それではどうぞどうぞ。
町に出た武瑠たちは現状を把握するため、二~三時間ほど散策していた。結果、町は至って平和そのもの。異常と呼ばれるような現象は見られない……という訳でもなかった。
一先ず、了子から渡された宝石を売り、軍資金を獲得した武瑠たちは歩きながら情報を整理していた。
「結論から言うと、ここは異世界だな」
「だよね。天宮市なんて初めて聞くし……」
「何よりもノイズの情報が一つもない。ということは二課や装者の存在もいないだろう」
「その代わりに存在するのが『空間震』だったか? ここも被害地を再開発した場所らしいし」
「ギャラルホルンが起動した原因って、これなのかな?」
「それは考えづらいな。聞けば、三十年前から起こっている事らしい。最近になって頻繁となっているようだが……」
「取り敢えず、もう少し情報を集めよ───……て、響は?」
気がつけば、先程まで共にいたはずの響が姿を消していた。
「響ならそこの店に「皆~ッ! お待たせ~ッ!」お、出てきた」
ユルセンが示した店から響が紙袋を持って姿を現す。
「……おい、バカ。その袋はなんだ?」
「きなこパン。スッゴく美味しそうだから買ってきたたたたッ!? くりふひゃんッ! いひゃいよッ!」
「お前はッ! もう少し緊張感をだなッ!」
頬を捻られ、痛いと訴える響だが、クリスは容赦なく続ける。そんな彼女たちに呆れる武瑠たちだが、先程響が出てきた店から女性の叫び声が聞こえてきた。
『なんだとッ!? それは本当なのかッ!?』
「どうしたんだろう?」
気になっていると、叫び声をあげたと思われる黒い長髪の少女が肩を落として店から出てくる。
「うぅ……きなこパン……」
「諦めろ、十香。無い物ねだりしても仕方ないぞ」
「慰撫。また明日来ましょう」
双子と思われる少女たちから慰められる『十香』と呼ばれた少女。そんな彼女に響が歩み寄る。
「あのー……」
「ぬ? ───ッ! 貴様ッ! その手に持ってるものはッ!?」
響の持つきなこパンに釘付けになった少女。そんな彼女に、響は買ったばかりのきなこパンを一つ差し出した。
「よかったらどうぞ」
「いいのかッ!? 感謝するぞッ! 私は夜十神 十香だ。お前の名は?」
「私、立花 響っていいます。好きなものはごはん&ごはんです」
「ごはんは私も好きだぞ。よろしくな、響」
出会って一分足らずだが、早速現地の人と仲良くなる響に武瑠たちは『流石、響』と感服する。
十数分後。武瑠たちは響が早速友達となった十香とその連れであった双子と思われる少女たち、『八舞 耶倶矢』と『八舞 夕弦』からこれも何かの縁とお茶に誘われ、町中にあるオープンカフェに訪れていた。
「……なるほど。学舎の集いによる一時の旅か」
「質問。どのような部活なのですか?」
「音楽研究会です。歌とか楽器とか……音楽に関することなら何でも挑戦するって部活なんですけど」
「唄か……汝らの奏でる旋律がどのような魔性か気になるところだ」
「……なあ。さっきから遠回しな言い方してるけど、疲れないか?」
「謝罪。耶倶矢は痛い中二病(笑)ですので」
「痛くないしッ! あと(笑)とか言うなしッ!」
「いや、別に謝る必要はねぇよ。ただ、あたしらの回りに中二病とか居なかったから気になってな」
「響たちの友達にはどんな者がいるのだ?」
「いい人ばかりですよ。皆、面白いですし」
「質問。例えば?」
「一番癖のある人って言ったらノッブとか、沖田さんとかかな?」
「そうか。いつの日か、会ってみたいぞ。ところで響たちは、この町は初めてか? なら、案内をするぞ?」
「本当ですか? ありがとうございます」
「しかし、少しだけ待ってほしい。シドーが今こっちに来ている筈なのだ」
