ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター) 作:アルテール
今まで更新を一切せず申しわけございません!!
ハジメちゃんが原作とは違う設定なのでオリジナル風に書いてみたのですがまさかここまでかかるとは……
あまりの己の才能の無さに絶望を通り越して呆れてしまいそうです。
しかも途中から適当になってきてますし……
そんなわけで今回の話はかつてないほどの駄目文になっていますのでご了承ください。
……できれば、低評価は付けないでくれると嬉しいなぁ(震え声)
ちなみに豹変前のハジメちゃんの容姿はファンキルのロンギヌス。
ハジメちゃん(裏)はブラックロンギヌスをイメージしていただけると嬉しいです。
ぴちょん……ぴちょん……
水滴が頬に当たり口の中に流れ込む感触に、ハジメは徐々に意識が闇から浮上し始めた。
そのことを不思議に思いながらゆっくりと目を開く。
(……生き、てる?……助かった……の?)
疑問に思いながらも起き上がろうとグッと腹に力をいれ起き上がろうとして低い天井にガツッと額をぶつけた。
「――いっ!!?」
突然の額の激痛に思考が混乱するがすぐに自分の作った穴は縦幅が五十センチ程度しかなかったことを今更ながらに思い出し、ハジメは、錬成して縦幅を広げるために天井に手を伸ばそうとした。
しかし、視界に入る腕が一本しかないことに気がつき動揺する。
「ぇ、あ?なんで腕が――ッ!?」
しばらく呆然としていたハジメだったが、やがて自分が左腕を失っていた事を思い出し、その瞬間無いはずの左腕に激痛を感じた。おそらく幻肢痛だろう。
【幻肢痛】、それは四肢を失った者があるはずのない手の先端があるように感じたり、失った部分から電流を流した万力で潰されるような痛みを感じてしまうような幻肢の派生症状である。
幻肢痛は実際の疼痛ではないため、痛み止めや麻酔は効かずミラーセラピーなどにより実際にあるかのように思わせることで緩和は可能だが…鏡のない現状では難しい。
ハジメは表情を苦悶に歪めながら反射的に左腕を押さえて気がつく。切断された断面の肉が盛り上がって傷が塞がっているのだ。
「な、なんで? ……それに血もたくさん……」
暗くて見えないが明かりがあればハジメの周囲が血の海になっていることがわかっただろう。普通に考えれば絶対に助からない出血量だった。
ハジメが右手で周りを探れば、ヌルヌルとした感触が返ってくる。血が乾いていない、まだ気を失ってそれほど時間は経っていないのだ。
「そ、そうだ!……日色ッ!」
ハッ、とハジメは日色を探すために身体を動かした。大量出血したことが夢ではないのなら日色はハジメよりももっと重傷なはずなのだ。真っ暗なせいで何も見えないが、腕を動かせば温かみの感じる何か……日色の腕に触れることができた。
耳をよく傾けて聞けば微かだが日色は小さく早い苦しそうな呼吸をしていた……だが、まだ生きている。
「……日色……よかった……」
日色が死んでいないことはとても嬉しかったが今はそれどころではない日色が出血多量で苦しんでいるのにどうして自分だけがこんな風に傷が塞がっているのか。
ハジメはそんな疑問と共に日色が苦しんでいる状況に苛立ちを浮かべながら必死に考えていると再び頬や口元にぴちょんと水滴が落ちてきた。
それが口に入った瞬間、ハジメは少しだが感じ取れる程度に体に活力が戻ったのがわかった。
「……まさか……これが?」
ハジメは幻肢痛と貧血による気怠さに耐えながら右手を水滴が流れる方へ突き出し錬成を行った。
「日色、苦しいけど待ってて。すぐ……戻るから」
苦しんでいる日色にハジメはそう呟くと日色の返事を待たずにふらつきながら再び錬成し奥へ奥へと進んで行く。
不思議なことに、岩の間からにじみ出るこの液体を飲むと魔力も回復するようで、いくら錬成しても魔力が尽きない。ハジメは休まず熱に浮かされたように水源を求めて錬成を繰り返した。
やがて、流れる謎の液体がポタポタからチョロチョロと明らかに量を増やし始めた頃、更に進んだところで、ハジメは遂に水源にたどり着いた。
「こ……れは……」
そこにはバスケットボールぐらいの大きさの青白く発光する鉱石が存在していた。
