ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター)   作:アルテール

15 / 51
こんにちはアルテールです。

今回はあまり話が進みません、説明会みたいなものだからね、仕方ないね。
それではどうぞ。


話があまり進まないからタイトルが思いつかない!の回

光が収まり、視界が良好となった日色は反射的に誰かを抱きしめようとしたのだろう日色の左腕をぎゅっと抱きしめている香織を何やってんだお前とでも言うように少し目を細めて見つめる。しばらく香織は呆然としていたが自分が日色に抱きついているということにようやく自覚して、瞬時に顔がダルマのように真っ赤になった。「ご、ごめんなさい!」と謝ってバッと手を離し、日色から少し離れた。……少し両手をワキワキと動かして名残惜しそうにしているのはどうしてだろうか?

 

一方日色は教室の風景から一瞬で変化した石造りの部屋を素早く見渡し、手持ちで持っていた日記帳に教室で現れた魔法陣が思い出せなくなる前に書き写していた。

両手で顔を庇い、目をギュッと閉じていたハジメはざわざわと騒ぐ無数の気配を感じてゆっくりと目を開いた。そして、周囲を呆然と見渡す。

 

まずハジメの目に映ったのは大きな壁画である。縦横十メートルはありそうなその壁画には、後光を背負い長い金髪を靡かせうっすらと微笑む中性的な顔立ちの人物が自然に囲まれているという絵が描かれていた。あまり芸術がわからないハジメでも素晴らしいものだと思う作品なのだがどうしてだろう?何故か薄ら寒さを感じてしまいつい目をそらしてしまった。そのまま周囲を見つめるとどうやらハジメたちは大広間にいるようだ。素材は大理石?、美しい光沢を放つ滑らかな白い石作りの建築物のようで、これまた美しい彫刻が掘られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。大聖堂という言葉が自然と湧き上がるような荘厳な雰囲気の広間である。

ハジメ達はその最奥にある台座のような場所の上にいるようだった。どうやら教室にいる皆が巻き込まれてしまったらしい。

 

ハジメはふと日色の方へと振り向くと日色が無事なことにホッとして声をかけようとしたが彼は真剣な表情で日記に何か書いていたためそっとしておいたほうがいいのだろう。

そう思っているとこの広間にハジメ達が乗っていた台座の前に祈りを捧げるように跪き、両手を胸の前で組んだ格好で少なくとも三十人近い人々がいたのだ。

その中で中でも一番存在感のある老人が動き出し、名乗りを上げる。

 

「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 

そう言って、イシュタルと名乗った老人は、何やら少し怪しい微笑を浮かべるのだった。

 

 

現在ハジメ達は召喚の間から、長いテーブルの置かれた食堂のような部屋に移動していた。イシュタルはこの場では落ち着けないだろうと話を落ち着いてするために案内したのだ。この場所を口から一番遠い場所にイシュタルが腰掛け、その近くから愛子先生、光輝、雫、龍太郎……といった学校の人気者順に座っていくがそれを無視していくスタイルなのが日色である。

最後尾のところを日色が座ると慌ててその右隣にハジメが座り左隣に香織が座った。ちなみに檜山に憎しみのこもった視線を向けられていたが日色が一瞥するだけですぐにおとなしくなった。

日色が檜山から視線を外すと共に部屋にメイド服の女性が入ってきて、生徒たちに紅茶と思わしき飲み物を配っていく。しかもそのメイドさん全員が美少女や美女のオンパレードである。男子達はさすが異世界!!これを逃す期はないぜ!と男子生徒達がメイドさん達をガン見する。そしてそんな男子達を見た女子達の視線が北極の気温まで冷たくなりもはや汚物を見る目となっている。ハジメはまさか、日色も……と日色を見るが日色は肩肘をついてメイド達を少し細めた瞳で少し見つめていたがすぐに興味を失ったように視線を下げた。ついでに言えばハジメとは反対側である香織もそこまでメイド達に興味を示さない日色に内心ため息をしていた。

 