「しどー?」
「うむ。シドーは優しくてな。毎日美味しい料理を振る舞ってくれる。そして、私に暖かい居場所をくれた人なのだ」
この場にはいない『シドー』と呼ばれる人物を語る十香。そんな彼女の顔は可憐で美しく、とても幸せそうで、『シドー』という人物が彼女にとっての大切な人であることを物語っていた。
「好きなんですか? そのシドーって人の事」
「モチロンだッ!」
「堂々と言うな……」
「それだけ想いが強いという事だろう」
「折角だし、このまま恋バナする?」
「こ、恋バナッ!?」
「響よ。こいばな、とはなんだ?」
「好きな人について語り合う事です」
「そ、それはちょっと恥ずかしいぞ」
「なあ、男の俺が一人恋バナに参加って変だからちょっと席を外していいか?」
「この状況で今さらじゃない?」
未来の言葉に苦笑を浮かべる武瑠に逃げ場はなく、仕方なく残る選択をした彼を混ぜ、楽しい楽しい恋バナが始まる……はずだったのだが、
「きゃああああッ!!?」
『───ッ!?』
オープンカフェの落ち着いた雰囲気を切り裂くかの如く、近くから悲鳴が武瑠たちの耳に届く。見れば、何処から現れたのか、体が石のようにひび割れた、灰色の異形の群れが人々を襲っているではないか。
『さーてと……お前ら、好きに暴れて人々を絶望させなッ!』
異形の中に一体、巨狼を思わせる異形が灰色の異形に指示を出している。
「あれってッ!?」
「おいッ! 早くこの場から退却せよッ!」
「退却せよって、あれは何なんだよッ!?」
「あの魔界の怨霊のごとき異形は『ファントム』ッ!」
「解説。人の絶望から生まれた化け物ですッ!」
「人の絶望からって、どういう───」
その時、武瑠の視界の端に、逃げ遅れたであろう親子に槍を振り下ろそうとする、ファントムと呼ばれた灰色の異形『グール』の姿が写る。次の瞬間、武瑠は考えるよりも先に走り出した。
「お、おいッ!?」
十香が呼び止めようとするが、武瑠はそれを聞かず、今にも槍を振り下ろそうとするグールを突き飛ばす。
「早く逃げろッ!」
「あ、ありがとうございますッ!」
子供を抱き抱え、親は一目散に逃げていく。それを見た武瑠はほっとひと安心するが、すぐに意識を異形たちに向けた。
『なんだ? 随分と変わった奴だな。このオレ、ワーウルフ様の楽しみの邪魔をするんじゃねぇ』
「楽しみ? どういう意味だ」
『そのまんまの意味だよ。弱い奴を襲い、そいつらが絶望して上げる悲鳴を聞くのがオレの楽しみだ。その中にゲートが入れば、そのままファントムにもなるしな』
「(なるほど。さっき、夕弦さんが言ってたのはそういうことか)───だったら、これ以上は見逃せないな」
『なら止めてみるんだな。───やれッ!』
巨狼の異形『ワーウルフ』の指示で、グールたちが槍を手に迫る。
武瑠は振り下ろされる槍を紙一重で回避し続け、隙を見てドライバーを装着。懐から取り出した眼魂のスイッチを押してベルトに装填し、いつものようにトリガーを引き、押し込むのだが、
「「変身ッ!」」
「「……───え?」」
耳に入ったのは聞いたことの無い音声。顔を音の聞こえた方向に向けてみれば、そこに立っていたのは異形ではなく、
(───宝石?)
頭部や胸に散りばめられたルビーを思わせる情熱的なクリスタルとローブを思わせる装い。何より、腰に巻かれているのは掌を模したバックルが取り付けられたベルト。
「お前は……一体?」
「───俺は仮面ライダーウィザード。指輪の魔法使いだ」
これが、天空寺 武瑠と五河 士道の……仮面ライダーゴーストと仮面ライダーウィザードの出会いだった。
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