ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター) 作:アルテール
よぉぉぅぅううううううやぁぁぁあああああくっ!!!次話から異世界召喚編へと迎えるのですが今回はとっても文章が長くそして駄目文&ゲシュタルト崩壊している可能性があります。
深夜テンションで書いたからね、仕方ないね。
そんなわけで『なんでこいつこんな時にこんなこと言ってんの?』『言ってることおかしくね?』等という疑問はあまり気にしないでください、ご都合主義です。というか今回の話は見なくても別に物語に支障をきたしません。それでも別にいいよという器が東京ドーム並に大きい方はこんな駄目文をこれからもよろしくお願いします(´・ω・`)
私は中学を卒業した時、ひとつの高校に入学することができた。別にその高校に特別な思い入れがないというわけではないけど、そこには私の好きな人が通っているのだ。
その好きな人の名前は『神代日色』
これを機会に私はもっと彼のことを知って、いつか彼を振り向かせたいなと思いこの高校に入ったのだ。……と、いうか絶対に振り向かせてみせる。
だから幼馴染な雫ちゃんも一緒にその高校に入学するなんて思いもしなかった。まぁ、光輝君もわざわざこの高校に入学してきたのはどうしてかわからなかったけど。
クラス発表がされた時、私は真っ先に自分のクラスに日色君が居ないか探してみたけど残念ながら書かれておらず代わりに雫ちゃんのクラスに書かれていた。雫ちゃん、今すぐそこを変わってくれないかな?なんて言いたいけどもそんなことを言っても変われるわけがない。しかも同じクラスには光輝君がいて頻繁に私に話しかけてくる。
うん、そうだね。と返しながら周りを見てみるといつも見ていたポニーテールが目に映った。
あ、雫ちゃんだ!と思い、声をかけようとして雫ちゃんが笑顔を向けている者へと目を向けて――思考が停止した。
艶のある黒髪に刃のような鋭い目つき、黒い眼鏡をかけ大変顔つきが整っている少年、私が好きな日色君だったからだ。
雫ちゃんの表情はいつものような苦労しているような疲れている表情などではなくまるで恋する乙女のようにどこにでもいるような普通の女の子の表情で微笑んでいた。
どうして?だって雫ちゃんは好きな人が――
――
再び高速で回転する思考を頼りに今までの思い出を思い出していく。
・雫ちゃんは小学生の頃、好きな人が出来ていた。
・その人は親の事情で引越しして雫ちゃんとはしばらく会えなくなってしまっていた。
・雫ちゃんはそれを気に女の子らしくなりたいと私に相談してきた。
・その人は剣道で全国に行くほど上手だった。
どうして女の子らしくなりたいと思ったの?――もしかしたらその人が鈍い人だったからではないか?
どうしてあんなに恋する乙女のように微笑んでいるの?――もしかしたらその好きな人が雫ちゃんのことをちゃんと分かってくれたからじゃないか?
思考が回って回って、ある記憶を思い出す。
かつて小学生の時、お父さんの真似をして新聞を読んだときに書かれていた剣道の記事のこと。
その題名は『神代日色、三度目の全国大会優勝』
繋がった、繋がってしまった。
彼女が好きだった人は、彼女が愛した人は――『神代日色』だったのだ。
――だけど、
私の胸に熱い『何か』が生まれる。
――だけど!
そう、だけど。例え親友の想いビトだとしても、私は、私は――
――日色君は渡さない!!!
