ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター)   作:アルテール

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こんにちは、おそらく今年最後の投稿をするアルテです。

ようやくここまでたどり着くことができました!ハジメちゃんの豹変後の姿を何度想像したか……

まぁ一つハジメちゃんの口調が安定しない問題があるんですが……

そんなわけで今回はハジメちゃん一人による戦闘回&魔王の誕生です。
もちろんのこと日色は空気、え?勘違い?何それ美味しいの?

ハジメちゃんの豹変後の容姿のイメージは後書きで書いてます。異論は認めない。

それではどうぞ( ´ ▽ ` )


魔王の生誕

迷宮のとある場所に二尾狼の群れがいた。

 

二尾狼は単体ではこの階層の魔物の中で最弱である為、4~6体で群れで行動する習性がある。故に二尾狼は連携によって単体の弱さを補っているのである。

彼らは周囲を警戒しながら岩陰に隠れつつ移動し、絶好の狩場を探していく。二尾狼の基本的な狩りの仕方は待ち伏せなのだ、突然の強襲で獲物が動揺した隙に集団の連携で獲物を仕留める。これが二尾狼の一般的な狩り方である。

 

しばらく彷徨いていた二尾狼達はやがて納得のいく狩場が見つかったのか各自別れ、それぞれの岩陰に潜んだ。

そのうちの一体が岩と壁の間に体を滑り込ませジッと気配を殺す。あとは獲物がやってくるのを待つだけなのだが何やら違和感を感じた。

二尾狼は狩の成否の要は連携である為、ある程度は繋がりを感じることができるのだ。

明確に意識を疎通できるわけでは無いが仲間がどこにいるのか?どんな感情を抱いているのか?何をしようとしているのか?が大まかにわかるのだ。

 

だがその感覚がおかしい、群れの中の一匹が忽然と消えてしまったのだ。

二尾狼は不審に思い伏せていた身体を起き上がらせようと力を入れた直後、今度は仲間の悲鳴が聞こえた。消えた仲間と同じ壁際にいた一体から焦燥感が伝わってくる。

何かに捕まり必死に脱出しようともがいているようだが中々抜け出せないようだ。

 

それに救援に駆けつける為と二尾狼は立ち上がろうとするが瞬間、再びもがいていた一体の気配が消え失せる。

慌てて、二体は二尾狼が消え失せた場所へと向かい、辺りを見回すが何もおらず困惑しながら、消えた二体が潜んでいた場所へ鼻を近づけフンフンと嗅ぎ、手掛かりを探そうとする。

 

しかし次の瞬間、地面がグニャアと凹み、同時に二尾狼二体を覆い尽くすように壁がせり出した。

咄嗟に二尾狼は跳び退こうと足に力を入れるが、その前に沈んだ地面が戻り、足を地面に固定されてしまう。しかし、所詮ただの地面だ。これくらいなら直ぐに破壊し脱出できるだろう。

 

だが、地面が凹むという突然の現象に二尾狼は一瞬だが対応が遅れてしまう。勿論襲撃者はその隙を決して逃すわけがない。

 

「グルァア!?」

 

まるで地面に溶けるかのように壁が二尾狼を覆い、瞬く間に地面へと引きづり込んでいく。

二尾狼は足が固定されていることで何の対応もできず悲鳴をあげて引きづり込まれるしかない。そして最後には、元の平らな地面しか残っていなかった。

 

そして入れ替わるかのように新たに壁がまるで溶けるが如く穴が開いて中から人が現れた。

 

「これで全部……かな?」

 

そう、ハジメだった。日色を守る決意をした日から飢餓感も幻肢痛も全て捩じ伏せて、神水を飲むことで魔力を回復させ、錬成の鍛錬を延々と行っていたのだ。

あくまでハジメの武器は錬成だ、このまま外に出ても死ぬのがオチだということを悟ったハジメは魔力を神水で回復させ、もはや狂気に等しいレベルで打ち込み続けていたのだ。

より早く、より広範囲に、より硬く、より複雑に、と。

 

