ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター)   作:アルテール

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こんにちは、アルテです。

今回は完全に戦闘シーンだけです、お申し訳ありません!
そして戦闘シーンの難しさを最近実感しました。………なにか描写のコツとかないですかね?



南雲ハジメという少女とは 中

 

 

ザッ……ザッ……と日色が歩み寄ってくる音が聞こえてくる。

 

日色の姿をみた檜山は最初は表情が若干引き攣っていたが今は余裕を取り戻し嘲笑うような歪んだ笑みを浮かべていた。斎藤、近藤、中野も少し引き攣っていたがヘラヘラと笑っている。

おそらく檜山たちが余裕を取り戻せたのは日色が圧倒的に低いステータスを持っていたからだろう。

そんな歩み寄ってきた日色へと檜山はヘラヘラと笑いながら話しかける。

 

「よう、神代。わざわざ正義の王子様気取りかぁ?言っておくが俺達は南雲の"特訓"に付き合ってただけだからなぁ?」

 

ニヤニヤと歪んだ笑みで日色に笑いかける檜山、どうやら『檜山達が南雲の訓練に付き合ってやっている』という建前で言い訳しようとしているらしい。例え切り抜けなくても低ステータスである日色ならば大丈夫だろうと思っているのだろう。

 

「そっ、そーそー!珍しく一人でいたもんだからさ!」

「今日は一人で特訓すんのかなーって思って、せっかくだから!」

「でも南雲、すーぐバテちゃってさぁー!」

 

そう言ってヘラヘラと『疚やましい事何もありませんよ』笑う檜山達に日色は小さく「……そうか」と呟いた。

 

「つまりお前らはこんなところでハジメの訓練に付き合ってたと?」

「あ、あぁ、そうそう」

 

そう言って笑う檜山達に日色は、なるほどなるほどと呟いた後、小さく笑った。

しかしその微笑みをハジメは知っている、その表情の意味をハジメは見たことがあった。

 

「それはハジメが迷惑かけたな――」

 

日色は笑う、小さく笑った。

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

 

 

 

 

 

「――その"お礼"をしてやるよ」

 

 

 

 

そして日色は次の瞬間、ハジメ達の視界から消え去り、最も日色の近くいた中野の鳩尾へと肘打ちを食らわせた。

 

「グヘッ!?……ゴフッ!!!」

 

中野が突然の鳩尾の痛みに体の空気を全て吐き出し、何が起こったのか理解する前に日色は鳩尾に肘を突き刺した右腕を跳ね上げ中野の首へとアッパーを繰り出して中野の脳を揺さぶり意識を刈り取る。

 

「「「……………………は?」」」

 

何が起こっているのか分からない、という表情を浮かべる檜山達に日色はドサッと地面に倒れた伏した中野をチラリと見たあと、ギロりと檜山達を睨みつける。

 

「……お前ら、俺の友達を傷つけられて黙って見ていると思ったのか?」

 

小さく、そしてゾッとするような冷たい声が辺り一面に静かに響き渡る。

檜山達は日色の冷たい瞳にまるで蛇に睨まれた蛙のように動けなかった。

 

「来いよ、塵芥共。俺の友達に手を出したらどうなるか教えてやる」

 

その言葉と共に日色は檜山達へと駆け出した。

 

 

「テメェェエエエエエ!!!上等だクソッタレが!!」

「このクソ野郎が!よくも中野を!!」

「死にやがれ!!クソ野郎!!」

 

日色が接近してきたことでようやく現状の認識ができた檜山達はそれぞれ目の前の日色を倒すために行動を起こした。真っ先に硬直が解けた近藤が自分が持っている槍を操り日色へと襲い掛かり、檜山と斎藤は後方で詠唱し魔法を使おうとする。

 

「し、ねぇえええええええッ!!!」

「誰が死ぬか」

 

声を上げながら近藤は槍を薙ぎ払い、日色の胸めがけて槍を振るうが日色が咄嗟に上体を下げ背中向きに倒れることで紙一重で日色の頭上を槍が空気を唸らせながら過ぎていく。

 

「オラァアア!!」

 

しかし近藤は薙ぎ払った槍を引き寄せることで持ち手を穂先に近づけ、倒れた体勢である日色へと再び突きを放つ。この間約二秒

元々ステータスが高い戦闘職である近藤だからこそこのような高速で槍を操ることができるのだろう、おそらくだが技能も関係しているのかもしれない。

 

もちろんのこと日色は背面で倒れている途中な為左右に避けることはできない。

だから日色は――

 

「チッ!」

 

――両手を後方に回し手に地面がついた途端、両手に力をいれバク宙をすることで近藤の槍の穂先の腹の部分を蹴り飛ばすことで槍を真上へと跳ね飛ばした。

 

「なっ!」

 

おそらく決まったと思っていたのだろう槍が突如真上に跳ね飛ばされたことで驚愕の声を上げ手から槍が離れてしまう。

もちろんそれは隙でしかない、バク宙により体勢を立て直した日色が体勢を低くし一瞬でバク宙により開いた距離を詰める。

 

そして――

 

ダンッ!!!!

