ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター)   作:アルテール

42 / 51
お久しぶりです、予想以上にアンケートに投票してくれた人がいたことに驚きを隠せないアルテールです!

皆様、アンケートの投票、本当にありがとうございました!!

アンケートの結果は①『今までどおりと同じ方針で行く(オリキャラは出ます)』となりました!②を投票してくださった方は申し訳ございません!

と、いうわけで今回の話からオリキャラとオリジナル展開が出てきます、どうかご了承ください!

それでは、( ^ω^)_凵 どうぞっ!


反逆者の居場所と謎の記憶

ハジメは、体全体が何か温かで柔らかな物に包まれているのを感じた。随分と懐かしい感触だ。これは、そうベッドの感触である。頭と背中を優しく受け止めるクッションと、体を包む羽毛の柔らかさを感じ、ハジメのまどろむ意識は混乱する。

 

(何?ここは迷宮のはずじゃ……何で……私…ベッドに……)

 

まだ覚醒しきらない意識のまま手探りをしようとする。すると何やらハジメの手の平に暖かくも逞しい細長い何かが触れているのを感じた。

 

(何…これ……?)

 

ゆっくりと微睡みから覚めるように眼蓋を開き、ボーと焦点が合わない瞳で己が握っているものを見つめ――

 

――それが日色の腕だということに気づき、瞬間まどろんでいたハジメの意識は一気に覚醒する。

 

「ふわッッ!??」

 

慌てて叫びながら体を起こすと、ハジメは自分が本当にベッドで寝ていることに気がついた。純白のシーツに豪奢な天蓋付きの高級感溢れるベッドである。爽やかな風が天蓋とハジメの頬を撫でつい目を細めてしまうが周りは太い柱と薄いカーテンに囲まれており、場所は、吹き抜けのテラスのような場所で一段高い石畳の上にいるようだ。建物が併設されたパルテノン神殿の中央にベッドがあるといえばイメージできるだろう。空間全体が久しく見なかった暖かな光で満たされている。

 

さっきまで暗い迷宮の中で死闘を演じていたはずなのに、とハジメは混乱する。

 

(どこ……ここは…?……まさかあの世とかじゃないよね……)

 

どこか荘厳さすら感じさせる場所に、ハジメの脳裏に不吉な考えが過ぎるがふと自分の手元を見てみると横で傷だらけの日色が寝ていることに気がついた。

 

「………ぅ、……ぅん…………」

「……日色……ッ!よかった……」

 

日色は傷だらけではあるものの現在も規則正しい寝息を立てていることにハジメはホッ、と一息をついた。あの時日色は意識を取り戻してはいたが今にも倒れそうな姿だったため、また倒れてしまうんじゃないかと心配だったのだ。

その心配が杞憂だったことに嬉しく思っているとふと日色がうーん、うーんと呻き声を上げていることに疑問を抱き、ハジメが握っていた右腕とは逆の左腕に視線を向けるとシーツの中に誰かいることに気がついた。ハジメはゆっくりとそのシーツをめくると――

 

「……んぁ……日色……ぁう……」

「………………………………」

 

――そこには一糸纏わぬユエが日色の左手に抱きつきながら眠っていた。

 

その光景に思わずハジメから表情が抜け落ち、完全な『無』の表情になってしまい硬直してしまう(ちなみに日色やハジメは既にボロボロの服を着ている)

日色の左手は丸まっているユエの太ももに挟まれており、丸くなったことで危険な場所に接近しておりユエが寝返りをするように少しずつ日色の手を動かすたびに艶かしく喘いでいた。

 

「……あっ…んぅ~……んっ……日色………そこっ……だめっ……」

 

一応言っておくが日色は呻いてはいるものの一切体を動かしていない、完全にユエが自分で行っていることである。

その光景にハジメの中でブチッと何かが弾けた。

 

無言でベットの上に立ち上がるとプロサッカー選手顔負けのシュートフォームで日色に当たらないようにユエ(ボール)を蹴り飛ばす。

 