彼のことが好きなのだから。
◆
私が決意を固めてから、三日後、本屋で本を探していました。えっと日色君はよくラノベというジャンルの本を読んでいると言っていたからなぁ、これを機に何かの本を買おうかなと思っているんだけど……
「……うーん」
――どうしよう、どれを買ったらいいか全くわからない。
そう、大量の本棚の中でどれを読んだら日色君に近づけるのかわからないのだ。
ムーと、しばらく考えていると隣で私と同じ制服を着た少女が本棚にホイっと手を伸ばし、幾つかの本を取っていく。
ここで私にピコンッ!と名案が思い浮かんだ、そうだ、この人に聞いてみればいいじゃないかと。
それはどっかの馬鹿も同じ考えで行動したということを香織は知らない。
「あ、あの、すみません」
「ひゃ!?は、はい!な、なんですか?」
試しに私は少女に声をかけると少女はビクンッと驚き、此方を向く。
どこにでもいるような
「え!?白崎さん!?どうしてここに?」
「え?私のこと知ってるの?」
「知ってるも何も同じクラスメイトですよ!」
え?こんな子なんていたっけ?……あ、そういえばこの子の名前は確か――
「えっと、
「は、はい。そうです、南雲です」
ペコッと頭を下げる南雲ちゃん、その表情は白崎さんのような女神に知ってもらって嬉しいですとでもいうような微笑みなのだが――
(………っ、気のせい……かな?)
どうしてか、私には一瞬彼女の瞳が昏く濁っている様に見えた。
慌てて私は目を擦り、改めて彼女を見つめるとその瞳の濁りは消えており、不思議そうな顔をした彼女だけだった。
「あの……どうしました?」
「え?う、ううん、なんでもないよ。えっと、お願いがあるんだけどラノベ小説のオススメってないかな?」
私はさっきの違和感を気のせいだと思い、記憶の片隅に放り込み私は彼女へと声を掛けると南雲ちゃんは「え!?白崎さんもラノベ小説読むの!!?」と驚いていたんだけどどうしたのだろう?
「は、はぁ。白崎さんがラノベをですか……」
「え、えっと、迷惑……だったかな……?」
「だ、大丈夫です!ちょっと、意外だっただけで……」
やっぱり迷惑だったかな?と思ったけど南雲ちゃんはハハハ、と曖昧に笑って大丈夫ですと言ってくれた。
南雲ちゃんはうーんと少し悩んだ後、そうだと手の平をポンッと叩いて、「着いて来てください」と本屋を案内し始めた。私は慌てて「う、うん、ありがとう」と言葉を呟き彼女の後ろを追いかける。
これが私と南雲ちゃんの初めての出会いだった。
◆
それ以来、私は南雲ちゃんと交流を持つようになった。
基本的には同じクラスなのでアニメや小説の話をしているのだけど、最近は光輝君が入ってきて南雲ちゃんに何故か説教をしてくるから楽しく会話することができないの。
本当に光輝君はどうして関わってくるんだろう?そのせいで最近は憂鬱な時が多いなぁ。
あ、でもいいこともあったんだよ?ある日、雫ちゃんが日色君を連れて(引きずって?)行くときに光輝君達が一緒に食事を誘っていたの。やっぱり雫ちゃん日色君のことが……って絶望したんだけど、雫ちゃんと光輝君が話している間にこっそりその場から離れている日色君がいました。慌てて追いかけてみると鍵を掛けられている筈の屋上に入ろうとしている日色君の姿だった。
「え、えっと日色君?な、何しているの?」
慌てて声をかけてみると日色君はまるで見られたくない奴に見られたとでも言うようにこちらを振り向くと顔を歪めた。
「……何の用だ、白崎」
「え、えっと、雫ちゃんと一緒にご飯食べようと思ったら日色君を見つけたから……」
冷たい彼の声色に慌てて言い返すと彼は面倒くさいとでも言うようにハァと溜息を吐き、私を微かに見て――
「ポニ……八重樫なら天之河達と一緒に食堂で食べているはずだ、じゃあな……」
――というと共に再び屋上へと再び足を踏み出そうとする日色君。というか雫ちゃんをポニー呼び!?
「ま、待って。どうして日色君は屋上に行っているの?」
その場の勢いでつい彼の手を掴んでしまったけどなんとか彼を止めることには成功した。
が、香織は慌てて自分が彼の手を掴んでしまったことを認識してしまい、次の瞬間、香織の顔は恥ずかしさで真っ赤に染め上がった。
(あ、あわわわわわわわわわっ!つ、つい勢いで掴んじゃったよう……ッ!)
