ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター)   作:アルテール

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お、お久しぶりです、リアルが忙しかったアルテールです。
活動報告でも書きましたがテスト期間に入ったためしばらくは更新が遅くなります。申し訳ありません!
……まぁ、これを合わせて三話程を書き貯めはしているのですが。



念の為に補足しておきますがハジメちゃんは原作とは全く別の存在です。設定捏造や過去改変などという独自設定がありますのでご了承ください。


南雲ハジメという少女とは 上

クラスメイト達が訓練している訓練場の角の隅でハジメはタオルを肩に掛けながら体育座りで日色の帰りを待っていた。

身体は未だに熱っているがタオルで拭き、休んでいることで汗はもう引いたらしい。

しかし、それでもハジメの顔色は少し悪く、溜息ばっかり吐いていた。なぜなら――

 

「チッ。【無能】の癖に、なんでまだ訓練場に居るんだよ」

「ホント最悪、早く何処かに行ってくれないかしら?」

 

――度々生徒達の非難の声が聞こえてくるからだ。

 

理由なんて考えなくてもわかっている自分が【無能】だからだ。ついでに言えばハジメや日色だけが別の訓練を受け、座学を免除されたりすることもハジメに対する不快感が高まっている理由の一つだ。

ハジメはそんな言葉をまるで他人事のように聞き流していく、この程度の悪口なら昔から聞き慣れているのだ、間に受けてはいけない。だってハジメにとってあの生徒達は――

 

 

『――ボク()にとっては存在すら興味が無いから、でしょ?』

 

 

――どこからか聞こえた謎の声にハジメは歯を食いしばってうるさい、と内心言葉を零す。

まただとハジメは苛立つ気持ちを吐き出すように溜息をつく、この幻聴は日色に出会って以来自分に囁きかけて来なくなったが再び自分に囁きかけてきたようだ。

 

『ねぇ、どうして殺さないの?君にとって()()()()は邪魔でしょ?ねぇ、邪魔なものは取り除かなくちゃ!ねぇねぇねぇ!』

「……黙れ」

 

ハジメは自分の脳内に囁きかけ続ける声に冷たく誰にも聞こえないほどの大きさで呟く。その声にハジメに囁きかけてきた幻聴はまるで最初からなかったことのように鳴り潜めた為、ハジメはようやく静かになったと溜息を吐く。

日色が早く帰ってこないかな、と思うがそもそも日色に飲み物が明確にどこにあるのか言っていなかったことに気づき、しまったと頭を抱えた。きっと日色がまだ帰ってこない理由は飲み物を王城の中で片っ端から探し回っているに違いないだろう。

 

(僕のバカ!あの優しい日色ならこうなるだろうと分かっていたのに!!あの時に明確に言っていればよかった!)

 

ハジメは体育座りから立ち上がって訓練場から日色を探すために出て行った。

 

 

ハジメは訓練場を出て飲み物を置いた場所へと向かうため、近道として訓練場の裏側を通って近道をしていた。

ここから自分が飲み物を置いてきたベンチに向かうには裏側から向かった方が格段に早いはずだ。

そう思いながらハジメは訓練場の裏場を進んでいると――

 

「おっ、無能君じゃ~ん?」

「マジで? ホントだ。おーい、む・の・う・ちゃーん! 何してんのぉー?」

「もうすぐ訓練の時間だけど……ああ、悪い悪い、お前が訓練とか、するだけ無駄だよな。なんせ、無能何だしぃ?」

 

――唐突にバッタリと檜山グループに出会いそんな声が投げかけられる。げらげらと下品な笑いと共に放たれる、聞くに堪えない醜悪な言葉に数々。顔を見ずとも分かる。檜山たちだ。

またか、とハジメは内心溜息を吐くトータスに飛ばされて以来檜山グループのいじめが活発になってきたのだ。日色といる時やハジメが一人だった時、おそらくだが日色が一人の時もこの檜山グループはこのように醜悪な言葉を投げかけているのだろう。

しかし、所詮いじめだ。ハジメはまるで聞こえていないようにスルーし、その場から離れようとする。

いじめとは、相手が反応するから面白いのだ。まるで無反応の相手をいじめても、何の楽しみもない。昔からいじめをくらっているハジメにとってこのようないじめは昔からよくあったのだ。この程度はどうってこともない。

その内檜山たちも飽きて何も言わなくなるだろうと、無視を決め込み、無言でその場から離れようとすると次の瞬間。

 

「てめぇ!無能の分際で無視してんじゃねぇよ!」

「ッ!」

 

背後から感じた衝撃でハジメは吹き飛ばされゴロゴロと地面を転がった。

とっさに受け身をとったのでそこまで痛くはない……が、服は砂埃で汚れてしまった。

 

「……(いっぅ、痛い。今あいつらは魔法を使ったの……?何処か火傷はしてないからおそらく風の魔法だけど……メルドさんに魔法は人に向けちゃいけないって言われているのにッ!)」

「ギャハハ!無様だねぇ、む・の・う・ちゃ・ん♪その程度の魔法でそんなに吹っ飛ぶなんて!」

「ほらほら、大好きな王子様でも助けに呼んでみろよ!!」

 

倒れたハジメに檜山たちが嘲笑を浴びせるがハジメの耳にはそれらの声は一切聞いていない、完全な無表情で地面に手をついて起き上がろうとする。

 

「そら……よっ!」

「ゴホッ!」

 

しかし、檜山が勢いよくハジメの腹を蹴り飛ばしたことでハジメの肺の空気が吐き出され、再び吹き飛ばされ地面をゴロゴロと転がることとなったステータス差によりかなり痛い衝撃が奔ったがもともと痛みに慣れているハジメである。めんどくさいなぁと思いながら腹を抑え再び立ち上がろうとする。というか、年頃の女の子の腹を勢いよく蹴り飛ばす彼らの思考は少しおかしいのではないだろうか?

