『エピローグ』
「皆、今回はよく頑張ってくれた。よって、今日は無礼講。思い切り楽しんでくれ。
それでは───乾杯ッ!」
『カンパーイッ!!』
『フロンティア事変』。そう呼ばれる事になった今回の騒動の後始末も無事に片付き、武瑠たちは打ち上げをすっかり元通り……ではないが、二課の費用で綺麗に建て直された大天空寺で行っていた。
そこでワインや日本酒、ジュースなど、各々の好きな飲み物を片手に祝杯をあげる二課のメンバーと残った英霊たち。そして、奏、マリア、セレナ、切歌、調、ナスターシャ教授の姿もあった。
祝杯を上げた後、皆は並べられた食事に手をつけたり、近くに立つ者と会話したりして楽しんでいた。
少し経った後、腹休めで皆から離れていた武瑠の元に弦十郎がにやって来た。
「楽しんでいるか、武瑠くん?」
「風鳴司令……ええ。十分楽しんでいますよ。司令の方は?」
「俺も楽しませて貰っているよ。君が作ってくれた料理も中々のものだ」
「俺だけじゃなくて、調も手伝ってくれました。それに、食費や大天空寺の修理費とか、全部二課持ちじゃないですか。これぐらい、腕によりをかけて作りますよ」
「それくらい、幾らでも出すさ。何せ、
そう言って、弦十郎はパーティー会場になっている部屋……
「はじめは仮本部だった潜水艦を本部にする予定だったが、
『拙僧は全然問題ないですぞ? むしろ、寺としては既に手遅れな状態ですので、増築なんて今更』
「まさかの一発OKとは……」
「本当……お寺って何でしたっけ……?」
「ちょっと。私とダ・ヴィンチが作った設備に文句があるわけ?」
黄昏る二人の元に、アルコールで顔を赤くした了子がカクテルグラス片手に割り込んでくる。
「先史文明の巫女である私の異端技術と希代の大天才であるダ・ヴィンチちゃんの魔術的技術。それらをフルに屈指して建築&強化された今の大天空寺は核が落ちても問題なしッ! 勿論、その他諸々の設備も万全ッ!
そして、何より凄い物といえばッ! 地球上で起きている万象を全て観測できる巨大装置ッ! その名も『アース』ッ!」
酔った勢いでなのか、了子は指令室の中央に置かれた巨大な地球儀、『疑似地球観測モデル アース』を絶賛する。限りなくアウトに思えてくるが、そこは気にしない。
「政府の駄けn───もとい、政府の御偉いさんたちを通す為に残した仮本部や事件があった現場に最長五秒で転移出来るようにもしてあるわ。そして、ここの更に地下には聖遺物の保管庫。今、ここ以上に安全かつ難攻不落な場所は片手も要らない位の数しかないわ」
実質、ゼロである。
「本当……どうしてこうなった……」
「そんな辛気くさい顔をしないの。これから打ち上げ最大のイベントがあるんだから」
「イベント? そんな企画はしていなかった筈だが」
「あの子に頼まれて急遽ね。まあ、簡単なものだったからすぐに準備できたわ」
「それで、イベントって言っても何をやるんですか?」
「それは勿論────」
『警告』
場所は変わり、大天空寺の仏間。
人気のない暗い部屋に、彼……魔術師はやって来た。
「まったく……下で美味しい料理を満喫したいのに、こんな暗い部屋に呼び出されるなんて。私に何の用かな、御成くん?」
魔術師は部屋の奥で待っていた男……自分を呼び出した御成に問いかけた。
「すいません。どうしても、他の方々に聞かれる訳にはいきませぬゆえ」
「それは分かったから、早く本題に入ってくれないかな? 残したシャンパンを早く飲みたいし」
「……貴方は相変わらずでございますな、魔術師殿……いや───理想郷のキャスター」
「……ああ。そういえば、君も参加者だったね。すっかり忘れていたよ」
「十六の眼魂……即ち、十六の英雄。まるで、
「それは教えられないね。まだ、その時じゃない」
「……分かりました。しかし、拙僧も敗北したとはいえ、乱戦を最後まで生き抜いた者。甘く見ないで頂きたい」
「肝に銘じておくよ」
月明かりに照らされている魔術師の顔は笑顔だった。
『一夜の双翼の唄』
「───というわけで、始めるわよッ!
カラオケ大会ッ!」
『イッエーイッ!!』
『い、いえーい……』
アースの側に設置されたステージやマイクスタンド、スピーカー。その上でマイク片手にノリノリで司会をする了子。一方の武瑠たちは彼女のテンションに着いていけている者とそうでない者に別れていた。
(あのステージセット、初めて見たんですけど)
(余った材料で急遽作ったらしい。聞けば、曲に合わせて衣装や背景を自動で投影してくれるらしい)
(急遽作った割には結構手が込んでいません?)
