ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター)   作:アルテール

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お、お久しぶりです……テストで死んだアルテールです、フフ……(乾いた笑み)

そんなことは置いておいて今回は1万6千文字という圧倒的文字数です、正直言って分けようかと思いましたがどうせなのでこのまま投稿することにしました。しばらく書いていなかったので筆力はかなり落ちて、駄目文になってます。

そして今回も独自解釈が存在します、ご了承くださいm(_ _)m


………最近もう勘違いタグを除けてもいいんじゃないかと思うこの頃。

追記

現在、『金色の文字使い』の原作キャラを出すかアンケートをしています!
詳しくは活動報告に書いてありますので是非コメントしてください!コメントお待ちしています!


最奥の死闘②

「日色ッ!」

 

ハジメは新たに現れた7つ目の銀色の首の存在すら頭から忘れ、痛む身体を無視して一目散にうつ伏せに倒れ込んでいる日色へと駆け寄った。ユエも焦燥に駆られるまま日色の元に駆け寄ろうとするが魔力枯渇で力が入らず転倒してしまい、もどかしい気持ちを押し殺して神水を取り出すと一気に飲み干し、少し活力が戻った身体で日色の元へと今度こそ駆け寄った

うつ伏せに倒れ込んでいる日色の下からジワッ、と流れる血は止まることを知らない。あのヒュドラの吹雪の一撃すら防いだ文字魔法を軽々と突き破り、【金剛】による防御すらも突き抜いてしまったことから想像を絶する威力なのだと嫌でも理解ができた。

 

「早く神水を………ッ!」

「言われなくても……ッ!」

 

ユエの言葉にハジメは苛立つ様に返しながらも日色を無理矢理仰向けにさせた。

そして同時に余りの傷の酷さに二人は言葉を失った。指の先から胸、横腹にかけて肉が焼き爛れており一部が骨が見え、服は焦げ焼き爛れた皮膚と一体化している部分もある。最も軽傷である頭や足の怪我でさえ軽い火傷程度なのでそこは不幸中の幸いだった。

 

ハジメは急いで神水を飲ませ様とするがそんな時間を敵が与える筈がない。銀色の頭はガポッと口を開けると数えることが馬鹿らしくなるほどの無数の光弾をガトリング掃射の如く吐き出して来た。

壁や地面にぶつかると着弾点を溶かしたまま跳ね返る直径10センチの光弾や直線には飛ばず弧を描く様に動く爪の様な光弾、無数の直径50センチ程の大玉同士を連結させる線の様に光線が大玉の間に出来ている連結光弾などが激しく三人に襲いかかる。

 

「最悪ッ!」

「ハジメッ!柱に!」

「分かってる!」

 

ハジメは日色を抱えると疲労した体に鞭を打ち、ユエが指した柱の陰に共に隠れる。柱ごと仕留めようと言うのか柱を削るように無数の光弾が次々と撃ち込まれていく。ハジメは隠れると共に錬成を行い、柱を修復させながら時間稼ぎを行おうとするが修復速度よりも柱を削る速度の方が断然早い、このままでは1分も持たないだろう。

 

「ユエッ、早くッ!」

 

ハジメの声を聞き、ハジメから神水を受け取ったユエは急いで日色の傷口に振り掛け、もう一本もむせないように少しずつ飲ませる。

しかし、神水は止血効果はあったものの何かに阻害されているのか中々傷を修復してくれない。何時もならすぐに修復が始まるのに、まるで攻撃を受け続けているかのように修復速度が遅くなっているのだ。

 

「どうして!?」

 

ユエは半ばパニックになりながら自分が持っている神水を全て取り出した。

 

「もしかして…あの極光には回復を阻害する効果があるの……ッ!?」

 

ハジメの推測は当たらずも遠からずだ。実はヒュドラのあの極光には肉を溶解させる一種の毒が含まれているのだ。それは文字通り僅か1分弱で肉体を跡形も無くドロドロに溶かす程の。

しかし、神水の回復速度も凄まじく、溶解速度を僅かに上回って修復しており、速度は遅いが確実に治ってはいる為、死ぬ事は無いだろうし、日色の魔物の血肉を取り込んだ強靭な身体も相まって時間をかければ治りそうである。

この場合、神水の回復速度を褒めるべきかそれともヒュドラの溶解の毒を褒めるべきか悩みどころだろう。

 

しかし回復速度が遅いと言う事は直ぐには復帰できないと言う事であり、日色が動けるようになるまですでにほとんど砕かれた柱はとても保つ筈がなかった。

その事実にユエは小さく唇を噛んでいると、カチャリと音がした。ふとそちらを見ると神水を飲んだハジメがシュラーゲンと背負い、ドンナーを持って立ち上がっている姿があった。

 

「――ユエ、日色をお願い」

「……ハジメ?――ッ!待っ――」

 

ハジメの言葉に疑問の声を上げるユエ。しかしすぐさまハジメが何をしようとしているのかを察し、声を荒げ止めようとするが数コンマ遅かった。

瞬間、ハジメが柱の陰から飛び出した。

 

己が時間を稼ぐために。

 

 

(………私のせいだ)

 

柱の陰から飛び出したハジメを最後に残った銀紋様の頭が睥睨し、幾つもの種類の光弾を発射する。ハジメはドンナーで撃ち落としながら、【空力】と【縮地】を用いて回避するが襲いかかる光弾は最早千にも及び一種の芸術のようだ。しかもそれらは壁や地面にぶつかるたびに着弾点を溶かし、ボールのように跳ね返るため光弾の数は減るどころかむしろ増えていく一方である。

流石のハジメも文字通り視界一面埋め尽くす光弾の密度の所為で中々反撃に出ることが出来ない。ドンナーによる射撃も途中で光弾に遮られてしまうため銀紋様の頭を狙うことも不可能だ。

 

(……私のせいだ……ッ!)

