戦士開眼シンフォギアゴースト   作:メンツコアラ

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 はい。シンフォギアゴーストG編最終回ですッ!
 前書きはここまでにして、それではどうぞッ!






熱唱! エクスドライブ!

 響&翼&クリス&未来 VS 自立型完全聖遺物 ネフィリム(※以後、巨大ネフィリム)。

 フロンティアの上では激戦が繰り広げられていたが、響たちは劣勢に立たされていた。

 

「おっりゃあぁぁぁッ!」

 

「蒼ノ一閃ッ!」

 

「閃光ッ!」

 

「くらえッ! フルバーストだぁぁッ!」

 

 響の拳が、翼の斬擊が、クリスの弾幕が巨大ネフィリムに命中する。しかし、当のネフィリムはびくともしていなかった。

 

「堅すぎんだろッ……!」

 

「小日向ッ! シェンショウジンで屠ることは出来ないのかッ!?」

 

「出来ないことは無いんですけど───ッ!」

 

 未来が言い終わる前に、巨大ネフィリムの豪腕が彼女たちに向かって振り下ろされる。直ぐ様飛び退く響たちだったが、休む暇もなく次の攻撃が迫って来る。

 

「エネルギーを溜める暇がありませんッ!」

 

「なら、攻撃して動きを抑えるッ!」

 

 大地を蹴り、巨大ネフィリムに肉薄しようとする響だったが、突如、謎の触手が地面の下から出現。響の足を掴み、その動きを止めた。

 響が困惑するなか、地面が割れ、触手の全貌が露になった。見れば、その触手は巨大ネフィリムの背中に繋がっていた。

 触手はそのまま自分の本体……つまり、巨大ネフィリムの口へ響の体を持っていく。

 

「響ぃッ!」

 

「立花ッ! 今、助け───」

 

 だが、その瞬間、翼の行く手を遮るように地面から無数の触手が姿を現した。翼はそれらを切り捨て、前に進もうとするが、切り落とした瞬間、その断面から新たな触手が生える。

 

「そこをどけッ!」

 

 アームドギアを振るう翼だったが、そうしている間にも響が大きく開かれた巨大ネフィリムの口に近づいていく。一方の響も抜け出そうとするが、体が空中に投げ出された状態の為にどうすることも出来ない。

 ───だが、響がネフィリムに捕食されることは無かった。

 

「───……させないッ!」

 

 高速回転する円盤状の物が触手を切り裂き、解放されて地面に落ちていく響を桃色のシンフォギアを纏った少女が受け止めた。

 

「……無事?」

 

「調ちゃんッ! 来てくれたんだねッ!」

 

「……私だけじゃ───」

 

「────ないのデェスッ!」

 

 光を反射する三つの翠の鋭刃が巨大ネフィリムの巨体を切り裂き、巨体ネフィリムは悲鳴を上げてその場に崩れる。その隙に、二人の少女……調と切歌は響たちと合流した。

 

「……シュルシャガナと」「イガリマ、到着デスッ!」

 

「たっく、遅んだよ」

 

「主役は遅れてやって来るって奴デスよ」

 

「でも、ありがとうッ! 二人のお蔭で助かったよッ!」

 

「……別にお礼を言われる程じゃない。それに───」

 

 調は手に持っていた袋を開け、その中にあるものを見せる。中には武蔵、ヴラド、風魔、李・書文、ダ・ヴィンチ、ナイチンゲール、以上の六個の眼魂が入っていた。

 

「……こっちは頼まれていた事を達成できていない。だから、お礼はいい」

 

「だが、お前たちのお蔭で立花が助かったのは事実だ」

 

「わたしからも、ありがとう。それに六個しか見つからなかったとしても、これだけ広いところから六個も見つけたなんてスゴいことだよ」

 

「見つからなかった眼魂も皆で探せば大丈夫」

 

「……なら、まずはアイツを倒さないといけないデスね」

 

 響たちは意識を巨大ネフィリムに向け、各々の武器を構える。当のネフィリムも傷を回復し、響たちを睨み付けるのだが、突然地面に両手を付き、体をモゾモゾと動かし始めた。

 

