戦士開眼シンフォギアゴースト   作:メンツコアラ

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コラボ編四話です。
それではどうぞ





会合! 『ラタトスク』

「初めまして、正体不明の皆さん。ようこそ、空中戦艦 フラクシナスへ。私はここの司令官の五河 琴里よ。早速だけど、あなた達について洗いざらい喋って貰おうかしら?」

 

 不敵な笑みを浮かべる琴里。しかし、武瑠達は目の前の状況に困惑しており、質問に答える余裕はあまり無かった。武瑠達は身を寄せ合い、小声で状況整理を始める。

 

「なぁ。あの偉そうなガキはなんなんだ?」

 

「司令官って言ってたけど……」

 

「いやいや。見た感じ、切歌や調よりも年下のようだから違うだろ?」

 

「いや。見た目で判断することは出来ない。武蔵さんやダ・ヴィンチちゃんがいい例だ」

 

「確かに……」

 

「ちょっと。いつまで待たせるつもりかしら? カタツムリだってもっと機敏に動くわよ。それともあなた達は士道よりも使えないゴミムシ以下の存在かしら?」

 

「まさかの飛び火ッ!?」

 

 哀れ、士道。まさか、飛び火で罵倒されるとは誰が予想出来るだろうか。そんな彼に苦労してんだなぁ、と思いながら、クリスが琴里に問いかける。

 

「なあ。さっきからそいつを罵倒してるけど、流石に言い過ぎじゃねぇか?」

 

「あら? 誰が質問の許可を出したかしら? 今は私があなた達に質問してるのよ。それに士道は罵られて喜ぶような変態だから問題ないわ」

 

『え゛───ッ!?』

 

「ごーかーいッ! 誤解だからッ! 俺にそんな趣味はないからッ!」

 

「そうですよ、司令。罵るなら、是非私を───」

 

「フンッ!」

 

「ありがとうございますッ!」

 

『う、うわぁ…………』

 

 琴里に容赦なく殴られたというのに恍惚とした笑みを浮かべる長髪の男に、武瑠達は思わず引いてしまう。今まで数多くの人や英雄と関わってきたとはいえ、マゾヒストに出会うのは初めてだった武瑠達には衝撃的な光景だった。

 

「……で? そろそろ話してくれないかしら? 話さないと言うのなら、こちらもそれ相応の対処を取らざる得ないのだけれど」

 

「……話してもいいけど、そちらの情報を提供してもらっても?」

 

「いいでしょう。その代わり、出鱈目なことを言ったら即刻ブタ箱行きね」

 

(この子、本当に子供か? だけど、それよりも問題なのは───)

 

 武瑠は自分達の現状を琴細かく説明するのだが、

 

「警備員、五名ブタ箱に案内してあげて。いや、先に精神科の方がいいかしら?」

 

「ですよね~……」

 

「なんでッ!?」

 

「仕方ないよ、響。急に異世界から来たなんて説明したらそうなるよ」

 

「何よりもあなた、自分が幽霊ですって? 非科学的にも程があるわ。まあ、物語としては面白かったけど。とりあえず、あなた達の身柄は拘束させてもらうわ」

 

 扉が開き、数人のごりマッチョな警備員が姿を現す。武瑠や翼は今後の為にも大人しく従うべきかと思ったが、意外な所から助け船が出た。

 

「琴里、ちょっと待ってくれないか?」

 

「なに、士道? まさかとは思うけど、こいつらの話を信じるつもり?」

 

「俺と言うよりも……ドラゴンが」

 

「……なんですって?」

 

 士道の言葉に琴里は眉をひそめ、そこに彼の言葉を後押しするように彼女の近くでキーボードを叩いていた顔色の悪い女性が口を開いた。

 

「彼らの話は本当だと私も思うよ」

 

「令音まで……」

 

「根拠がない訳じゃない。

 まず、彼女達が纏っていた鎧……シンフォギアだったかな? 歌を力に変える所は美九の『破軍歌姫(ガブリエル)』に近いが、その時に発生するエネルギーの波形は全く異なるし、何よりも霊力や魔力が一切感知されなかった。

 次にそこの少年と黒髪の子の事なんだが……君たちは仮面ライダーで間違いはないんだね?」

 

