ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター) 作:アルテール
いや、更新が遅くなったのには原因があるんですよ、単純に書くのがめんどくさ(ry、ゲフンゲフン文化祭とか体育祭の準備的なものがあったんです。
今回は割と変なテンションで書いたため何言ってんのコイツ的なところがあるかもしれませんが許してください!なんでもしま(ry(なんでもするとは言っていない)
技能とは才能を表している。剣術の技能があれば剣を振るう才能が、槍術の技能があれば槍を扱う才能があるように。
では、一つ疑問を浮かべてしまうが技能があるだけでその技能の技術は上がるのだろうか?
答えは否だ。技能とは、いうならば道のりを短縮できるショートカット用のチケットの様なものだ。技能を持っていない者より同じ練習内容でコツを早く掴み、上達し易くなるというものだろう。『天翔閃』などという物理法則に喧嘩を売っているトンデモ技は魔力を用いてある程度上達した技能を合わせて起こす技なのではないかと日色は仮定している。
だからこそ日色は転移前で学んだ剣の技術は竹刀を握ったこともないクラスメイト達に対して大きな
決して油断しているわけではないがクラスメイト達にある程度戦えるだろうと、日色は思っていた。
だが、日色は一つのことを忘れていた。
ステータスの差という溝は決してそう簡単に埋めれるものでは無いということを。
◆
日色は剣を構えて二メートル先にいる雫に一瞬の目を逸らさず立ち会っていた。
両者の構えた剣は少しの震えも無く、目の前の相手を指し示し続けている。
「……行くわよ」
「…来い」
そして、次の瞬間。雫が勢いよく地面を滑らすように足を踏み出して――
――文字通り日色の視界から
「ッ!!?」
閃光が空中を奔る。
咄嗟に日色は上体を倒れるように仰向けになることで間一髪、鼻先を掠めるように数センチ先の空気を裂くように剣が通り抜けていく。
「うッ……そだろ、おい!」
慌てて後転の要領で地面に手をつき、後方に下がり距離を稼ごうとするが顔を上げた途端目の前に雫が現れ、剣が日色へと振り下ろされた。
咄嗟に剣を構え受け止めるが――
(お……もいっ!)
腕に襲いかかる衝撃は地球との比では無い、体感では地球での光輝の剣戟の3倍の重さを感じている。日色は仕方なく剣を傾けることで剣の腹を滑らし雫の剣をいなし、お返しとばかりに振るうが雫はいつのまにか日色の射程外に移動しており、日色の剣は空気を裂くだけだ。
「……【縮地】か、非戦闘職の俺にそれはズルくないか?」
「その【縮地】に反応できる貴方が何を言っているの……よッ!」
【縮地】それは文字通り一瞬にして距離を詰める高速移動の技能である、しかも移動距離が短い代わりにその速度は低スペックな日色では視認はほぼ不可能である。
再び摺り足による重心移動で素早く、そして滑らかに距離を詰めてくる雫。その速度は最早正確の捉えることなど不可能だ、一息で三メートルの距離を詰められ、飛び跳ねるように剣が跳ね上がり日色の首筋へと襲いかかる。
「クソッ、少しは手加減しろ!」
確かに剣の刃は潰されているがそれでも鉄であるのは変わらない、おそらく雫はこの程度の攻撃は日色がなんとか凌いでくれるだろうと信用しているのだろうだが日色からすればたまったものではない。
咄嗟に日色は剣の腹を斜めに傾けながら盾にし、全身を沈みこませることによって襲いかかる衝撃を上へと逃して行く。雫との身体能力の差はもう体感している、彼女とまともに打ち合えば確実にこちらが押し負け、避けようとしても身体能力の差でいつか捉えられてしまうだろう。だからこそ、日色は剣を受け流すことでしか対処することが出来ないのだ。
まぁ、それでもステータスが約4、5倍の差がある相手に戦えること自体日色の異常性がわかるのだが。
受け流し、いなし、逸らし、偶に反撃する。
元々剣術の才能があった雫の猛攻は例え日色でもそう簡単に捌けるものではない。
ガキゴコッキカキキカキコッカガギガキッ!!!と連続で響き渡る金属音が日色の耳に入り込んでくる。
(チッ、このままだったらジリ貧だ、勝負を仕掛けなければ負けるな)
そう思いながら舌打ちをして何度目かもわからない襲いかかる横薙ぎの斬撃を後ろに跳ぶことで避け、日色は雫から距離を離す。