「――死ね、寄生虫!!」

「はにゅッ!!?」

 

ハジメの鋭い蹴りは丸まっているユエの膝越し胸に直撃し、日色の左手から手を離させることに成功するが蹴られる途中でユエは自ら後ろに跳ぶ事で勢いを逃がし、薄いカーテンにぶつかった拍子にカーテンが外れたのでクッションにしながらゴロゴロと受身を取りながら石畳の上に着地した。

ぐるぐる巻きとなったカーテンから不機嫌な苛立った表情をピョコとカーテンからユエは見せた。

 

「――……ん、キメラモドキ風情が……私の、睡眠の邪魔…しないで」

「日色の手で自慰していた変態がほざかないで、このエロ寄生虫が」

 

まさに一触即発、ハジメは腰に差してあるドンナーを引き抜き、ユエはカーテンから両手を出して片方づつに風と炎を灯らせている。紅と金のお互いの魔力がせめぎ合いアレ程暖かい光が満たす空間だったというのに今では戦場となった王城のように殺伐とした空気となっている。

 

「………………何やってんだお前ら」

 

そんな中、疲労による眠りからようやく覚めた日色は乾いた声でそう呟くしかなかった。

 

 

その後、目が覚めた日色により二人は喧嘩両成敗とばかりにデコピンを喰らい正座させられ、日色はここに来る一連の流れを説明した。ちなみに、ユエにはしっかりシーツを纏わせている。

 

ヒュドラを倒した後、疲労で限界がおとづれ倒れたハジメと同じく魔力枯渇でフラフラのユエの傍に元々ボロボロだった日色が寄り添っていると突然、扉が独りでに開いたのだそうだ。新手か!?と思ったが何時までたっても特になにもなく、ユエをハジメに連れ添ってもらうようにして日色は限界に近い身体に無理を言わせ確認しに扉の奥へ入った。

 

神水の効果で少しずつ回復しているとは言え、ハジメよりも日色の方が重傷で危険な状態なのでユエは反対したのだが日色はハジメやユエが休める場所を優先するため(日色は否定している)に確かめずにはいられなかったのだ。

 

そして日色が奥に進んだ部屋で見つけた先は――

 

「――ここの反逆者の住処、というわけだ」

 

中は広大な空間に住み心地の良さそうな住居があったというのだ。そのあと、危険がないことを確認して、ベッドルームを確認した日色はハジメを背負ってベッドに寝かせ看病していたのだという。日色は文字魔法で文字通り魔力が尽きるまで回復させ続け、遂に極光の毒素に神水の効果が勝ったのか、通常通りの回復を見せたところで日色は力尽き、ユエはそれをなんとかベットに寝かせたあと続くように力尽きたようだ。

 

「――そして、目が覚めてみればお前ら金ロリとハジメが喧嘩していたわけだ」

「「……………(スッ)」」

 

そう冷たい瞳で呟く日色の言葉に少女二人は気まずそうに顔を背けるのだった。

 

その後、正座をしばらくしたハジメとユエは足が痺れるという地味にキツイものを味わっていると日色がどこから見つけてきたのか大量に上質な服を持ってくる。どうやら男物の服しかなかったようなので片っ端から着れるものを探っていくつもりなのだろう。男物しかないあたりどうやら反逆者は男のようだ。

 

日色やハジメの服も既にほぼボロ布なため、服を着替えることにした。

途中、ユエのサイズに合う服がなかったためカッターシャツ一枚だけになりそれなりの膨らみが覗く胸元やスラリと伸びた真っ白な脚線が、ユエの纏う雰囲気のせいか見た目の幼さに反して何とも扇情的な雰囲気になってしまったり、ハジメが着た服はサイズが合わないのか口元が隠れるほどの高い襟がついてある白い長袖の服にホットパンツとい服を着ることになったのでユエとはまた違う萌え要素が生まれてしまい、中の人がハッチャケていたがそこまで重要なことではないので割愛する。

