本当なら昨日の内に投稿したかったのですが、今回は1日遅れてクリスマス回です。
それではどうぞ。
12月25日。誰もが浮き足になり、思い思いの夜を過ごすクリスマス。仏教である大天空寺も今日ばかりはクリスマス色に染まっている……訳では無かった。
「武瑠さん。此方は何処に持っていけば?」
「使い終わった掃除道具は地下の研究室に倉庫があるんで、そこに」
「武瑠。障子の糊乾いてたわよ」
「じゃあ、元に戻して貰えます? 未来、マリアさんを手伝ってあげて」
「分かった」
「武瑠殿。少々手を貸しては貰えませぬか?」
「こっちが終わったらすぐ行く」
時間は午前7時。大天空寺の住人で早起き組である武瑠、マリア、未来、御成。そして、朝早くからやって来た緒川は大天空寺の大掃除をしていた。
他の家と比べれば少し早いようにも見えるが、大天空寺はこの街で唯一の寺だ。年末年始は猫の手を借りたいほど忙しくなる。故に昨日の内からやって、今日の昼までには終わらし、夕方は皆で楽しくお疲れ様会兼クリスマスパーティーを行おうという事になっているのだ。
五人が忙しなく動いてるなか、台所からエプロンをつけた黒い長髪のスタイルが了子並みに良く、大和撫子という言葉が似合いそうな女性が姿を現した。
「武瑠さん。朝御飯が出来ましたよ」
「ありがとう、頼光さん」
……そう。信じられないかもしれないが、彼女こそ『大江山の酒呑童子』、『京の大蜘蛛』、『浅草寺の牛鬼』等々、数多くの怪異を討ち滅ぼしてきた平安時代最強の神秘殺し。その真名を『源 頼光』。摂津源氏の祖である。
そんな大英雄なのだが……、
「頼光さんなんて他人行儀な呼び方は止めてください。私の事は母と呼んで「嫌です」……ぐすん」
どういうわけか、武瑠たちの母になろうとしている頼光。現状、切歌と調が彼女の義理の娘となっている。
「それじゃあ、そろそろ休憩するか。皆もそろそろ起きる頃だし」
「ということは、切歌、喜ぶわね。初めてサンタからプレゼントを貰ったのだから。ごめんなさいね、態々用意してくれて」
「問題ないですよ。
数十分後。大天空寺の住人たちが起床し、一部例外(マリー、イスカンダル、ノッブ等)はいるが頼光が作った朝食を食べ終えた者から大掃除の手伝いをしていく。
「しっかし、
「皇女と言っても、末期は自分独りで色々出来るようになっていたのよ。
「あぁん?」「何よ?」
「はいそこ。喧嘩するなら掃除で決着をつけてね」
色々とトラブルがもあったが、皆の協力もあり、大掃除は予定通り昼前に終った。
掃除を終え、後片付けを済ませた響たちは昼食のざる蕎麦を啜っていた。
「それじゃあ、ご飯を食べ終わったら夜のパーティーの準備をしようッ!」
『おぉーッ!』
響の指示にヤル気満々の面子が答える……が、
「あー……ごめん。その事なんだけど、俺、少し遅れて参加する」
「えぇぇッ!? そうなのッ!?」
「武瑠。どうしてか説明してくれる?」
「用事があって出かけるんだ。出来る限り、早く帰ってこれるようにするから」
納得は出来ないが用事があるのなら仕方ない、と響たちは渋々承諾する。そんな中、たった一人……未来は目の前に座る調の口角が一瞬だけ上がったのを見逃さなかった。
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数時間後。パーティー開始間近。
今日は響たちの友人である板場、安藤、寺島の三人も参加するため、今日は大天空寺の大広間ですることに。飾り付けも終わり、台所から緒川、了子、頼光が作った古今東西の豪華な料理が並べられていく。
「うっひょ~♪ 美味しそ~ッ!♪」
「食べて良いじゃろ? もう食べて良いじゃろ?」
「ノッブ、ダメですよ。響さんも我慢してください」
「ふぅむ……これはなんという料理だ?」
「これは北京ダックですね───って、イスカンダルさんッ! 食べちゃダメですッ!」
「なんだ? 出されたのだから食べても良いだろう?」