その鉱石は、周りの石壁に同化するように埋まっており下方へ向けて水滴を滴らせている。神秘的で美しい石だ。アクアマリンの青をもっと濃くして発光させた、言葉で表現するならばそのような言葉でしか表せない美しい雰囲気の石だった。
ハジメは一瞬、幻肢痛も忘れて見蕩れてしまった。
そして縋り付くように、あるいは惹きつけられるように、その石に手を伸ばし直接口を付けて啜った。
すると体の内に感じていた鈍痛や、靄がかったようだった頭がクリアになり倦怠感も治まっていく。
やはり、ハジメが生き残れたのはこの石から流れる液体が原因らしい。治癒作用がある液体のようだ。幻肢痛は治まらないが、他の怪我や出血の弊害は、瞬く間に回復していく。
ハジメは知らないが、実はその石は【神結晶】と呼ばれる歴史上でも最大級の秘宝で、既に遺失物と認識されている伝説の鉱物だったりする。
神結晶は、大地に流れる魔力が、千年という長い時をかけて偶然できた魔力溜りにより、その魔力そのものが結晶化したものだ。直径三十センチから四十センチ位の大きさで、結晶化した後、更に数百年もの時間をかけて内包する魔力が飽和状態になると、液体となって溢れ出す。
その液体を【神水】と呼び、これを飲んだ者はどんな怪我も病も治るという。欠損部位を再生するような力はないが、飲み続ける限り寿命が尽きないと言われており、そのため不死の霊薬とも言われている。神代の物語に神水を使って人々を癒すエヒト神の姿が語られているという。
「これなら……」
ハジメは錬成によって【神結晶】を一欠片も残さずに岩壁から取り外し通ってきた穴を広げながら日色のもとへ急いで戻った。
そして発光する鉱石のおかげでようやく日色の姿を見て、言葉を失った。
目は閉じられ、一向に開く気配はなく。呼吸は僅かに開いた口で必死に酸素を取り込もうと口が小さく上下を繰り返している。
そしてなにより、あの爪熊にハジメを庇って切り裂かれた胸は悲惨だった。
胸を右肩から斜めに斬り裂かれ、傷口は今も大量出血を引き起こし服を紅く染め、所々に少しだけ骨すら見える。もはや今生きていることすら奇跡だった。
あの時、日色が咄嗟に文字魔法で『守』を書いていなければ日色は両断されていただろう、しかしそれだけでは生き残れなかったのだが今は関係ないので割愛する。
ハジメは日色の頭をゆっくりと少しだけ上げ、その隙間に自分の片足を入れる。伸ばした自分の足の上に乗せた後、どうにか鉱石を片手で持ち上げ、滴る水滴を日色の口の中へと垂らしていく。
小さくだがコクリコクリと飲んでいく音が聞こえ、徐々にだが胸の傷が塞がっていき、呼吸が穏やかになっていく。
それに安堵してようやく自分達が生き残ったことを実感したハジメはそのままズルズルと壁にもたれながらへたり込んだ。
そして思い出した死の恐怖に震える体を抱え、体育座りしながら膝に顔を埋めた。
既に脱出しようという気力はない。ハジメは心を折られてしまったのだ。
なぜならハジメを餌としてしか見ていない捕食者の目を向けられてしまったのだから。弱肉強食の頂点に立つ人間がまず向けられることのない目だ。
敵意や悪意になら立ち向かえたかもしれない。あのような捕食者のような目でも日色が傍にいたのなら立ち向かえたかもしれないだろう。しかし、日色が切り裂かれたのを見てハジメは完全に心が折れてしまった。
(誰か……助けて……)
しかしここは奈落の底。
ハジメの声は誰にも聞こえず、日色は一向に目覚めない。
◆
どれくらいそうしていただろうか。
ハジメは壁に体を預け、手足を投げ出してボーっとしていた。
ハジメと日色が奈落に落ちた日から既に四日が経っている。
その間、ハジメはほとんど動かず、日色を介抱しながら滴り落ちる液体のみを口にして生きながらえていた。
と、言っても日色に神水を飲ませ、自分も飲み、何度も何度も、意識を失うように眠りについては、飢餓感と痛みに目を覚まし、苦痛から逃れる為に再び液体を飲んだり、日色に飲ませてやった後、また苦痛の沼に身を沈めるサイクルを延々と続けるだけなのだが。
神水は服用している間は余程のことがない限り服用者を生かし続けるものの空腹感まで消してくれるわけではなかった。死なないだけで、現在、ハジメは壮絶な飢餓感と幻肢痛に苦しんでいたのだ。
(どうして僕がこんな目に?)