そんな香織の思考がオーバーヒートしている時、日色君は踏み出そうとした足を止め、静かに呟く。
「人が居ないからだ、静かな所が好きだからな」
私はその言葉を訊いたけど、彼の手を掴んでいることに頭がいっぱいでまともに理解することができなくて、つい口を開いたとき射出された言葉は全くの場違いで可笑しな言葉だった。
「じゃ、じゃあ。い、一緒にご飯を食べていいかな?」
私のバカァ!どうしてこんな時にそんな言葉が出るの!?こんな時にそんな言葉が出てくる自分に私はバカバカと罵る。
うぅ~日色君に嫌われちゃったかなぁ。
暫く何も言わない彼に嫌われてしまったのではないかと考えたけど次の瞬間、
数瞬の静寂をハァという溜息が破った。
「ハァ、わかった。いいぞ、一緒に食べても」
「ほ、本当!?」
あまりの嬉しさに自然と頬が緩み、喜んでしまう。
「ただし、この屋上の事は誰にも言うなよ。面倒くさくなる」
「う、うん!」
ハァと溜息を吐きながら屋上へと足を踏み出す日色君のあとを追うように私は片手に持っているお弁当を落とさないように追いかける。
その後の彼と食べた昼食はあまりの恥ずかしさと緊張で味がわからなかった。
◆
そんな出来事を思い出すだけで自分の顔がにやけてしまうのを感じた。
えへへへ、また一緒に昼食を食べたいなぁ。
週に三回程、日色君とは昼食を食べているんだけど決して二人っきりというわけではなく雫ちゃんを含めた三人で食べているからなぁ、たまには二人だけで食べたいよう。
日色君は時々、昼食を誘おうとする前に姿を消したり逃走したりするけど一体どこに行っているんだろう?
そんなことを考えていると昼食の終わり程クラスメイトからこんな声が聞こえてきた。
――ねぇ、ねぇ知ってる?今日の放課後神代君と天之河君が剣道の試合するんだって
――うん、知ってるよ。クールな神代君と正義感の天之河君による夢の対決よね。
――どっちもカッコイイなぁ!
「ねぇ、ちょっと詳しく教えてくれないかな?」
私はつい話している少女たちに詳しく聞いてみるとわかったのは――
曰く、光輝君が日色君に剣道の試合を誘った。
曰く、避けられない男の戦いである。
曰く、一人の女の子を巡る戦いである。
うん、最後の一つを詳しく聞かせてくれないかな?(ニッコリ)
そう思ったけど、少女たちにはこれぐらいしか知らなかったらしく確かめるには放課後体育館に行くしかなかった。
うん、決めた。今日の放課後剣道の試合を見に行こう。…………決してその女の子が気になるわけじゃないよ?ホントダヨ?
◆
場所は一転して体育館。
どうやら日色君と光輝君の試合の話はかなり広まっているらしく、体育館に着くとそこにはかなりの人数が集まっていた。私は必死に人混みをかき分けて進んでいくと、観戦場所とでもいう場所の最前線に視界に見知った親友がいた。
「あれ?雫ちゃん?」
「え?香織?どうしてここにいるのよ」
引き締まった身体にリンッと思わせる雰囲気を持ち、長い髪をポニーテールにした私の親友、八重樫雫ちゃんが此方を首を少し傾け、疑問を浮かべていた。
「えっと、日色君と光輝君がここで剣道の試合をすると聞いて……」
私は曖昧な目的を伝えて、本命の目的を伏せて話した。すると雫ちゃんはあぁ、なるほどとでもいう風に頷いて――
「あぁ、彼らが一人の女の子を巡って試合をしようとしているなんて聞いたから確かめに来たのね?」
「ソ、ソソソソソ、ソンナコトナイヨ?」
アー、シズクチャンハイッタイナニヲイッテイルンダロウ?ワタシニハワカラナイナァ?