元々技能[+高速錬成]を持っていたハジメである、丸一日軽く何千回と続けていくことで効果射程範囲は七メートルに増え、一度の錬成範囲は五メートルで可能になり、簡易な剣や槍程度の武器も数秒で作れるようになっていた。もっともあくまで錬成である為土属性魔法のような直接的な攻撃力は皆無なのだが。

 

そしてハジメは神水を石を加工した容器に入れ、錬成を用いて隠れながら迷宮を進み標的を探していた。今ハジメが欲しいのは日色の安全のために己の力が通用するかどうかなのだ、このまま迷宮の魔物を殺せなければ日色を守ることなど決して不可能なのだから。

そこで見つかったのが二尾狼達である。二尾狼達が岩陰で獲物を仕留めようと待ち伏せしていたのを見つけた為、それを逆手に取り逆に地面に引きづり混んだのである。

 

「さてっ……と、まだ生きている?……まぁ、私の錬成で仕留めれるとは思っていないけど」

 

そう言ってハジメは足元の小さい穴から中にいる二尾狼を覗く。その奥にはまさに壁の中とでも言うように周囲を石で固められ身動き一つできない二尾狼達がいた。完全に周囲を石で囲まれている為焦燥の滲んだ低いうなり声を上げるしかない。

その光景にハジメは「…やっぱりね」と呟きながら小さく溜息をつく。

以前、ハジメは孤立した魔物を落とし穴に落とし、底に石の刺で攻撃したことがあったがその時も突き破る速度も威力も足りず結局は断念することとなった。

 

「……【錬成】」

 

ハジメは右手を壁に当て、錬成の魔法を酷使する。作るのは簡素な槍だ、だが先端を螺旋状に変え持ち手の部分に手に持てるハンドルを取り付ける。

空色の魔力を迸らせながら約3秒で片手で扱える簡素な細い石槍が出来上がる。

ハジメは出来上がった石槍を軽く一、二回クルクルと片手で回転させた。

 

「まぁまぁ、ね――ん?」

「グァアッ!!」

 

ふと声がした方へとハジメは振り向くと視界の先には二体の二尾狼が此方へと向かってきていた。どうやら群の数は合計で6体だったらしい。

 

「…まだ居たのね」

 

そう呟いてハジメは槍を自分の右脇に通して、槍を構える。

元々槍など使ったことなどないのだ、構えなど適当だが生憎と此方は槍を相手に()()()()()()()()()()

 

すると、真っ先に此方へと向かってきた一体が一気にハジメへと距離を詰め、飛びかかってきた。その速度は流石に蹴りウサギ程ではないが視認は出来るものの避けれる速度ではない。

 

「グルァ!!」

「……ッ!」

 

だからハジメは躊躇せず槍を盾の様に前に出し背後へ跳ぶように身体を後ろへと傾けた。

避けられないのならいっそのこと逆らわず勢いを逸らそうとしたのだ。自ら後ろに下がることで襲い掛かる衝撃を和らげ、誤って槍を落としたり、吹き飛ばされないようにするためのハジメの策である。

その策が功を奏したのだろう、後ろへと飛んだことで二尾狼の突撃の衝撃を和らげることができ、ハジメの貧弱な力で――しかも片手でありながら槍を落とさず防ぐことができた。

 

「――はぁッ!」

 

そして、その攻撃の直後に出来た隙を決してハジメは逃さない。

二尾狼の飛びかかりを防いだことで二尾狼の身体が重力に従い地面へと着地した。

その着地する瞬間を狙いハジメは槍を叩きつけるように片手で振るう。それは別に槍術を学んだ者が見れば確実に初心者だと分かり、そのような振り方では決して魔物を仕留めることなど出来はしない、それ程の拙い槍の扱い方だ。

だが、ハジメの狙いは槍で魔物を斬殺するわけでも、刺殺するわけでも、撲殺するわけでもない――

 

