戦士開眼シンフォギアゴースト   作:メンツコアラ

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心臓! 学士の目的!

 気がつけば、武瑠はそこにいた。

 

「ここ、は……?」

 

 ただ真っ暗な空間。あるのは浮遊感だけ。

 何故、ここにいるのか。何時からいたのか。何もかもが分からないまま、武瑠はそこに浮いていた。

 そんな暗闇の中で、武瑠は視界の端に光を感じた。見れば、暗闇の中で一筋の光あり。更にその光の中に人影を見つけた。

 

「あれは……アルトリアさん?」

 

 星のように煌めく髪。大空のように蒼いドレスアーマー。顔は影に隠れて分からないがその立ち姿は間違いなく彼の知るアルトリア・ペンドラゴンだった。

 武瑠はふと気づく。光が……アルトリアがゆっくりと。しかし、確実に自分から遠ざかっていく。

 

「待って下さいッ! アルトリアさんッ!」

 

 武瑠は闇の中でもがき、必死になってアルトリアに手を伸ばす。すると、彼の耳に女の声が聞こえた。

 

 ───止めておけ。

 

「あれはッ……あれはアルトリアさんだッ……! 彼女に何があったか、俺は知りたいんだッ……!」

 

 ───だから、止めておけと言っている。

 

「……~ッ、誰だッ!? さっきから───」

 

 後ろを振り返り、武瑠は絶句した。言葉も出ないとはこの事だろう。

 

 

「───私が誰か、か。そんな事、見れば分かるだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………る…………けるッ………武瑠ッ!」

 

「んん…………」

 

 自分を呼ぶ声に目を覚ます。見れば、響が心配そうに武瑠の顔を覗き込んでいた。視線を横に移せば、ベッドに腰かける未来。逆の方に移せば、未来と同じように座っているクリスと彼女の側には翼の姿もあった。

 

「目を覚ましたみたいだな」

 

「寝坊だぞ、武瑠。まあ、あたしらも今起きたところだけど」

 

「みんな……ここは……?」

 

「フラクシナスの医療室だ。あの戦闘から二時間は経過している」

 

「二時間も……士道は無事なのか?」

 

「うん、皆無事。だけど、俵さんとマリーさんが……」

 

「───そうか……」

 

 何となくだが予想はついていた。あれほどの宝具を受け、たった二時間の気絶で済む筈がない。恐らく、俵とマリーが自身と引き換えに武瑠たちを守ったのだろう。

 

「あれからどうなったんだ?」

 

「それは「それは私が説明しよう」」

 

 響の言葉を遮り、聞き覚えのある声が聞こえる。見れば、いつの間にか扉が開いており、そこに居るはずのない魔術師と紅の装いを纏った短髪の男性が立っていた。

 

「おっちゃんッ!? なんで───」

 

「私もこの世界に用事があってね。

 それよりも君があの聖剣の一撃を防いだ後の顛末を知りたいのだろう?」

 

「それはそうだけど」

 

「無論、その用事も説明するさ」

 

 男と共に部屋に入った魔術師は備え付けの椅子に腰掛け、あの戦闘の後に何が起こったのか、語り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界が黒く塗り潰される。

 その魔力こそ原始の呪力。

 黒き聖剣の一撃で炎は吹き消され、先程まで燃え盛っていた施設は消え、辺りには視界を覆い尽くす程の土煙が舞い上がっていた。

 

「素晴らしいッ! 流石は名高き聖剣ッ! 侵食されたとはいえ、その一撃は私の計算を遥かに越えるッ! 流石の天空寺 武瑠も終わったに───おや?」

 

 土煙の奥……アルトリアが聖剣を振り下ろした方向に目映く輝くものがあった。

 土煙が晴れるに連れ、その光源が露になる。

 

 それは黄金に輝く一振りの大剣だった。その剣を持つのはボロボロになったゴーストと今にも崩壊しそうな水晶の城。

 