いとも簡単に暴かれた私の本命の目的に動揺してしまう。雫ちゃん、恐ろしい子……
「図星ってことね。香織、アンタの嘘はわかりやすいのよ」
「はい、その通りです……」
やれやれと頭を振りながら額に手を当てた雫ちゃんに(´・ω・`)ショボーンと落ち込む私。
「安心しなさい、あんなのただのデマよ」
「ほ、本当!?」
私は雫ちゃんの言葉に咄嗟に彼女の肩を掴み、ガクンガクンと揺さぶってしまう。
よかった!日色君は決して恋人なんていなかったんだ!
「ちょ!香織、少し落ち着きなさい!」
「あ、ご、ごめん」
未だに揺さぶり続ける私を目を回しながら必死になだめる雫ちゃんによりなんとか感動の衝動を抑え、スーハーと一度深呼吸を行う。
うん、落ち着いた。
「じゃあどうして日色君達は剣道の試合を?」
「あー、それは――」
えっと、簡潔に話すと光輝君が日色君に剣道を誘い、日色君が剣道道具を持っていないというわけでそれを拒否――しようとしたけど雫ちゃんが竹刀を貸したことで試合することになったという。
「……えっと、それって雫ちゃんが原因ってこと?」
「…………否定できないわね(さっ)」
ジー、と雫ちゃんを見つめると彼女はシラーと目を逸らす。つまりこの出来事の元凶は雫ちゃんらしい。
「仕方ないじゃない、久しぶりに見たかったのよ日色の剣道を」
「そういえば、雫ちゃんって日色君が剣道をやってた事知ってたんだね」
「あれ、知らなかったの?彼はうちの道場に通ってたのよ?」
「え!?そうなの!?」
「えぇ、だから私は日色の幼馴染というわけよ」
ふふーん、と鼻を鳴らしながら胸を張る雫ちゃん、というか胸を地味に強調しないで!私の方が……おっきいんだもん!!
「ふんっ!日色君に昼食を誘えなかった雫ちゃんとは違って、私は二人っきりで昼食を食べているんだからいいもん!!」
「な、なんですって!!」
ぐぬぬぬぬ、と私と雫ちゃんは睨み合いながら、しばらくお互いに威嚇していると何やら馬鹿らしくなりお互いにハァと溜息を吐いた。
「止めましょうか、なんだか虚しくなってきた」
「うん、そうだね。それで、日色君と光輝君は?」
「えぇ、それはあそこで――もう、始まっているわね」
そう言って雫ちゃんが指を刺した方向を見ると、そこには二人の剣道着を身に纏った者が竹刀を振るっていた。
雫ちゃんが「右が光輝で左が日色よ」という説明をしてくれたけど私にはその言葉があまり耳に入ってこなかった。
竹刀が振るわれ空気が薙ぎ払われる。打ち合うたびにパンッ、パンッ、と音が鳴るのだがその度に空間が震えるように感じ、その衝撃が伝わってくるような錯覚をしてしまう。
光輝が胴を狙い横薙ぎで振るうと日色は半歩下がることで竹刀との距離を数センチ残して避けるが、光輝は止まらず更に竹刀を振るう。
唐竹の一撃は片足を半歩下げることで避けられる、続けて放たれた胴は日色が竹刀を振り上げ、左斜め下から右斜め上へと逸らされ、反撃とばかりに胴の横凪を日色が繰り出すがギリギリ光輝は竹刀を戻すことで受け止める。
光輝は再び、突きを繰り出すが竹刀の柄頭で叩き落とされ、それでは止まらぬと胴を繰り出せばまたもや半歩下がることで避けられる。
「すごい……」
目の前で繰り広げられる攻防に私は感嘆の息を零してしまう。
光輝君は剣道が上手いということは知っていたけどまさか日色君もこれほど上手いなんて……
だから――
「おかしいわね……」
――まるで、どうしてそうなっているかわからないとでも言うように顎に手を置き首をひねっている雫ちゃんのことに疑問を浮かべてしまう。
「ど、どうしたの?」
「……日色、全然昔のキレがないわ」
「そ、そうなの……?」
「えぇ、動きのキレも悪くて、身体のしなりを生かした移動方法も使ってない……」
雫ちゃんの解説に私は何を言っているか分からず目を白黒させるけど、どうやら日色君は昔より動きにキレがなく、まるで疲労し、ズタボロになった身体を動かしているような動きらしい。
『胴、一本!!』
つい、日色君達の方を見てしまうと、一際大きいパァンッ!!という叩く音と共に審判の人が光輝君を示す白い旗を上げる。次の瞬間、体育館に大きい歓声が響き渡り、更に声援がヒートアップする。
私はそんな歓声を聞きながら、必死に日色君を応援する。必死に応援していると不意に耳にこんな会話が聞こえてきた。
――きゃあ!天之河君が神代君に一本取ったわよ!
