ありふれた職業で世界最強(女)と文字使い(ワードマスター)   作:アルテール

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コレジャナイシリーズ第三弾!!

一応書いたのですが、ハジメちゃんがめっちゃ欝気味な人になってしまいました。

ま、息抜きに書いているんだから別にいいよね(投げやり)

あとお気に入り登録が400人突破しました!
あれ?さっきまで200人だったはずなのに……


皆さんありがとうございます!!(((o(*゚▽゚*)o)))


僕の大切な友達(←コレ重要)後編

カリカリと無機質にシャーペンが紙に文字を書いていく音が僕の耳に聴こえてくる。

僕と彼の境をテーブルが仕切り、手を動かす度に削る音がBGMとなり静かな空間に響き渡っていく。

 

彼の勉強会に何故か参加してしまう事態にいくら思考してもどうしてあの時断れなかったのか分からない。僕がただただ押しに弱い小心者だったか、それとも別の理由か……

今更そんな事を考えても仕方がないと思うけど、疑問は未だに胸の奥に居座っている。

 

いけない、いけない、集中しなきゃ。えーと、この問題は——

 

数学の問題を見て、手を付け始めるが……

 

ムゥー、解き方がわからない。問題にウンウンと唸っていると、

 

「…南雲、そこの問題はその方法では無理だ」

「え?」

 

突如、神代さんがにゅっと僕のノートにスラスラと書き、問題の説明をしてくれた。

その内容は僕でも分かりやすく、懇切丁寧に教えてくれて、その時のコツすらも説明してくれる。

 

シャーペンを指示棒代わりに使いながらも教えてくれる彼をふと見つめると少し穏やかな気分になる。

艶のある黒髪に黒塗りの眼鏡、瞳は黒水晶の様に美しく、顔つきはよく整っている。

恐らく渋谷などを歩いたら10人中9人程は振り向くのではないだろうか?

それはそうだろう、彼は学校でクールキャラとして『毒舌ながらも他人を思いやる心を持った優しい人』として人気だし、学校で影で囁かれている彼氏にしたいランキングを常に王者である為、一部ではファンクラブが出来ている程だ。

こんな自分が本来なら関わらない天の上の人なのだ。

 

「———という訳だ、後は分かるだろ?」

「う、うん」

 

とと、彼を見つめるのに夢中で忘れていたが彼は勉強を教えてくれたのだ。試しにもう一度解いてみるとスラスラと解けた為、一応理解はしているのかな。

 

歴史の勉強に戻った彼を見ながら僕も再び数学の問題に立ち向かう。

 

が、何時になっても僕は胸に渦巻いている『何か』が晴れることはなかった。

 

 

そうしてしばらく経った頃、部屋の扉からコンコンという音が聞こえ母さんが入ってきた。

 

「ハジメ、日色君、お菓子ここに置いておくから勉強頑張ってね」

「母さん……わざわざ来なくても僕が取りに行くのに……」

「すいません、わざわざありがとうございます」

 

そう、僕は現在、神代さんを自宅に招き入れているのだ。勉強会を本来なら神代さんの家で行うはずだったのだが親の事情でできなくなったらしく代わりに僕の自宅ですることになったのだ。

 

母さんはトレイに乗っている飲み物と菓子類を置いたあとニコニコと扉を出て行った……チラッと一瞬だけ僕を見て。

 

え?何?母さん?どうして今、振り向いたの!?

 

そんな疑問を視線で訴えるが母さんは微笑みを返すだけで何も語らず、そそくさと去っていく。

 

 

「……時間も時間だし休憩にするか」

「う、うん。そうだね」

 

僕はどうして母さんが振り向いたか疑問に思いかけるが神代さんの声に正気に戻り勉強を止める。

神代さんは母さんが入れたオレンジジュースを飲みながら僕がやっていた問題集を見る。

 

眉を顰めている辺り、僕の学力の無さに呆れているのだろう。

 

自分なんかに時間を費やしてくれるのだ、友達だからという理由だけで。だけど僕は何も彼の役に立ったことはない、ただの役たたずだ。

 

そうして、なお一層胸の中で渦巻き続ける『何か』を僕は理解した。

 

 

「ごめんね、神代さん」

「ん?何がだ?」

 

 

それは

 

 

「僕のために、こんな時間を作ってくれて」

「気にするな、生憎とお前とは違って予習は完璧だからな」

 

僕は彼の言葉に笑う、小さく、儚く、悲しい声で、彼とは全く別で何も出来ない役立たずな自分を嗤った。

 

 

「凄いね、神代さんは、僕とは違って勉強も運動もできるから――」

 

