ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター) 作:アルテール
夏休みを名残惜しんでどうにかこうにか完成させました。
コレジャナイ感がありますがお許しください。
……最近は別の小説を書きたい衝動に駆られて困っております。
日色が訓練に参加しません発言をし、ハジメが自分の最弱ぶりと役立たず具合を突きつけられた日から約二週間が経過した。
ハジメはこの二週間の間何をしていたかというとひたすら座学と訓練を日色と二人きりで永遠と繰り返していたのだ。何故、ハジメと日色が二人だけで訓練しているかというとあのハジメと日色が役たたずだと認識された日、結局辞退は拒否され訓練を強制参加させられることとなった日色は真っ先にメルド団長に座学と訓練の自習を頼んだのだ、主に記憶することに長けている技能を持つ日色は知識面と技能で役に立ちたいのでその時間が欲しいと。
それに釣られたのがハジメである、僕も役立たずなので技能と座学を鍛える時間を下さいと日色に便乗して頼み込んだ。何やってんだお前!と日色に見られた気がするがハジメからすれば日色と離れないことが最も重要なことなのだそんなことは気にしないのである。
そんなハジメ達の説得(笑)に心を動かされたメルド団長は「お前らの姿勢は素晴らしいぞ!!」と大感激、滅茶苦茶張り切って行動を起こしてくれたおかげでハジメは錬成の魔法がついている手袋を貰い、国の練成師に錬成を教わることとなった。ちなみに日色は王城から大解放された武器庫から雫と同じの刀に似た片刃の剣を適当に見繕っていた。
座学の時間は予習したものを纏め教師役の人に提出すれば免除してやると言われ、ここで活躍したのが日色である。技能【瞬間記憶】を用いて座学の内容を開始初日の三時間程で全てを予習し、残りの時間をハジメに教える時間となってしまった。
訓練の時間では座学に時間を使うため他のクラスメイト達より訓練時間が少なくなってしまうため日色が考えた体力作りを重視した訓練を行い、余った時間を比較的扱いやすいナイフを日色がハジメに教えることとなった。
そんな訓練の中ハジメはかなりの集中力で行っていた、日色に足手まといなどといわれたくないためにだ。
そんなハジメのステータスがこちらである。
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南雲ハジメ 17歳 女 レベル:2
天職:錬成師
筋力:18
体力:18
耐性:18
敏捷:18
魔力:18
魔耐:18
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+高速練成]、言語理解
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ハジメは寝る間も惜しんで錬成を日頃から行っていたことで[+高速練成]という派生技能を手に入れたことにより錬成速度が格段に早くなり錬成範囲がかなり広くなり落とし穴程度なら作れるようになった。最近は日色に「細かい錬成もできるように努力すればどうだ?」と言われたため石などを錬成してコップのような形を作ろうと思っているのだが中に空間を生み出すことが難しく行き詰っていた。
ちなみに日色はこんな感じ。
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神代日色 17歳 男 レベル:2
天職:筆写師
筋力:38
体力:47
耐性:43
敏捷:49
魔力:250
魔耐:37
技能:紙作成[+作業効率上昇]・魔力筆[+消費魔力減少]・本製作・高速演算・瞬間記憶・言語理解・文字魔法[+一文字開放]・剣術・集中・限界突破・言語理解
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日色もハジメに劣らずステータスが上がっていた。まぁ隠していた技能たちは使っていないため特筆するような変化がなかったが。
ハジメは自分が少しずつだが日色に近づけていることに喜んで――後に明かされた光輝のステータスを見て泣きたくなった。
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天之河光輝 17歳 男 レベル:10
天職:勇者
筋力:200
体力:200
耐性:200
敏捷:200
魔力:200
魔耐:200
技能:全属性適性・耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読
高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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ざっとハジメの成長速度の約五倍である。
ついでに言えばハジメや日色(そもそも日色はいらないと思うが)には魔法適性がないことがわかった。
魔法適性がないとはどういうことか。それはこの世界における魔法の概念を少し説明しなければならない。
トータスにおける魔法は、体内の魔力を詠唱により魔法陣に注ぎ込み、魔法陣に組み込まれた式通りの魔法が発動するというプロセスを経る。魔力を直接操作することは出来ず、どのような効果の魔法を使うかによって正しく魔法陣を構築しなければならない。
そして、詠唱の長さに比例して流し込める魔力は多くなり、魔力量に比例して威力や効果も上がっていく。また、効果の複雑さや規模に比例して魔法陣に書き込む式も多くなる為それは必然的に魔法陣自体も大きくなるという事に繋がってしまうのだ。
例えば、RPG等で定番の【火球】を直進で放つだけでも、一般に直径十センチほどの魔法陣が必要になってしまう。基本は、属性・威力・射程・範囲・魔力吸収(体内から魔力を吸い取る)の式が必要で、後は誘導性や持続時間等付加要素が付く度に式を加えていき魔法陣が大きくなるということだ。
しかし、この原則にも例外がある。それが適性だ。
適性とは、言ってみれば体質によりどれくらい式を省略できるかという問題である。例えば、火属性の適性があれば、式に属性を書き込む必要はなく、その分式を小さくできると言った具合だ。この省略はイメージによって補完される為、式を書き込む必要がない代わりに、詠唱時に火をイメージすることで魔法に火属性が付加されるのである。
大抵の人間は何らかの適性を持っているため、上記の直径十センチ以下が平均であるのだが、ハジメの場合、全く適性がないことから、基本五式に加え速度や弾道・拡散率・収束率等事細かに式を書かなければならなかった。そのため、【火球】一発放つのに直径二メートル近い魔法陣を必要としてしまい、実戦では全く使える代物ではなかったのだ。
余談だが魔法陣は、一般には特殊な紙を使った使い捨てタイプか、鉱物に刻むタイプの二つがある。前者は、バリエーションは豊かになるが一回の使い捨てで威力も落ちる。後者は嵩張るので種類は持てないが、何度でも使えて威力も十全というメリット・デメリットがある。イシュタル達神官が持っていた錫杖は後者だ。
え?