「何かボソボソ話している
といっても、のど自慢みたいに景品とか合格とかがある訳じゃないから。率直にいうと只のカラオケ。誰かにリクエストするもよし。自分から唄うもよし。好きな人とラブソングをデュエットするもよしッ! 楽しんだ者勝ちだから、存分に楽しみなさいッ!
さぁて、早速一曲目に行きましょうッ! リクエスト、もしくは我こそはと思う人っている?」
了子の質問を聞いて、真っ先に手を上げたのは響だった。
「はい、響ちゃんッ!」
「武瑠にリクエストしますッ!」
「はいッ!?」
「OKッ! それじゃあ、武瑠くんッ! ステージにカモーン♪」
「御指名されているぞ?」
「───はぁ……」
逃げるわけにも行かず、弦十郎の隣に立っていた武瑠はステージの上に立つ。
「武瑠くん、準備はいいかしら?」
「出来てなくてもやらせるんでしょ?」
「その通りッ! それじゃあ、早速一曲目『RAGE OF DUST』スタートッ♪」
~曲終了。
「意外と上手いんだな」
「クリス、それはどういう意味だ? 酷いよ」
「武瑠って、あまり人前で歌わないからじゃない? 上手なのに」
「人前で唄うのが苦手なの」
「それじゃあ、この調子でどんどん行きましょうッ!」
~二曲目『dear-dear DREAM』歌い手 クリス
「おいッ! なんだ、この際どい衣装ッ!?」
「それ、ちょっと昔のアニメのEDですね、それを歌っているキャラの衣装に間違いなしッ!」
「藤尭さん、詳しいんデスね」
「ついでに、リクエストしたのは武瑠くんよ」
「武瑠ぅぅぅッ!!?」
「そんな衣装になるとは思わなかったんだッ!」
~三曲目 『異世界ガールズ♡トーク』
歌い手 響、未来、アナスタシア、マリア
「「「何か違う」」」
「セレナッ!?」
「奏さんや調ちゃんまでッ!?」
「ごめんなさい、マリア姉さん」
「いやぁ、なんと言うか、歌い手が違うと思ったと言うか……」
「響先輩、アナスタシアさんはともかく、未来先輩とマリアに違和感があった」
「なんなの、その違和感って……」
~四曲目『カブトムシ』 歌い手 了子
『……………………』
「みんなして無言にならないでくれるッ?!」
「いや、了子さんがラブソングを唄うと、その……」
「じ、自分はいいと思いますのよ」
「貴様らは黙ってろッ!!」
「忍者コンビに見事なラリアットが決まったぁッ!」
……とまぁ、色々ハプニングがあったが、皆が思い思いに楽しんでいた。そして、最後の一曲となったとき、
「それじゃあ、ラストは───翼ちゃん。貴女にリクエストよ」
「櫻井女史がわたしにですか?」
「いいえ。私じゃなくて───」
「───あたしだよ」
了子の言葉を遮り、その少女がステージの上に立つ。
その服装は、先程までのタンクトップとショートパンツではなく、羽ばたく鳥の片翼を模した衣装に変わっていた。
それを見た翼は勿論、響や弦十郎は目を見開いた。
「奏、その衣装って……」
「あたしが無理言って、了子さんに頼んだんだよ。勿論、翼の分も用意してある。
……一緒に歌ってくれないか?」
「───ええ。もちろんッ!」
~『逆光のフリューゲル』~
数分後、ステージが暗転する。
遂に始まる。そう思った瞬間、
本当なら、もう二度と見ることが出来なかった彼女たちのデュエット。一夜限りの幻想といえど、彼女たちの姿は見ていた者たちの記憶に鮮明に刻まれたのだった。
……余談だが、それを見逃した御成は血涙を流し、大天空寺に武瑠たちの悲鳴が上がったのだった。
「拙僧もッ……拙僧も見たかったですぞッ……!」
「分かったッ! 分かったからその顔で近づかないでくれッ!!」
『?????』
とある浜辺。波に流され、その眼魂はそこに辿り着いた。それを、まるで最初から来ることが分かっていたかのように待っていた一人の男が拾い上げる。
「まったく……結局、あの男は使い物にならなかったか。フロンティアの力を利用して、◯◯の速度を早めるつもりだったが……」
深くため息を吐く男が眼魂をギュッと握り締めると、それは男の掌に吸い込まれるように消えていった。まるで、初めから自分の一部であったかのように消えていった。
「まぁいい。近い内、そう遠くない未来に◯◯は来る。それまで、ゆっくりと着実に準備すればいい」
男は凶悪な笑みを浮かべ、その場から霞のように何も残さず消えていったのだった。
仮面ライダーゴースト
ムサシ眼魂
アルトリア眼魂
アナスタシア眼魂
リ・ショブン眼魂
仮面ライダースペクター
ヴラド眼魂
フウマ眼魂
仮面ライダーネクロム
ナイチンゲール眼魂
ダ・ヴィンチ眼魂