ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター)   作:アルテール

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朝の日光を浴びると灰化してしまうアルテです。

おかしい、異世界に飛ばそうとしたのに未だに飛べてない。
朝のホームルームを書いただけで終わったんだけど……




本は神聖なもの異論は認めないby本バカ

月曜日。

 

それは一週間の中で最も憂鬱な始まりの日である。きっと大人数のものが最も天国だった日曜日の名残を惜しみ、これからの一週間を考え、溜息を吐き月曜日という存在に世界を呪うだろう。ちなみに月曜日が祝日だった場合は火曜日がとばっちりを受ける。哀れ、火曜日。

 

そして、その月曜日を恨む会のひとりである南雲ハジメも今日からの一週間を考え憂鬱な気分になる。但し、ハジメの場合は単に面倒であり、そんなことするよりもハジメが大好きな彼と居たい等という問題ではなく(いやまぁそれはそれで問題なのだが)学校の居心地がすこぶる付きで悪く、それ故の憂鬱さが大半を占めていた。

 

そんなハジメはいつものように徹夜でフラフラな体を引きずりどうにか遅刻ギリギリで登校し、教室の扉を開けた。

 

次の瞬間、男女合わせた大半の生徒達に睨みや舌打ちを頂戴してしまう。一部の生徒達の視線は侮蔑や嫉妬が篭っており、そんな視線に哀れな子羊ハジメは肩身を狭くしてトボトボと自分の席へと向かうしかない。

 

「よぉ、キモオタ! また、徹夜でゲームか? どうせBLエロゲでもしてたんだろ?腐女子だしな!」

「うわっ、キモ~。BLエロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」

 

そんな声が聞こえてくるがハジメは持ち前のスルースキルで聞かないことにする。さっきゲラゲラと笑いながら馬鹿にする男子生徒達は最初にハジメを馬鹿にしてきた者が檜山大介(ひやまだいすけ)続けて右から斎藤良樹(さいとうよしき)近藤礼一(こんどうれいいち)中野信治(なかのしんじ)の三人である。合計4人がハジメに絡んでくる小悪党グループである。

 

別にハジメはオタクという分類に入るのだが決して容姿も言動も見苦しいというわけではない。髪は少し短めの短髪だし、寝癖も無い。どこにでもいるような一般女子高校生Aである。おとなしくもきちんと受け答えはするし陰気は感じさせず、単純に創作物、漫画や小説、ゲームや映画というものが好きなだけだ。

 

世間一般ではオタクに対する風当たりは確かに強くはあるが、本来なら嘲笑程度はあれど、ここまで敵愾心を持たれることはない。

では何故これほど大半の生徒に敵愾心を持たれているのか?

 

その答えが彼女だ。

 

「南雲ちゃん、おはよう! 今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」

 

ニコニコと微笑みながら一人の女子生徒がハジメの下に歩み寄った。このクラス、いや学校でもハジメにフレンドリーに接してくれる数少ない()()()()()であり、この事態の原因の一人でもある。

 

 名を白崎香織(しらさきかおり)という。学校で二大女神と言われ男女問わず絶大な人気を誇る途轍もない美少女だ。腰まで届く長く艶やかな黒髪、少し垂れ気味の大きな瞳はひどく優しげだ。スっと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。

 

常に微笑を絶やさず、非常に面倒見がよく責任感も強いため学年を問わずよく頼られる。それを嫌な顔一つせず真摯に受け止めるのだから高校生とは思えない懐の深さである。

 

そんな彼女はよくハジメとあの彼に構うのだ。休み時間や昼食時間、暇があれば彼女は必ずハジメとあの彼の近くにおりニコニコと接している。生徒達の中では徹夜のせいで居眠りの多いハジメや彼は不真面目な生徒と思われており、生来の面倒見のよさから香織が気に掛けていると思われている。

決してハジメは馬鹿ではなく、基本的な学力は平均点であり、時々それ以上を取っているのだがそれを知っているのはごく僅かである。

ちなみに極一部だけだが香織がそっち系の人ではないかと言われているのは余談である。

 