 

ボロボロになった日色とハジメの服は日色が預かり、文字魔法で直すことにした。

日色は人差し指に魔力を集めると普段の蒼い魔力が灯る、どうやらあの金色の文字を書けたのはあのヒュドラ戦だけだったようだ。

日色はそう思いながら服に『修復』の文字を書こうとし――書けなかった。

 

「―――――」

「……?日色、どうかしたの?」

「………いや、何でもない」

『あるぇ?二文字が書けなくなってる?え?もしかして期間限定?ゲームのシナリオでよくある特殊な必殺技的な扱いなの?』

 

そう、書けなかったのだ。

何度試しても『修復』の文字が書けず、『修』で文字が止まってしまいそこから先は指が動かない。

まるで、それは例えるならば噛み合っていた歯車の一部が突如消えてしまったかのように。

あの時の金色の炎を纏った時に書いた二文字魔法が書く事ができない。

 

日色はハジメに疑問の声を掛けられたことで素早く『直』の文字を書き手早く修復させる、ボロ布だった服が中古で売られているようなマシな服へと瞬く間に『直』される。

日色は一文字を書いている途中も何かが抜けていったような喪失感をかすかに感じたのでおそらく多重書き解放も今は使えないのだろう。

 

(……まさか、文字魔法にはまだ俺が知らない秘密があるのか……?)

 

日色は今は予想と思考を打ち切り、直った服を片手に持ち、先にベットルームから出て行ったユエを追うようにハジメと共にベットルームを出るのだった。

 

 

ベッドルームから出たハジメは、周囲の光景に圧倒され呆然とした。

 

まず、目に入ったのは太陽だ。いや正確には違うここは地下迷宮であり為本物ではない。頭上には円錐状の物体が天井高く浮いており、その底面に煌々と輝く球体が浮いていたのである。僅かに温かみを感じる上、蛍光灯のような無機質さを感じないため、思わず『太陽』と称したのである。

 

「夜になると月みたいになるらしい」

「………本当?」

 

次に、注目するのは耳に心地良い水の音。扉の奥のこの部屋はちょっとした球場くらいの大きさがあるのだが、その部屋の奥の壁は一面が滝になっていた。天井近くの壁から大量の水が流れ落ち、川に合流して奥の洞窟へと流れ込んでいく。滝の傍特有のマイナスイオン溢れる清涼な風が心地いい。よく見れば魚も泳いでいるようだ。もしかすると地上の川から魚も一緒に流れ込んでいるのかもしれない。

 

川から少し離れたところには大きな畑もあるようである。今は何も植えられていないようだが……その周囲に広がっているのは、もしかしなくても家畜小屋である。動物の気配はしないのだが、そこには種やら野菜やらが保存されていた。水、魚、肉、野菜と素があれば、ここだけでなんでも自炊できそうだ。緑も豊かで、あちこちに様々な種類の樹が生えている。

 

そして三人は川や畑とは逆方向、ベッドルームに隣接した建築物の方へ歩を勧めた。建築したというより岩壁をそのまま加工して住居にした感じだ。

 

「……少し調べたけど、開かない部屋も多かった……」

「ん?ユエ、俺がハジメを看病している間にそんなことをしていたのか」

「ん……」

 

石造りの住居は全体的に清潔感のある白く石灰のような手触りだ。エントランスには、温かみのある光球が天井から突き出す台座の先端に灯っていた。薄暗いところに長くいたハジメ達には少し眩しいくらいだ。どうやら三階建てらしく、上まで吹き抜けになっている。

 

取り敢えず一階から見て回る。暖炉や柔らかな絨毯、ソファのあるリビングらしき場所、台所、トイレを発見した。どれも長年放置されていたような気配はない。人の気配は感じないのだが……言ってみれば旅行から帰った時の家の様と言えばわかるだろうか。しばらく人が使っていなかったんだなとわかる、あの空気だ。まるで、人は住んでいないが管理維持だけはしているような不思議な光景だった。