ここ数日何度も頭を巡る疑問。
痛みと空腹で碌に眠れていない頭は液体を飲めば回復するものの、回復してクリアになったがために、より鮮明に苦痛を感じさせる。
もう何度、そんな微睡みと覚醒を繰り返したのだろうか。
「こんな苦痛がずっと続くなら……いっそ……」
そう呟いてから、ハジメは傍で眠っている日色の顔を思い出し死ぬ訳にはいかないと思いながら、意識を闇へと落とす。
日色はまだ目覚めない。
◆
それから更に三日が経った。
ピークを過ぎたのか一度は落ち着いた飢餓感だったが、嵐の前の静けさだったかのように再び、更に激しくなって襲い来る。幻肢痛は一向に治まらず、ハジメの精神を苛み続ける。まるで、端の方から少しずつヤスリで削られているかのような耐え難き苦痛。
「……ひ、いろ……目を……覚ましてよ……」
「……ッ………ハッ……うッ……」
そんな痛みに耐えながらハジメは日色の
もはやハジメは精神的に限界が近く既に正常な思考が出来なくなっていた。
パタリと日色の横で倒れ、空っぽな瞳でもはや焦点が合わず霞んでいる視界の中、小さくうわ言を呟く。
「……また……あの……時の…よう……に、……笑っ……て……」
そうしてハジメは再び意識を闇へと落とす。
かつての日常を思い出すように。
そして、夢を見た。
明晰夢、というものがあるらしい。
睡眠中にみる夢のうち、自分で夢であると自覚しながら見ている夢のことであり、夢の状況を自分の思い通りに変化させられるらしい。
だとすれば、今の状況は明晰夢なのだろうか、とハジメは他人事のように思う。
窓辺から差し込む黄昏色の夕日の光が電気のついていない無人の教室の灯りとなって、机を照らす。
そんな中自分の席である窓側から二番目の最後尾の席でハジメは座っていた。
別にハジメは自ら座ったわけではない、奈落の底で眠ってただ気がついたらただ一人席に座っていたのだ。
あの爪熊に食わせた左腕も元通りに存在している。
ハジメは最初、さっきまでの記憶……すなわち異世界に飛ばされたなんてことは夢で、本当は放課後、夕日の光を浴びながら眠っていただけではないか、それで皆が先に帰ってしまっただけなのではないか、と思っていた。
そんなわけないのに。
あの傷ついた日色の姿が、あの切り裂かれる瞬間が今でもハジメの脳裏にこびり付いて離れていないのだから。
では、だとすればここは一体どこなのだろうか?やっぱり、夢なのだろうか?
