戦士開眼シンフォギアゴースト   作:メンツコアラ

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やあ、諸君。久しぶりだね。皆大好き、魔術師だよ。

ギャラルホルンに導かれ、無事に異世界に到着した武瑠くんたち。
そこで彼らは指輪の魔法使い 仮面ライダーウィザードとなる青年『五河 士道』、強大な力を持った『精霊』と呼ばれる少女たちに出会う。
『ファントム』と呼ばれる異形が蔓延るこの世界で、彼らを待ち受ける異変とは一体何なのか?

武瑠くんが生き返るために必要な眼魂はあと三つ……


刻々! 深夜の誘い!

 それは草木も眠る深夜の時だった。士道はぬくぬくと布団の温もりに包まれながら眠っていたのだが、彼の中にいるファントム『ウィザードラゴン』に叩き起こされる。

 

≪おい。起きろ≫

 

「zzzzz……」

 

≪さっさと起きろ。永遠の眠りに着くのか? ならせめて、ゴミ虫らしく泣き叫び、社会的にも生態的にも惨たらしく死を迎えろ≫

 

「……寝てる人に罵倒はやめないか?」

 

≪さっさと起きないお前が悪い。そんなことよりも外を見ろ≫

 

「外……?」

 

 士道は寝惚け眼を擦りながら窓のカーテンを開けるが、視界に写るのは変わらない街の夜景。だが、何も無いじゃないかと視線を下げてみると家の前を通りすぎる人影を見た。

 

「(今の武瑠と翼さんか? こんな遅くにどうしたんだ?)」

 

≪詮索は後だ。今すぐ奴を追え。あの女の気配がする≫

 

「(あの女って……───まさかッ!?)」

 

≪そのまさかだ。すぐに追いかけろ≫

 

 士道は慌てて着替えると闇夜を歩く武瑠の跡をすぐさま追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 夜の公園と言うのはロマンチックな場所としての姿とホラーな場所としての姿といった二面性を持っている。そんな場所に武瑠は封筒片手に、翼と共に立っていた。

 

「言われた通り来たぞ。居るんだろう?」

 

 闇夜に包まれた空間に向かって喋る武瑠の姿は頭のおかしな人物に見えるのだが、

 

「あらあら。時間通り来るなんて感心しますわね」

 

 その者は暗闇の奥から現れた。赤と黒のドレスに身を包み、左右非対称のツインテール。そして、何よりも目を引くのは彼女の左目。紅の右目とは違い、金色に輝くその瞳は時計盤となっており、今も刻々と時を刻んでいた。

 

「この手紙を送ってきたのは貴様か?」

 

「ええ。私は時崎 狂三。精霊で、ナイトメアと呼ばれていますわ。以後、お見知り置きを」

 

「風鳴 翼。防人だ」

 

「天空寺 武瑠。……で、なんで俺を呼んだ? 態々こんな手紙まで書いて」

 

 そう言って武瑠が見せつけるように掲げられた封筒の中には手紙が一通入っており、内容が

『午前00:30。同封された地図にしめした場所に来なさい。来なかったらお連れ様がどうなるか……分かりますわね?』

 

「君の目的は分からないけど、響たちに手は出させない」

 

「あらあら。怖いですわねぇ。そう警戒されなくてもいいではありませんか。私はただ知りたいだけ」

 

 彼女の顔にうっすらと笑みが浮かび、次の瞬間、彼女の影が辺りを侵食するかのように広がり、影の中から古式な二丁の拳銃を取り出した。

 

「影から銃を……ッ!?」

 

「あらあら。そんな反応をされると辛いですわ。悲しいですわ。悲しすぎて、引き金を引いてしまいそうになりますわ。

 

 ───ねぇ? ()()()()()()

 

「「───ッ?!」」

 

 

『きひひひ』

 

     『きひひひ』

 

  『きひひひ』

 

          『きひひひ』

 

 『きひひひ』 

 