「なるほど。完全聖遺物 デュランダルか。確かにそれなら聖剣の一撃を防ぐ盾になりうる。だが、それも計算内です。それに盾が耐えれても使()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ────ピシッ

 

 

 

『ここまでか……』

 

『ごめんなさい……みんな』

 

 

 水晶の城が砕け、同時にタワラ眼魂、マリー眼魂も砕け、パーカーゴーストと共に光の粒子となって消滅する。変身が解除され、元の姿に戻った武瑠と未来は糸が切れた操り人形のように倒れた。

 クリスは何とか膝を着くだけに留まったが、それでもその疲労は半端なものではない。

 

「み、未来ッ!?」

 

「雪音ッ! 大丈夫かッ!?」

 

「武瑠、しっかりしろッ!」

 

 各々が武瑠たちに駆け寄るが、その時間はキャスターたちが与える最後の慈悲と言っても過言ではなく、本来なら駆け寄る隙さえ与えられないだろう。

 

「さて……最後の別れは済みましたか?」

 

 キャスターの言葉にウィザードが前に出て、皆を守ろうとする。だが、力の差は歴然。彼一人では足止めにすらならないだろう。それでも武瑠たちを置いて逃げるなど、彼自身の心が許さなかった。

 

「(───で、前に出たもののどうする……? 俺の魔法じゃ、あのセイバーとかいう奴の一撃を止められないッ……!)」

 

≪だから逃げろと言ったのだッ! このウスノロがッ!≫

 

 

 

 

「来ないのか? なら、こちらから行かせて貰おうッ!」

 

 アルトリアが剣を振り下ろし、その斬擊は飛び道具となってウィザードの命を刈り取るために迫る。

 まさか、斬擊を飛ばしてくるとは思わず、防御が遅れるウィザード。咄嗟にウィザーソードガンで受け流すが、その隙をつかれ、アルトリアの接近を許してしまう。

 

 振り下ろされる刃。頭の中を横切るのは今までの記憶。

 動けぬまま、ウィザードの首が聖剣によって刈り取られる───その直前だった。

 

「────ッ!」

 

 咄嗟に刃を戻して後退するアルトリア。そんな彼女が先程まで立っていた場所に二本の剣が突き刺さった。

 

「…………え? これって───」

 

 ウィザードが突然飛んできた二本の白黒の剣に戸惑うなか、カツン……カツン……とコンクリートを踏みしめる音が彼の耳に入る。

 振り返ると、そこにはマントを羽織った肌黒の男がこちらにゆっくりと近づいていた。

 

(だ、誰だ……?)

 

≪(この気配……あの化け物と同じか)≫

 

 

「……貴方、サーヴァントですね。何者ですか?」

 

「───なに。通りすがりの英霊モドキさッ!」

 

 そう言った男の手に先程まで握られてなかった筈の白黒の剣が四本現れ、男はそれらをアルトリアに投げつける。

 猪口才な、とアルトリアは容易くそれらを弾き返すが、その僅かな時間をついて男は叫ぶ。

 

「───キャスターッ!」

 

「───まっかせなさいッ!!」

 

 次の瞬間、武瑠たちの体は男と共に無数の花弁に呑み込まれ、十秒も経たない内にその姿はその場から消えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───と、こうして逃げ切ることが出来た我々はこのフラクシナスに拾ってもらったというわけだ」

 

「そう、だったのか……あの、助けてくれてありがとうございます」

 

「礼を言われる筋合いはない。目を覚ましたのなら早く来い。お前を待っている者達がいる」

 

 

 

 数分後。武瑠たちは魔術師と男と共にフラクシナスの司令室に向かった。

 部屋に入ると、そこには既にクルーを始め、士道や十香たちもいた。

 

「武瑠ッ! 目を覚ましたんだな」

 

「悪い。心配かけた」

 

「いや。お前が無事だったんだ。……俵さんたちは、残念だったな」

 

「…………あぁ」

 

「ちょっとそこ。BL案件は他所でやってくれない?」

 

「「何故そうなるッ!?」」

 