そんな内心で思った疑問に答えるように、突然前方から声が聞こえた。
『――まぁ、夢かといえばここは夢の部類に入るだろうね』
「ッ!!?」
そうハジメとまったくの
そして、ハジメの視界に声の主の姿が目に映るとともにハジメは無意識に歯を噛み締める。
茶髪の混じった黒髪がハジメと同じ寝癖無く少し外側に跳ねたショートカットに纏められ、ハジメと同じ制服を着て、顔つきも全くの瓜二つ。
ただし、雰囲気とその瞳の色は対極だった。ハジメは気弱でオドオドとした印象を与えるような雰囲気を与えるのに対し、目の前の少女はその真逆、濁りに濁った紅色の瞳は何もかもを憎むかのような禍々しく、雰囲気は昏く、冥く、暗い。
もし、ハジメを知っているものが見たのなら確実に別人だと答えるだろう。
それほど、両者は決定的に違っていたのだ。
そんなあまりに変わっている『彼女』は、『ナグモハジメ』は南雲ハジメの到来を歓迎するかのように笑う。
『ようこそ、【南雲ハジメの世界】へ。そしてこの姿では初めましてだね、
彼女はそう言って壊れきった笑みを浮かべたのだった。
◆
『……とは言っても、流石にボクも此処に来るとは思っていなかったけどね。本来此処は絶望の深さがボクに近くなければ来れないはずなんだけどなぁ?ボクだって日色が傷ついたことに動揺したけど今の君には正直言ってがっかりだよ』
「……黙って」
やれやれと呆れたように呟く『ナグモハジメ』にハジメは『ナグモハジメ』を親の仇の如く睨み、小さく呻くように言い返す。
そのようなハジメの態度に『ナグモハジメ』はハァ、とため息を吐く。
『またその反応?いい加減、ボクも飽きてきたよ』
「……うるさいっ、僕はお前に関わっている暇なんてないんだ。早く目覚めて日色を――『助けるって?』ッ!?……そうだよ!」
ハジメの声に被さるように呟いた『ナグモハジメ』の言葉にハジメは同意の意を示すと『ナグモハジメ』はへぇ、と呟いてピョンと座っていた机から降りた。
『なるほどねぇ……なるほどなるほど』
まるで何かに納得したかのように何度もなるほどなるほど、と呟いてハジメへと歩んでいく。
『つまり君は日色を助けたいと言うんだね?早く起きて日色にあの謎の水を飲ませなければ、と』
「……何が言いたいの?」
ハジメには『ナグモハジメ』の言いたいことが理解できなかった。
日色を助けたいのは当たり前だろう、ハジメにとって日色は大切な人なのだから。
日色を助けるにはあの水を飲ませるしかないのだ、だから早く起きないと――ッ!!?
そう思うハジメの目の前まで『ナグモハジメ』はなるほど、と呟いて直後笑顔でこう言った。
『嘘つき♪』
呼吸が止まった。
目の前の少女がハジメには何を言っているか理解できない。
嘘つき?僕が?コイツは一体何を言っているんだ?
「――なっ、何言ってッ!!?」
『やれやれ、ボクは君から生まれた人格だよ?君の本心なんて知っているに決まっているじゃないか。日色を助けたい?――嘘をつくなよ、君の本心はもっと醜い。君はただ日色に褒めてもらうことに存在意義を見出して行動しているに過ぎないんだ』
思考が空白に染まった。
心のどこかで何かが目の前のコイツの言葉を聞くことを拒絶している。
だというのにハジメの身体は一向に動かず、『ナグモハジメ』の言葉を何もせず聞くことしかできない。
「ち、違ッ――」
『いいや、違わない。君の行動原理はそれだけなんだよ、『
『ナグモハジメ』は嗤う。未だに目を背けている『南雲ハジメ』を侮蔑するように。
『ナグモハジメ』は嗤う。自分の醜い欲望に気づかない『南雲ハジメ』を嘲笑う様に。
そんな彼女の言葉にハジメは自制が出来ないほど身体が震えていた。
『君にとって世界は日色と……あとは両親だけかな?君にとってそれ以外の人は興味すらないもんね、例え日色以外のクラス全員が全員死んだとしても君は悲しんだりしないだろう?……あぁ、ごめん、間違ってた。