  『きひひひひひひ』

 

 

 武瑠たちを取り囲むように聞こえてくる薄気味悪い笑い声。見れば、暗闇から狂三と姿、顔、声音、雰囲気、その他全てが同じ少女たち……いや。狂三たちが現れた。

 

「さあ。二対八になりましたわよ?」

 

「この状況でも闘いを拒否しますの?」

 

「あらあら。異世界の方々は随分と臆病ですのね」

 

「困りましたわねぇ。こちらも頼まれた身ですのに」

 

「なら、無理矢理にでも───」

 

 六人いる狂三の内にの一人が武瑠たちに向かって引き金を引き、それを経験で培った判断力と瞬発力で回避する武瑠と翼は致し方なしとそれぞれの変身アイテムを取り出した。

 

「やりますよ、翼さんッ!」

 

「引き金を引かれたのだ。黙って帰るわけにもいかんッ!」

 

「───変身ッ!」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron……♪」

 

 

 

 

~BGM『月皇ノ剣』~

 

「それが異世界の力ですか。霊力とも魔力とも違うなんて、本当に不思議ですわね」

 

「でも、ようやく戦う気になってくれましたわ」

 

「なら盛大に歓迎しないといけませんわね、わたくしたち」

 

 狂三たちVS武瑠&翼の闘いが始まる。一見、数と遠距離攻撃に長けた狂三が有利に見えるこの闘い。彼女たちはその特性を生かし、四方八方から弾丸を射ち続ける。

 だが、ゴーストや翼も負けてはいない。二人は互いの死角を補うように背中を合わせ、次々と放たれる弾丸を切り落としていく。

 

「あらあら。こうも簡単に防がれるなんて」

 

「残念だが、我々は貴様よりも腕の立つ狙撃主を知っているのでな」

 

「クリスやビリー、ノッブに比べたらお前の弾丸は可愛いものだよ」

 

「なら、手を変えてみましょう?

 

 

───<刻々帝(ザフキエルゥゥゥ)>ッ!!!!

 

 

 声高らかに叫ぶ狂三の声に応え、彼女よりも大きな時計盤が姿を現す。あれこそが彼女の……精霊の力である『天使』と呼ばれるものだと理解するのは容易かった。

 

「これが私の天使<刻々帝(ザフキエル)>。さあ、第二ラウンドの始まりですわよ?

 

刻々帝(ザフキエル)>───【一の弾(アレフ)

 

 時計盤の「Ⅰ」の文字から影が狂三の持つ短銃に吸い込まれ、彼女はあろうことか短銃を自分のこめかみに押し付け、躊躇い無く引き金を引いたのだ。鳴り響く銃声と衝撃で揺れる狂三の頭。その光景にゴーストと翼は驚かずにはいられなかったが、次の瞬間、頭を撃ち抜いた狂三の姿が消え、翼の体が横に跳んだ。

 

「が───ッ!?」

 

「翼さ「あら? よそ見をしていいんですの?」───ッ!?」

 

 背後からの声にガンガンセイバーを振り抜くゴーストだが、そこに狂三の姿は無く、刃が届かぬ場所に彼女は立っていた。

 

(今確かに狂三の気配が背後にあった筈だッ! まさか、瞬間移動? いや。士道から聞いた話だとあいつの能力は『時間』。つまり───)

「自分を()()()()()のか?」

 

「あら。意外と察しがよろしいですわね。あなたの言う通り、【一の弾】は撃ち抜いた対象を加速させる。結構重宝しますの」

 

「なるほどな。でも、教えて良いのか? 手の内が分かれば対策はいくらでも「あら? まさかとは思いますが、私の能力がこれだけだと思っていますの?」」

 

「心外ですわ。嘲笑してしまいますわ。私もずいぶんと嘗められたものですわね。

<刻々帝>───【七の弾(ザイン)】」

 