 

それは  『嫉妬』

 

自分が出来る事など何もない、全て彼は自分で成し遂げることができるのだから。

 

 

だから、

 

 

だから、

 

 

もう、

 

 

僕なんかの為に

 

 

自分のことを犠牲にすることを

 

 

止めてよ

 

 

もう、

 

 

僕に関わらないで

 

 

口は動く、言葉を紡ぐ。あなたにもう迷惑をかけたくないと僕は彼との縁を切ろうと言葉を零し――

 

 

ズドンッッ!!という音と共に額に激痛が走った。

 

「――ッ!!??」

 

咄嗟に僕は額を抑え痛みに悶えてしまう――って本当に痛い痛い痛い!!!!!

痛みが全く治まらない、ヒリヒリと痛む額を抑え涙目になりながら彼を見ると神代さんはビスケットを食べながら呆れた視線をこちらに向ける。

 

「い、いきなり何を……」

「バカか、お前は?その自分とは違いますねオーラを出すな、鬱陶しい。第一、俺とお前が違うのは当たり前だろうが」

「……え?」

 

彼はなぜわからないとでも言うように此方を見ながら言葉を紡ぐ。

 

ピキリッ

 

自分の何かに亀裂の入っていく音が聞こえた。

 

 

「お前にできないことを俺ができるのは当たり前だ、同一人物じゃないんだからな。そんな自分と他人を比べた所で何かが変わるわけでもないだろうが」

 

言葉が出せなくなった。

 

ピキリッ!ピキリッ!

 

再び音が鳴り、何かの亀裂が奔る。

 

「だからこそ――」

 

彼は続ける、言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

「お前にしかできないことは必ずあるんだよ」

 

 

 

 

 

呼吸が止まった。

 

 

 

「才能が違う?アホか、万能な人?バカか、なんでも出来る人間なんていない、そう見えるだけだ。個ができることなんてたかが知れているだろう?俺はただお前より少し優れていることがあるから教えているだけだ」

 

 

割れていく、崩れていく。

 

灰色の世界が、絶望の世界が、幻想のように、夢だったかのように。

 

そして、そして、

 

 

「だから――」

 

 

彼は言った。

 

 

「いつか、俺が困った時お前が助けてくれ。これは貸しだ、絶対忘れるなよ」

 

 

世界が木っ端微塵に破壊された。

灰色の世界が色彩のある鮮やかな世界へと変わり、僕は俯いてしまう。

 

 

嬉しかった。

 

 

僕は足でまといではないと言われて。

 

今までの自分が恥ずかしくなってしまう、何が役たたずだ?何が金魚の糞だ?

 

 

彼はそもそも僕のことを信頼して、信用していたのに。

 

僕のことを自分よりも知っていてくれたというのに。

 

 

「ん?どうした?」

「……ごめん、ちょっとお手洗いに行ってくる」

 

僕は俯きながらそう言い、立ち上がって部屋から出て扉を閉め、少し離れている洗面所に向かう。

 

俯いていなければ涙を見せてしまうから。

 

 

誰もいない、静かな洗面所で鏡に映る自分を見て、蹲る。

 

 

そして錆び付いて、枯れていた涙腺と心の枷を外した。

 

 

「ぅぁ、あっ、あぁああ!!うわぁぁぁああああああああぁぁぁぁああああああぁあぁああんッッ!!!!」

 

 

涙が枯れない、止まらない。いくら声が張り裂けようと声は収まらず、泣き声は止まらない。

 

昔から泣いて、泣いて、泣き続けて、いつか枯れきって、曖昧に笑うことしかできなかった仮面がついに限界が来てしまったことを自覚した。

 

 

これも、全て神代さんのせいだろう。彼に仮面が壊され、砕け、ぐちゃぐちゃに踏みつけられたようにもう、偽りの表情を作ることができなくなってしまっている。

 

 

僕は止まらない涙を零し、泣いて泣いて、泣き続けた。

 

 

だから、扉から微かに覗いている誰かに気づく事は出来なかった。

 

 

 

 

「うぅ……グスッ……グスッ……早く、泣き止まなきゃ……神代さんに……変に思われちゃう……グスッ……」

 

数分後、僕は鼻を赤くさせ、必死に涙を拭っていた。

 

というか、彼にこんな姿を見せたくないのだ。

 

そう思い、自分の部屋の扉へと向かおうとして――

 

「――に見たの、ハジメが心の底から笑ったのは」

 

――扉へと伸ばした手が止まった。

 

え?母さんの声?え?なんで!?