「ギャンッ!?」

「――ッ、【錬成ッ】」

 

――錬成による捕獲である。

 

ハジメの振るった槍が二尾狼の胴体に直撃すると共にハジメの手袋から水色の魔力が石槍を伝わり――二尾狼の胴体に直撃した時に触れた()()へと流れていく。

瞬間、再び二尾狼を地面が喰らうかのように二尾狼を中心に壁が覆いかぶさり、二尾狼が悲鳴を上げる間もなく先ほどと同じように地面に飲み込まれた。

ハジメの錬成とは対象には直接手を触れなければ効果を発揮しない術である以上、敵の眼前でしゃがみ込み、地面に手を突くという自殺行為をしなければならないがこれには抜け道が存在する。

 

それは地面を錬成される時に地面と同じ材質でできた物を地面に触れさせて錬成すればわざわざ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

何故なら錬成とは魔力を対象に流して物質の形を変えて、加工を行うことができる。それはつまり錬成の魔法を用いることで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

だからこそ、同じ材質のものならば介して錬成を行うことができるのである。

 

ハジメは二尾狼が地面に飲み込まれたことを確認すると共にすぐさまもう一体の方へと視線を向ける。

もう一体の二尾狼はハジメが油断ならない相手だと認識したのか、グルルと唸りながらその尻尾を逆立てる。すると、その尻尾がバチバチと放電を始めた。どうやら固有魔法を使うつもりのようだ。

 

「そんなこと――「グルゥア!!」――させるわけ無いでしょっ!」

 

咆哮と共に電撃がハジメへと放たれる瞬間、ハジメは一本の矢と化した。

まるで短距離走のスタート体勢のように身体を沈ませ、槍を一直線に二尾狼へと向ける。

そして、ハジメは自分の足元へ二尾狼めがけて石壁を錬成した。そう、あのベヒモス戦で使った[+高速錬成]による射出錬成である。

槍は矢尻、ハジメはシャフト、そして羽は錬成による石壁だ。蹴りウサギの飛び蹴りに引けを取らない速度でハジメは加速し電撃を放とうとした二尾狼へと直撃、そのまま突き進み、二尾狼の背後に存在する壁に激突した。

 

「グルァアアー!?」

「これでも死なないの?……硬すぎ」

 

ハジメは肩が外れたのではないか?と思わせるほどの右腕から奔る衝撃に顔を歪めながら嘆息する。

ハジメの突進を食らった二尾狼は決して軽症ではないが未だ健在だった、魔物は強くなればなるほど硬いというのが基本なので、この二尾狼の皮膚は今までの魔物よりは圧倒的に硬いのだろう、硬い皮膚はなんとか貫けたが皮膚にエネルギーを使いすぎたのだろう、槍は微かに体内を傷つけただけで済んでしまったようだ。

まぁ、それを認識した途端ハジメは錬成で槍の形状を変化させ壁と結合させることで身動き一つ取れないようにしたのだが。

 

これで全部の二尾狼の群れを捕らえたことを確認したハジメは再び錬成を用いてさっきと同じ槍を生み出す。

 

「あとは……掘削っと」

 

そしてさっき捕らえた二尾狼へと近づいてハジメはその槍を突き立てた。硬い毛皮と皮膚の感触がして槍の先端を弾く。

 

「やっぱり刺さらない……か、まぁ想定内だけど」

 

そうしてハジメは槍を二尾狼に刺すと共にハンドルをグルグルと回した。それに合わせて先端の螺旋が回転を始める。そう、ハジメが作った武器は魔物の硬い皮膚を突き破るために考えたドリルなのである。

 

本来なら地面に埋めた魔物にトドメを刺すために作ったため上から体重をかけながら殺そうと思ったのだが目の前の二尾狼は壁に埋まっているため前に体重をかけねばならず、少し力が多く必要になってしまう。

そうして必死に回していると少しずつ先端が二尾狼の皮膚にめり込み始めた。

 