「そ……ん、な……わ、けが……ちがッ……ぼ、僕は……」
止めろ、これ以上言わないでくれ。
ハジメの何かが壊れていく、崩れていく。
もはや、ハジメの心は壊れかけていた。
『日色に嫌われないように、日色に褒められるように友達も作ったんだよね。えーと、確か白崎香織と八重樫雫、だっけ?よかったね、友達が出来て!嬉しかったよね、何故なら
そう、それこそがハジメの本質。
ただ日色に褒めてもらいたい、お前がいてくれてよかったと言って欲しい。
逆に言えばハジメにとって
『だから、日色のあの水を飲ませようとしているんだよね。何故なら水を飲ませるだけだ。日色が目覚めてくれたらきっと褒めてくれるはずだから!本当なら最善は命懸けで魔物を倒し、日色の周りの安全を確保することなのに、もし日色に拒絶される可能性が怖いから!』
「もう止めてッ!!」
そして遂にハジメが制止の言葉を叫んだ。
もはや今のハジメには元の姿の面影もない、まるで怯えた子犬のように椅子の上に膝を折りたたんで『ナグモハジメ』の声を聞かないように耳を塞いで震えている。
そんなハジメの姿を見て『ナグモハジメ』は溜息を吐く。
『……それでどうするの?このままだと日色は死んじゃうよ?』
「…………………………え?」
その『ナグモハジメ』の言葉に呆然といったように反応し、顔を上げると『ナグモハジメ』の姿は消え、そこにはさっきまでの教室ではなくなっていた。
変わった場所は一言で言うならば葬式だった。
目の前には白い棺が鎮座して、その奥の段には数々の花が刺されており一枚の写真が飾られている。
だけど、その写真に写っていたのは――
「 ぇ ? 」
あまりにその写真に見覚えがありすぎてハジメの口から疑問の声が場違いのように呟かれる。
ハジメはもはや無意識のようにフラフラと棺へと歩き出す。
そして、ゆっくりと柩の蓋へと手を持っていき、勢いよく棺を開け中身を視認した。
「 ぁ ぅ ッ ぁ ぁ、ぁあああ――――――――――ッ!!?」
目の前に映された光景にハジメは一歩、そして二歩と後ずさり、ドサりと尻餅をついてしまう。
そんなハジメに現実を認識させるかのように背後で『ナグモハジメ』は語る。
『君が飲ませた謎の水は確かに凄い回復効果があった。だけど、だからこそ問題なんだよ、あんな日色の重傷を一気に治してしまったら体力が無くなって衰弱してしまうに決まっているだろう?もしかしたらあの謎の水は本来衰弱はしない、万能な回復薬かもしれない。だけど、アレ程の傷を一気に治してしまえば衰弱で死ぬ可能性も少なくはないんだよ』
そう語る『ナグモハジメ』の声などハジメには届いていない。
なぜなら、今ハジメの目の前で、棺の中に死んだように眠っているのは――
――ハジメの大切な、神代日色なのだから。
「ぁあああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!?」
ハジメの壊れた絶叫が辺りに響き渡る。
ハジメの瞳が節操なくギョロギョロと動き回り、止めどなく涙を溢れ出しながら、髪を何度も掻き毟っていく。
この光景を見るだけでハジメにとって『神代日色』がどれだけ大切な存在かがわかるだろう。
しかし、そんなハジメへと淡々と『ナグモハジメ』の声が響く。
『それは君のせいで起こる可能性の一つの出来事だよ。君がこのまま悲劇のヒロインを気取ったままで日色に甘え続けれるほど世界は甘さも優しさも救いもないことぐらい、嫌でもわかってるはずでしょ?』
そう『ナグモハジメ』が呟き、右手を無造作にパチンっと鳴らすと再び景色が変わる。
爪熊によって斬り裂かれ血溜まりに沈む日色の光景。
異世界で見たような鎧を着た騎士達に斬り裂かれた日色の光景
大量の狼の魔物に肉片も残らず全身を蹂躙され地面に血痕しか残らない光景。
『だけど君は甘え続けた、日色の為だと嘘をついて。それでこのザマだよ、こんな取り返しがつかなくなるあの時になっても君は甘え続けてた』