――神代君、大丈夫かな?数分前に先生がサッカーゴールの撤去を神代君に殆ど手伝ってもらったって言ってたんだけど……
――えぇ?嘘!?じゃあ神代君は休み無しで天之河君と戦っているの!?
「………………………………え?」
思考が止まった。
え?日色君が先生の手伝い?撤去で体力を使った?
じゃあ、日色君は今、疲労しているということ?
「雫ちゃん、どうしよう!さっき同級生の人が日色君が光輝君との試合前にサッカーゴールの撤去で疲労してるって!」
「なっ!嘘でしょ!?」
私の言葉を聞いた途端、雫ちゃんも瞠目し、バッ!と日色君達の方を見る。前方では光輝君が繰り出した突きをなんとか竹刀を振るって左に受け流し、距離を離す日色君の姿があった。
それをすぐに光輝が距離を詰め、上段による唐竹の一撃が日色へと襲い掛かり――
パァンッ!!
『面有り、一本!!』
日色はその攻撃を避けることができず、上段の唐竹の一撃は見事に日色を捉えた。
◆◇◆
光輝は憤っていた。
今日の剣道の試合を求めた光輝だが、こんな戦いは望んでいなかった。
それは目の前にいる日色の動きが、拙く、鈍く、もはや息絶えだえとでもいうような動きである。
その動きは体感では光輝が日色と今まで戦った中で最も彼の動きは遅く、鈍い。
これは光輝が強くなったからか?――否だ。
さすがの光輝も理解している。
(……ッ、ふざけるな!)
光輝は内心そう思いながら更に竹刀を振るうがそれをなんとか躱し日色は距離を離す。
面の胴具を被っているために完璧には見えないが汗をかきながら日色は変わらず表情を感じさせない瞳で光輝を見つめている。
普通、剣道を行っている場合、表情や瞳は変化するものだ。緊張や興奮、恐怖などのように。
だが、日色の瞳や表情は何一つ変わっていない、無機質な無表情のままである。
まるで、お前など眼中にないとでも言うように。その気になればいつでも倒せるとでも言うように。
――だから喜べ、わざわざ手を抜いてやろうとでも言うように。
(クソッ!)
自分は鍛錬を人一倍努力を取り組んでいたはずだ、途中でやめた日色とは違い、自分の方が努力していると実感している。だが、日色の三冠記録を塗り替えるどころか一度も全国大会で優勝することすらあと一歩で逃してしまった。
何が違う!どうして届かないッ!あんな人を見下す目の前のコイツにどうして俺は届かないんだ!!