「グルッ!?グギッ、グガァ!!?」

 

その激痛にたまらず二尾狼が絶叫するが――

 

「うるさい」

 

――ハジメが言葉と共に顔面に蹴りを放ったため絶叫が遮られてしまう。

 

「私はお前に一ミリも興味がないの。断末魔なんてうるさいだけだから黙って死んで」

 

淡々とそう言いながらさらに前に体重を掛けドリルを回転させる。二尾狼が必死にもがこうとしているが、周りを隙間一つなく埋められているのだから不可能だ。

 

そして、遂に、ズブリとドリルが二尾狼の硬い皮膚を突き破った。そして体内を容赦なく破壊していく。断末魔の絶叫を上げる二尾狼。しばらく叫んでいたが、突然、ビクッビクッと痙攣したかと思うとパタリと動かなくなった。

 

「やっと、飯確保ね」

 

そう嬉しそうに嗤いながら、残りの5頭もトドメを刺していく。そして、全ての二尾狼を殺し終えたハジメは錬成で二尾狼達の死骸を取り出すと、安全に食事をするために片手で担ぎながら元の寝ぐらへと戻っていった。

 

 

6頭の二尾狼を運び終えたハジメは日色が眠っている寝ぐらへと戻ってくると片手に不自由しながら毛皮を剥がしていく。

 

あの時掘った洞窟は現在ハジメが拡張して二つの部屋となっており、入口はハジメがキチンと閉じてある。

部屋を二つ作った理由は簡単だ、魔物の死骸を解体する際に血の匂いで日色の体調が悪くならないようにする為である。

 

そんなわけでハジメは日色が眠っている部屋の真横の部屋で食欲を必死に抑えながら適当に毛皮を剥いだ後、必死に二尾狼の肉を咀嚼していた。

 

「あぐぅ、がぁ、オエェ!うグッ、まずいっ……」

 

緑光石の明かりが暗闇をぼんやりと辺りを照らす中、ハジメの姿は完全に野生児といった様子だ。現代の人間から見れば酷くおぞましい姿に映っただろう。

 

ハジメは悪態を付きながら二尾狼の肉を必死に喰らっている。

 

硬い筋ばかりの肉を、血を滴らせながら噛み千切り必死に飲み込んでいく。およそ二週間振りの食事だ。いきなり肉を放り込まれた胃が驚き、キリキリと痛みをもって抗議する。だが、ハジメはそんなもの知ったことかと次から次へと一心不乱に齧り付き飲み込んでいった。

 

強烈な血の味と獣臭に涙目になりながらも何度も吐き出しながらも口いっぱいに詰め込み神水で強引に飲み干す。

それは決してまともの人間のするような食事ではなかったが飢餓感が癒されていく感覚にハジメは陶然とする。

飯を食えるということがこんなに幸せなことだったとは思いもしなかったのだ。夢中になって喰らい続ける。

 

どれくらいそうやって喰らっていたのか、神水を飲料代わりにするという聖教教会の関係者が知ったら卒倒するような贅沢をしながら腹が膨れ始めた頃、ハジメの体に異変が起こり始めた。

 

「ん?――っ?アギッ!?」

 

突如全身を激しい痛みが襲った。まるで体の内側から何かに侵食され、己を壊そうとするようなおぞましい感覚。その痛みは、時間が経てば経つほど激しくなる。

 

「がぁあああっ。な、何がっ――ぐぅううっ!」

 

耐え難い痛み。何度も暗転する視界。ハジメは地面をのたうち回る。幻肢痛など吹き飛ぶような遥かに超えた激痛である。

ハジメは震える手で懐から石製の試験管型容器を取り出すと、端を噛み砕き中身を飲み干す。直ちに神水が効果を発揮し痛みが引いていくが、しばらくすると再び激痛が襲う。

 

「ひぎっ!ぐがぁああッ!?――な、なんで!?なおらなぁ、あがぁぁ!」

 