他にも、他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも他にも。
何度も何度も数々の悲惨な光景がハジメの目の前に映し出される。
『日色は、君のせいでこうなっているんだ。わかってるでしょ?』
「―――――――――――――――」
そして元の教室の光景に戻った時には既にハジメには言葉をあげる気力すら無くなっていた。
あまりの悲惨な出来事の連続に、元々精神的に限界に近かったのが遂に限界を超えたのだ。
まるで糸の切れた人形のようにへたり込んで『ナグモハジメ』の言葉にすら何の反応すら示さなくなってしまっている。
『それでも君が日色に甘え続けるっていうならさ――』
そんな何の反応も示さないハジメに『ナグモハジメ』はコツコツと音を立てながら近づいてきた。
そして――
『――もう、ボクが代わりに終わらせるから死んじゃえよ』
――ハジメを押し倒しマウントを取るとともにハジメの喉元を掴み力強く締め始めた。
「――――ガッ!?――――ッ!!」
『ボクにとっても
眼を見開き、呼吸を行おうと何度も口を開口させるハジメに対し『ナグモハジメ』は無表情で更に絞める力を強めていく。
ハジメは一切抵抗しなかった。なぜならハジメは自分の本質を知ってしまったから、自分が日色に甘えているだけだということが理解できてしまったのだから。
そして――
【―――、――――――――。――――、――――】
――どこからか、懐かしい大切な人の声がハジメの脳裏をよぎった瞬間。
『さようなら、
グキリッ!と骨が折れる音が響いた。
◆
グキリッ!と骨が折れる音が聞こえた。
その音は確実に折れた音であり、もし首ならば確実に死んでいるだろう。
『―――なッ!?』
骨を折ったのがハジメであり、手首を折られ、驚愕しているのが『ナグモハジメ』だったが。
「―――ッ」
ハジメは『ナグモハジメ』の手首を折ったと共に『ナグモハジメ』の腹を蹴り飛ばし、マウントを逆転させる。そのままさっきの出来事を逆転するように今度はハジメが『ナグモハジメ』の首を絞め始めた。
『どう……いう……こ、と……?まだ、日……色に……甘える、つもり……?』
「…………思い、出した」
『……何?』
困惑する『ナグモハジメ』にハジメは大切な思い出を思い出すように語っていく。
「……昔、日色と約束したんだ。【いつか、俺が困った時お前が助けてくれ】って、【お前にしかできないことはある】って。こんな僕を……頼りにしてくれたんだ」
ハジメが思い出したのは自宅で日色と勉強会を行ったあの日のこと。ハジメの灰色の世界を彩らせて救ってくれた日色との約束。
【いつか、俺が困った時お前が助けてくれ。これは貸しだ、絶対忘れるなよ】
何故なら約束とは互いに取り決めを行い、その内容を実行すること。
つまりそれは
故にハジメは立ち上がった、立ち上がることができた。
「――だからこんなところでは消えるわけにはいけないっ、僕は日色に大きすぎる借りを返すんだ!」
『それ……は、……彼なりの……優し、さ……だ、よ。結、局…君は……日色に、甘えているだけ……じゃないかッ!』
「違うッ!」
憎しげにハジメを睨みつけながら自分の喉元を締め付けるハジメの両腕を手首の折れていない片手で掴み、引き離そうとしながらハジメの本質をつく『ナグモハジメ』の言葉にハジメは断固引かず否定する。
「――僕はもう逃げない。僕は、
『―――――』
そうハジメは宣言した。
日色に甘えるのではなく、嫌われないように顔色を伺いながらヒロインを演じるわけでもない。
この世の全ての理不尽から日色を守る、とそう宣言したのだ。
それを聞いた『ナグモハジメ』は目を細め、瞬間。ハジメの両腕をそんな細腕で、しかも片手でありながらありえない力を使って自分の喉元から引き離す。
「――ッ!?」
『ハハッ!守る?守るだって?――ふざけるなよ』