「そうです」「はい」

 

「だが、さっきの戦いを見る限り、シンのように指輪を使っていない。エネルギーの波形はシンの魔力に近いが、それだけだ」

 

「……だからって、簡単に信じられるわけないでしょう? それに自分を幽霊だって言っている奴の話を信用できる? 幽霊だって言うのなら浮いてみなさ「出来ますけど?」───え?」

 

 見れば、琴里の視界にフワフワと浮かぶ武瑠の姿があった。

 

「これで信じてくれますか?」

 

 ダメだしとばかりに武瑠は壁をすり抜けて見せる。流石の琴里もこれには降参し、全てを信じてもらえた訳ではないが、武瑠の要望通りに情報を交換して貰えた。 

 そして、武瑠達はこの世界の現象を知ることになった。

 

「精霊? それが空間震の原因なんですか?」

 

「そうよ。彼女達は普段『隣界』と呼ばれる場所にいて、そこからこちらの世界に現界するときに起こるのが空間震なの」

 

「彼女達……ということは、精霊という者達は皆女性なのか?」

 

「その通り。現にあなた達は精霊に会っている。十香達がその精霊なの」

 

「えぇぇぇッ!? で、でも、普通の人と全く変わりませんでしたよッ!?」

 

「それは士道のおかげ。士道には精霊の力を封印する能力があるの。それにより彼女達は一般人と同じように生活できているわ。そんな彼女達を狙っている存在がさっき戦っていたファントム。このファントムってのが何よりの問題で現代兵器が効きづらく、何よりも精霊の持つ霊力と相性が悪いの」

 

「そして、人を絶望させて自分達のような『ファントム』を生み出しているって訳か。それをどうにか出来るのが士道が変身する仮面ライダーウィザードって事だな」

 

「でも、これは過去に何度も起こっていたこと。あなた達の言う異常とは違うと思うわ」

 

 その後、武瑠達は琴里といくつか情報交換し、一応この世界に残って調査を続ける事を選んだ彼らに宿泊先を提供してきた。何でも精霊用の施設に空きがあるらしいので、武瑠達はそこに泊めて貰うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 十数分後。武瑠達は士道の案内の元、その施設近くにいる。

 

「───で、ここが俺の家。ご飯の時とか、何かあったときは気軽に訪ねてくれ」

 

「ありがとう。お礼と言っては何だけど、ご飯の支度や食材の提供はさせてくれないか?」

 

「支度は分かるけど、提供って?」

 

「見れば分かる」

 

 士道の案内で、早速彼の家に上がらせてもらう武瑠達だが、

 

『あーん♪ 逃げないでくださいよぅ♪』

 

『こ、こっち来るなぁッ!』

 

『犠牲。耶倶矢を差し上げますので来ないで下さい』

 

『ちょっと、夕弦ッ!?』

 

『いいじゃないですか。ちょっと着替えて写真を撮るだけじゃないですか』

 

『おお。可愛いではないか、四糸乃』

 

『あ、ありがとう、ござい、ます。十香さんも、可愛い、です』

 

『でもさ~、なんか耶倶矢ちゃん達のだけ際どいんだよねぇ』

 

 

「……なぁ。この家の中で何が起こってんだ?」

 

「あはは。まあ、いつもの事だから気にしないでくれ」

 

 苦笑する士道はそのままリビングに進み、武瑠達もその跡を追う。リビングには十香、耶倶矢、夕弦の三人と、左手にパペットを着けた青髪の小柄な少女、際どい服を両手に耶倶矢達を追いかける長髪の女性も居た。

 

「みんな、ただいま」

 

「お邪魔します」

 

「おお。武瑠達ではないか」

 

「ダーリン、ダーリンッ! どうしたんですか、後ろの四人ッ! めちゃんこ可愛いじゃないですかッ!」

 

「その事についてなんだけ「もしかして、私の為に連れてきてくれたんですかッ!」───え?」

 

「ありがとうございますぅ♪ それじゃあ、早速この子からッ!」

 

「え───ッ!?」

 

「「───ッ!?」」

 