 

「痛ッ!?」

 

――勢いよく近藤の足を踏み潰した。

 

突然の足元の激痛に近藤は顔を歪め隙を生み出してしまう。

その隙を逃さず日色は吐息を吐きながら勢いよく右手で近藤へと殴りかかる。

 

「――フッ!!」

「ク、クソッ!」

 

咄嗟に近藤は自分に殴りかかってくる拳に気づいたのだろう槍を手放して顔を腕で防御する。

しかし日色は近藤の顔面を殴るのではなく、近藤の顔の横を右腕で通らし、左腕をもう片方向へと潜らせ、両手を掴む

そう、ちょうど近藤の頭を両腕で抱き抱えるように。

 

「歯、食いしばれよ!」

「っ?……ガァ!!?」

 

そして日色は勢いよく両腕を近藤の後頭部めがけて叩きつけた。

 

 

後頭部攻撃(ブレインシェイカー)

 

 

敵の後頭部に強い衝撃を与える事で致命打を浴びせる技だ。

各種格闘技では後頭部への攻撃は脳障害などの後遺症を起こし易い為禁止されており、これを受けた者は脳を揺さぶられることで一瞬で戦闘不能にさせることができるのだ。

所詮日色とクラスメイト達のステータス差は決定的である。たとえ全力で殴ったとしても相手を気絶されることは不可能であり最悪アザすら無いかもしれない。

ただし、それはある部分に関してはそれは違う。

 

 

人体にはどれだけ鍛えても決して強く出来ない箇所がある。

一つは鳩尾、そしてもう一つは()である。

 

 

例えどれだけのマッチョでも脳を揺らされた場合気絶やバランス感覚を失ってしまうように例えステータス差がある程度離れていたとしても気絶させることは可能なのだ。

何故なら武術とは弱者が強者に勝つ為の物なのだから。

 

脳を揺さぶられたことで意識が飛んだ近藤を捨て置き、次の獲物めがけて日色が振り向いて見えたものは――赤と薄緑の球体と衝撃だった。

 

「ガハッ――チィ!」

「日色!」

 

日色は咄嗟に左腕を盾にしたものの、あまりの衝撃で吹き飛ばされゴロゴロと地面を転がってしまう。ハジメの悲鳴が聞こえたので受身を取りながら勢いよく立ち上がると再び詠唱を行っている檜山と斎藤がいた。どうやらさっき食らったのは魔法のようだ。

咄嗟に左腕を盾にしたせいか服が少し焦げ炎魔法によりところどころ火傷しており、風魔法により火傷したところから血が流れていた。

 

「ハッハァ!ざまぁ見やがれ!」

「このクソ野郎が、もう一度焼かれちまえ!!」

 

「チッ、メンドクサイ奴らだな」

 

日色は檜山達が魔法を詠唱しているのを見て自分の魔法とは違い使い勝手がいいことに悪態を吐き、再び距離を詰めるため体勢を低くし、一気に飛び出した。日色は詠唱が終わる前に一気に距離を詰めようとしたがあと一歩のところで間に合わなかった。

 

「ここに風撃を望む。『風球』」

「ここに焼撃を望む。『火球』」

「クソッ!」

 

檜山達の距離が残り1メートルほどで日色へと打ち出された火球と風球に対し、日色が躱す術はない。なぜなら日色はトップスピードで一直線に檜山達へと向かって行っていたのだ。急に方向を変えることなどできるわけがない。

 

ただし――

 

(だったら――

 

 

 

 

       ――避けずに攻撃すればいいだろうが!!!)