 

時間を稼ぐことはできてはいるが徐々にその光弾の包囲網は狭まっていき、光弾が直撃するのは時間の問題だろう。

だが、その事実に対しハジメの内心は場違いのようにひとつの感情が激烈に荒ぶっていた。

 

 

それは、憤怒。

 

 

誰かに撒き散らすものではなく、ただただ自分自身に向けられた自己嫌悪のようなもの。

 

日色が傷ついた。誰のせいで?誰によるもので?誰が原因で?

自分のせいだ。自分が無様に倒したと油断したからこうなった。愚かにも甚だしい。己の愚鈍さに反吐が出る。

 

もはやその憤怒の荒波は抑えることができずハジメは胸中を焼き尽くし、目の前の敵を殺せと駆動する。

 

「――ッ!!」

 

ハジメはもはや限界に近い身体に鞭を打ち更に体を加速させ、光弾の弾幕の中を縦横無尽に疾駆する。

その速度は風圧だけで軽く常人は吹き飛ばされるほどのもの、ハジメは一気に接近してからのシュラーゲンによる近距離の一撃を叩き込もうとしているのだ。

 

(――もっと速くッ!!)

 

更に加速しながらハジメは弾幕の隙間をなんとか潜り込みながら接近していく。しかし数十センチ進むたびに光弾が体を微かに掠め、それに比例するように血も流れ限界に近い身体に疲労も溜まっていく。

 

(――もっとッ!!)

 

それらを無視してハジメは更に加速し、そして遂に銀紋様の頭から3メートルまで接近することに成功した。ハジメは頭を狙っている光弾を首を傾けることで避け、背負っていたシュラーゲンを構え銀紋様の頭に照準を向ける。銀紋様の頭の耐久度は知らないがこれほど近かったのならば確実に殺せるはずだ。

 

(――これでッ!!)

 

「死――」

 

そしてハジメがシュラーゲンの引き金を引こうとして――

 

刹那。

 

――銀紋様の頭がハジメを嘲笑った様に見えたと同時にハジメの背筋に悪寒が走る。咄嗟にハジメは射撃を切り上げ身体を反らそうとするが一瞬遅かった。

 

瞬間――銀紋様の頭が首を少し傾けると共にさっきまで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ハジメは咄嗟に身体を反らした為、胴体に直撃する事はなかったものの反応するのが遅れた為完全に避け切る事はできない。襲いかかる光弾がハジメの顔面へと襲いかかり――

 

――それがハジメの右眼が最後に見た光景だった。

 

「――あぐっ、がぁ!!」

 

バシュッ!!という音と共に眼の部分が焼かれ、文字通りハジメの右眼が蒸発した。

流石のハジメも突然見えなくなった視界と顔を焼く激痛に動揺し、ぐらりと体勢が崩れてしまう。当然、それをヒュドラが見逃す筈がない。銀紋様の頭が体勢の崩れたハジメを狙う様に口をガパッと開き、「クルァアアアン!!」と叫ぶと日色を焼いた時の様に極光を放つ。

 

その瞬間、ハジメは己の失態を悟る。この銀紋様の頭は最初からハジメが突撃してくることを読んでいたのだ。だからこそ不意を付けるよう光弾を己の頭の背後から飛び出すようにしていた。大量に光弾を撃っていたのは不意をつくための光弾を隠すためのものなのである。

 

極光がハジメに迫る。視界が閃光に満たされ、直撃する。死ぬ。

その無慈悲な決定にハジメは思う。

 

(まだだ……ッ!!)

 

激烈な怒りが更に燃え上がり、全身を満たしていく。

この理不尽を許容するのか?こんな化け物に屈するのか?大切な人が傷ついたのに仕方がないと諦めるのか?

違うッ!断じて違うッ!日色の命を脅かすものは、日色を傷つけるものは殺す!

 

だからッ――

 

「ま、だ、だァッ!!」

 

その瞬間、ハジメの脳内にスパークが走った様な感覚と同時に世界が色褪せた。モノクロームの世界でまるで時間の流れが途端減速したかのように光弾や極光がゆっくりと動いているのが視認できる。そんな中、ハジメだけは自由に動けるのだ。

 

――【天歩】の最終派生技能[+瞬光]

 

知覚機能を拡大し、合わせて【天歩】の各技能を格段に上昇させる派生技能。この瞬間、土壇場でハジメはまた一つ、『壁を超えた』のだ。

 

減速された世界の中で迫り来る極光をハジメは倒れ込むように左下方向へと【天歩】を用いて回避する。

回避した空間にも光弾は迫り来るがハジメは尽く空中をまるで踊るようにくるくるとあるいはフラフラと倒れるように【空力】で細かに移動しながら光弾をやり過ごしていく。

 

(――これならッ!)

 

新たな技能の力に希望を見出したハジメが地面に着地すると共に四方八方から幾つもの光弾が同時に襲いかかる。ハジメはそれらの光弾を避け、再び銀紋様の頭へと突撃する為両足に力を入れ――

 

「――――――ぁ」

 

――瞬間、まるで糸の切れた人形のようにガクッと両足に込められていた力が抜け、受け身も取れず倒れ伏した。

突然、力が抜けたことに驚愕し慌てて立ち上がろうとするが身体は限界だと訴える様に震え、まるで底無し沼に入ってしまったかの様な深い倦怠感がハジメを襲う。

 

「……な、ん…で……?動け……な……」

 

そう呟くことすらままならないハジメ。別にハジメが動けなくなったのは銀紋様の頭によるものではない。

 

ただ、ハジメの疲労が限界値に溜まっていただけである。

 