「それよりも状況の確認をしましょう。まず、貴方たちが『学士のキャスター』と呼んでいるあの男。アイツは貴方たちの世界からやって来た。それは間違いないのね?」

 

「……はい。そうとしか考えられません」

 

「じゃあ、なんでこの世界に来たか分かる?」

 

「それは私が説明しよう、小さき司令官。私は魔術師。そして、彼はアーチャー。以後、お見知り置きを」

 

「ええ。こちらこそ宜しくね、胡散臭い叔父様」

 

「話を戻そう。あの男が何故この世界に来たのか。その理由はこれだ」

 

 魔術師は懐からあるものを取り出す。

 それは武瑠たちが展示会で見たあの寄せ木細工の箱だった。

 

「実はこれ、私がこっちの世界に捨てたものなんだよね」

 

『………………は?』

 

「いやぁ。今の君たちの気持ち、スッゴい分かるよ? だから、殺意増々の視線を向けるのは止めてくれたまえ」

 

「……なんで私たちの世界に捨てたの?」

 

「それはこれにあるものを封じたからさ。この世界に『白い巨人』に関する情報は無いかな?」

 

「───中津川」

 

「ちょっと待ってくださいね……と。ありました。『セファールの白い巨人』。アルジェリアのタッシリ・ナジェールの壁画に書かれた謎の巨人で、一説では宇宙人だ、とか」

 

「そう。その白い巨人だ」

 

「その巨人がその箱と何か関係があるの?」

 

「大いにあるとも。何せ、この箱には

 

 ───その巨人の心臓(コア)が入っている」

 

『────ッ!?』

 

 魔術師の答えにあるものは言葉を失い、あるものは目を見開き、あるものは困惑する。それほどまでに彼の言葉は突拍子の無いものだった。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれッ! 巨人の心臓って本当の話なのかッ!?」

 

「もちろん。正確には完全聖遺物『セファール』の心臓だ。私たちの世界で八年前、地中深くに眠る『セファール』と心臓を見つけた私はセファールが再び星を蹂躙するのを防ぐため、心臓を厳重に保管。そして、あの男に見つからないようにこっちの世界に捨てたのさ。

 だけど、まさか見つけられるとは思ってなかったけどね」

 

「……なんでこの世界なの? 他にも捨てる場所はあったでしょう?」

 

「この世界に捨てたのは偶然さ。私だって悪意があってこの世界に捨てたわけではない。そこは了承して欲しい」

 

「危険物を無断放棄させられて、ハイそうですねって言えると思う?」

 

「私的にはそう言って欲しいけどね。それに私だって悪いと思って、こうやって取りに来たんだ。恐らく、武瑠くんたちやアーチャーがこの世界に呼ばれたのもこれが理由だろう」

 

「なら、この世界から早く出ていって頂戴。そして、二度とこの世界に来るな」

 

 魔術師と琴理の間に険悪なムードが流れる。

 今にも琴理が殴りかかりそうな雰囲気に士道はどうにかしようとするが、彼女にかけるべき言葉が見つからずにいる。

 

 そんな時だった。突如、コンドルデンワーがけたましくベルを鳴らして姿を現す。武瑠は皆に断りを入れ、受話器を取った。

 

「も、もしもし?」

 

『ごきげんよう、天空寺 武瑠』

 

「が、学士ッ!?」

 

「「「───ッ!?」」」

 

「探知ッ! 急いでッ!」

 

「ダメですッ! 何らかの手段で妨害されている模様ッ!」

 

『念のために言っておきますが、これは一方的なメッセージ。貴殿方の質問に答えることは出来ません。

 なので、率直に言いましょう。貴殿方が持っているであろうブリテンのパンドラを渡しなさい。さもなくば、この街を破壊する』

 

「街を破壊ッ!?」

 

「「「───ッ!?」」」

 

『期限は明日の正午。場所は町外れの寂れた遊園地。待っていますよ』

 

 そう言って、学士のキャスターの一方的な通話は終わった。

 

 

 

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