ハジメの体が痛みに合わせて脈動を始めた。ドクンッ、ドクンッと体全体が脈打ちそして同時に至る所からミシッ、メキッという音さえ聞こえてきた。

 

しかし次の瞬間には、体内の神水が効果をあらわし体の異常を修復していく。修復が終わると再び激痛。そして修復。また激痛。

 

神水の回復効果のおかげで気絶することもできない。絶大な治癒能力がアダとなった形だ。

 

ハジメは絶叫を上げ地面をのたうち回り、頭を何度も壁に打ち付けながら終わりの見えない地獄を味わい続けた。流石に死にたいとは思わないがあまりの激痛で思考が炸裂するため絶叫しながらひたすら耐えるしかない。

 

すると、ハジメの体に変化が現れ始めた。

 

まず髪から色素が抜け落ちていく。おそらく許容を超えた激痛と破綻しかけた精神のストレスが原因だろう。日本人特有の黒髪がどんどん白くなってゆく。

そして神水による超回復による細胞分裂のお陰だろうか?髪が白くなっていくと同時に髪が伸び、首元までだった髪が背中ぐらいまで伸びていく。

 

続いて骨格がゴリゴリと音を立てながら動き、どこにでもいるありふれた女子の体型から最適化され、括れが細くなりそこから先の殿部はしっかりと大きく、腰つきは実に艶めかしいラインを描く女性でも羨むような抜群のスタイルへと変化していく。

 

筋肉は太くなるのではなく、筋繊維の一本一本の強靭な耐久力とそれ相応の重量を持つように変わっていき、肌は汚れ一つないのではないかと思わせるような淡い肌色になっていき、体の内側に薄らと赤黒い線が幾本か浮き出始める。

そして注目の胸は平均のCカップだったのが大きくも決して邪魔にならないDカップほどになっていく。

 

超回復という現象がある。筋トレなどにより断裂した筋肉が修復されるとき僅かに肥大して治るという現象だ。

怪我をすれば怪我をするたびに皮が厚くなるように、骨が折れれば骨の強度が増すように。

今、ハジメの体に起こっている異常事態も同じである。

 

魔物の肉は人間にとって猛毒だ。魔石という特殊な体内器官を持ち、魔力を直接体に巡らせ驚異的な身体能力を発揮する魔物。体内を巡り変質した魔力は肉や骨にも浸透して頑丈にする。

 

この変質した魔力が詠唱も魔法陣も必要としない固有魔法を生み出していると仮説されているが問題はこの変質した魔力が人間にとって致命的に猛毒であり、人間の体内を侵食し、内側から細胞を破壊していくのである。

 

過去、魔物の肉を喰った者は例外なく体をボロボロに砕けさせて死亡したとのことだ。実は、ハジメもこの知識はあったのだが、飢餓感がすっかりその知識を脳の奥に押し込めてしまっていた。

 

故に本来ならハジメは変質した魔力によって死ぬはずだったのだがあるものが原因で生き残っているのだ。

 

そう、神水である。

 

壊れたところから強烈な回復能力で回復していく、その結果肉体が凄まじい速度で強靭になっていくのだ。

 

それはまさに破壊と再生の輪廻。

 

壊れては治るたびに肉体は脈打ちながら変化していく。

その様は、あたかも転生のように脆弱な人の身を捨て化生へと生まれ変わる生誕の儀式。ハジメの絶叫は例えるならば産声だ。

 

やがて、脈動が収まりハジメはぐったりと倒れ込んだ。その頭髪は真っ白に染まっており、服の下には蹴りウサギや二尾狼、そして爪熊のように赤黒い線が数本ほど走っている。それはまるで魔物のようだった。

 

すると、ハジメの右手がピクリと動いた。閉じられていた目がうっすらと開けられる。その瞳は日本人特有の黒眼ではなく真紅に染まった美しい紅色。焦点の定まらない瞳がボーと自分の右手を見る。やがて地面を掻くようにギャリギャリと音を立てながら拳が握られた。