ヒュドラの六頭の戦闘に疲労した身体は既に限界に近くなっており、日色が傷ついたことで怒りに囚われたハジメは限界に近い身体を更に酷使した。元々少なかった体力を絞りに絞り続けていたのだ。疲労した身体に着実に増えていった傷から流れる血を合わせればこうなるのは当然と言えるだろう。神水もユエに渡しているため、疲労を回復させることも不可能だ。

 

だが――

 

「……まだ……だ…ッ………まだッ!」

 

――迫り来る光弾を前にしてもハジメは以前諦めず、怒りを糧に足掻き続ける。

 

ハジメの瞳は以前と変わらないどころか一層怒りと殺意に満ち溢れ、紅の魔力はハジメの心情を表すかのように荒れ狂い続けている。

 

「――ま……だ…ッ!」

 

しかしどれほどの思いを持って立ち上がろうとしても現実は非情である。迫り来る無数の光弾は成す術がないハジメへと無慈悲に襲い掛かり――

 

 

「……【緋槍】!【砲皇】!――【凍雨】ッ!」

 

 

――突如横から割り込むように炎の槍と螺旋に渦巻く真空刃を伴った竜巻がそれぞれ的確に光弾に着弾し、相殺することはできなかったものの軌道を変えることには成功し、ハジメの倒れている場所から遥か彼方へと着弾した。

同時に幾つもの氷の針が銀紋様の頭に襲い掛かり、少しの間だが怯ませることに成功した。

ハジメはその声の主を、その精密な魔法を扱う者を知っている。

 

ハジメが驚きの混じったその者の名を言葉を零すと同時にハジメの目の前に金色の髪を持った吸血姫がハジメの前に現れた。

振り返ると共にハジメとはまた違う美しさを持った紅の双眼がハジメを映した。

 

「――ユエ……」

「………無様。ハジメ、何やってる?」

 

ユエはそう呟くと共に取り出した神水をハジメの口に彼女が咳き込むのを無視して強制的に飲ませた。

ハジメはどうにか飲み干すと身体にあった大量の小さな傷は完全にとはいかないがある程度塞がり、全身の倦怠感と疲労感が消え失せる。

 

「……うるさいッ、私は早くアイツを――」

 

――殺す。その言葉を立ち上がりながらハジメが言い終わる前に比喩ではなくそのままの意味で冷水が浴びせかけられた。ハジメの頭上に突如発生した大量の水が小規模な滝となって降り注いだことでハジメの全身がびしょ濡れになってしまい強制的に肉体的にも精神的にも冷やされてしまう。荒れ狂っていた怒りの激情も今は冷えてしまったせいで静かになってしまっている。

 

「~~~ッ!!何を――」

「……頭は冷えた?」

 

困惑するハジメが憎しげにユエを睨みつけるがユエの言葉の意図に気づくとバツの悪そうな表情となる。

ユエが水をハジメに浴びせたのはハジメに冷静さを取り戻すためだろう。ハジメは日色が傷ついた事実に心を怒り一色に塗り尽くされ、軽く我を忘れていたのだ。何故なら本来のハジメならば不用意に傷を無視した特攻など行わないはずだから。

 

「――ッ……えぇ、情けなさで怒り狂いそうになる程ね」

 

ハジメは濡れた体で立ち上がり、一度天を仰ぎながら自分の頭に手を翳し深呼吸を行うことで己の中に燃え盛っている怒りの炎を落ち着かせる。燃え盛るような怒りを深く、冷たく、鋭い刀のような殺意へと変え研ぎ澄まさせていく。

 

「……それで、日色は目覚めたの?」

「……まだ。着実に傷は治ってきているけど目を覚ますまでには至ってない。念の為に魔法で壁を作って回復するのを待ってた……けど――」

「――私が殺られそうだったから助けに来たってことね……最悪」

 

ユエがコクりとそう頷いたのを見てハジメは小さく歯噛みする。おそらくユエは倒れた日色の血を飲み魔力を回復させ自分を助けに来たのだろう。ユエに助けられた事実に二度と冷静さを失って、ユエに借りを作らないと誓うハジメだった。

ふとユエが来た方向を見ると柱の陰にユエの土魔法で柱と合わせるように組み合わせた壁が日色を覆うかのように生み出されていた。光弾が壁に被弾している様子はないためどうやら時間稼ぎは成功しているようだ。

 

「……一応礼を言っておくね、ありがと」

「――お前の礼なんていらない」

「――人の善意を……ッ!」

 

念の為に言った礼に対し冷たく返すユエに拳を震わせるハジメだが無視をするなと言いたげに「クルァァアアン!!」という銀紋様の叫びを聞くと思考を切り替える。

 

「――まぁいい。ユエ、手伝って。あのヒュドラを殺す」

「……言われなくても」

 

瞬間、ヒュドラが極光を放つと同時にハジメはユエを抱え【瞬光】で上昇した【空力】と【縮地】でその場から空中へと退避した。

さっきまでいた既に無人の場所を極光が貫き、床を瓦礫に、瓦礫を砂に、砂を塵に、欠片も残さず蒸発させた。

同時に空中に回避したハジメ達をさっき着弾した極光が巨大な球体に形を変え、一瞬収縮すると一気に弾けるように分裂し、無数の光弾が空中へと弾け飛んでハジメ達を襲いかかってくる。

 

「――遅いっ!」

 

しかしハジメはユエを抱えた状態でありながらまるで光弾の方がハジメを避けていると勘違いするほどにギリギリで避けていく。その挙動はあたかも縦横無尽に空間を疾る紅の雷だ。その証拠にあまりの挙動と速度のせいかユエが軽く目を回してしまっている。

 

高速で移動しながらハジメは銀紋様の頭へと駆けながら、【縮地】を使い、紙一重で光弾を避けながらドンナーを連続で3発発砲する。銀紋様の頭はその銃弾を嘲笑うかのようにハジメが撃つ事を最初からわかっていたかのように首を傾けることで光弾の弾幕を唯一突き抜けた一つの銃弾を回避した。