 

三人はより警戒しながら進む。更に奥へ行くと再び外に出た。更に奥へ行くと再び外に出た。其処には大きな円状の穴があり、その淵には魔法陣の彫刻が刻まれておりその隣にはライオンぽい動物の彫刻が口を開いた状態で鎮座している。試しに日色が魔力を注いでみると、ライオンモドキの口から勢いよく温水が飛び出した。どうやら水を吐くのはライオンというのがお約束という決まりらしい。

 

「これは……風呂か?」

「え?本当に!?」

 

日色の言葉に思わずといった感じで頬を緩めるハジメ。最初の頃は日色のことで頭がいっぱいだった為体の汚れなど全く気にしていなかったがハジメも一応、日本人であり年頃の女の子である。余裕が出来た時にそういえば体に痒みを感じるようになったと思っているとわざわざ日色が体を水で拭くために文字魔法で水を用意してくれたことで赤面したのはいい思い出である。

その為、日本人であるハジメは例に漏れず風呂は大好き人間である。安全確認が終わったら堪能しようと頬を緩めてしまうのは仕方ないことだろう。

 

「ハジメ、嬉しいのはわかるが後にしろよ」

「う、うん。わ、わかってる……」

 

そう言いながらも風呂から目を逸らさないハジメ。

そんな彼女にハァと小さくため息を吐く日色にユエが一言。

 

「……日色、入る?一緒に……」

「なっ!!」

 

バッ、と一瞬で風呂の未練を断ち切り背後を振り返りユエを睨むハジメ。どうやら風呂より日色の方が優先度は高いらしい。

 

「…断る、久しぶりの風呂だ。一人でゆっくり入りたい」

「むぅ……」

 

不満げに素足でパシャパシャと温水を蹴るユエを小さく嘲笑うような表情で見るハジメ。

どうやら彼女達の仲は現在でも悪いままらしい、ヒュドラ戦で協力していたので仲は友好になったと思ったがどうやらそれは日色の思い違いのようだった。

 

それから、二階で書斎や工房らしき部屋を発見した。しかし、書棚も工房の中の扉も封印がされているらしく開けることはできなかった。文字魔法で強制的に開けようと思ったが一度全て部屋を回ることを優先しようとハジメに言われたため諦めることにした。

 

三人は三階の奥の部屋に向かった。三階は一部屋しかないようだ。奥の扉を開けると、そこには直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。いっそ一つの芸術といってもいいほど見事な幾何学模様である。

 

しかし、それよりも注目すべきなのは、その魔法陣の向こう側、豪奢な椅子に座った人影である。その人影は――骸だった。既に白骨化しており黒に金の刺繍が施された見事なローブを羽織っている。薄汚れた印象はなく、お化け屋敷などにあるそういうオブジェと言われれば納得してしまいそうだ。

 

その骸は椅子にもたれかかりながら俯いている。その姿勢のまま朽ちて白骨化したのだろう。魔法陣しかないこの部屋で骸は何を思っていたのか。寝室やリビングではなく、この場所を選んで果てた意図はなんなのか……その理由を薄れている知識から知っている日色は心の中で冥福を祈った。

 

「……怪しい……どうする?」

 

ユエもこの骸に疑問を抱いたようだ。おそらく反逆者と言われる者達の一人なのだろうが、苦しんだ様子もなく座ったまま果てたその姿は、まるで誰かを待っているようである。

 

「……まぁ、調べたほうがいいんだろうな。地上への道を調べるには、この部屋がカギなんだろうしな。ハジメの錬成を受け付けない倉庫に工房の封印……調べるしかないだろう。俺が――」

「――日色、私が行くわ」

 

日色が自分が行こうと呟こうとするとその言葉を遮るかのようにハジメが一歩前に出た。

日色が視線を向けると決意が篭った瞳で日色を見つめるハジメがいた。

 

「―――いいのか?」

「――えぇ、私だったら咄嗟に錬成で魔法陣を壊すことができるから。ユエもいい?」

「……ん」

「……気をつけろよ」

 