 長髪の女性に腕を捕まれ、リビングに引き込まれそうになる響。武瑠と未来が咄嗟に反対側の腕を掴むのだが、

 

「ひ、響ぃぃぃ……ッ!」

 

「意外と力が強い……ッ!」

 

「あだだだだだだッ!!?」

 

「なんですか? あなたも混ざりたいんですか? いいですよぅ。一緒に楽しみましょう。あ、男性の方は今すぐ視界から消えてください」

 

「俺にだけ辛辣ッ!?」

 

「武瑠、お前何した?」

 

「何もしてないし、そもそも初対面何だけどッ!」

 

「すまん。その、美九は所謂百合っ子で……」

 

「とりあえず、はなしででででででッ!?」

 

 その後、何とか脱臼する前に解放された響。

 士道はリビングの中心にある机に皆を集め、武瑠達について詳しく説明した。結果、夕弦と長髪の女性『誘宵 美九』は無事に理解し、十香は話についていけず疑問符を浮かべ、耶倶矢は目を輝かせ、パペット『よしのん』をつけた小柄の少女『四糸乃』は怯えていたりと三者三様の反応を示していた。

 

「納得。あの力は異世界だったのですね」

 

「異世界の仮面ライダーですかぁ。オバケがダーリンと同じヒーローになれるんですね。それにシンフォギア。歌の力なんて、運命感じちゃいますぅ」

 

「歌の力ッ!? 英雄の魂ッ!? もっと詳しく教えてッ!」

 

「いせかい? うむ……難しくて分かりづらいぞ」

 

「ゆ、幽霊、ですか……?」

 

『四糸乃、安心しなよ。士道君と同じ仮面ライダーならいい幽霊だって』

 

「とりあえず、暫くは十香たちと同じマンションで暮らすことになったから宜しくな」

 

「よろしくお願いいたします」

 

「うむ。響達なら大歓迎だぞ」

 

 思ったよりもスムーズに事を運んだ武瑠達。

 改めて、武瑠達は互いに自己紹介を行い、一通り終わると士道が夕飯の準備の為に席を立つが、それを武瑠が止める。

 

「士道、ストップ。食材の提供するって言っただろ?」

 

「え、でも、今から買い物に行くのは───」

 

「行く必要はない。すぐに準備出来るからな」

 

《カイガン! タワラ!

  百足! 宴! 無限の俵!》

 

「へ? 何で変身「いいから見ててくれ」お、おう」

 

「さて、皆の衆。お手数掛けるが、机の上を開けてくれ」

 

「何が始まるのだ?」

 

「大丈夫ですよ、十香さん。今から凄いことが起きますから」

 

 言われるがままに机の上を片付ける響達。片付けが終わったのを確認したゴースト タワラ魂はトリガーを動かし、オメガドライブを放つ。

 

「では、清聴を───

悪虫退治に工夫を凝らし、三上山を従来すれば

汲めども汲めども尽きぬ幸───

お山を七巻き、まだ足りぬ。

お山を鉢巻、なんのその。

どうせ食うならお山を渦巻き、

龍神様の太っ腹、釜を開ければ大漁満席ッ!

さあ、行くぞぅッ!

()()()()───()()()()()()どーんッ! どーんッ!」

 

 すると、あら不思議。机の上に現れる鯛や松茸、ウニに山菜、白米などの食材が溢れんばかりに姿を現すではないか。

 これぞ、俵 藤太のもうひとつの宝具『無限の俵』である。本来は美味しい米のみが半永久的に出てくるものなのだが、龍神から与えられた『山海の珍味がいくらでも湧いてくる鍋』と一つに纏められた結果、今のように米以外の珍味が出せるようになっている。

 

「おおおおッ! 旨そうな魚や山菜が沢山だぞッ!」

 

「これが英雄の力……ッ!」

 

「困惑。仕組みが分かりません」

 

「あらぁ。自然薯まであるじゃないですか」

 

「す、すごい、です」

 

『これは夕食に期待だねぇ』

 

 この日、五河家の食卓はいつもなら絶対に並ばないような御馳走が多数並ぶのだった。

 

「なぁ、武瑠。俵さんをくれ……ッ!」

 

「断るッ!」

 

 

 

 




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