魔力を人差し指に貯めます。
↓
『炎』という文字を地面に描きます。
↓
【火球】の何倍も威力のある火炎が舞います。
以上だ。しかし確かに日色の文字魔法はチートなのだが魔力消費が激しく数回しか使えない、一回でステータスで表すと魔力を60も消費してしまうのだ。
しかもハジメの場合敵の眼前でしゃがみ込み、地面に手を突くという自殺行為をしなければならず、日色の場合どこかに指を着けて文字を書かなければならないという決定的な隙が生まれてしまい結局のところ戦闘では役立たずであることに変わりはない。
正直言って才能の差に嫉妬してしまいそうになるハジメだった。
そんなハジメは現在訓練の休憩時間を利用して王立図書館にて調べ物をしている。その手には“北大陸魔物大図鑑”という何の捻りもないタイトル通りの巨大な図鑑があった。
ハジメは人間に敵対する魔人族ついて調べようとしているのだが、『邪悪で狡猾』とか『神敵である』といった曖昧な情報しかなかったので、こうして別種族のことに移行したというわけである。
ハジメはこれも神が関係しているのだろうと予想していた、おそらくだが信仰の妨げになるような情報は一切書かれていないのだろう。
この二週間で主にハジメが日色と離れたくなくてでしゃばったのが原因だがハジメは『無能』日色は『能無し』というレッテルを貼られてしまった。
もういっそ日色と一緒に、旅にでも出てしまおうかと、図書館の窓から見える青空をボーと眺めながら思う。大分末期である。ハジメはもし行くなら何処に行こうかと、ここ二週間頑張った座学知識を頭の中に展開しながら物思いに耽り始めた。
(やっぱり、亜人の国には行ってみたいなぁ。ケモミミを見ずして異世界トリップは語れないし……でも“樹海”の奥地なんだよなぁ~。何か被差別種族だから奴隷以外、まず外では見つからないらしいし。流石に奴隷として見るのはちょっと……)
ハジメも年頃の女の子、ヲタクであるのも含めてそっち系のことはあまり妄想はしたくないのである。
ハジメの知識通り、亜人族は被差別種族であり、基本的に大陸東側に南北に渡って広がる【ハルツィナ樹海】の深部に引き篭っている。なぜ、差別されているのかというと彼等が一切魔力を持っていないからだ。
神代において、エヒトを始めとする神々は神代魔法にてこの世界を創ったと言い伝えられている。そして、現在使用されている魔法は、その劣化版のようなものと認識されている。それ故、魔法は神からのギフトであるという価値観が強いのだ。もちろん、聖教教会がそう教えているのだが。
そのような事情から魔力を一切持たず魔法が使えない種族である亜人族は神から見放された悪しき種族と考えられているのである。
じゃあ、魔物はどうなるんだよ? ということだが、魔物はあくまで自然災害的なものとして認識されており、神の恩恵を受けるものとは考えられていない。唯の害獣らしい。何ともご都合解釈なことだと、ハジメは内心呆れた。
なお、魔人族は聖教教会の“エヒト様”とは別の神を崇めているらしいが、基本的な亜人に対する考え方は同じらしい。
この魔人族は、全員が高い魔法適性を持っており、人間族より遥かに短い詠唱と小さな魔法陣で強力な魔法を繰り出すらしい。数は少ないが、南大陸中央にある魔人の王国ガーランドでは、子供まで相当強力な攻撃魔法を放てるようで、ある意味、国民総戦士の国と言えるかもしれない。
人間族は、崇める神の違いから魔人族を仇敵と定め(聖教教会の教え)、神に愛されていないと亜人族を差別する。魔人族も同じだ。亜人族は、もう放っておいてくれといった感じだろうか? どの種族も実に排他的である。
そんなことを思っていると訓練の時間が迫ってきたようだ。“北大陸魔物大図鑑”を日色にちゃんと本を大切にしろなどと昔言われた為、傷がつかないように読んでいた本を片付け、すっかり顔なじみになってしまった司書に挨拶をした後、図書館を出て、訓練場へと向かっていった。
◆
ハジメは右手に木製の短刀を持って目の前の3メートル先にいる日色と対峙していた。