 

「――チッ」

 

ハジメは小さく舌打ちし、再度次々と場所を変えて銃撃を行うがいずれも光弾に弾かれるか弾丸は外れ虚しく天井に穴を開けるだけだった。銀頭の目に嘲りの色が宿り、光弾をハジメ達目掛けて発射するがそれらをユエが魔法で迎撃する。

 

「……ちゃんと狙って」

「――うるさい、いいから黙って見てて」

 

ユエの苦言にハジメは気にした様子もなくリロードを行い再度発砲するがそれらも例外なく天井に穴を開けるか光弾に打ち消されるだけだった。ハジメは全弾撃ち尽くすと【空力】で宙へ跳躍し、ユエに魔法を打ってもらいながら天井付近の空中を泳ぐように跳躍し光弾をかわす。

 

あまりに逃げ続けるハジメ達に苛立ったのか銀紋様の頭は極光を放った。

 

(それを――

 

―――待ってたのよッ!」

 

ハジメは無意識に頬が緩んでしまうのを感じながら悠々と極光を躱すとリロードしたドンナーを再び穴を開けた六箇所に向かって狙い撃った。ハジメは銀紋様の頭が極光を放っている間は硬直していることを看破していたのである。

 

すると、突然天井に強烈な爆発と衝撃が発生し、一瞬の静寂の後、一気に崩壊を始めた。その範囲は直径十メートル、重さ数十トン。大質量が崩落し直下のヒュドラを押し潰した。

 

あの時、ハジメは天井にドンナーで穴を開け、空中で光弾をかわしながら手榴弾を仕込みつつ、錬成で天井の各部位を脆くしておいたのである。そして、六箇所をほぼ同時に撃ち抜き爆破した。ハジメが銃弾を外していたのは偶然ではなかったのである。

 

「クルァアアアンッッ!!!」

 

しかし、流石ヒュドラと言うべきか押しつぶされただけですぐさまこの瓦礫から身体を持ち上げようとする。おそらく瓦礫で動きを封じれるのは一瞬あるかどうかだろう。

しかし一瞬は一瞬でも、それは確かに隙なのだ。

 

ハジメは【縮地】で一瞬でヒュドラの元に接近し、錬成で崩落した岩盤を変形させ瞬く間に拘束具に変える。同時に、銀頭の周囲を囲い即席の溶鉱炉を作り出した。その場を離脱しながら焼夷手榴弾を全て溶鉱炉の中に放り込み、叫ぶ。

 

「ほらっ!隙を生み出してやったからさっさと魔法を使ってッ!ユエッ!」

「――言われなくても……【蒼天】ッ!!」

 

ユエの言葉のトリガーと共に青白い太陽が現れ、ハジメが生み出した溶解炉へ放り込まれると共にハジメが錬成で溶解炉に蓋をするように覆い尽くす。中に放り込まれた爆薬の類も連鎖して爆発し、ハジメ達のいる場所からも感じる程の熱気がヒュドラへと襲い掛かる。

 

「グゥルアアアア!!!」

 

ヒュドラの叫びと共に暴れ、溶鉱炉を破壊しようとするがハジメが錬成し直すため脱出することができない。

そんな中、ハジメは練成をしながら肩にかけてあるシュラーゲンを構え、溶鉱炉へと銃口を向ける。

 

「そんなに出たいのなら穴を開けてあげる」

 

ドガンッッ!!!

 

瞬間、ハジメがシュラーゲンの引き金を引くと大砲のような轟音と共に赤雷の極光が溶鉱炉へと発射され、容易く溶鉱炉を貫くと同時に膨大な炎がシュラーゲンが貫いた穴から吹き上がると共にヒュドラの叫び声すら打ち消して大爆発を巻き起こした。爆音が空間全域に伝わり、凄まじい熱風が穴から吹き出して二人を襲う。溶鉱炉があった場所は接触面は全てどろどろに溶け、溶岩のようになった瓦礫がどろりと地面に落ちていく。

 

 

【バックドラフト】

 

 

室内など密閉された空間で火災が生じ不完全燃焼によって火の勢いが衰え、可燃性の一酸化炭素ガスが溜まった状態の時に窓やドアを開くなどの行動をすると、熱された一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれて結びつき、二酸化炭素への化学反応が急激に進み爆発を引き起こす火災の現場で起きる爆発現象である。

 

密閉された空間でヒュドラに当たって爆発した【蒼天】が一瞬にして穴の中の空気を使い尽くし、シュラーゲンによる銃弾が溶鉱炉を貫き、ヒュドラに直撃すると共に穴が開けられたことで穴の外の空気を急激に吸い込んだことによって炎が吹き出したのだ。

 

 

確実に仕留めた、そう思ったユエは襲い掛かる倦怠感から耐えながらハジメの方を向き――

 

「………嘘」

 

――驚愕の表情で面影がないほどドロドロに溶けた溶鉱炉の方を見続けているハジメの声を聞いた。

 

慌ててユエは溶鉱炉の方を見ると吹き上がっている土煙の中に微かに黒い巨大な竜の影を見た。

 

「………そん、な」

 

無意識に溢れる声をユエは自覚することが出来ない程の絶望が襲い掛かる。

そして、土煙が晴れると共にその姿が明らかとなった。

嘗てのギラギラと輝く鱗は黒焦げになり、肉は全身火傷で所々煙が吹き上がって、そして胴体の左腹にはシュラーゲンにより貫かれ、炎により傷口を焼かれた血のこぼれない穴が存在していた。

 

だが、生きていた。

それでもまだ、ヒュドラは生きていた。

 

そして、ヒュドラがハジメ達を睥睨すると共に銀紋様の頭の瞳が一際輝いた。

 

「ユエッ!」

 