『ナグモハジメ』は握っているハジメの両腕を自分の喉元から離し、それに動揺したハジメの一瞬の隙をついてハジメの左腕を握りしめて一息で
「――ぁグガッ!!?」
爪熊に切り裂かれた時と同じように再び左腕から灼熱に溶けた真っ赤な鉄の棒を傷口に入れられぐちゃぐちゃに掻き回されたかのような激痛が奔る。
そんなハジメに『ナグモハジメ』はまるで様々な感情が一気に浮かび上がったような表情で歯を食いしばり、ハジメへと叫ぶ。
『何が守るだッ!誰かを傷つけることができない偽善者がっ!昔も、そして今も一切抵抗せず、記憶も思いも全て
「――ッ」
それはまさしく切り捨てられた者の叫びだっただろう。
そう言って、『ナグモハジメ』はハジメを足で突き飛ばし、体勢を崩させる。
そして倒れたハジメへとどこから取り出したのか右手にナイフを逆手に持ち、一息で振り下ろした。
『――そんな奴が今更っ、何を守れるって言うんだッ!』
そんな万感の叫びと共に振り下ろされたナイフは寸分違わずハジメの喉元の寸前で停止していた。
もはやあと少しのチカラでナイフを押し込むだけでハジメの喉元は貫かれ、呼吸ができなくなり死に至るだろう。
しかし、どれだけ経ってもハジメの喉元へとナイフが押し込まれることはなかった。
「……………………」
『………………ねぇ、一つ…聞いていい?』
何故なら、既に『ナグモハジメ』の腹へ『ナグモハジメ』が持っているナイフと全く同じナイフが刺さっていたのだから。
当然、それを行なったのはハジメだ。ナイフを振り下ろされる寸前、まるで空中から現れたかの様に右手に現れたナイフで『ナグモハジメ』の横腹を刺したのだ。
カシャンと『ナグモハジメ』の手からナイフが零れ、床に落ちたと同時に徐々にナイフが刺さった『ナグモハジメ』の横腹から血が流れ、彼女の服を紅く染め上げていく。
しかし、そんな傷を受けてもまるで痛みを感じないかの様に『ナグモハジメ』は変わらない声色でハジメへと質問する。
『……どうやって、敵から日色を守るつもりなの?日色からの拒絶を恐れて誰かを傷つけることが出来ない君が?』
「だったら――私が変わればいい。私が変わって敵を殺して日色を守る、ただそれだけだから」
『――その生き方は、日色に拒絶されるかもしれないよ?』
そう、ハジメが選ぼうとしている道はまさしく修羅の道だ。
生きる為に、日色を守る為に必要だから日色の生存を脅かす敵は全て滅殺する。
そんな生き方をすればきっと日色に拒絶されるだろう。
だからこそ『ナグモハジメ』は問うのだ。
それでいいのか?と
「構わない」
答えは是だった。
ハジメは何の躊躇もなく、何の動揺もせず、即答した。
日色のために、例え日色にすら拒絶されたとしても日色の敵を滅殺する道を選んだのだ。
「私は、それで日色が守れるのなら、それで日色が幸せならそれでいい!」
この時、この瞬間、南雲ハジメは優しく穏やかで、対立して面倒を起こすより苦笑いと謝罪でやり過ごす南雲ハジメは完膚無きまでに豹変した。
否。
これは決して豹変ではない。これこそが本当の『南雲ハジメ』なのだ。
ただ今まで日色に拒絶されることを恐れ、ありふれた少女を演じていただけなのだから。
神の強いた理不尽も、魔物の敵意も、世界なんてどうでもいい。
大切なのは『神代日色』だけ。
だから彼のためならばクラスメイトだろうと、世界だろうと、なんであろうと滅殺する。
例え拒絶されても構わない、嫌われても構わない、それで日色を守れるというのなら。
例えるならば今までの『南雲ハジメ』は鞘だ。波紋を隠し、刃を隠し、世界から逃げていた臆病者。
だが今の『南雲ハジメ』にはその鞘はもう無い。幼き時から溜め続け、鋭く強く、そして鋭利に森羅万象を尽く斬り裂き滅殺するが如き儚くも美しく、禍々しくも輝く呪いの妖刀だ。
『……そう、だったらせいぜい頑張りなよ』
そのハジメの決意に『ナグモハジメ』は小さく笑った。
スッと立ち上がり、横腹から溢れ続けている出血すら無視してハジメから距離を取るように歩いていく。