 

突然の出来事に混乱するがとりあえず耳を澄ませ、会話を聞き取ろうとする。

 

「驚いたわ、……メは帰って……私たちの前で笑顔で……言ってたの、『友達……来たよ!』てね」

「……そ……すか、良……たですね」

 

所々で聞こえなくなるがおそらく自分のことを話しているのだろう。

 

「……なんですか菫さん」

「ねぇ、日色君。お願いがあるの」

 

「これからも彼女の、ハジメの友達でいてくれないかしら」

 

ちょっと待って、母さんは一体何の話をしている?

勉強のこと?僕のこと?

 

まさか、僕の過去!?

 

慌てて扉に手を伸ばす、嫌だ、彼に僕の過去を知ってもらうわけには行かない!!

 

しかし、もう遅いだろう、おそらく母さんはもう会話的に僕のことを話してしまっている可能性が高い。

ドアノブに手をかけて扉を開けようとし――

 

「………俺は、あいつの過去なんかに興味はありません。あいつがいじめられていようが、嫌われていようが、所詮他人です」

 

 

――開ける力が一気に無くなった。

 

「…………あ」

 

視界が真っ黒になった気がした。

 

他人

 

他人

 

他人

 

 

その言葉が僕に深く突き刺さる。

 

分かっていたはずだ、世界はそんな救われる世界ではないと。

 

分かっていた。

 

 

分かっていた。

 

 

分かっていた。

 

 

だけど、だけど、彼にそう言われることが何よりも辛かった。

 

何度もそんなことを言われていたのに、それらとは比にならないほど辛かった。

僕は扉を開ける勇気がなくなり、その場で立ち尽くしてしまう。

世界が再び灰色に染まりかけ――

 

「ですが……」

 

彼の言葉が聞こえた。

 

 

「俺は彼女が望むなら友達であり続けたい」

 

 

――今度こそ、消し飛ばされた。

 

そうだ、彼は言っていたではないか友達と、僕のことを友達と言ってくれていたじゃないか。

僕は一体、何を恐れていたんだろう、彼はそんなことするはずないというのに。

 

僕は勢いよく扉を開ける。

 

彼に感謝の言葉を投げかけるために。

 

 

そして―――

 

 

 

 

扉の先には神代さんの肩に両手を乗せ、顔を彼に近づけている母さんがいた。

それは第三者から見ればキスシーンのような体勢だった。

 

では、何も知らないハジメちゃんが見ればどうなるのか?

 

 

 

 

「……母さん!?………何……してるの?」

 

 

 

 

 

世界が凍った。

 

 

その後どうなったかはこれを見ている君が想像して欲しい。

 

まぁ、ロクな事しか起こっていなかった事は言っておこう。

 

 

 

 

その後日が沈みかけるまで勉強を教えてもらい、神代さんの帰宅時間となった。

 

「ごめんね、夜遅くまで付き合ってもらって」

「いや、気にするな。お前の底辺な学力を上げる為だ」

 

彼の言葉にグサッっと突き刺さるがこれにはもう慣れたものだ。

僕は「はは、そうだね……」と苦笑する。

 

こんな事にさえ彼と話すと気分が良くなってしまう。

 

 

「それじゃ……」

 

「うん、今日はありがとう。じゃあね、()()

 

そう、彼に別れの挨拶をすると彼は怪訝な顔をして、此方を見る。何か変なことでも言ったかな?

 

「お前……今、初めて俺を下の名前で言ったな」

「え?……あ!ご、ごめん!つい……」

 

咄嗟に口元を押さえるが、彼はフッと笑う。

 

えっと怒っていないのだろうか?

 

 

「…えっと、嫌なら止めるけど……」

「いや、構わない。じゃあな………()()()

 

 

日色はそう言った後、目に見える程に笑った。

 

僕はそれを見て、文字どうり見惚れてしまい――

 

 

トクンッ!

 

 

胸に、熱く、そして優しい『何か』が生まれた。

 

――ハッ!いけない、いけない。

 

 

「うん…バイバイ、日色」

 

 

僕もせめて笑顔でお別れを言おうと笑った。

 

その時から彼と会うたびに、胸が熱くなるようになった。

 

ちなみに、中間テストでは僕の点数の大半が90点台を獲り上位20台に入ると言う偉業を成し遂げ日色くんの凄さをさらに実感するんだけどそれはまた別の話。

 




ハジメちゃん、恋心を覚える(自覚なし)

勘違い系を書きながらこれは無理矢理すぎたかなと思うこの頃です。

次は『し』から始まって『り』で終わる人を書きましょうかね?
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