距離を離した日色の距離をすり足で一気に距離を詰め、怒りに任せて上段による唐竹の一撃を繰り出す。
しかし、目測を誤ったか微かに距離が足りない、このままでは竹刀は日色の前方を通り過ぎ決定的な隙を作り出してしまう。
そして、光輝は見た。
振り下ろした竹刀へと一歩踏み出すことで
「なッ!?」
パァンッ!!という音が響き渡り審判を担当している先生が『面有り、一本!!』と白色の旗を挙げ、二本取ったことで光輝の勝利となった。
次の瞬間、体育館に歓客の生徒たちから歓声が上がるが光輝はそのことすら意識が向いていなかった。
なんだこれは?
八百長のような戦いで、必ず勝てるように手を抜かれ、ましてやわざわざ当たらない攻撃をわざわざ当たりに来る。
達成感などないこんな試合に何の意味があるだろう?
フゥ、終わった終わったとでも言うようにその場から離れようとしていた日色を光輝は声をかける。
「待て、神代!」
「……なんだ、テンプレ勇者?敗者に慰めの言葉でもかけるのか?」
光輝の言葉に日色は立ち止まるが振り向かず、淡々とした言葉が返ってくる。光輝はその言葉に顔をしかめるがそれがどうしたとでも言うように言葉を投げかける。
「もう一度、俺と勝負しろ……」
「はぁ?何言ってんだお前、試合はお前が勝っただろう?」
「ふざけるな!あんなのが試合な訳がないだろう!」
しらばっくれる日色に光輝は苛立ちと怒りの声色を無意識のうちに出してしまう。
その言葉に日色はハァとため息をつき、関わってられるかとでも言うように「断る」と呟いて、その場から離れようとして――
「お前も――」
次に光輝が零した言葉に日色はつい立ち止まってしまった。
「お前も――
「………………………………………………は?」
日色の言葉が小さく体育館に響き渡った。そう、光輝の言葉が日色の琴線に触れたのだ。
彼の足が止まり、日色は身体を光輝の方へと向き直し、氷のように鋭い瞳が光輝を映しだす――が、その瞳は普段よりも昏く瞳に光が映っていなかった。
「いいだろう、あと一本だけ勝負してやる」
そう言って日色は再び竹刀を構え、光輝へと剣先を向ける。
光輝は突然やる気になった日色のことを不思議に思っていたがまぁ、いいかと思い竹刀を構えながらチラリと審判である先生を見る。
審判である先生は少し躊躇していたがすぐにコクりと頷いた、光輝の無言のお願いに特別に試合をもう一本行うことを許可してくれたらしい。
「行くぞ!」
「……すぐに終わらしてやるから早く来い」
そして、次の瞬間――
――二人は同時に踏み出した。
◆
光輝は集中により時間の流れが緩くなるのを感じた。
自分と同時に踏み出した日色の動きを一片の油断もなく観察し、自分ができる最大の技を放つ。
八重樫流刀術――
体の捻りを生かした体重移動により生まれた余分なエネルギーを全て右上から左下へと振り下ろす高速の斬撃。
日色との距離を完璧に見極め放たれた高速の斬撃は確実に日色の面を叩くだろう。
日色はまだ動いていない。
勝った――と光輝は確信する。日色はまだ反応できていない、このままでは防御も間に合わず確実に叩きつけることができるだろう。
それは日色が並の剣士であればの話だが。
引き伸ばされる時間の中、少し遅れて日色が動く、竹刀を左腰へと動かし、左手で支え鞘と成し、右手の力を少し抜く。
それだけの行動が高速で行い光輝が振るった竹刀が五センチ動く間に行われ、抜刀の体勢が完了する。
そして――
――閃光が奔る。
左足を踏み出し、抜き放つは神速の抜刀。
右手の振りや腰の捻りの勢いを一切殺さないように抜刀し、踏み込みによって起こる加速と加重すら抜刀に乗せる超高速の斬撃。
日色が某人斬り抜○斎を目指して暇つぶしに行い、今では彼の、彼だけが使える、彼だけの抜刀術。
目指したのは『
ならばその技の名はなんという?