対してヒイロは左腰に刀に似ている片刃の剣を腰に差しているが一向に抜く気配がない。
ハジメが日色にナイフの扱い方を教えてもらう時、2週間の間一度も日色は剣を抜いたことはなく毎度毎度無手でハジメは取り押さえられてしまうのだ。
しかしそれも今日で終わりだ、ハジメはその気持ちで日色へと飛びかかった。
日色との距離を4歩で詰み、勢いよく突きに掛かる。空気を裂くように突かれた短刀は日色に直撃する前に日色が半身を下げながら半歩下げることで掠りもせずに避けられる。しかしハジメは避けられることをこの二週間で悟っていたのか左手で裏拳を放つ。日色を殴ろうとするのはかなり気が引け、未だに当たる直前で躊躇してしまう。
日色は当たる寸前で勢いがなくなったことに気づいたのかハァと小さくため息をつき片手で裏拳を掬い上げていなされてしまう。
「やぁっ!」
ハジメは左手が掬い上げられるあいだに右手の短刀を戻し右から左へと切りかかる。日色はハジメの手首に軽く手刀を入れることで手首の関節が曲がり力の勢いがなくなってしまう。勢いを乗せて切りかかってきたからだろう勢いが逃がされたことで身体の体勢が崩れそうになってしまう。
「こ、のッ!!」
なんとか踏みとどまって左手で殴りかかるが日色によって絡め取られるように右手で左腕を取り押さえられてしまう。日色は一度軽く前に押したあと一気に引き寄せてハジメの体勢を崩させる。
突然体勢を崩されたハジメはまだだ、とでも言うように短刀を突くが体勢が崩れているためあまり勢いに乗っていない、日色は短刀を左手で逸らした後身体を右に寄せて足を引っ掛けて転がす。
「え?あ、きゃッ!!?」
「ほらよ」
勢いが止まらずハジメがウボァと顔面から地面に突っ込みそうになったが日色がその直前で左手を片手を掴んでなんとか踏みとどまらせてやり、模擬戦が終了する。
「うぅ~、また負けた……」
「ハッ、流石に初めて二週間の相手に負けるわけ無いだろうに」
訓練場の隅の隅で悪態をつきながらショボーンと落ち込んでいるハジメに日色は飲み物を飲みながらタオルをかけてやる。
「まぁ、だとしてもハジメはかなり上手くなったな」
「そ、そう……かな?」
「あぁ、最初の頃のあのフラフラしていた頃とは違って……ククッ」
「ちょ!思い出さないでよ!」
日色が初日の頃を思い出して突如笑い出すとハジメが顔を真っ赤にしてイヤイヤと恥ずかしがる。ハジメが日色にナイフ術を教えてもらおうとした時、試しに振ってみろといった日色の指示通り振ってみると木製の短刀が手からすっぽ抜け頭に直撃するという間抜けなことが起こったのだ。ちなみにハジメがあまりの痛さに半泣きしかけバッチリ黒歴史入り確定である。
うがーとその頃を思い出し恥ずかしがっているハジメをニヤニヤと見ていると日色はある事に気がついた。
「ん?ハジメ、お前飲み物はどうした?」
「あ……そういえば近くのベンチに忘れてた」
慌てて取りに行こうとするハジメに日色は頭をポフッとおいて、「俺が取りに行ってやるから休んでろ」とハジメに有無も言わせず休ませてスタスタと訓練場から出て行った。
◆
「……あった、これか」
日色は訓練場から出て、歩いて30メートル程先にあるベンチに置かれてある飲み物を手にとって小さく溜息をつく。まさか近くのベンチにあると言っていたが何処にあるのか知らなかった為、5分も探すのにかかるとは思わなかった。日色は自分の無計画さに呆れてしまうがまぁ、いいかと気を取り直す。別に日色は時間厳守させる様なマメな男では無いのだ。
それじゃあ、さっさと戻るかと日色は振り向いて――
「こんな所にいたのね、日色」
聞こえてきた声の主を察して日色はめんどくさい奴に出会ったとでも言うような表情をとった。
振り向いた日色の目の前に、此方を見て立っている八重樫雫が立っていた。
「……わざわざ、こんな【能無し】に何の用だ、ポニー?あのテンプレ勇者率いる主力パーティの一人であるお前はこんな【能無し】に関わる時間などないはずだが?」