ハジメはゾクンッと背筋に走った悪寒に従い、神水を飲んでいるユエを呼び、ユエを背中に担ぎ上げる。そして、ハジメが再び戦闘態勢に入るとヒュドラの咆哮と共に変化が訪れた。

 

「グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

最初はギュコンッ!!という異質な音だった。ヒュドラの首の一つである黒焦げになった赤紋様の頭がまるで首の肉に埋もれるように首だけ残して奥に引っ込んだのだ。それに連動するように残りの5つの頭が首に引っ込んでいく。

そして、引っ込んだ部分から赤紋様の頭からは赤い魔力が、青紋様からは青い魔力がといったように頭の紋様と同じ色の魔力が吹き出てきたのだ。

しかもハジメの【魔力感知】からは首一つから吹き出ている魔力だけでもハジメの魔力の三倍の量である。

 

「…第二ラウンドってわけね」

「グゥルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

そう呟くハジメの苦しげな声と共に銀紋様はバカッと口を開き――

 

――瞬間、視界が閃光に包まれた。

 

「―――ッ!!!?」

「ハジメッ!」

 

否、閃光と感じるほどの光弾の()が襲いかかってきたのだ。その光弾の密度はさっきまでの何倍も厚い。

ハジメは咄嗟に【瞬光】を発動させながら全力でその場から宙へと離脱する。おそらく咄嗟にユエが叫んでくれなければあまりの光弾の密度に動揺し、避けきることは出来なかっただろう。

 

しかし、ハジメが最初から避けることを予測していたのかハジメ達が逃げた方向に銀紋様の頭は極光を放つ、その光は嘗ての極光よりも何倍も輝き、そして大きい。

 

「――…ッ、【緋槍】ッ!」

 

絶妙なタイミングで回避先を狙われたハジメを守る為にユエが神水で僅かに回復した魔力で魔法を使い極光の軌道を僅かでも変えようとする。

だが、次の光景に再び彼女達は目を剥くこととなる。

 

瞬間――()()()()()()()

 

「――なッ!?」

「――え!?」

 

ユエの【緋槍】を避けるように極光は空中で八つに分裂し四方八方に弧を描くように軌道を変え、それぞれが二人に襲い掛かる。咄嗟にハジメがシュラーゲンを盾にしたことにより直撃は免れたものの、分裂した極光がシュラーゲンに触れた途端、シュラーゲンに入ってある火薬が引火し、爆発と共に二人は別々に吹き飛ばされた。

 

「がぁああッッ!!?」

「キャアッ!!?」

 

まともに受身を取れず地面に墜落してしまう二人。しかしそのまま止まっているわけには行かないハジメは倒れた状態から飛び上がるように立ち上がり、同じく倒れているユエを拾い上げなんとか襲い掛かる光弾を転がるように避ける。【瞬光】を使ってすらどうにか追いすがることができる現状に絶望しそうになる。

 

「――ユエ!大丈夫!?」

「……ッ、大丈夫。まだ…行ける」

「それは良かったわッ!」

 

ハジメはユエの返答に苦しげな表情で言い返す。

襲い掛かる高密度の光弾の中、ハジメ達は徐々に追い詰められていった。

 

 

落ちていく。

 

 

落ちていく。

 

 

落ちていく。

 

 

まるで自分という意識が闇へと微睡みと共に落ちていくのを日色は感じた。

 

どうして自分はこんなところにいるのだろうか?いつから自分はこんなところにいるのだろうか?

 

わからない。

 

わからない。

 

――あぁ、でも眠い。どうせならこのまま眠ってしまおう。

 

そう思っていると突如暗闇の視界の中、目が焼ける痛みと共に映像が流れてくる。

 

白髪の少女と金髪の少女がボロボロになりながらも怒りを滲ませて一匹の化け物と戦っていた。

 

――どうして戦っているのだろう?

――どうして怒りを抱いているのだろう?

――そもそも彼女達は一体誰だっただろうか?

 

再び痛みが奔るとその痛みに呼応するように今度は映像と共に音声が流れ始めた。

 

『ぼ、僕の名前は――南雲ハジメです』

『……んっ。今日からユエ。ありがとう』

 

――そう……彼女達は、彼女達の名前は………

 

日色の言葉と共に次々ハジメとユエの様々な映像が流れ始める。

初めてハジメと出会った時のこと、ハジメと一緒に学校で話したこと、奈落に落ちてハジメに助けてもらったこと、ユエと出会ったこと、サソリモドキと死闘したこと、様々な思い出が流れていく。

 

――そう……だ、こんなところで寝てなんていられるか!

 

映像は再び、最初のハジメとユエがヒュドラと戦っている映像に戻った。どうやらかなり苦戦しているらしく彼女達の姿は既にボロボロになっていた。

その姿に日色の心臓がひときわ高くなったと錯覚した。

どうにかして意識を浮上させようとするがまるで底なし沼のように眠気と倦怠感が日色に襲い掛かり、日色を更に闇へと落としていく。

 

――ク…ソッ!ま、だだ……俺は、アイツ等を……

 

だが、そんな日色の叫びとは裏腹に徐々に視界がぼやけ、映像すら見れなくなってくる。

 

――お、れ…………は………

 

落ちる、落ちる、落ちていく。

そして、遂に糸が切れるかのようにプツリと思考が途切れ――

 

 

『……―~~♪、~~―♪―~~~~―~――♪』

 

 

――歌が、聞こえた。

 

 

 

 

「がぁッ!!?」

「ハジメッ!」

 

一方その頃、ハジメとユエはヒュドラとの戦闘で既に限界を迎えていた。

ヒュドラの銀紋様の頭から放たれる高密度の光弾は少しずつハジメの体力を奪っていき、遂に限界を迎えたのだ。咄嗟に身を捻ったものの完全には避けきることができず、左腹に掠り、吹き飛ばされてしまう。当然ハジメの背中に乗っていたユエも同様だ。