日色はハジメの決意の篭った瞳を見ると説得は無理かと悟り、了承すると共に一歩下がる。

日色の言葉にハジメは頷き、警戒を行いながら魔法陣へ向けて踏み出した。そして、ハジメが魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げる。

 

まぶしさに目を閉じるハジメ。直後、何かが頭の中に侵入し、まるで走馬灯のように奈落に落ちてからのことが駆け巡った。やがて光が収まり、目を開けたハジメの目の前には、魔法陣が淡く輝き、部屋を神秘的な光で満たす中、黒衣の青年が立っていた。

 

中央に立つハジメの眼前に立つ青年は、よく見れば後ろの骸と同じローブを着ていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

話し始めた彼はオスカー・オルクスというらしい。【オルクス大迷宮】の創造者のようだ。一瞬で戦闘態勢に入っていた三人は驚きながらも無言で話を聞く。

 

「ああ、質問は許して欲しい。これは唯の記録映像のようなものでね、生憎君の質問には答えられない。だが、この場所にたどり着いた者に世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……メッセージを残したくてね。このような形を取らせてもらった。どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを」

 

そうして始まったオスカーの話は、ハジメが聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話しとは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 

それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 

神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だ。領土拡大、種族的価値観、支配欲、他にも色々あるが、その一番は“神敵”だから。今よりずっと種族も国も細かく分かれていた時代、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 

だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、【解放者】と呼ばれた集団である。

 

彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか【解放者】のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。【解放者】のリーダーは、神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり志を同じくするものを集めたのだ。

 

彼等は、【神界】と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。【解放者】のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。何と、神は人々を巧みに操り、【解放者】達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。その過程にも紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした【反逆者】のレッテルを貼られ【解放者】達は討たれていった。

 

最後まで残ったのは中心の()()だけだった。

 

「――何……!?」

 

そのオスカーの言葉に日色は驚愕の声をあげる。

そう可笑しいのだ、何故なら己が知っている原作知識では反逆者は七人だった、つまり自分が知っている原作とは違ってきているから――()()()()

 

 

世界を敵に回し、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した彼等は、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 

 

語るオスカーの話を聞きながら日色は高速で思考を回し続ける。

日色が驚愕の声を上げたのは原作知識と違うからではない。そう問題なのは、反逆者達が作ったものが【七大迷宮】だと言うならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!?

 

途中で人々に殺されてしまった?――いや、違う。そんなことはありえない。何故なら信仰が高すぎるこの世界だ、仕留めてしまえば見せしめとして世界に公表するはずである。ならばこの解放者、オスカーは八人とは言わないはずだ。

 

だとすれば、一体――!?

 

そんな日色の考えを無視してオスカーの長い話は終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

「君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だが、願わくば悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

「――ッ!!?」

 

そう話を締めくくり、オスカーの記録映像はスっと消えた。同時に、ハジメの脳裏に何かが侵入してくる。ズキズキと痛むが、それがとある魔法を刷り込んでいるためと理解できたので大人しく耐えた。

 

やがて、痛みも収まり魔法陣の光も収まる。ハジメはゆっくり息を吐いた。日色は一旦思考を止め、ハジメへと声をかける。

 

「ハジメ……大丈夫か?」

「う、うん、私は大丈夫。……にしても、何か壮大な話を聞いてしまったわね」

「……ん…日色……どうするの?」

 

ユエがオスカーの話を聞いてどうするのかと日色に尋ねる。

 

「いや、別に特に俺は興味がないな。元々、勝手に召喚して戦争しろとかいう神なんて迷惑としか思ってないからな、関わるだけ時間の無駄だ。ハジメはどうだ?」

「私は日色についていく。元々私はこの世界に興味なんてないから、日色がこの世界の人を助けようとするなら私も手伝う」

「……そうか」

 