『だけど、その道を選んだ君はいつか必ずボクと同じように絶望する』
「何…言ってるの?」
『――ただの忠告だよ。気にしなくていいさ』
ハジメの疑問の声に言葉を返すと共に『ナグモハジメ』はクルッと背後のハジメへと振り向いて、笑顔を向けた。
その笑顔はあまりにも狂っていて、壊れていて、絶望していて、そして何よりも――
『それじゃあね、
――ありふれた少女が泣くのを必死に堪えているようにハジメには見えた気がした。
瞬間、ハジメの視界がまるでテレビの電源を消したかのように一本線に収縮し、プツリと意識を失った。
◆
「……………ぅ………………っ?」
ハジメは右手から感じる冷たい液体の感覚に目を覚まし、ゆっくりと瞼を開いた。
薄暗い視界の中、神結晶の青い輝きが周囲を微かに照らしている。
どうやらハジメが触れた冷たい液体は地面の窪みに嵌めた神結晶から溢れた神水のようだ。意識を失う寸前に見た時より神水の水溜りの深さが増している為、1、2日ぐらいは眠っていたのかもしれない。
「……………………ッ………グッ………」
「――日色っ」
日色の呻き声を聞くと共にハジメは慌てて起き上がり神結晶へと手を伸ばす。
1、2日意識を失っていたと言うことはそれまで日色に神水を飲ませることが出来なかったことに他ならない。ハジメの身体はすっかり弱っていてろくに力が入らなかったが、どうにか右手だけで神結晶を持ち上げ、いつものように日色の口へと神水を飲ませる。
ようやく、日色が規則正しい呼吸に戻ってきたことで一息つく。
「――――――ッ」
すると同時に再び忘れていた飢餓感と幻肢痛がハジメに襲いかかる。
ハジメはその苦痛に少し顔を歪めるが、その苦痛を無視して倒れている日色の手を握る。
かつて日色の手に触れた時に感じた体温程暖かくは無かったがそれでも恒温動物特有の体温を感じ、ハジメは頰を緩ませる。
そう、生きている。日色はまだ生きているのだ。
ならば自分がどうするべきか、などは考えることもなく理解している。
ハジメは弱った身体を動かし、地面の窪みに溜まった神水を犬の様に直接口をつけて啜った。飢餓感も幻肢痛も治らないが、体には活力が戻ってくる。
ハジメは、濡れた口元を乱暴に拭うともう一度眠っている日色の顔を見て、優しく微笑んだ。
「待ってて、日色」
そして瞬間、ハジメの表情は一変する。瞳をギラギラと光らせ、小さく歪んだ笑みを浮かべる。まさにかつてのハジメを見たのなら豹変という表現がぴったり当てはまるだろう。
禍々しくも美しい笑みを浮かべながらハジメは錬成を始めながら宣言するように呟いた。
「――日色は、私が守るから」
奈落の化物が生まれる時は近い
うん、自分でも何を書こうとしているのかさっぱりわからないね!(遠い目)
というかこれって豹変というのかなぁ?
まぁ、補足説明をしますと今までのハジメちゃんは基本的に日色の前以外では本心を言っていません。香織や雫達と親しくしているのはそうすると日色に褒めてもらえると思っていたためありふれた少女を演じていただけなのです。
ハジメちゃんは日色に健気に尽くしていますがあくまでそれはありふれた少女としての範囲であり、日色に微かでも拒絶される可能性があるのならそのような行動をしません。
外に出ず日色に神水を飲ませていたのは恐怖で出ることができなかったのではなく『ありふれた少女ができる行動範囲』から超えていたからです。
要は今までのハジメちゃんは『日色に褒められるよう健気に尽くすがあくまでありふれた少女の行動範囲でしか動かず、日色に拒絶されることを極端に恐れている』というわけです。
しかし、これからのハジメちゃんは『日色に拒絶されても日色が守れたならそれでいい』と開き直りました。ですからこれからの行動はまさしく豹変といったような行動をするでしょう。……筆者はそう動かしたいです。
ところで豹変したハジメちゃんの口調……ちゃんとクールになってますかね?