ハジメはそんな彼女が苦手だった。初めて本屋で出会った時は優しくていい人だと思ったが、人目を気にせずニコニコと関わってこられると生徒達の妬み等の怨念で祟られるのではないかと思うほど注目を浴びてしまうからである。

決して彼と二人だけの時間が少なくなったから、苛立っているわけではない。

 

「う、うん。おはよう、白崎さん」

 

ファ!?これが殺気!!?と一層深まる殺意と嫉妬の眼光にハジメは人知れず冷や汗を流す。ニコニコしている香織など意識する暇すらないようだ。

そんな眼光に晒されながらもハハハ、と曖昧に笑いながらなんとか足を動かして自分の席まで辿り着く。

すると隣で本を読んでいた少年がハジメに気づき、本をパンッと閉じてハジメの方へと振り向いた。

 

そう、今ハジメの目の前にいる少年こそが出ていた()であり、ハジメに敵愾心を向けないもう()()()()()でありハジメの親友とも言える存在。

 

「あぁ、おはよう。ハジメ」

「……うん、おはよう。日色」

 

艶やかな黒髪をさっぱりとした短髪に切り揃え、瞳は氷のように無機質で刃の如く鋭い、容姿は大変整っており黒色の眼鏡をかけてクールさを醸し出している。身体は無駄なく鍛えられ、細マッチョとでも言うような体型であり、まるで二次元から現れたようにイケメンだった。

彼の名は神代日色(かみしろひいろ)、学年成績は常に一位、運動神経は最上位、容姿は大変整っており二大王子の一人と言われている(ちなみに日色は知らない)クール系完璧男子である。

女子達に常に彼氏にしたいランキングで二位と一位を上下し、軽く神聖化しかけている。

性格は少し難があり言葉を偽ることはせず鋭いのだが言葉の所々に隠れた優しさが込められておりその捻くれ度が女子達に人気となっている。

 

そんな彼もハジメが生徒達に敵愾心を持たれる原因(主に女子から)である。理由は少し時が遡る。

 

ある日、日色とハジメが学校終わりに本屋に向かっているとそれに気づいた香織がわざわざ追いかけ日色達にどのような関係か聞いたのだ。……ちなみに香織は笑顔だったが背後には般若が立っていたと後にハジメは語っている。

日色は顔色ひとつ変えず、「ハジメは俺と本を語り合う友達だ」と言い、ハジメのフォローによってなんとか香織は納得し彼女のスタンド?は消え去ってハジメと日色の命の危機は去ったのだ。

 

――近くにこっそり聞いていた同じ学校の女子高生がいなければ。

 

ハジメが日色の友達であるという事実は瞬く間に広がり次の日、登校したハジメは圧倒的殺意と嫉妬の波動に意識が一瞬飛びかけたらしい。

 

そんなわけでハジメは男子女子両方に敵愾心を抱かれていた。

 

しかしハジメがもし生活態度を改善したり香織ほどではなくともこのクラスの担当である可愛いちびっ子癒し系に分類される愛子先生程の容姿を持っていたら文句を言う者たちはいないだろう、しかしハジメの容姿は極々平凡程度であり、“趣味の合間に人生”を座右の名としていることから態度改善も見られない。

男子達はハジメだけではなく香織がよく接している日色にも敵愾心は抱いてはいるものの整えられた容姿に生活面でも運動面でも完璧な日色に文句をつけられず鋭すぎる眼光で「――あ?」と言われてしまった場合大半の者が竦んでしまうだろう。

まぁ、日色は肝心の性格に難があるため結局は敵愾心を向けられているのだが。

 

つまり檜山グループがハジメを馬鹿にしたりするのは単純に日色に最も親しいからであり、日色の眼光に竦んでしまった為の八つ当たりである。つまりとばっちり。

 

女子達はいわずもがなハジメが平凡な容姿をしているくせに日色に最も親しいため敵愾心を向けられている。が、ハジメはそれだけは絶対直そうとはしないだろう。……日色に依存しているし。

 

そんなハジメは荷物を机の横に置き、ニコニコと日色とハジメの場所に来る香織をみて、数秒後の展開を想像してハァ、と内心ため息を吐く。

 

「そういえば南雲ちゃん、日色君、昨日――っていう本を見つけたんだけど……」

「あぁ、あの本か。あれは割と読みやすいぞ、題材がかなりシンプルの癖に描写がわかりやすいからな」

 

こんな状況でよく話せますねっ!?とハジメは増幅している殺気を孕んだ眼光を浴びながら顔色ひとつ変えず会話する日色達にハジメは内心驚愕する。というか白崎さん、いい加減この恐ろしい眼光に気づいてくださいッ!!