淡々と日色の疑問に言い返すハジメに日色は小さく返した。元々ハジメにはこの世界どころか本当なら地球にすら興味がないのだ、ハジメが地球に帰ろうとしている理由は日色が最も傷つく場所じゃない平穏な場所が地球だったというだけである。だからハジメは日色がこの世界を救おうとすれば日色が傷つかないように全力で守ろうと日色の敵を容赦なく殺し尽くすだろう。

 

日色はユエにも聞こうと目を向けるとユエも首を躊躇なく首を振った。

 

「私の居場所はここ……他は知らない」

 

そう言って、日色に寄り添いその手を取る。ギュと握られた手が本心であることを如実に語っているだろう。ユエは、過去、自分の国のために己の全てを捧げてきた。それを信頼していた者たちに裏切られ、誰も助けてはくれなかった。ユエにとって、長い幽閉の中で既にこの世界は牢獄だったのだ

 

その牢獄から救い出してくれたのは日色だ。だからこそ日色の傍こそがユエの全てなのである。

 

そう語るかのようにユエはもう一度強く日色の手を握ろうとして――

 

――パシンと横から入ってきたハジメに手の甲を叩かれ日色から手を離された。

 

「………………………」

「………………………」

 

もう一度日色の手へと手を伸ばすユエ、それを叩くハジメ。

 

伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く、伸ばす、叩く。

 

ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺ、と残像ができるほどの高速で繰り出される腕の攻防、日色はそれを死んだ瞳で見ることしか出来なかった。

 

「……邪魔、キメラ」

「……寄生虫風情が、日色の肌に触れないでくれる?」

 

「「………………………ッ!!(メンチの切り合い)」」

 

再びユエとハジメはお互いの顔がぶつかるのではないかという程、顔を近づけ火花を散らしながら睨み合う。

日色は小さくため息を吐き、取りあえず謎の喧嘩を止めさせる為に話を変えることにした。

 

「――お前ら戯れ合うのはいいが後にしろ。「「戯れ合ってない!」」……そんなことより、ハジメ。頭を顰めていたが何かあったのか?」

「え?う、うん。あそこの魔法陣に立ったら新しい魔法……神代魔法っての覚えたみたい」

「……本当?」

 

日色の言葉にぴたりと喧嘩を止め、ハジメの話した内容にユエが信じられないといった表情を取る。それも仕方ないだろう。何せ神代魔法とは文字通り神代に使われていた現代では失伝した魔法である。ハジメ達をこの世界に召喚した転移魔法も同じ神代魔法である。

 

「確か何かこの床の魔法陣が、神代魔法を使えるように頭を弄る?みたいな」

「……大丈夫なのか?それ」

「えぇ、私は大丈夫。しかもこの魔法……私のためにあるような魔法ね」

「……どんな魔法?」

「えっと、生成魔法。魔法を鉱物に付加して、特殊な性質を持った鉱物を生成出来る魔法……らしい」

 

ハジメの言葉にポカンと口を開いて驚愕を表にするユエ。日色も少なからず驚いている。

 

「……アーティファクト作れる?」

「――多分、可能だと思う」

 

そう、生成魔法は神代においてアーティファクトを作るための魔法だったのだ。まさに【錬成師】のためにある魔法である。実を言うとオスカーの天職も【錬成師】だったりする。

 

「…ねぇ、日色。もしかしてコレって……」

 

そう言って探るかのように聞いてくるハジメに日色はハジメが何を聞こうとしているかを察し言い返した。

 

「あぁ、もしかしたら文字魔法も付与できるかもしれないな」

「それなら――ッ!!」

 

ハジメが日色の言葉に表情を明るくする。そう、文字魔法が付与できるならばもしかすればこのまま地球に帰ることができるかもしれないのだ。

それに対して日色は難しい表情で答える

 

「だがあくまで可能性だ、しかも仮に付与できたとしても帰れるかはわからないしな」

「………そう」

「――すまん」

「ううん、気にしないで。私は大丈夫だから」

 