 

当然、ヒュドラがその隙を逃すはずがなく無数の光弾が彼女達に迫る。咄嗟にユエはハジメを守る為に前に出て魔法で防ぐ。

 

「【砲皇】ッ!」

 

真空刃の竜巻が光弾に襲い掛かり、ユエ達から軌道を風圧で逸していくが量が量だ。光弾がぶつかる度風が削られていき、遂にユエの肩に直撃してしまう。

 

「あぐっ!?」

 

痛みと共にユエも限界が近かったせいかガクッと力が抜け、その拍子に真空刃の竜巻が消えてしまう。

その隙を突くようにヒュドラの銀紋様の頭がガパッと口を開け、極光を放つ。

 

「――ユエっ!!」

 

咄嗟にハジメは痛みを無視して、ユエに抱きつくように抱え【縮地】を行い、迫る極光からその場を離れようとする。しかし――

 

(避けきれな……ッ)

 

――ハジメの【縮地】を行ってその場から離れるがそれを読んでたかのようにヒュドラの極光は空中で分裂し弧を描きながら誘導弾のようにハジメ達に追いすがる。ハジメが再度【空力】で逃れようとするが足に力が入らない。

 

(日色……ッ!!)

 

ハジメは迫り来る極光を避けれないと悟るが心で大切な人の心を思いながらも最期の時まで足掻き続ける。ユエも心までは負けるものかと目を閉じずキッと銀紋様の頭を睨みつけていた。極光が迫り視界が閃光に満たされる。直撃する。死ぬ。ハジメは日色を守れなかったことを心の中で謝罪しようとして――

 

 

 

「――文字(ワード)……魔法(マジック)

 

 

 

刹那――声が聞こえた。

 

その言葉と共にハジメ達の背後から()()()()()が極光へと迫ると共にガッという音と共に軌道を変えた。

何の膠着もなく、あっさりと。

 

そして、空中に名残のように『逸』の文字が滞空し、空気に溶けるように消えた。

 

その魔法を、ハジメは、ユエは知っている。何故ならその魔法は己の大切な人の魔法なのだから。

ハジメはゆっくりと振り向き、言葉を震わせながら大切な名前を呟いた。

 

「――ひ、いろ……なの?」

「当たり前だ、他に誰に見える」

 

艶のある黒髪に黒水晶のような鋭い目つきを持っていた少年、神代日色は、傷だらけの身体にユエの金色の魔力とは比べ物にならない美しい金色の炎を纏い、呆れたようにハジメを見つめていた。

ユエも日色の姿に驚いたがそれでも日色が無事なことに涙ぐんでいる。

 

「その姿は一体……」

「さぁな?自分でもよくわからん。だが都合がいいことに力は湧いてくる、こんなふうにな」

 

そう言って日色は人差し指を伸ばすとそれに応じる様に金色の炎が踊る。

金色の炎は人差し指に集まり、まるで生きているかの様に自ら『治』の文字を描き出す。

それだけに留まらず続く様に金色の炎が『治』『治』『治』『治』『治』と同じ文字を描き、それぞれをハジメとユエに飛ばすと、あっという間に二人の傷と倦怠感が消え失せた。

 

「………凄い」

 

思わず感嘆の声をこぼしてしまうユエ。毒が肉を溶かしてしまう前に強制的に治している、文字魔法の効果が格段に上昇しているのだ。

日色は目覚めれば突然体がこうなっており、連続で文字魔法が使えているのだ。何が原因だったのかわからないが今はそれどころではないため思考の隅に置いておく。

 

「金ロリ、血を吸え」

 

日色を警戒しているのかこちらを睥睨したままのヒュドラを見ながら静かな声でユエに促した。ユエは唯でさえ血を失っているのにと躊躇するが日色は静かな声で言った。

 

「……最後はお前の魔法が頼みの綱だ、頼む」

「……っ(コクリ)」

 

日色の強烈な意志の宿った言葉に、ユエもまた力強く頷いた。日色を信じて首元に顔を埋め牙を立てる。日色の力が直接流れ込むかのようにユエの体に急速に魔力が回復していく。

 

「――行くぞ、俺たちが勝つ!」

「えぇ!」

「んっ!」

 

瞬間――ヒュドラは攻撃することに決めたのか銀紋様の頭から高密度の光弾を吐いた。

それを見越していたのか日色はユエを背負うと共に自分とハジメに文字魔法をかける。

 

――【超集中持続】+文字魔法『速』×2

 

――【瞬光】+文字魔法『速』×2

 

そして、二人は閃光となった。

高密度の光弾を二手に分かれていとも容易く駆け抜けてヒュドラの元へと接近する。

ハジメは【瞬光】によって加速した視界を更にギアを上げ、光弾の隙間を狙い打つようにドンナーを連続で全弾発砲する。

 

精密な狙撃により電磁加速された弾丸は丁寧に光弾の隙間を突き抜け、ヒュドラの身体をあらゆる方向から貫こうと発射されるがどれもが決定的な効果を持つことができない。

 

「グゥルァアアアアア!!」

 

しかし、注意を惹きつけることはできたようでヒュドラはハジメを怒りの瞳で睨み、高密度の光弾を一層更に放つ、ハジメはそれを【空力】と【縮地】で避けるがその回避先を読んでいたのか回避した方向へと極光を放つ。

 

だが、その迫り来る攻撃に対しハジメの表情は不敵の笑みのまま変わらないまま叫ぶ。

 

「日色ッ!」

「任せろ!」

 

瞬間、極光がハジメの目の前で縦に切り『裂』けた。

ハジメに極光が直撃する瞬間、どこからともなく打ち出された『裂』の文字が空中を飛び極光を遮るように現れたのだ。

その隙にハジメは【縮地】であっという間に動けない銀紋様の頭に接近し、ドンナーを電磁ナイフと【風爪】を合わせた斬撃を放つ。

 