「な、何をしているんだ……?」

 

 誰もが疑問符を浮かべるが、次の瞬間、巨大ネフィリムの背中が()()()

 

『───ッ!?』

 

 巨大ネフィリムの皮を破り、姿を現したのは六腕の巨人。鬼神さえ思わせる眼光が響たちを捕らえる。

 

「成長しちゃったデスかッ!?」

 

「……あるいは進化」

 

「だとしても、お色直しが過ぎるだ───ろッ!」

 

 クリスが巨人に向け、『BILLION MAIDEN』を放つ。

 しかし────、

 

「テルモピュライ・エモノタイア」

 

 聞こえてきたのは巨人の声。何を言っているのかは理解できなかったが、響たちにとってはどうでもいいことだろう。

 何せ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あれは───ッ!?」

 

炎門の守護者(テルモピュライ・エモノタイア)ッ!? なんで師匠の宝具をッ!?」

 

「(まさか───)小日向ッ! 合わせろッ!」

 

「分かりましたッ!」

 

 翼が大地を蹴ると同時に、未来は三百の盾に向かって『閃光』を放ち、盾の壁に隙間を作る。その隙間に通すように、翼は『蒼ノ一閃』を放ち、巨人の体に傷をつける。

 

「やはり、シェンショウジンの一撃で崩壊すると言うことは、あの盾は本物の宝具ッ! なぜ、あの完全聖遺物がつk「翼さんッ! 逃げてッ!」───ッ!?」

 

 ふと見れば、巨人が口を開け、翼を睨んでいた。しかし、空中にいる状態では回避できる訳もなく、翼は手に持っていた大剣を盾にする。

 

「ラ・ブラック・ルナ」

 

 次の瞬間、翼に音波の衝撃が襲いかかる。防御しているとはいえ、その衝撃は凄まじく、後方に吹き飛ばされた彼女の体は響と未来、二人係でなんとか受け止める事が出来た。

 

「翼さんッ! 大丈夫ですかッ!?」

 

「ああッ……この程度、絶唱を歌った時の衝撃よりかはマシだ。しかし、今のは───」

 

「はい。間違いなく、アストルフォさんの宝具でした」

 

 『恐慌呼び起こせし魔笛(ラ・ブラック・ルナ)』。

 アストルフォの持つ、音色を聴いた妖鳥が恐怖で逃げ出すといわれる角笛。その音色を巨人は咆哮として放ってきたのだ。

 

「どうなってんだよッ!? なんでシャドウノイズでもねぇのに宝具が使えてんだッ!?」

 

『解析結果出ましたッ! ……これはッ!?』

 

「どうしたッ!?」

 

『巨人から高エネルギー反応が六つ、いや七つッ! この反応は眼魂ですッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フロンティアは今、ネフィリムと一体化しているッ! その力を使えば散らばった眼魂を見つけて、取り込むなんて朝飯前なんですよッ! 力を貸さないなら、無理やりでも使うだけッ! 僕の英雄譚の為の礎にすればいいッ! 

 さぁッ! 英雄の力を受け、全ての敵を駆逐しろ『暴食せし虚英雄(ネフィリム・シャドウ)』ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、見つからなかった眼魂が既に奴の手に渡っていたとはッ……」

 

「わたしたちが全部回収できなかったから……」

 

「反省は後回しだッ! 次が来るぞッ!」

 

 巨人の指先が筒状に変形し、そこから無数の弾丸が放たれる。咄嗟に回避する響たちだったが、一発一発が大きいと同時に早く、あっという間に土煙で視界が遮られてしまった。

 

「これじゃあ、巨人が何処にいるか見えないデs「切ちゃんッ! 危ないッ!!」───調ッ!?」

 

 土煙の中で目を凝らしていた切歌を調が突飛ばし、その瞬間、巨大な手が彼女の体を鷲掴みにした。

 巨大な手の持ち主、ネフィリム・シャドウは力を籠め、調の細い体を握り潰そうとする。

 

「ぐッ……ああッ……」

 

「調を離すデスッ!」

 

 切歌が調を救出すべく、アームドギアを振るうが、また炎の盾に阻まれてしまう。

 響たちも各々のアームドギアで攻撃するが結果は同じ。そうしている間にも、巨人は腕の力をどんどん強めていく。

 

(もう、意識が───)

 

 限界を迎え、調が意識を手放そうとした……その時である。

 

 

「我が身は人として死を迎え

 されど、我が魂は戦士として生き続ける

 故に、我は槍を振り続けるッ!