そう笑うハジメに日色はすまなさそうに優しくハジメの頭を軽く撫でた、突然撫でられたことでハジメは驚きの表情を取るもすぐさま気持ちよさそうに目を細める。ハジメは日色が自分の頭から手を離すと名残惜しそうにしながらも二人に声をかけた。

 

「それで、二人も神代魔法覚えたら?何か、魔法陣に入ると記憶を探られるみたいなの、オスカーも試練がどうのって言ってたし、試練を突破したと判断されれば覚えられると思うから」

「……錬成使わない……」

「だが、せっかくの神代魔法だぞ?取っておいて損はないだろ」

「……ん……日色が言うなら」

 

ハジメに誘われたときは少し渋っていたが日色の誘いにより二人で魔法陣の中央に入ることにした。

魔法陣が輝くと共に日色の記憶が探られ視界が閃光に包まれると同時にそして、試練をクリアしたものと判断されたのか……

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスry……」

 

またオスカーが現れた。記録映像だから何度も出てくるのは当たり前なのだろうが何かいろいろ台無しな感じだった。そしてオスカーの記録映像はスっと消えると共に日色とユエの脳裏に何かが入り込んでくる、頭がズキズキと痛むがこれが頭に魔法を刷り込んでいく感覚かと日色は思い――

 

 

 

ザッ

 

 

 

ザザッ

 

 

 

ザッザザザザザザッザザザザザザザザザッザザッザザザザザザザッザザザザザザザッザザッザザザザザザザザザザッザザザザザザザザザッッザザッザザザザザザザッザザザッザザッザザザザザザザッザザザザザザザッザザッザザザザザザザザザザッザザザザザザザザザザザッッザザッザザッザザザザザザザザザッザザッザザザザザザザッザザザザザザザッザザッザザザザザザザザザザッザザザザザザザザザッッザザ――――ッッッ!!!!?

 

 

「―――カハッ!!?」

 

 

――瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

平衡感覚が狂い、五感が喪失し、己という存在がバラバラに分解されたような感覚が襲う。

 

誰かが何かを叫ぶような声が聞こえた気がするがその前に日色の思考は闇に包まれた。

 

 

『……―~~♪、~~―♪―~~~~―~――♪』

 

 

それは、とても美しくも悲しい旋律。

 

 

『~~――~♪、――~♪――~~――♪――~~♪』

 

 

この夢のような瞬き(ひととき)永遠(とわ)に続いて欲しいというエゴじみた悲哀の歌。

 

 

『~~―♪―~~~♪~――♪~―♪―~~~―~――♪』

 

 

気がつけば日色は立った状態で目を覚ました。

視界一面に広がるのは蒼穹の晴天と風に靡き太陽に照らされながらも深緑の色を主張する足元ほどの長さの草原。

草原にはポツポツと色とりどりの花が咲き、日光の下で鮮やかな色彩を魅せている。

旋律が風に乗り響かせる度に花が、草が、舞い踊る。

 

『―~―~~♪、~♪――~~♪――~~~―♪』

 

日色はふとこの旋律は誰が歌っているのだろうと思い、声の主の元へと振り向いて――そして瞠目した。

 

日色の向いた15メートル先には天に向かってそびえ立つ一本の木が生えており、その木の近くで一人の少女が歌っていた。

風が靡く度に艶やかな黒髪がたなびき、深淵の様でありながら澄んだ常闇の瞳を持った美しい十代後半の少女。

村娘なのかファンタジーであるような中世の村人のような服装をして、美しい旋律を歌い続ける。

 

そしてその傍に観客であるかのように木の影で座り、鑑賞している青年がいるがここからでは辛うじて()()()()を三つ編みにして伸ばしていることしかわからず、影のせいでもあるが顔がよく見れない。

 

『~――~♪~♪~――♪~――♪――~♪』

 

だが、日色にはその青年のことなど頭から抜け落ちてただただ驚愕の表情の中、黒髪の少女を揺れる瞳で見続けていた。

日色は呟く。何故、と。

 

そして、すぐさま黒髪の少女の元へと必死の表情で走り出し、黒髪の少女へと手を伸ばした。

 

だがどうしてだろうか日色の手は決して少女には届かず、どれだけ走ろうとも黒髪の少女には一切近づけずまた遠ざかることも無かった。

 

『―~~♪、~~―♪―~~~~―~――♪』

 

歌は奏でられ続ける中、日色は走り続けながらも叫び続ける。

何故なら日色は目の前の少女を()()()()()()()

 

そうだ、知っている。

俺はあの少女を知っているッ!