「クルァン!!?」

 

肉を切り裂く感触と共にドンナーの斬撃は銀紋様のある額を決して浅くはない程深く斬り裂いた。すぐさま離脱するハジメを銀紋様の頭は逃がすまいと光弾を放とうとする。だが、その前に置き土産とばかりにカンッという音と共に【閃光手榴弾】が銀紋様の頭の鼻の上に置かれていた。

 

瞬間――銀紋様の頭の視界が閃光に包まれる。

 

ヒュドラは突然の閃光に眼を焼かれ堪らず悲鳴をあげてがむしゃらに光弾を放ちながら暴れまわった。ハジメはがむしゃらに吐かれる光弾を悠々と避けながら二人に叫ぶ。

 

「今ッ!!」

「――()()|ッ!!」

「――んっ!【蒼天】ッ!!」

 

瞬間、日色の声に応じる様に風魔法で空中に上がっていたユエの掲げた手から本日3度目の青白い太陽が生みだされ、吸血姫によりタスクの様に操る手に従いある方向へと射出された。

 

――空中に気配を隠すのを止め、一直線に銀紋様の頭に接近する日色へと。

 

最早、銀紋様の頭に【蒼天】だけの攻撃は通用しないだろう、ハジメが生み出した溶鉱炉に【蒼天】を入れバックドラフトを起こしても重傷を負わせるだけで仕留めきるには至らなかったのだ。

ならばどうする?

 

(――簡単だ。隙を作って文字魔法で【蒼天】の威力を上げて叩きつけるッ!)

 

世間一般ではそれをゴリ押しという。

 

背後から此方へと向かってくる青白い太陽を横目に日色は右手の人差し指に金色の炎を収束させる。余力は一切考えない、この一撃に全てを賭けるッ!

 

するとユラユラと日色の身体に纏わりついていた金色の炎が日色の人差し指一本に移動していき、収束し、圧縮され、遂に日色の人差し指に小さな小さな金色に輝く球体へと変化した。

 

そして日色は空中に指を動かし文字を書く、金色の線を残しながら書く文字は『倍』。

しかし、日色が二画目を書く途中で空間を響かせる様な叫びが聞こえる。

 

「キュルァアアアアアアアアッ!!!」

 

そう、ヒュドラである。

【閃光手榴弾】により一時的に視力を失ったはずのヒュドラはどんな手を使ったのか銀紋様の頭が上空にいる日色へと視線を向けていた。

 

「どうしてっ!?」

 

光弾を避けて、悲痛な叫びを零しながらハジメは何故ヒュドラが日色の居場所を分かったのか考える。

 

(――まさか!?【気配感知】ッ!?)

 

ハジメの推測は当たらずも遠からずだ。銀紋様の頭には光弾や極光を放つ他にもう一つの固有技能を持っている。

 

それは、【魔力感知】である。

 

不思議に思わなかっただろうか?ヒュドラが新たな形態を取った時、前回の光弾の弾幕よりも何倍の高密度の光弾を避けた時に生じたハジメ達の隙を的確に狙うことが出来たのか。

 

答えはハジメ達の移動先を()()()()()()()()()()

 

 

話は変わるがかつて技能とは才能だ、と語ったが明確には違う。

 

正確には技能とは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

つまり単純に言えば技能とは魔法から派生したものなのだ。

 

【縮地】や光輝の【天翔閃】のような物理法則に完全に喧嘩を売っているようなとんでも現象を起こせるのは全て魔力を詠唱にしても直接操るにしても魔法として魔力を消費しているからである。

 

では、話を戻そう。

 

ハジメと日色の持っている【天歩】や光輝や雫の持っている【縮地】にはある一定の共通点が存在する。

それは使用時に指方性を持った魔力を足に集中してしまうこと。

 

【空力】は足場を魔力で作っているように、【縮地】も僅かに魔力を消費して行っている。

 

つまり、【()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

確かにハジメや日色も一応【魔力感知】の技能を持ってはいるが銀紋様の頭ほどの精度を持っているわけではない。あくまで日色達は大まかに魔力が集まっている場所がわかる程度である。

だが銀紋様の頭の場合は、目を瞑っていたとしても正確に彼らの場所がわかってしまうほどの【気配感知】の精度を持っているのだ。

 

ハジメが【瞬光】を使ってすら光弾を凌ぐことが限界なのはそれが理由だ、ハジメの速度は確かにヒュドラには追いつけないほど速かっただろう、だがどこに移動するのかを分かっていれば対処は容易いのだ。

 

故に、現在最も魔力を使用し一点に収束している日色が場所を特定されるのは当然のことだった。

 

銀紋様の頭が口から極光を放とうとガパッと口を開く。

 

「―――クッ!」

「日色ッ!」

 

日色はまだ三画の線を書いたばかりであるため、極光を放たれる前に文字を完成させるのは不可能だ。そして一度書いた文字を中断させることはできないため防御も回避もできない。

魔力枯渇で既に動けなくなり、地面に着地すると共に座り込んでいるユエの叫びを聞きながらも日色は歯を食いしばることしかできなかった。

 

(……どうしたらッ!?)

 

ハジメは今にも極光が放たれようとしている光景を【瞬光】で加速された世界の中思考する。

 

今から日色の元に行って助ける?――駄目、間に合うかもしれないがそうなれば日色の魔力が尽きて結局は日色が死ぬ、

極光の射線に入って肉壁となる?――駄目、数瞬の時間も稼げずに蒸発する。

銀紋様の頭にドンナーで斬りかかる?――駄目、間に合わないッ!!