 

ハジメは、何度か握ったり開いたりしながら自分が生きていること、きちんと自分の意思で手が動くことを確かめるとゆっくり起き上がった。

 

「……そういえば、魔物の肉って毒だったっけ……ハァ、迂闊だったなぁ。いや、まぁ食わずにはいられなかったけど……」

 

あまりの激痛で精神が疲れたのか疲れ果てた表情で、自嘲気味に笑うハジメ。

しかし精神とは反して肉体は飢餓感が無くなり、幻肢痛も感じなくなっていた。あまりの壮絶な痛みで消えてしまったのだろうか?

久しぶりに何の苦痛も感じず、それどころか妙に身体が軽く全身に力がみなぎっている様な気がする。

腕や腹を見ると汚れのない美しい肌色でありながらも筋肉がまるで一つの芸術品の様に現在のハジメの姿を損なわない形で綺麗に引き締まっており、腹は括れが細くなってスタイルが美しい曲線を描いている。そして実は身長も伸びており以前のハジメの身長は153センチだったのだが現在は更に10センチ以上高くなっている。

 

「私の体、一体どうなったの?というか何か妙な感覚があるし……」

 

体の変化だけでなくハジメは体内にも違和感を感じていた。温かいような冷たいようなどちらとも言える奇妙な感覚。意識して集中してみると腕に薄っすらと赤黒い線が浮かび上がってきた。

 

「う、うわぁ、気持ち悪い。まるで魔物になった気分。……洒落にならない、しかも何故か髪も伸びてるし……そうだ、ステータスプレートは……」

 

ハジメは耳にかかる伸びた髪をスリスリと弄り、ステータスプレートの存在を思い出すとステータスプレートを探してポケットを探る。どうやら無くしていなかったようだ。現在の自分のステータスを確認すれば体の異常の手がかりが何かわかるかもしれないと思ったのだ。

 

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南雲ハジメ 17歳 女 レベル:7

天職:錬成師

筋力:120

体力:315

耐性:120

敏捷:230

魔力:310

魔耐:310

 

技能:錬成[+高速錬成][+鉱物系鑑定]・魔力操作・胃酸強化・纏雷(てんらい)・言語理解

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「……なんでやねん」

 

昔のように驚愕のあまり癖で関西弁でツッコミを入れてしまうハジメ。ステータスが総じて急増しており、技能も三つに増えている。しかもそれでありながら未だレベル7という数値、最早理解不能である。

レベルはその人の到達度を表していると考えるとどうやらハジメの成長限界も上がっているようだ。

その中でハジメの目を惹く技能があった。

 

「魔力操作?」

 

つまりそれは文字通りに魔力を操作できると言うことだろうか?

ハジメは先程から感じるこの奇妙な感覚こそが魔力なのでは?と推測し、先程と同じく集中して【魔力操作】を試みる。

するとハジメが集中し始めると共に赤黒い線が浮かび上がり、全体に感じる奇妙な感覚――もとい魔力が右手に集まっていく。

 

「おっ、おぉ〜!」

 

なんとも言えない奇妙な感覚に声を上げながら試していると集まっていた魔力が何と右手にはめた手袋の魔法陣へと宿り始める。驚きながらも錬成を試そうとすると、詠唱も無しにあっさりと地面が凹んだ。

 

「……嘘、もしかして詠唱いらずってこと?魔力を直接操作できるのは原則魔物以外いなかったんじゃなかったっけ?……やっぱり魔物の肉を食ったせいなのかな」

 

大正解。ハジメは確かに魔物の特性を取得していたのだ。ハジメは、次に【纏雷(てんらい)】を試そうとする。

 

「……えっと、どうすればいいの?【纏雷】ってことは電気だから……確か二尾狼の尻尾の……」

 

あれこれ試すがなんの変化もない。魔力のように感じるわけではないから取っ掛かりがなくどうすればいいのか分からないのだ。

 