 

何故なら――ッ

 

何故ならコイツは――ッ!!

 

 

()()()()()()()()()()()――――ッ!!!?

 

 

そこで日色の視界は反転した。

 

 

「――――ッ!!!?」

「「日色ッ!?」」

 

気がつけば日色は地面に片足を付いた状態で目を覚ましていた。

どうやらさっきまでの出来事は日色は長く感じたが一瞬の出来事だったらしく、さっき見た映像が脳裏に何度もリフレインされ、ズキズキと頭を押しつぶされ続けているような激痛が頭に駆け巡り続けている。

 

(………何…だ……?今の映像は……?あの女……は………?)

 

痛みで思考が錯乱しそうになっているがどうにか思考を回転させながら心配そうに此方を見やる二人に視線を向ける。

 

「どうして!?私の時は日色みたいにならなかったのにッ!ユエは!?」

「んっ……私も、痛みは走った……けど、日色みたいにはならなかったっ」

 

そう言って必死に日色が突然倒れかけた原因を考え、日色を助けようとする。日色は頬を伝う一筋の汗を拭うとゆっくりと立ち上がった。

 

「日色、大丈夫なの!?」

「……あぁ、大丈夫だ。すこしめまいがしただけだ、気にするほどでもない」

「……本当?」

「あぁ」

 

心配そうに日色を見やる二人に日色は大丈夫ということを伝えるためにポンポンと二人の頭を優しく撫でた。既に日色の頭をズキズキと駆け巡っていた頭痛は最初からなかったかのように静まり返っており、むしろ痛みどころか身体は万全といった調子だった。

 

二人は日色の心配4割と撫でてくれた嬉しさ6割というなんとも複雑な表情を取ったが日色が「ほら、探索を続けるぞ」と呟いた事で渋々コクりと頷き、取りあえず死体であるオスカーの骸を片付けるため二人はオスカーの骸を担いで部屋を出て行った。ちなみにハジメとユエは砕いて畑の肥料にしようという慈悲が一欠片もないことを行おうとしていたが日色の反対で却下となった。

結果、畑の端に埋め一応墓石を立てることとなった。……心なしか骸の表情が嬉し泣きしているように見えるのは幻覚だろう。

 

日色は先に出て行った二人を追うため自分も魔法陣の部屋から出ようとしたが途中、自分のステータスプレートが落ちていることに気づき慌てて拾い上げた。

日色は、立ち上がった時に落としたのか?と思いながらステータスプレートを見て――

 

「――――――」

 

――一瞬、瞠目し言葉を失った。

 

が、それは一瞬のことですぐに元の無表情に戻った日色はステータスプレートを自分のポーチにしまい、二人を追いかけるため部屋から出て行くのだった。

 

 

日色が仕舞ったステータスプレートには新たな派生技能が刻まれていた。

その新たに刻まれた派生技能は日色の力を示すかのように蒼い光でこのように書かれている。

 

技能:文字魔法[+一文字解放][+空中文字解放]――

 

 

 

――[+()()()()()()][+()()()()()]

 

 

新たな力と共に新たな謎が生まれた瞬間だった。




はい、というわけで今回の話で登場した転生させた女神(?)が主人公を転生させたのは決してご都合主義などの神様転生ではありません、れっきとした理由があります。
そして、神代魔法を取った日色に新たな文字魔法の力が……なんて偶然でしょうね(すっとぼけ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。