ハジメはどうやって会話を切り上げようと眼光に羊のように怯えながら考えていると三人の男女が近寄ってきた。

 

「日色、南雲ちゃん。おはよう。毎日大変ね」

「香織、また二人の世話を焼いているのか? 全く、本当に香織は優しいな」

「フンッ、そんなやる気ないヤツらにゃあ何を言っても無駄と思うけどなぁ」

 

三人の中で唯一朝の挨拶をした女子生徒の名前は八重樫雫(やえがししずく)。香織の親友だ。ポニーテールにした長い黒髪がトレードマークである。切れ長の瞳は鋭く、しかしその奥には柔らかさも感じられるため、冷たいというよりカッコイイという印象を与え、百七十二センチメートルという女子にしては高い身長と引き締まった身体、凛とした雰囲気は侍を彷彿とさせる――というのがクラスメート達の認識であるが本当は違う。

彼女は日色と居た時のみ女らしくなり、分かり易く言えば顔が一瞬でゆで卵になったり、偶に日色に熱を額を置いて測られた時、非常に女の子らしい声を出したりする。

 

ハジメは後輩の女子生徒から熱を孕んだ瞳で“お姉さま”と慕われ、正しく凛々しい印象を与える彼女のイメージが日色によってあっという間に懇切丁寧に破壊されたのはかなり最近の記憶である。

日色とは昔剣道で知り合った幼馴染らしく剣道の腕はかなりのもの、美少女剣士として雑誌に載っており日色に「本当にサムライ女って言われるようになったな」と言われグーで殴った思い出がある(ちなみに片手で何食わぬ顔で受け止められた)

 

次に、些か臭いセリフで香織に声を掛けたのが天之河光輝(あまのがわこうき)。如何にも勇者っぽいキラキラネームの彼は、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の完璧超人だ。日色曰く通称『テンプレ勇者』

サラサラの茶髪と優しげな瞳、百八十センチメートル近い高身長に細身ながら引き締まった身体。誰にでも優しく、正義感も強い(思い込みが激しい、これ重要!)。小学生の頃から日色と同じく剣道の道場に通っておりよく衝突していたらしい(八重樫雫談)全国大会に行くほどの猛者らしいのだが日色に一度も勝てたことがなく、あったのはあの日色が手を抜いた試合だけである。

二大イケメンの一人であり、ダース単位で惚れている女子生徒がいるそうだが、いつも一緒にいる雫や香織に気後れして告白に至っていない子は多いらしい。それでも月二回以上は学校に関係なく告白を受けるというのだから筋金入りのモテ男だ。

 

ハジメから見ても日色と光輝の性格は全く合っていないように思え、怒りに燃える光輝を「だからどうした?」と日色が冷たく逸らすだけである。

 

ちなみにハジメが日色に光輝のことを聞いてみると「アイツは自分が正義だと思いこみが激しいただのガキだ、誰かを助けたいという考え方は嫌いじゃないだがな……方法が馬鹿すぎるんだよ、価値観もクソだしな」らしい。

 

最後に投げやり気味な言動の男子生徒は坂上龍太郎(さかがみりゅうたろう)といい、光輝の親友だ。短く刈り上げた髪に鋭さと陽気さを合わせたような瞳、百九十センチメートルの身長に熊の如き大柄な体格、見た目に反さず細かい事は気にしない脳筋タイプである。日色曰く『ただの馬鹿』

 