「マリア、セレナ、マムッ! 見たことのない料理が沢山デスよッ!」
「はしゃぎ過ぎは危ないよ」
「マム。食事は大丈夫なの?」
「ええ。今日くらいはフローレンス女医も許して「ダメです」……しかし、今日はクリスマス。少し位なら」
「ダメです、ミス・ナスターシャ。病人の貴女には私の作った貴女用の料理を食べて貰います。安心してください。栄養バランスはきっちり管理していますので」
皆が開始まで思い思いに過ごすなか、ふと切歌があることに気づく。
「あれ? 調は何処デスか?」
「調なら料理の手伝いをしている筈じゃなかったかしら?」
「いえ。僕たちは会っていませんよ?」
「
あれ?、と皆の中で疑問符が浮かび上がる。そんな中、たった一人だけ……未来だけがある可能性に辿り着いた。
(武瑠のお出かけ……姿の見えない調ちゃん……意味ありげな笑み……まさか…………)
一方、その頃。出掛けていた武瑠はスーツを着込み、メガネを付け、街中にあるホテルのバーにいた。
(いや、なんでさ)
「どうしたの、武瑠先輩?」
「いや。何でもないよ、調さん」
隣に座る洒落た服を着込み、メガネを付けた調の事を思わず『さん』付けで呼んでしまうほど困惑している武瑠。そんな彼を調は『可笑しい人』とクスクス笑った。
「なぁ、調。確か、俺は君から『プレゼント交換用のプレゼントを買い忘れたから付き合ってほしい』って言われて、指示通りに他の皆には理由を言わずに来た筈なんだけど?」
「イルミネーション、綺麗ですね。クリスマスって感じで」
「話を逸らさないで。というか、なんで明らかに未成年の俺たちが大人御用達のバーに入れたの?」
「それはこのフィーネ特製のメガネのお蔭。認識阻害の応用で私たちは今、成人の男女の二人組だと他の人たちから認識されている」
「なんてご都合主義」
「それよりも今は乾杯しよう?」
そう言って、調は自分の前に置かれていたグラスを手に取り、武瑠の前に置かれた同じものと軽く当てる。
「ナニコレ?」
「ちょっと匂いが独特のブドウジュース」
「違うよな? 明らかに酒だよな? 俺たち未成年だよ?」
「大丈夫。バレなければ犯罪じゃない」
「調さん? キャラが変わってるよ?」
「それに、もし酔って帰れなくなったとしても、こんなときの為にホテルの部屋を一室取っている。大丈夫。新婚という設定だから間違いが起きても問題ない」
「問題大有りだよ。それ以前に設定とか言ってる時点でアウトだよ」
「……そういうのは今いい。今日の為にどれ程時間と貯金を費やしたか、分かる?」
「マジでどんだけ投資した?」
「というわけで、今日は私が武瑠先輩を独り占め」
「ちょ───」
武瑠に寄りかかる調。香水を使っているのか、ほんのりと香る柑橘系の香りが武瑠の鼻腔をくすぐり、スーツ越しに感じる少女の温もりに嫌でも顔が熱くなる。
「あの、調さん。ちょっと離れてくれると「いや」……いや。いやじゃなくてさ」
「今、私たちは新婚夫婦。妻のわがままくらい、聞いてくれてもバチは当たらない」
「いや。夫婦って───」
その時だった。武瑠がプライベート用に使っているスマホに通信が入ったのか、着メロが彼らの耳に入る。
武瑠はすぐさまスマホを取り出し、その手をすかさず調が抑える。しかし、武瑠と調では力の差があり、武瑠は何とか通信をオンにすることが出来た。通話の相手は……未来だった。
『もしもし、武瑠? 今、調ちゃんそこにいるんでしょう? 替わってくれないかな?』
「なぜ分かった~……」
もしかして、盗聴器か何か付けられている? そう思ったからなのか、軽い恐怖に教われる武瑠だったが、そのお蔭か隣で黒いオーラを発する調に気づくことはなかった。
「未来先輩……よくも邪魔を…………」
この後、大天空寺に帰った武瑠と調はクリス、アナスタシア、マリアの三人から説教を受けるのだった。
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