 時計盤の『Ⅶ』から影の弾丸が込められ、短銃の銃口が地面に転がる翼に向けられる。

 

「翼さんッ!」

 

 咄嗟に二人の間に割り込み、自ら盾になるゴースト。銃弾が当たっても衝撃だけと判断しての行動だが、弾が命中した瞬間、()()()()()()()()()

 【七の弾】。それは大量の霊力を消費する代わりに対象を停止させる能力を持つ弾丸。認識することも出来ず、身動きも一切取れない中、狂三たちは容赦なく引き金を引く。何発も命中する弾丸。貫通することは無いが、彼女の使う銃が只の銃の訳無く、しかも時間が止まっているためにその衝撃は蓄積され、時が動き出した瞬間、まるでトラックに四方から衝突したような衝撃が武瑠を襲った。

 

「ぐ…あぁ……ッ」

 

 膝を着くゴースト。肋にヒビが入ったのか、鈍い痛みが彼を襲う。

 

「呆気ないですわねぇ。もっと楽しませてくれると思ったのですが」

 

 倒れ伏す翼、膝を着くゴーストに狂三はつまらないと言いたげな表情だが、何かを思い付いたのか、その顔に笑みを浮かべた。

 

「では、こうしましょう。あなた方が私に勝てなかった場合、お連れ様を頂きますわ」

 

「どういう、意味だ……ッ」

 

「言葉通りの意味ですわ。ああぁ……異世界の方々はどんなお味がするのでしょう? 酸いのでしょうか? 甘いのでしょうか? 楽しみですわねぇ」

 

 彼女が浮かべる狂気的な笑みは見た者を恐怖に陥れ、同時に彼女が名前の通り『狂って』いる事を証明していた。だが、それでもゴーストと翼は立ち上がる。

 

「させると思うか?」

 

「もう立ち上がっても宜しいのですか? 割と強く蹴り飛ばしましたのに」

 

「私たちは戦士だ。この程度のこと、どうという事はない。貴様は私たちが止める」

 

「あらあら。格好いいですわね」

 

「ですけど、たった二人で何が出来ますの?」

 

「二人ではない。《六人》だ」

 

「───翼さんッ!」

 

 ゴーストは翼に闘魂ブースト眼魂を投げ渡し、翼はそれを使って夢幻召喚を行う。

 姿を変える翼のシンフォギア。インナーや各所の装甲が紅蓮の焔を思わせる黒と紅に染まり、その手にはサングラスラッシャーを思わせる刀を握っていた。そのギアこそ、かつて切歌が纏った物と同様のギア『ゴーストギア 闘魂ブースト』である。

 

「頼光さんッ!」

 

 一方の武瑠が取り出したのは藍色の眼魂。ゴーストチェンジを行い、彼は鎧武者を思わせるパーカーをその身に纏い、装着されたマスクには鬼を全て殺すと言わんばかりに鬼の首とその上で交差する日本の刀が描かれていた。

 

《カイガン! ライコウ!

  殺すは神秘! 童子切!》

 

 平安最強の神秘殺し 源 頼光の魂を纏った『仮面ライダーゴースト 頼光魂』となったゴーストはすぐさまベルトのトリガーを引き、押し込む。

 

《ライコウ! オメガドライブ!》

 

 

「来たれ四天王……いいや、牛頭天王の神使たち。

我が記憶、思いを形とりて

───参ります。

牛王招来(ごおうしょうらい)天網恢々(てんもうかいかい)ッ!!」

 

 ゴーストの雄叫びに答え、天から稲妻が走り、落雷と共に現れたのは其々がガンガンセイバーをブレード、ナギナタ、アロー、ハンマーに変形させて構える四人のゴースト。

 ゴーストたちは翼と並び、サングラスラッシャーを持ったゴーストが翼と共に刃を狂三に向ける。

 

「「さあ、仕切り直しと行こうかッ!」」

 

 

 

 




すいません。
投稿遅くなってしまいました。
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