「その能無しさんが訓練を他の生徒より怠っている、っていう噂を聞いたから見に来たのよ」
「後いい加減、雫って呼びなさい」という雫に日色は面倒臭いとでも言うようにハァ、と溜息を吐いた。日色は八重樫雫が苦手である、決して嫌いというわけではないが雫は香織と同じように関わると厄介ごとしか起きず、何よりも――
『ギヤァアアアアアアアア!!妖怪首おいてけが現れたァああああ!!!?』
……何よりも出会うたびに命の危険を感じてしまうからである。そんなはっちゃけた内心は放っておいて、日色は嘲笑うように雫へと言い返した。
「ハッ、仕方ないだろう?俺はクラスメイトよりステータスが低く、成長速度もあのテンプレ勇者の五分の一だ、そんなんだったら訓練するやる気も無くなるに決まっているだろう?」
日色は笑って両手を上に上げてヒラヒラとさせる、不真面目に見えるように、やる気がないように見えるように。
その言葉が雫に突き刺さり――
「嘘をつかないで」
――一刀両断とでも言うように否定された。
「……は?何言ってんだお前?」
「じゃあどうして南雲ちゃんに訓練で構ってあげるのかしら?」
微かに怪訝な表情をした日色へと雫は疑問を投げかけ、彼の思惑を暴いていく。
「………………」
日色は答えない、いや、この場合は答えたくない、が正しいのだろう。
「日色、あなた、わざわざ不真面目なように装っているわね。南雲ちゃんに矛先があまり向かないように」
「…………っ」
日色の表情が一瞬微かに歪む、その表情を見て、やっぱりと雫は確信する。
この男は、彼は、日色は、ハジメのために自ら囮になろうと演じているのだ。
「南雲ちゃんと一緒に訓練をしているのは他人よりステータスが低いからじゃない、南雲ちゃんがクラスメイト達に
それが日色の目的だった。ハジメが日色と同じ訓練をしたいと言ってきた時、日色は逆にこれをチャンスだと思ったのだ。
短刀の技術を教えることで彼女を足手纏いという認識から外させようとしたのだ。
そもそも武術とは弱者が強者に勝つための技術なのだから。
まぁ、当の本人の内心は『錬成を頑張らせるのもいいけど護身用に教えるのもいいよね』と全く見当違いのことを考えていたのだが。
その言葉に日色は、一瞬何かを思い、ハッ!と笑い飛ばした。
「面白い妄想するな、ポニー。だが、それは俺がクラスメイト達に勝てるというのが前提のはずだろ?生憎といくら俺でもそれは不可能だ。……もういいだろう?俺はハジメのところに戻らなければならないんだからな」
そう、ハジメがクラスメイト達に【無能】という認識を変えるには最低でもクラスメイト達に互角で戦えるほどではなければならない。しかしクラスメイト達の大半が戦闘職に戦闘向けの技能を持っているのだ、もしハジメがクラスメイト達に戦うとなれば戦闘向けの技能なしで戦わなければならない、従ってハジメに技術を教えるにしても日色が勝てなければならないのが前提条件なのだ。
日色はそう言ったあとスタスタと元の訓練場へと帰っていく。よし、これで逃げれる!などと内心思っていた日色は次の瞬間、カチャリと自分の背中に冷たい鉄の感触を感じたことで止まってしまった。
「そうね、構えなさい、日色。今から試してみましょうか」
「……は?」
つい振り向いてみれば雫はイイ笑顔でこちらを見ていた。そう、とってもイイ笑顔で。
「私も久しぶりに剣道の立ち会いをしてみたくなったのよ、貴方が私に勝てたら日色も南雲ちゃんが【無能】なんて肩書きをなくせれる可能性もあるでしょう?」
「……お前、もしかしてこれを機に俺に勝とうとしているんじゃ――(カチャリ)……わかった、やろう」
日色は雫に言葉を零しそうになったが言葉の途中で剣を構えられたので日色は了承する。人はこのようなことを脅迫というのではないだろうか?
自分の剣は元の訓練場に忘れてしまっているのでそれを理由に断ろうと一瞬思ったが雫がもう一つの剣を渡してきたので無駄だろうと察した。
そんなわけで日色対雫という剣道での久しぶりの対決が始まったのだった。
戦闘描写、どうやって書こうかな……