『おめでとうございますッ!』
武瑠「新しい年が参りました。これからも俺たちは頑張っていきます。何卒、応援よろしくお願いします」
武瑠とマリアが結婚した。
武瑠が大学を卒業してすぐの出来事だった。
英霊たちやS.O.N.G.の職員たち、響、切歌たちは大いに祝い、亡くなった翼はユルセンと共に天でその光景を見守る。マムに至っては『生きている間にマリアの晴れ姿を見れて良かった』と涙を流している。だが、全員祝いの言葉を投げ掛けている訳ではない。
公務員の調やセレナは想い人と大切な家族が一つになったことに内心は複雑で、その笑顔は何処か引きっているようにも見える。
パート生活に明け暮れているアナスタシア、クリスは自分達の想い人の結婚パーティーなど行きたくないと渋り、今や大企業の社長となった未来は幼馴染みの祝福すべき日だと言うのに、心から祝えないでいる自分に疑問を隠せないでいた。
そんな華やかな式が行われているのは、武瑠が無事に生き返って数年たった、とある披露宴会場。
───何て言うのは冗談である。
時は1月1日。無事に行事を終え、皆が新年パーティーを行っている、和室に改造されたシミュレーションルーム。
「ちょっと武瑠ッ! なんてマスに止まっているのよッ!」
「いやッ! 俺、普通にやってるだけですからねッ!?」
『……………』
まあ、察しのいい諸君ならこんな事であることは容易に予測できただろう。
晴れ着に身を包んだ武瑠たちライダー組三人、装者6人、そして、アナスタシア。
武瑠とマリアは赤面し、クリス、アナスタシアは静かに怒りのオーラを放ち、調やセレナは表情こそ変わっていないものの、逆にそれが恐怖を覚え、未来は武瑠を静かに睨んでいる。それに対し、響、切歌は純粋にゲームを楽しみ、そんな二人が翼の癒しになっていた。
事の始まりはパーティーの最中だ。
大人たちは酒盛りを始め、未成年である武瑠たちは少し暇を玩んでいた所に切歌が双六をやりたいといい、一つの双六を持ってきた。
『ハッピーライフゲーム』。カードをマスに見立て、捲ったカードに書かれたイベントをこなしていくという至って普通の双六。とある大企業の娘が独自に出したというゲームなのだが、ネットではクソゲーレベルが高いと噂があった。
無論、そんな事を武瑠たちが知るはずもなく、何も考えずに始め、最初にサイコロを振った翼がいきなり事故死イベントで退場するという。
『あれ? もしかして、これ───』と一部の者が気づいた時には既に遅し。切歌、響と続けていき、止めるに止められない状況へ。
武瑠、響、切歌は可もなく不可もなく、順調にマスを進めていき、未来、セレナ、調はラッキーマスを多く当て、マリアは職業カード[トップアーティスト]を引き当て、今やマリアと未来のトップ争い。クリスとアナスタシアは残念ながらアンラッキーマスに止まってしまい、今では借金を抱えるほどに。
そして、ゲーム中盤、それは起こった。
「結婚マス…?」
『───ッ!?』
「どうやら、一番近いプレイヤーと強制結婚するようだ。結婚したプレイヤーたちはマスの効果を共有するらしい」
「えっと、一番近い人……あ」
「……え? 私?」
『───ッ!!?』
……とまあ、これが出だしに繋がると言うことだ。
時間も無いので、ここからはダイジェストで御送りしよう。
──十三巡目。
「出産マスだな。マリアも一児の母と言うことになるな」
『…………』
「ね、ねぇ…皆、怖いわよ…! そんなに睨まないで…!」
──十五巡目
「アンラッキーマスだな。借金が返せず、さらに利子が嵩む。一千万失う」
「ガッテムッ!!!」
「あ、クリスちゃんも同じマスに」
「畜生がああああッ!!!」
──十七巡目
「トラブルマスだな。夜にハッスルしすぎてベッドが破損。夫婦共に五千円失うとある。マリア。この夜にハッスルとはどういう意味だ?」
「私に聞かないでッ!」
「なら、たけ「翼さんは知らなくて良いことですッ!」そ、そうか…」
──二十一巡目
「起こした企業が大成功。一千万獲得」
「株投資に成功。二百万獲得」
「取引先にセクハラされ、裁判沙汰になり、勝つことに成功。賠償金七百万獲得」
「おおッ! 調もセレナもお金持ちデスッ!」
「スゴいよ、未来もトップだよッ!」
「「「なんでだろう。全く喜べない」」」
そして迎えた、二十八巡目。
現在のトップは未来。所持金三千億。一方のワーストはクリス、所持金-四百万。ちなみにアナスタシアは三九五万である。
「じゃ、じゃあ、回すよ」
トップを走る未来。出たマスは3。止まったのは…
「結婚イベント…一番近い人は…──あれ?」
「あり?」「ん?」
未来の一番近くに居たのは武瑠の駒。つまり、武瑠と未来の結婚になるのだが、武瑠は既婚者。マリアという妻もいれば、四人の子供もいる。
「えっと…翼さん。この場合はどうすれば?」
「サイコロを振って、偶数ならマリアと離婚して未来と結婚だな」
「だれがサイコロを?」
「お前だ」
翼の言葉に、皆の視線が武瑠に集まる。針の筵とはこの事か、そんな事を思いながらもサイコロを振る。出た目は、四。即ち、
「見損なったわよ、武瑠ッ! 子供たちを置いて、他の女のところなんてッ!」
「武瑠。さすがにないんじゃないかな?」
『さ い て い』
「やめてッ! 俺はただやっているだけでッ!」
『ヤっているッ!?』
「ああもうッ! このゲーム、もう二度とするかッ!」
十分後。ゲームは未来の優勝で終了。だが、その精神的な疲れから、武瑠たちはその双六を永久封印することを選んだのだった。
───余談。
「石上くんッ! クレームがな゛り゛や゛み゛ま゛せ゛ん゛んッ!」
「そりゃあそうでしょう。なんで人のアドバイスを聞かずに出すかな」
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