 己の存在を示すためにッ!

 

───擊槍・人と死しても、戦士と生きる(ガングニール)ッ!!」

 

 

 圧倒的エネルギーを纏った北欧の神槍の一撃が盾を砕き、ネフィリム・シャドウの腕を貫き、本体から切り離す。解放され、重力に従って落ちる調を、技を放った彼が救出した。

 

「武瑠、先輩……ッ!」

 

「ごめんッ! ちょっと遅れたッ!」

 

 調を抱え、地面に着地したゴースト カナデ魂の元に響たちは集まる。

 

「ちょっとじゃねぇんだよッ! 何処に行ってたんだッ!」

 

「それが……何故か、気づいたら大天空寺にいて、そこから超特急で来ました。途中、寄り道したけど」

 

「でも、良かったぁッ! 空の紋章に吸い込まれていった時はどうなるかと思って心配したんだよ?」

 

「だが、これでまた、心強い仲間が増えた」

 

「それでも、アイツを倒すのは骨が折れそうデスよ」

 

 切歌の視線の先には、既に腕の修復を終えようとしているネフィリム・シャドウの姿あり。それに加え、虚空から異形の艦隊がネフィリム・シャドウに従うように姿を現す。

 

「『黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)』……本当に宝具を使ってくるなんてッ……」

 

「どうするッ!? あれを防ぐ力は、今の私たちにはないぞッ!」

 

 

 

 

 

 

「「だけど、私たちには唄があるッ!!」」

 

 

 

 

 

 

『───ッ!』

 

 突然の声にゴーストたちは振り返る。その視線の先、中に浮かぶ足場の上に立つ二人の歌姫に、彼らは思わず笑みを浮かべた。

 

「「マリアッ! セレナッ!」」

 

 調と切歌がマリアとセレナの元に向かい、それに続き、ゴーストたちもマリアたちがいる足場に集う。

 

「セレナッ! 無事だったんデスねッ!」

 

「良かったッ……本当にッ……!」

 

「ええ、武瑠さんのお蔭です。武瑠さんがわたしを人として生き返らせてくれました」

 

「まさか、武瑠───」

 

「……うん。家族を失うのは凄く辛い事だから、助けられるなら助けたかったんだ」

 

「全く……どうしようもねぇ御人好しだな」

 

「だが、それが天空寺らしい」

 

 誰もが笑みを溢すなか、響はマリアと向かい合う。

 

「マリアさん───」

 

 響の呼び掛けに、マリアは首を縦に降る。

 

「もう、迷う事はない……だって、その必要が無くなったのだからッ!」

 

 

 

 

 

 

「出来損ないが集まった所で、此方の優位は変わらないッ!

殲滅せよ、ネフィリム・シャドウッ!!」

 

 ドクター・ウェルの指示を受け、ネフィリム・シャドウ並びに異形の艦隊は彼らに向かって砲撃を放った。

 圧倒的物量にドクター・ウェルは自身の勝利を疑わない。

 しかし───

 

 

 

 

 

《カイガン!アガート・ラーム!》

 

「「Seilien coffin airget-lamh tron………♪」」

 

 

 

 

~BGM『始まりの歌 』~

 

 

 爆煙が晴れ、そこに居たのはギア装着のエネルギーをバリアに使い、互いのフォニックゲインを高め合う九人の戦士たちだった。

 

「引かれ合う事、手を繋ぐことに理由なんて要らない」

 

「例え、それが偽善だったとしても、それでもわたしたちは手を繋ぐ」

 

「その手を繋ぐことに意味があるんだから」

 

 

 

 

