

「集めた? 集めさせたの間違いでしょう? 貴方は誰一人にも認められていない。武瑠やセレナ・カデンツァナ・イヴのように自分の手で召喚し、対話していない。そんな男を誰が認められるでしょう」

 

「小娘が……さっきから言わせておけばッ……」

 

「それに、私個人としても許せないことがある。

 

 私の愛する人を悲しませ、その人の大切な友を傷つけた……だけれど、今一番許せないのは、私の───私の友を侮辱したことよッ!」

 

 

 アナスタシアはクリスに手を差し出す。

 

 

「立てるかしら?」

 

「……あたしは別にお前の友になった覚えはないけどな」

 

「あら? 日本では好敵手(ライバル)と書いて友と読むんでしょう?」

 

「何処で聞いたんだよ……───まあ、悪くはねぇな」

 

 

 アナスタシアの手を取り、立ち上がったクリスは彼女の隣に並び立つ。

 

 

 

 

   

 

 

「さあ、クリス───вы готовы(準備はいいかしら)?」

 

「───出来てるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───夢幻召喚(インストール)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉が引き金となって、クリスとアナスタシア、二人の体を純度の高い氷が包んでいく。氷付けになっていく二人を見て、ドクター・ウェルは自決しているのかとクリスたちを疑ったが、数秒後に氷が砕け散り、そこから現れた()()()()()にそれは間違いだと思い知らされる。

 

 

 

 後ろで二つに纏められた白雪のような白い長髪がなびく頭部にはティアラを模したヘッドギア。

 彼女の体を覆うドレスアーマーは氷雪を思わせる白と青、そして、情熱の紅で彩られ、左腕を覆う氷晶の籠手は一際大きく、静かに冷気を放っていた。

 そして、何よりも視線を集めるのは彼女の瞳。

 片やクリスのような赤みを帯びた瞳。片やアナスタシアのような青みを帯びた瞳。

 

 今の彼女は雪音クリスであり、アナスタシアでもあり、そのどちらでもない。

 

 本来ならあり得ない、人と英霊の完全な一体化を成し遂げた存在。

 

 

 氷結の戦姫 クリスブリザードである。

 

 

 

「「───アイツ(かれ)が……アイツ(たける)が命を燃やすって言うんなら(と言うのなら)あたし(わたくし)が燃やすのは『心の火』……『心火』()」」

 

 

 クリスとアナスタシア、二人の声が重なって聞こえる。

 彼女……いや。彼女たちは胸の左側……心臓がある位置に拳を当てて宣言した。

 

 

 

「「───心火を燃やして、お前(あなた)をぶっ潰すッ!」」

 

 

 

 

~BGM『SONG FOR THE WORLD』~

 

 

 

 

 

 

「シャ、シャドウノイズッ!」

 

「オオオオオッ!」

 

 

 シャドウノイズ……ドクター・ウェルが作り出したダレイオス三世のそれが腰の戦斧を抜刀し、雄叫びをあげると、周りにスケルトンが召喚され、そいつらは容赦なくクリスブリザードに襲いかかった。

 ……だがしかし、

 

 

 ───カツン。

 

 

 足踏みを一回。それだけで彼女を襲おうとしたスケルトンの大半が氷付けにされ、彼女が指をならせば一瞬で砕けてしまった。

 

 残ったのは大きな個体が二体とシャドウノイズが一体。

 

 シャドウノイズがクリスブリザードに臆する事なく、残ったスケルトンと供に仕掛けてきた。

 どちらかが彼女たちを押さえ、残った者で止めを差す算段なのだろう。

 

 だが、シャドウノイズたちの攻撃は踊るような軽やかなステップで避ける彼女には当たらない。

 

 

「「───ちょせいッ!」」

 

 

 籠手を装着した腕の一撃がスケルトン一体を砕く。すぐさま別の個体へ狙いを定める。

 

 

  -GRACIAL ATTACK-

 

 

 巨大化した籠手で残りのスケルトンを掴み、凍らせると同時に握り潰す。

 

 

 残りはシャドウノイズ一体。

 

 シャドウノイズは雄叫びを上げて彼女たちに迫る。

 

 

「「───これで最後()ッ!!」」

 

 

 助走をつけ、飛び上がる彼女たちの後ろにヴィイが現れ、放たれた絶対零度の光線に乗って渾身の一撃を繰り出す。

 

 

  -GRACIAL FINISH-

 

 

 戦斧をクロスさせてガードするシャドウノイズ。しかし、僅かな均衡の末、氷付けにされて粉砕。

 

 絶対零度の蹴りはそのままシャドウノイズを捕らえ、戦斧と同じ運命を辿らせた。

 

 

 

「ヒィイイイッ!?」

 

 

 爆風に押し倒され、ソロモンの杖を取り落としてしまったドクター・ウェル。

 慌てて拾おうとするが、それをクリスブリザードが作った氷壁が拒まれ、睨み付けるも、

 

 

 ───まだやるか?

 

 

 静かに物語る絶対零度の視線にドクター・ウェルは情けない悲鳴を上げてその場から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

(───終わった、な)

 

 

 クリスブリザードは疲労したのか、体が後ろに倒れていくと同時に光に包まれ、元の姿……リディアンの制服に身を包んだクリスとアナスタシアに戻り、仲良く床に寝転がる。

 

 

「つっかれたぁ……」

 

「同感ね。暫く動きたくないわ」

 

「だな…………」

 

「どうしたのかしら? 急に黙っt「ありがとう……」……今、なんて?」

 

「だから、ありがとうって、言ったたんだよ。何度も言わせるな」

 

「……驚いたわ。貴女が素直に感謝を述べるなんて。明日は季節外れの大吹雪でも起こるのかしら?」

 

「そう言うお前は素直に感謝を受け取れないのか?」

 

「受け取るわ。でも、武瑠を譲る気はないから。この戦いが終わったらまた好敵手よ」

 

「それって、結局はダチのまんまだろ? ……まあ、あたしも譲る気はねぇけどな」

 

 

 こうして、ソロモンの杖は無事に奪取することが出来た。

 

 クリスは少しの間だけ休憩し、眼魂に戻ったアナスタシアと共に未来たちの元へ合流するのだった。

 

 

 

 

 

 




前書きの答えはクでした。

へ? 濁点が足りないって? クリスじゃなくてグリスだろ?

いやいや。合っていますよ。だって、答えは本文でって言ったじゃあないですか。



それでは今回はここまで。
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