しかし――
「甘いわよっ!」
――日色が次の行動に出る為に足を地面につける前にその距離を踏み越えた雫が剣を勢いよく突いてくる。
日色はまだ地面に着いていない、剣が突き刺さる前に地面を着くことは出来るがそこから左右に避ける事は出来ない。例え自分の剣で防ごうとしても軌道を少し逸らすことしかできず日色に当たるのは間違いないだろう。
だが日色は――
(それを――)
「――待ってたんだよ!」
襲いかかる剣の腹を左手で叩くことで方向を逸らしたのだ。逸らされた剣は日色の頬の横を突き抜けてしまうだけだった。
「なっ!」
勢いを乗せた突きを外されたことで僅かながら体勢が崩れてしまう雫。日色はその隙を逃す程間抜けではない、剣を雫の肩目掛けて振り下ろす。一応当たる直前で止めるつもりだが念のために剣の腹で攻撃をしている、例え直撃したとしても打撲程度で天職が治癒師である香織に頼めばすぐに回復してくれるだろう。
そうして振り下ろされた剣は雫の服に触れ――
「まだよっ!」
――咄嗟に雫が日色の背後へと【縮地】を使ったことで何も無い空間を振るうだけだった。
「ッ!」
まさか避けられるとは思いもしなかったのだろう、日色の体勢が前のめりに傾き、決定的な隙を生んでしまった。日色の背後をとった雫はその隙を逃さず斬りかかる。
勝った、と雫は思った。日色はまだ体勢を崩したままだ、そんな状況で背後の攻撃に咄嗟に避けれるわけがない後は日色に当たる直前で止めれば――
(…………え?)
そして次の瞬間、雫の思考が停止した。
停止した思考とは裏腹に加速された感覚の中でゆっくりと肉体は日色に向かって剣を振り下ろしていた。
では何故雫の思考が停止したのか?それは日色の体勢が
そう、日色は剣を振り下ろしたのでは
もし日色の振り下ろしを【縮地】で日色の背後に回らなかったら、いや、そもそも剣を盾に受け止めてしまえば間違いなく雫が勝っていただろう。目の前で剣を収めるのだ、決定的な隙を見せてしまうのだから、しかし、それは【縮地】により背後に回られてしまった場合は話は違う。
【縮地】とは言うならばジャンプと一緒である、指定した短距離を高速で動き移動する。逆に言えば
つまり、それは日色のわざと生み出した隙が消滅することを意味する。
気づいてしまってももう遅い、日色の左足が地面を力強く踏みしめ、身体を高速で旋回させ背後へと振り抜きざまに抜刀する。
「―――ッ!!」
【天閃】
今までの金属音とは違う一際甲高い金属音がキィンと響き渡った。
◆
「ハァ、まったく。こっちは貴方よりステータスが高いのに負けるなんてね……」
遠くに跳ね飛ばされた剣をちらりと見てやれやれと呆れる雫を見ながら日色はめんどくさいことをしたとでもいうように不機嫌な表情をとっていた。
「……それで?俺にわざわざ立ち会いを誘った
その日色の言葉に雫は少し目を見開いてやっぱりバレちゃったわねとでも言うように「……えぇ」と呟き、真剣な表情で日色を見つめた。
「私はあなたに自信を持ってもらいたかったのよ」
「………………は?」
疑問の言葉を零す日色。
「【能無し】【無能】貴方達が役立たずっていう噂が王城中に広まっているのは知っているでしょ?」
「……あぁ」
日色は少し顔を不機嫌に歪ませながら頷く。本来なら【能無し】という肩書きで終わらすつもりだったのだがどこかのありふれた少女が原因で肩書きがもうひとつ増えてしまったことを思い出しているようだ。
「でも日色も南雲ちゃんも私たちの仲間なのよ。貴方達が馬鹿にされているのに我慢できるわけないじゃない」
「………………」
これが雫が日色に立ち会いを求めた理由だった。
雫は許せなかったのだ、役たたずだと言われ、無能だと言われ、それでも片方は努力を怠らず自分の出来ることを鍛え、もう片方はわざと無能を演じることでもう一人を助けようとしている彼達を馬鹿にし、貶している者たちが。
日色の思惑に気づいていたのは決してハジメだけではなかった、雫もきっと気づいていたのだ。
気づいていたから、いや、気づいてしまったからこそ葛藤していたのだろう。日色達の役には立ちたいが日色に関わってしまえば日色の目的を達することができない。
その葛藤は一体どれほどのものだったのだろうか?