「───友が残した、大切な今のために」

 

 絶剣の戦姫の輝きが増す。

 

「───夢を明日に繋ぐために」

 

 魔弓の戦姫の輝きが増す。

 

「───大切な人たちと」

「───共に生きるために」

 

 獄鎌の戦姫と鏖鋸の戦姫の輝きが増す。

 

「───みんなを護るために」

 

 銀腕の亡霊戦姫の輝きが増す。

 

「───信じた正義を貫くために」

 

 もう一人の銀腕の戦姫の輝きが増す。

 

「───大切な人が帰る場所を守るために」

 

 神獣鏡の霊媒戦姫の輝きが増す。

 

「───まだ会ったことのない全ての人と手を繋ぐために」

 

 擊槍の戦姫の輝きが増す。

 

「───そして、全ての命を守るために俺たちはこの唄を唄うッ!!」

 

 

 

 

「させるかッ! やれ、ネフィリム・シャドウッ!」

 

 ドクター・ウェルが再び指示をだし、ゴーストたちを駆逐しようとする。しかし、

 

『───させませんッ!』

 

「なにぃッ!?」

 

 突如、動きが鈍くなるネフィリム・シャドウ。何が起こったのか分からずに困惑するドクター・ウェルだったが、その理由はネフィリム・シャドウと対峙する武瑠たちには分かった。

 何せ、彼らには見えているのだから。ネフィリム・シャドウを必死になって抑えてくれている英雄たちの姿が……

 

『たっくッ! しんどいことをさせるんじゃないよッ!』

 

『これ以上、僕たちの宝具は使わせないよッ!』

 

『あたしらがただ食われただけだなんて思うんじゃないよッ!』

 

『食べられたって、僕たちは戦えるんだッ!』

 

『誠の旗は……否ッ! 英雄(おれたち)は不滅だぁぁぁッ!』

 

『これが最後の大勝負ってなッ!』

 

『皆さんッ! 存分にやってくださいッ! 恐らく、この巨人を倒せば一つになっている私たちは共に消滅するでしょう。しかし、眼魂は消滅しても魂は消えないッ! かの対戦で、圧倒的な敵の数を前に戦い抜いたスパルタの魂のようにッ!』

 

 

 

(みんな……ありがとうッ! みんなの頑張りを、決して無駄にはしないッ!!)

 

 擊槍を纏う幽霊戦士の輝きが増し、九つの光が……いや。地球上に住む七十憶以上の命の絶唱が一つに束ねられていく。

 

 

《 《 《絶唱! ダイカイガン(テンガン)

  エクスドライブ(ウルオウド)!!》》》

 

 

「これが俺たちのッ!」

 

 

『シンフォギアだぁぁぁッ!!!』

 

 光を纏い、一人の戦士と八人の戦姫たちは空高く飛び上がり、圧倒的なフォニックゲインと共にネフィリム・シャドウに突貫。

 地球上に住まう全ての命の絶唱と共に、ネフィリム・シャドウを打ち倒したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、ドクター・ウェルが制御を放棄したネフィリムは成層圏まで到達したフロンティアを完全に取り込み、同時に暴走。ネフィリム・ノヴァとなってゴーストたちに猛威を振るう。

 しかし、クリスが持っていたソロモンの杖を使ってバビロニアの宝物庫を開き、その後、全員の必殺の一撃『Vitalization』でネフィリム・ノヴァをそこに押し込み、ネフィリム・ノヴァ爆発の被害を食い止めたのだった。

 

 月の遺跡は正常に稼働。落下する恐れもなくなった。

 だが同時に、解けかけていた『バラルの呪詛』も元に戻り、人類の相互理解はまた遠退いてしまった。

 

 だが、それは問題ないだろう。何せ、彼らには無限に繋がることの出来る唄があるのだから。

 

 

 

 

 




 次回はエピローグですね。
 その前に、大天空寺を直さないと……あれ? 了子さん、どうかしました?
 ……───え? 大改造する? 
 大天空寺が寺からどんどん離れていっている気がするけど…まぁ、いっか。
それでは、今回はここまで。

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