うーむ、と頭を捻っているとそういえば魔法適性があるものはイメージで魔法を行使していたのを思い出す。魔法陣に多くの式を書き込まなくてよい分、明確なイメージがそのまま加工物に伝わるのだ。

 

ハジメはバチバチと弾ける静電気をイメージする。すると右手の指先から紅い電気がバチッと弾けた。

 

『超電磁砲ですね、ビリビリ女乙』

 

とあるバカがその光景を見ればきっと心の中でそう呟くに違いない。

 

「おぉっ、出来た。……なるほど、魔物の固有魔法はイメージが大事ってことね。というか魔力光も赤……じゃなくて紅色に変わってるし……」

 

その後もバチバチと放電を繰り返す。しかし、二尾狼のように飛ばすことはできなかった。おそらく【纏雷】とあるように体の周囲に纏うか伝わらせる程度にしか出来ないのだろう。電流量や電圧量の調整は要練習だ。

 

【胃酸強化】は文字通りだろう。魔物の肉を喰って、またあの激痛に襲われるのは勘弁だ。しかし、迷宮に食物があるとは思えない。飢餓感を取るか苦痛を取るか。その究極の選択を、もしかしたらこの技能が解決してくれるのではとハジメは期待する。

 

二尾狼から肉を剥ぎ取り纏雷で焼いていく。流石に飢餓感が癒された後で、わざわざ生食いする必要もない。強烈な悪臭がするが耐えてこんがりと焼く。途中、纏雷の調整に失敗し、少し焦げてしまったがまぁ、いいとしよう。

 

そしてハジメは一瞬躊躇しながらも意を決して喰らいついた。

 

………………………………………………………………しばらく経っても何事も起こらない。

 

ハジメは次々と肉を焼いていき再び喰ってみる。しかし、特に痛みは襲って来なかった。胃酸強化の御蔭か、それとも耐性ができたのか。理由はわからないがこれで飯を喰う度に地獄を味わわなくて済むことに拳を握った。

 

腹一杯まで肉を喰ったハジメは、保存のために他の二尾狼から肉を切り分ける。最初に比べ幾分楽に捌くことができた。肉をある程度石で作った容器に入れると、ふと自分の現状の体がどうなったか気になった為、壁から錬成で緑光石を取り出した。

現状ハジメの視界は暗闇に慣れてきているとはいえまともに自分の髪すらどうなっているのかわからないのだ、だからこそ緑光石の明るさを使って光を照り返すステータスプレートの裏側を鏡のように使って自分の顔を確かめようとしたのだ。

 

そして、すぐに後悔した。

 

「――な、な、な、」

 

ステータスプレートから鏡のように映る自分の顔は――

 

――穢れ一つない美しい白の長髪が緑光石の光を微かに反射し。

おそらく魔物のような赤黒い線が瞳にも伸びていったのだろう、暗闇にも輝くルビーのような真紅の瞳は前の自分とは別人と思えるほどギラギラと輝き鋭い。

顔つきは地球のアイドルやモデルでさえ比べ物にならなく、まさに空想の人物が現実にポンッと現れたと錯覚してしまうほど整えられている。

 

「なッ――――――――――――――――――――――――――ッッ!!?」

 

そんなあまりの厨二な姿にハジメが数分ほどフリーズしてしまったのは仕方のないことだった。

 




ハジメちゃんの豹変後の容姿はファンキルのレーヴァテインの白髪バージョンをイメージして頂ければ。
え?なぜかって?俺が一番好きだからだよッ!!!!(迫真)
あとはまぁ、短髪にしたらロンギヌスと髪型が似ていたからですね、あとは魔力光が紅色だってと白髪と銀髪って似ているよねってとこから。
ただしレーヴァテインよりかは胸は小さいです、まぁあれは大きすぎるというものもあるけど……

え?異論?そんなもん決して認めんぞ!?
やっぱりレーヴァテインちゃんマジ天使!(知ってる)
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