「……………………」
日色は黙っていた。
それは雫の葛藤に気づくことの出来なかった自分の無力さに嘆いているのか、それともただ単に殺される恐怖でなにも喋ることができないのか。
「皆で一緒に地球に帰る、それが私たちの目標でしょう?私も日色の仲間なのよ?私にも背負わせてよ……」
そう言って雫は日色の胸の服を掴んで上目遣いで日色を見つめた。日色はそんな雫を見てハァと溜息を吐いた。
そして――
「……え?」
――ポンッと雫の頭を撫で、小さく呟いた。
「………善処しよう」
そう言って日色は雫の頭に乗せていた手を離し、「じゃあ、そろそろ戻ってもいいか?」と言葉を零す。
その言葉に一瞬慰めてくれるのかと期待した雫はガクッと力が抜けかけるが、まぁ、これも日色らしいといえば日色らしいわねと思って小さく溜息を吐き、小さく手を離した。
日色はようやく解放されたとでも言うようにスタスタと元の訓練場の方向へ戻っていくがふと、思い出したかのように立ち止まり振り向かずに雫へとポツリと言った。
「なぁ、
「…………え?」
ポツリと零された言葉に雫は自分の耳を疑うが、その間に日色はスタスタと去っていった。
さっきの言葉はどういうことだろうか?
さっき呟いた日色の言葉の意味を必死に雫は探ろうとするが一向に答えがわからない。
あぁ、もう!とどうにかぐるぐると回り続ける思考を打ち切った雫はふとベンチの方向を見るとベンチの下には日色がよく使っていた日記が落ちていた。どうやら雫と立ち会いをした時にポトリと落としてしまったようだ。
雫は後で日色に渡しておこうかしらと日記を拾い、ふと見つめる。
日記は長年使っていたからなのか革が少し色褪せているが、手入れされているため依然と問題なく使えるようだ。
雫は日記の表裏を眺め、日記が勝手に開かれないように固定されているゴム紐に指を近づけ――
「……ハッ!」
――慌てて自分が何をしようとしているのかに気づき、慌てて近づけた指を止める。
(お、落ち着きなさい!八重樫雫!わ、私は一体何をしているのッ!他人の日記を盗み見ようなんて決して許せないわ!……で、でも少しぐらいなら……い、いえ!ここで誰かに見られたら変な誤解をされるわっ!それに日色の信用も…………あれ?そういえば私、さっき日色に雫って呼ばれてなかった……?―――ッ!!?)
お前もかブルータス。
どこかデジャブを感じるような状況にどこからかそのような電波が送られた。
雫はまるで信号機のように顔色を赤青と変化させながらウガァー!と声無き絶叫をあげる。わたしはどうすればいいのよッ!!とでも言うように身体を震わせて雫は迷い続ける。
ちなみにこの状況は香織達に声をかけられるまで十分程続いたのだが、後に雫は後悔した。あの時、日色にさっさと日記を返しに行けばよかったと。
我ながらテンポが遅いなぁと思うこの頃、学校なんてなければいいのに……