『着こなしがなってないんやでッ!!咲夜さん見習え、ちくしょうが!!』

 

ちなみに内心ではメイド服の着こなしが甘いとお怒りになっていたりする。

そんなことはいざ知らず紅茶を配り終えたメイド達はそそくさと去っていき、イシュタルが話し始めた。

 

「……では、皆様方はさぞ混乱していることでしょう。事情を一から説明する故、まずは私の話を最後まで聞いて下され」

 

こうしてイシュタルが話した内容はハジメにとってどこか聞いたことのあるような、そしてどこか読んだことのあるようなテンプレでファンタジーすぎる内容だった。

この世界『トータス』は大きく分けて人族、亜人族、魔人族の三つの種族が存在している。

人間族が大陸の北側を、魔人族が南側を。亜人族は東側にある巨大な樹海にひっそりと住んでおり、何百年も人族と魔人族は戦争を続けている。魔人族は数は人間に及ばないものの個人の持つ力が大きいらしく、その力の差を人間族は数で対抗し拮抗していた状態だった。そんな状態は、数十年と続いており、その間に大規模な戦争などは起きていなかった。しかしその拮抗が、最近になって崩れ始めてきた。

魔人族が魔物を使役し始めたのである。

魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。

彼等は本能のままに活動するため今まで使役できる者はほとんど居なかった。使役できたとしても魔法を用いてせいぜい1~2体しか操れなかった。しかし最近の魔人族は一人で何十匹もの魔物を操れるようになったという。

 

それはつまり『人数』という人間族の優位性の消失である。それは同時に人族の存続の危機を示していた。

 

「あなた方を召喚したのは“エヒト様”です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っているのです」

 

「まぁ、これもエヒト様の神託から教えてもらったのですが」と言葉を切ったイシュタルは表情を恍惚な表情に変え叫ぶように言った。

 

「そう!あなた達は『神の使徒』なのです!あなた方には是非その力を発揮し、“エヒト様”の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」

 

おそらく神託を受けた時のことでも思い出しているのだろう。イシュタルの表情は表現ができないほどの笑顔で体を震わしていた。イシュタルの話によれば、人間族の実に九割が聖教教会に入信しており、神託を受けることができた者は例外なく高位に付くことができるらしい。

ハジメは“神の意思”を疑い無く、それどころか嬉々として従うのであろう彼らの価値観にに言い知れぬ危機感と不安を感じていると突然ガタンッっと大きく音を立てて立ち上がる人物がいた。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることは唯の……唯の誘拐ですよ!」

 

猛然と抗議を始めるプリプリと怒る畑山愛子先生。クリクリとしたおめめをキッとし、ボブカットの髪を跳ねさせながら抗議するが哀しかな持ち前の圧倒的庇護欲を感じさせる童顔と低身長のせいで「あぁ、愛ちゃんがまた頑張っているなぁ……」とほんわかな空気にさせるだけである。

 

そんなほんわかな空気は次のイシュタルの言葉で凍りつくこととなる。

 

「お気持ちは察しますが……しかし、現状私達はあなた方を帰還させることは不可能です」

 

場に静寂が満ちる。重く冷たい空気が全身に乗りかかっているようだ。日色を除いて誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

 

愛子先生がすぐさまイシュタルに食って掛かるが帰ってきた返答は絶望へ誘う最悪の言葉だった。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第ということですな」

「そ、そんな……」

 

ペタンっと愛子先生が脱力したように椅子に座り込む。それを合図に周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! 何でもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

パニックになる生徒達。ハジメも当然の如く平気ではなかったが日色とたくさんのラノベを読んでいるためこういった展開は予想していた幾つかのパターンの内、最悪のパターンではなかったので他の生徒達よりは冷静を保てていた。ちなみに最悪のパターンは召喚者を奴隷扱いされるパターンである。

 

オタクであるハジメは最悪のパターンではないもののあまりよくない状況による不安さでつい日色の学生服の袖を掴んでしまう。

 

「どうした?ハジメ」

 