そして彼は考えた。
『天翔龍閃と名乗るにはあまりに拙いから略せばいいんじゃね?』と
故にその名、その技名。
我流刀術――
かつて全国大会の決勝の相手すら二撃目を防ぐことができなかった神速の抜刀が光輝の振るう竹刀よりも何倍も早く胴へと襲い掛かる。
光輝にはその斬撃が閃光に見えた。
パァアンッ!!!
もはや常人には視認不可能な竹刀が弧を描きながら光輝の胴を的確に叩き、微かに遅れて音が体育館に響き渡る。
数瞬の静寂。
『え……あ…ど、胴有り一本!』
そして何が起こったかわからないと困惑している審判の声と共に爆発的な歓声が体育館に響き渡った。
◆◇◆
「……凄い、ほんとに光輝君に勝っちゃった」
「全く、できるんだったら最初っからしなさいよ…………心配したじゃない」
湧き上がる歓声の中、私は意図せず小さく呟いていた。最初はあんなに苦戦していたのに最後の光輝君との戦いでは竹刀が霞む程の速度で光輝君の胴を叩いたのだ。
隣で雫ちゃんが何か呟いていたけど日色君の剣道に夢中になっていた私は彼女の声が小さくてよく聞こえなかった。
日色君と光輝君の試合が終わると共に観客が一斉に拍手を送り、私もそれにつられて二人に拍手を送る。
ふと耳を傾けると観客達の歓声に混じって日色君達を称える声援が聞こえてくる。
――やっぱり天之河君と神代君はかっこいいなぁ!
――最初天之河君が推していたけどそこで返した神代君も凄いよね!!
――えぇー、やっぱり凄いのは天之河君だよ!
――いやいや、神代君でしょ!
どうやら日色君派と光輝君派に明確に分かれており声援に混じって言い合いが発生しているらしい。え?私?もちろん日色君推しだけど?
試合が終わり、暑苦しいとでも言うように面を脱ぎ、更衣室へと退場する日色君に私はこちらに向いてもらおうと
精一杯手を振って――
――日色君がある方向へと
―――――――――え?
思考が、停止した。
日色君は朴念仁で無愛想だ。基本的、表情があまり変化することはないけれど誰かを思いやる優しさは持っている。前に一度、私は顔を真っ赤にしながらお弁当のおかずを箸で直接彼の口に持っていくと「ん、いいのか?」と言って顔色一つ変えずに食べたこともあるほどだ。
そんな日色君がまるでありふれた少年のように微笑んでいた。まるで――大切な人を安心させるかのような笑みを浮かべていたのだ。
つまり、つまりつまりつまりッ!!
――私や雫ちゃんとは別に彼にそんな表情をさせる人がいる?
慌てて日色君が向いていた方向を向いて、日色君が微笑んでくれた人を探すけど一向にそんな人は見当たらない。
再び日色君を見てみても日色君は元の無表情に戻っておりさっさと帰ろうとでも言うように早足で更衣室へと向かって行っている。
――気のせいかな?
私が見た彼の微笑みは気のせいだったのだろうか?いや、そうに決まっている。体育館の熱で自分が疲れてしまったのだろうと考える。
そうだよ、何を怯えているのだろう?そんな新たなライバルなんていないはずだよね。
ソウダヨネ、ヒイロクン♪
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「ヘックション!!クソッ、最近風邪気味だ……」
(死期が近くなってくると背中に寒気を感じるようになると聞いた事がある気がするけど……大丈夫だよね?死なないよね?今すぐ
そして何も知らないお馬鹿が一人。
勇者(笑)の口調が全く再現できないことについて。
ようやく異世界へと召喚させることができます、独自解釈や独自設定が大量に出現しますがご了承ください。
…………主人公をどうやってシリアルに奈落に落とそうかなぁ?
おかしい、どうやって考えても奈落に落とされたら文字魔法で『飛』を書いて戻ってきそうな気がする。