龍太郎は努力とか熱血とか根性とか『もっと熱くなれよぉ!』とかそういうのが大好きな熱血系の人種なので、ハジメや日色のように学校に来ても寝てばかりの熱血という言葉が辞書に収められていない日色やハジメは嫌いなタイプらしい。まぁ日色の場合する必要がないからしていないだけなのだが。

 

そんないつも通りの三人にハジメはははは……と乾いた笑みを浮かべながら挨拶を返した。ちなみに日色は三人を一瞥した後、すぐさま本へと視線を戻した。関わりたくないらしい。

 

「おはよう、八重樫さん、天之河さん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」

 

雫達に挨拶を返すハジメだが「なに、おねぇ様に話しかてんだゴルァ!!」や「八重樫さんに話しかけるとは死にたいようだな、あぁ?」等という殺意の篭った視線が周りから大量に突き刺さる。

ちなみに雫も香織と同じ2大女神の一人であるためかなりの人気を誇る。

 

「それが分かっているなら直すべきじゃないか? 何時までも香織の優しさに甘えるのはどうかと思うよ。香織だって君達に構ってばかりはいられないんだから」

 

そんな曖昧な笑いを零すハジメに光輝が忠告をする。光輝の目にもやはり、ハジメは香織の厚意を無碍にする不真面目な生徒として映っているようだ。ちなみに隣で日色が「その優しさに甘えている俺に負けているお前はどうなんだ、テンプレ勇者」と小さく呟いていた。ハジメとしては甘えたことなんてないよ! むしろ放っておいて欲しい! と声を大にして反論したいのだがそんなことをすれば天之河様になんてことを!とイジメに遭うことが確定する。光輝自身、思い込みが激しいところがあるので反論しても無駄であろうことも口を閉じさせる原因である。

 

と、いうかハジメからすれば香織が関わらなければ日色との関係がバレなかったし、父親はゲームクリエイターで母親は少女漫画家であり、将来に備えて父親の会社や母親の作業現場でバイトして将来設計がバッチリなため香織が関わらなければ中学生の時の関係のままだったのだ。香織なんかがいなければ――

 

「あ、あはは~」

 

ハジメは飛びかけてた意識を戻して曖昧に笑いながらその場を切り抜けようとするが今日も変わらず女神の無自覚に落とす爆弾のせいで切り抜ることができなくなった。

 

「? 光輝くん、なに言ってるの? 私は、私が南雲ちゃんと日色君と話したいから話してるだけだよ?」

 

ざわっとクラスメイト達が騒がしくなり舌打ちなどが聞こえ始める。光輝は驚いた顔をしていたが「え?……あ、あぁ香織は優しいよな」と香織の発言はハジメに気を遣ったと解釈されたようだ。

そんな光輝と香織をおいてクラスメイトの殺気が猛烈に高まり――

 

――ドンッ!!という日色が本を勢いよく置く音と共に殺気が消し飛んだ。

 

「――おい」

 

一瞬静寂になった教室で静かに日色の声が響く。クラスメイトの数々がやばい!日色を怒らした!と身構える。

 

「俺は今、本を読んでいるんだが?」

 

低く、重く、静かに、そして微かに怒りを込めた声で。

 

「騒ぐのは構わないが俺の席の隣でベラベラベラベラと騒がないでくれるか?」

 

シーンと彼のその言葉と共に静寂が訪れた、日色の怒りの混じった眼光の圧力に光輝や香織は言葉を失った、雫はあぁ、またかとため息を吐き、ハジメは少し苦笑いしている。

話は変わるがハジメ達が通っている学校の高2学年にはひとつの暗黙の掟がある。

 

『神代日色をキレらせたらいけない』と

 

奴の機嫌を損ねたら絶望が訪れるぞ、と。

 

そんな静寂を破るように始業のチャイムが鳴りガラガラと教室の扉が開かれる。

 

「はーい!ホームルームを始めますよ――ってどうしてこんなに静かになっているんですかぁ!?」

 

現れた癒し系先生畑山愛子先生の登場に日色を除いたクラス全員が感謝した。

 




文字使い「本を読んでいる俺の隣でイチャイチャイチャイチャするんじゃねぇ!!勇者どもがッ!当てつけか!!」
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