帰ってきた声はいつもどうりの彼の声、こんな状況でも落ち着きを持っている冷静な声色だった。

だけど――彼の表情がいつもより違っていた。

 

「……ひ、いろ?」

 

いつものような無表情、いつものような無機質な刃のような鋭い瞳。だがハジメは彼の変化に気づいていた。

暗い、昏い、冥い、彼の表情は普段より『くらく』まるで死刑囚のような絶望を感じさせる表情だったのだ。

 

まるでこれから襲いかかる避けられない災難を知っているかのように。

 

 

そんな表情はハジメが声を零してしまうと共にまるで最初からなかったようにいつもの普段の表情に戻っていた。

 

「ん?なんだ?」

「う、ううん、ごめんね。少し不安になっただけだから」

 

「……そうか?」と不思議そうに呟く彼からハジメは視線を外し、イシュタルの方を見る。

イシュタルは誰もが狼狽える中特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた。

だがどうしてだろうか?悪意に敏感なハジメにはイシュタルの瞳には、侮蔑の色が潜んでいるように見える。

大方「エヒト様に選ばれておきながら何故喜べないのか」とでも思っているのだろう。

 

そんな中一人がバンッ!と机を叩き立ち上がった者がいた、光輝である。

その音にビクッとなり注目する生徒達。光輝は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放って置くなんて俺にはできない!それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。戦って、この世界を救うんだ!皆が家に帰れるように俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

ギュッと握り拳を作りそう宣言する光輝。無駄に歯がキラリと光る。

同時に、彼のカリスマは遺憾なく効果を発揮した。絶望の表情だった生徒達が活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。光輝を見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけたという表情だ。女子生徒の半数以上は熱っぽい視線を送っている。

 

そして同時に日色の目が死んだ。頭を抱えて「どうしてそうなるんだよ、バカが……」と呟いた。

当たり前だ、光輝が行ったのは日色からすればただの思考放棄である、そもそもエヒト神などという神様が本当にいるとは本来なら分からず、しかもそんな神様が異世界に自分たちを呼んだとは本当はわからないはずなのだ。自分達はエヒト神に出会っているわけではなくイシュタル達や日色達以外の第三者が行なった程度しかわからないのだから。

 

日色は光輝に抗議する考えが浮かんだがすぐに消した。小説からしても実際に出会ってあるが故に彼の性格はよくわかってる。仮にここで介入し光輝のカリスマによって一致団結した生徒達をわざわざ再び混乱させてしまえばめんどくさいことになることは避けたいのだ。決してコミュ症に纏め上げることなんてできないから諦めたのではない、えぇ、決して。

 

そんな彼の思考を無視して新たな者達(犠牲者)が立ち上がる。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。でも、お前ひとりでなんかやらせねぇぞ? ……俺も、戦うぜ!」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないのよね。………しょうがない、私も戦うわ」

「雫……」

「えっと、皆が戦うなら、私も……」

「香織……」

 

いつものメンバーが、光輝のいうことに賛同する。後はもう芋蔓式である、次々とクラスメイト達が賛同していく。愛子先生はオロオロと「ダメですよ~」と涙目で訴えているが光輝の作った流れの前では無力だった。

 

途中から香織や雫から視線を日色は向けられたが日色は興味ないですとでも言うようにプイと目を逸らす。

 

結局、全員で戦争に参加することになってしまった。おそらく、クラスメイト達は本当の意味で戦争をするということがどういうことか理解してはいないだろう。崩れそうな精神を守るための一種の現実逃避とも言えるし、未だに現実という認識が薄く、自分達が勇者だから大丈夫だと思っているのかもしれない。

 

それを本当に理解しているのはオタクでありながら幼い頃から虐められ続けられたが故に人一倍負の感情に敏感なハジメと元から異世界の残酷さを知っている日色だけだった。

 

 

ハジメは最もクラスで影響力のある光輝が立ち上がるように話を誘導させたイシュタルの手腕とこの不安でしかないクラスメイト達との未来を考え少し不安になった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。