 

「オイ、無能。何役たたずな分際で無視しようとしてんの?あぁ?」

「………ッ………」

 

倒れたハジメの手を檜山が踏みつけるが小さくと息を吐いただけで何も感じてないように何も喋らない。

 

「黙ってんじゃねぇよ!」

「アグッ!」

 

檜山は苛立ったようにハジメの肩を掴み勢いよく右手でハジメの顔面を殴り飛ばした。

ハジメは一切の抵抗をせず殴り飛ばされ、地面を無様に転がり、浅く息を吐く。殴られた衝撃で髪留めが飛んでいき留めていた髪が垂れ下がってハジメの瞳を隠した。

ハジメは痛みで震える体で何とか立ち上がり、冷め切った瞳を一片も逸らさず檜山を見つめる。

その瞳に一瞬檜山は「……うっ」とたじろいてしまう。それを見たハジメは空っぽな平坦な声でこう言った。

 

「あのさ……邪魔しないでくれる?僕は君に構っている場合じゃないんだよ」

「……ッ!調子乗ってんじゃねぇぞ!カスがッ!!」

 

まるで檜山に興味すらないとでも言うように言葉を零すハジメに檜山がついにキレた。ハジメに勢いよく飛びかかり投げ飛ばすと肩を押さえることで身動きを取れないようにして肩を、腕を、顔を、腹を、拳で、脚で、魔法で、剣の鞘で、殴って殴って殴り続ける。

 

「お、おい、檜山。流石にそれはやりすぎじゃねぇか?」

「うるせぇ!お前らも手伝え!このクソアマ、立場を分からせてやんだよ!!」

 

檜山グループの一人……確か中野だったろうか?が制止の言葉を投げかけるが檜山が怒鳴るように言った事で3人が加わり、更にハジメへと攻撃を仕掛ける。

もはやそれは従来のイジめなどとは比にならない、普通、これほどのイジメを受けた者は精神的に耐えきれず自殺してしまうかもしれないだろう。

 

しかしハジメは悲鳴を上げずただ冷めた瞳で檜山たちを見ていた。ただし、その瞳には檜山たちを一切映しておらず、内心本当にコイツらはつまらない人達だなぁと内心呆れ返っていた。

 

『どうして反撃しないの?』

 

そんなことを思っていると再びどこからか謎の声が聞こえてきた。

その声にハジメは顔を歪ませ、内心またかと呟く。

 

『コイツらは君が日色の元に行くのを邪魔したんだよ?』

 

それがどうしたとハジメは内心呟く、目の前の檜山達に邪魔されることはしょっちゅうあるだろう、今回はかなり酷いが昔とそう変わらない。慣れて仕舞えば別に気にする必要なんてないだろう。

 

『殺そうよ』

 

聞こえてきた謎の幻聴にハジメは一瞬思考が停止した。

 

『そうだよ、殺そう?殺せば全て解決するじゃないか!こんな存在する価値のない塵芥なんか綺麗さっぱり掃除しなくちゃ!そうだよ!最初からそうすればよかったのさ!!君の、いやボク達と日色の邪魔をするものなんて全て殺して壊してしまえばいい!!』

 

何度も何度も声を荒げ、聞こえてくる謎の声。ハジメは身体に襲う痛みすら一欠片も気にせず聞こえてくる声に黙ってと口を開くなと内心叫ぶ。

 

『あの邪魔しかしない()()も!日色に近づく()()()も!目の前にいる檜山達も、全部全部殺してしまえば――』

「……ッ!(う、るっさいんだよッ!!さ…っさと!消えろッ!!)」

 

何度も何度もまるで暗示をかけるように殺せと囁く謎の声にハジメは心の中でその声をかき消すように叫んだ。

自分が白崎さん達を傷つけるわけがないだろう!そんな事をすれば日色が悲しむに決まっている!そうハジメは思い、謎の声の主にだからさっさと消えろと叫ぶ。

その言葉に声の主は少し驚いたのか、へぇという声を零し、不気味に笑い始める。

 

『ハハハ、いいさ別にボクは強要させているわけじゃない、君がそう思うのならそうすればいいよ』

 

その言葉と共に、謎の声は笑いながら徐々に遠ざかっていく。そして、もはや聞こえなくなる直前、声の主はハジメを嘲笑うように言葉を零した。

 

『だけど、()はそれを認めるのかなぁ?』

 

その言葉にハジメが、え?と疑問を思う瞬間――

 

――絶対零度の刃の如き殺意がハジメや檜山達を中心に辺り一面を包み込んだ。

 

「「「「ヒッ…!」」」」

 

その殺意に檜山達は小さく悲鳴を上げハジメへの攻撃の手を止めてしまう。

唐突に攻撃が止んだことにハジメは疑問に思いながらも滅多打ちにされたボロボロの身体にムチを入れて立ち上がろうとするが予想以上にやられた様だ。いくら頑張っても全身が痛みで震え、力が抜けそうになってしまう。

どうにか倒れた状態から体を起き上がらせて、冷たい殺意の発生源であるハジメが訪れた方向へと視線を向ける。

 

 

そこには――彼がいた。

 

 

「なにを……している?」

 

 

腰には訓練場に置いてきたはずの片刃の長剣を差し、なんの感情も抱かせない無表情でこちらへと歩いてくる神代日色の姿があった。

 

 




謎の声の正体はあと二話程でわかります。
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