 

何度も策のトライアンドエラーを一瞬の内に繰り返すが、一向に答えは出ない。

だがいくら加速された世界の中で動けるとしても時間は刻一刻と近づいて来ている、その事実にハジメは焦りながらも策を考え続ける。

 

(……絶対に守る……ッ!!)

 

あの銀文様の極光によって倒れる日色を自分が無様に眺めるしかないあの光景を見るわけにはいかないから。

 

(――二度と、日色を……ッ!)

 

そしてハジメは加速した世界の中、光弾を空中で避けるとあまりの高速による移動によりポーチの栓が緩んだのかチャリンッ!という音と共にポーチに入っていた一つのドンナーの銃弾が空中を舞った。

 

「二、度とッ――」

 

瞬間――カチンッ!とハジメの何かが切り替わった。

 

思考が冴える、世界から色が消え、体が全能感に包まれる。

加速された世界が文字通り止まってしまったかのように錯覚し、空中を舞う銃弾がまるで空中に固定されているかのようにハジメには見えていた。

 

そして、ハジメの身体は気づいた時には既に動いていた。

 

ドンナーを軽く振るいシリンダーを出すと共に空の薬莢を全て放出、体を一回転させて空中に舞っている銃弾をシリンダーに入れ、回転の勢いで自動的にシリンダーを元に戻し銃口を銀紋様の頭に向けた。この間、約0.1秒。空の薬莢は排出した場所からまだ数センチしか落ちていなかった。

 

その神業じみた絶技を行ったハジメの瞳には()()()()()()()()()()

 

「――傷つけさせてたまるものかぁッ!!」

 

そして――発砲。

 

ドパンッという音と共に銃弾は高密度の光弾同士の数センチ単位を全てくぐり抜け、吸い込まれるように極光を放とうとした銀紋様の頭の瞳に直撃した。

 

「クルァアアアアアアンッ!!?」

 

銀紋様の頭は突然の激痛と衝撃により、放たれた極光は軌道を変え日色の遥か左方向の空間を貫き、溶かしつくした。

それは別に銀紋様の頭の命を刈り取るものでもない、銀紋様の極光を逸らすためのものでしかない銀文様の頭からしたら弱い攻撃に過ぎず、作れる隙も一瞬程度だろう。

 

だが、

 

それでも、

 

その一瞬の隙はあまりにも大きかった。

 

「よくやった、ハジメッ!」

 

金色の光が日色の指に従い舞い踊る、人差し指は『倍』の文字を書き終え、()()()()に突入し瞬く間に書き終えた。

 

そして書かれた文字は『倍増』

 

日色が初めて書くことができた二文字魔法である。

 

そして、日色の書き終えた二文字が日色の動かす手に従い青白い太陽に触れる。

刹那――空が輝いた。

 

日色の書いた二文字はユエの【蒼天】に触れた瞬間、【蒼天】が一瞬にして空中に五つに増え重なり合うように融合し、形状が変化する。

 

それは、ひとつの槍だった。

 

世界を文字通り火の海に変える様な、神の怒りを彷彿とさせる白熱化した美しい10メートル程の白金の槍。

 

その槍を右手で触れずに携えた日色は白金の槍の穂先をヒュドラへと向ける。

 

「これで――」

 

日色はゆっくりと槍投げ選手のように右腕を背中越しに回し、バネのように引き絞る。銀紋様の頭が極光を放とうとするがもう遅い、この二文字が完成した時点で既に勝負はついている。

 

「――終わりだァアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

そして――投擲した。

 

日色の振るった右手に従い白金の槍は一直線にヒュドラへと迫る、途中ヒュドラが極光を放ち迎撃しようとするが勢いを減速させることすら適わない。僅かの拮抗も無く白金の槍は極光を切り裂き、ヒュドラの体を貫いた。

 

瞬間――爆散。

 

ヒュドラが断末魔を上げる間もなく、白金の槍を中心にそれを塗りつぶす爆音と爆風が三人を平等に襲い辺りを全て薙ぎ払う。

 

三人は爆風に吹き飛ばされそうになるのを耐え続けていると数秒で爆風は消え失せ、土煙を吹き飛んでいった。そして、ヒュドラのいた場所に残っていたのは抉れ、溶け、融解したクレーターとその中に残った黒焦げになったヒュドラだったものだった。

 

感知系技能からもヒュドラの反応は消えている。それを指し示すことはつまり――

 

「――俺達の……勝ちだ……ッ!!」

 

地上になんとか降りてきた日色が息絶え絶えにつぶやいた通り、三人の勝利だった。

 




………いつから、多重書き解放しか覚醒しないと錯覚していた?

そんなわけで今回はヒュドラ強スギィ!!、ハジメちゃんの覚醒×2と日色君、謎の歌で覚醒するの三本です。

今回一瞬だけ発現したハジメちゃんの【超集中持続】の情報処理速度は日色より下です、
ハジメ【超集中持続】×【瞬光】≧日色【超集中持続】といった感じですね。
え?覚醒した理由?愛だよ(白目)

日色が覚醒した原因となった謎の歌は伏線です、一応神代魔法を取得する回で回収するつもりですが作者の技量で描写できるかが悩めるところ……

そして独自解釈の件ですが筆者は技能は魔法から派生したもの、使用するのに魔力を消費するものだと解釈しています。……いや、だって技能は才能だと原作で書かれていましたが元々縮地は歩行の技術なので歩行の才能なんてものあるのかなぁ?と思っていたり、【練成】って技能なのに魔力使うん?なんて思っているので。もしかしたら原作の方で別の意味で解釈されているのかもしれませんがこの小説ではそれでお願い致しますm(_ _)m

前書きでも書きましたが現在、感想で質問されたので『金色の文字使い』の原作キャラを出すかアンケートをしています!
詳しくは活動報告に書いてありますので是非コメントしてください!コメントお待ちしています!
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