 

――だからといって何もできないというわけではない。

 

「ッ!――ハァッ!!」

 

日色は腰に差している片刃の長剣を勢いよく引き抜き、斎藤へと勢いよく投擲した。

襲い掛かる火球と風球を傷ついた左腕で薙ぎ払い防御する。猛烈な激痛と衝撃に左腕の感覚が無くなり倒れそうになるが歯を食いしばってそのまま一直線に檜山達へと向かう。

 

(こんな傷など――ハジメの傷に比べたら安いものだ)

 

「ギャァアアアアアアアアア!!!」

「よ、善樹!?」

 

どうやら投げた長剣は見事斎藤の腕に突き刺さったようだ。日色は我ながらナイスな投擲技術だと思いながら、腕を長剣に貫かれたことで倒れこみ、なんとか引き抜こうとしている斎藤へと飛びかかり、突き刺さった長剣をさらに深く突き刺した。

 

「ヒッ!ギィャアアアアアアアア!!」

 

日色は痛みに悶える斎藤を抑えつけると勢いよく引き抜いて、クルリと檜山へと振り向く。斎藤はあまりの痛みで傷口を抑えしばらくは動けないようだ。

 

「……後は、お前一人だ」

「ヒ、ヒィ!ヒィィッ!ごめんなさい!俺が俺が悪かったからっ!だから――「まさか、許してもらえるとでも?散々ハジメを(いたぶ)っておいて謝れば許すほど俺は優しくはない」

 

ギロリと日色が振り向くと檜山が腰が抜けたのか尻餅をつきながら仲間たちの死屍累々とも言うべき姿を見て……そして『次はお前が"こうなる"番だ』と見せ付けられて、完全に恐慌状態に陥っている。

日色は空っぽの無表情でゆらりゆらりと檜山へと近づいていく。

一歩また一歩と日色が近づくたびに檜山の顔が涙や鼻水でベトベトに汚れていく。

 

「ヒィイイイイ!!止めろ!止めてくれ!!もう南雲にも手出ししないからっ!!嫌だ!!痛いのは嫌だァアアアア!!」

「……………………」

 

日色は喋らない、もはや檜山と話すことはないとでも言うように片刃の長剣を構え、また一歩近づく。

そして檜山へと振り上げた刃を振り下ろすというところで――

 

「待って、日色!!僕はもう大丈夫だから!!」

 

――ハジメの声によりピタリと空中で長剣は停止した。

 

日色は視線を檜山からハジメに移し、感情のない声で語りかける。

 

「本当にいいのか、ハジメ。こいつらはお前を痛めつけたんだぞ?」

 

その言葉にハジメはある程度痛みは収まったとはいえ未だに身体に奔る痛みに顔を顰めながらも、なんとか震えながらも立ち上がり、コクリッと頷いた。

それを見て日色はハァとため息を吐き、仕方がないとでも言うように長剣を腰の鞘に戻した。

 

「……わかった」

 

日色はそう呟くと、檜山から背を向きハジメの元へと向かった。いち早くハジメを香織に頼んで治してもらうと思ったのだろう、いや、だからこそ気づかなかった。

 

「ヒ、ハ、ハハ……し、ねぇえええええええ!!神代ォおおおおおお!!!」

 

背後から剣を鞘から抜き日色めがけて振り下ろそうとしている檜山のことに。

ハジメが咄嗟に「日色ッ!!」と叫ぶがもう遅い、日色は反応に一瞬遅れてしまった。

 

避けることは不可能、剣での防御は鞘に差してしまって不可能だ。

 

だから日色は咄嗟に――

 

 

「ぁ、ぐ、ガァアアああああああああああッッ!!!」

 

 

――火球により火傷し、風球により血まみれとなった左手で剣を防いだのだ。

 

グチュリッ!!とまるで腐った果実が潰されたような気持ちの悪い音が響いていく。

だが、不幸中の幸いは檜山が剣を振るう体勢が崩れていたおかげであまり勢いがなく左手が少々切り裂かれただけで済んだのだが、もともと火傷している左腕を切り裂かれたのだ、その激痛は通常の比では無い。

 

日色の視界がチカチカと明滅するように瞬き、体勢がぐらりと崩れてしまう。

 

だけど――

 

「――ぁ、ぁああああああああああああああああああッ!!!」

 

――日色は決して倒れない。

 

ダンっと勢いよく左足を踏み出し、傾いた体勢を無理矢理前に踏み出す。

 

 

「ヒィ!!」

「歯ァ、食いしばれッ!」

 

踏み出したことで手に入れた力をロス無く、足から腰、胸、腕の順に捻りを入れながら伝え、右腕を一切躊躇無く檜山の顔面へと殴りかかる。

 

ゴッッ!!!

 

という音が日色の右腕を通して伝わってきたのを日色は感じた。

日色の渾身の一撃を食らった檜山は勢いよく地面に叩きつけられ、ピクピクと数度痙攣した後、気絶したのだった。

 




アレ?おかしいな、日色の戦闘技術が軽く殺人レベルまで行っている気がするんだけど……
あ、ちなみに次回謎の声の正体がわかります。
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