憑依防空棲姫in ワンピ   作:ナガン

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今回は幕間集。グランドラインの方が本番だからここら辺は流していく

時系列はローグタウン編~グランドラインの時期です


ローグタウンからグランドラインへ

 幕間①:レーダー

 

船の航海というのは、天気が穏やかな時は航海士以外は案外手持ち無沙汰になる。故に活発なルフィやウソップが暇をもてあそび、何かしらのバカをやって暇をつぶすのはよくあることだ。そして今日は右舷の海面に突き出した小さな岩を大砲で打つことを始めていた。

 

派手な砲撃音と二人があげる喝采はメリー号のどこにいても耳に入り、棲姫もそれにつられて二人の元にやってきた。

 

「よーし、大体の距離はつかんだ。次は絶対当ててやるぞ!」

「いけ~~ウソップ~~!」

 

体力が有り余っている17,18辺りの二人のテンションに、その山を越えてしまった25歳はなかなかついて行きづらい。彼女は大人しく横で静かに成り行きを見守ることにした。

 

視線を標的の岩に向けて、距離を概算していると、ふとレーダーをまだちゃんと使いこなせないことに思い至る。シャボンディ近海やカームベルトで周辺を索敵したぐらいでそのあとは全然使っていなかった。

ちょうどいいと、彼女はレーダーを使用するべく艤装を展開しようとして、また考え始める。

 

そもそも艤装を召喚する必要はあるのか? と。

 

レーダーの画面は艤装に取り付けられているわけではない。頭の中に視覚情報として直接伝達される。初めて使ったときはレーダー画面と視界が重なって気持ち悪くなったが、言い換えればレーダーは頭に内蔵されているとも考えられる。つまりわざわざ艤装を召喚しなくても起動できるのではと彼女は思った。

 

結果だけ言えば、できた。

 

目をつぶった彼女の頭の中で、あの円形のレーダー画面が見えている。距離も高さの数値表示も非常にわかりやすい。例えばあの岩までの距離は173メートル、頂点は海抜4メートルほど。確かにこれならばあのいかれた対空値にも納得がいくほどの高性能っぷりだった。

 

「距離は173メートル、船の速度は5ノット。風は西から東に弱い風」

 

が、それを人力であっさりやってしまう男もまた隣にいた。彼女はもう忘れているが、エニエスロビーで超長距離狙撃を一発どころか何発も撃って全て成功させる彼の事なのだ。今は無理でもその才の片麟はすでにこの時から現れていた。

 

さらりと一桁単位まで正確に距離を言い当てたウソップの放った弾はきれいに岩を粉砕した。ルフィは歓声を上げ、ウソップはそれにふんぞり返る。彼女もそれに拍手を送った

 

なんというか、技術的優位はワンピース世界じゃあてにならないのではと彼女はかなり不安になった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

幕間②:賞金額

 

ココヤシ村から出航して数日、ナミが購入した新聞からルフィの手配書がこぼれ出た。晴れてルフィは賞金首へとなったのである。だがそのルフィの様子がおかしく、ゾロは首をかしげていた。

 

「おいウソップ。ルフィは賞金首になったってことでいいんだよな?」

「賞金3000万ベリーだ。初めて付く額にしてはすげーぞ!」

「だが、ルフィはそこまで嬉しそうじゃねえぞ。どうなってやがる」

「確かに。ルフィなら飛び上がって喜ぶはず。サンジは何かしらねーのか?」

 

ウソップもそう言われれば確かにと、タバスコ星の作成を中止して一緒に首をひねり始める。通りすがったサンジに疑問をぶつければ、彼は素直に答えた。

 

「そりゃあ、船長が二番手に甘んじてるからに決まってるからだろ?」

「成程、一番じゃあなきゃあいつも喜べねえか……、て二番?! じゃあ一番は誰なんだ?!」

「セイキちゃんさ。言われてないのか?」

 

自己紹介の時に二人はいなかった。そしてココヤシ村でも忙しなく事態が動き続け、そして棲姫自身も賞金についてはあまり語らなかったので二人はいまだ揃ってこのことを把握してなかったのだ。が、言われてみればとウソップはアーロンパークでの彼女の堅牢さを思い返す。

 

「あ~、アーロンの攻撃全然効いてなかったしな。因みにいくらだ?」

「5000万ベリーだ」

「へぇ~5000万……5000万べりー!?」

「へぇ……」

 

倍近い額にウソップは開いた口がふさがらない。一方でゾロは不敵な笑みを浮かべた。

 

「成程……たしかにルフィも喜べはしないな」

「まあ、船長にはまだまだ名をあげてもらわねえとな」

 

 

さて、そんな話を一足早く聞いていたナミは能天気に談笑していた三人とは対照的にそれはもう切羽詰まっていた。何せルフィの3000万で海軍本部が動く額なのだ。ここに5000万が加われば、総額は一億近くまで跳ね上がる。そうなれば佐官ではなく、将官が出張ってくる。一言で言えば命がやばい。

 

なので現在、彼女は棲姫に対して本格的な変装をさせようという強烈な気迫で彼女を圧倒していた。

 

「やらないと、だめでしょうか……?」

「そんな白い肌一発でばれるに決まってるでしょ! いいからこっち来なさい! その髪の毛も染めてもらうから」

「ぐぬぬぬぬぬ」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

幕間③:ローグタウン

 

 

「よし! これでばっちりね! 手配書とは似ても似つかない! ちゃんとやり方覚えてもらうから」

「うぐぅ……。背に腹は代えられないのか……」

 

何ということでしょう。匠の技により、死人のように白かった肌が血色ある肌色に様変わり、唇も薄く色が乗り、匠の粋な計らいがうかがえます。髪の毛は見事な栗毛色に染められ、どこからどう見ても陽気な町娘の様です。

 

イメージとしては成長した照月が一番近いだろう。ただ、諦めたような棲姫の顔が魅力を抑えているのはいただけない。そんなことは彼女にとってどうでもいいのだが。

確かにこれで人相は似ても似つかなくなった。賞金首とばれないのは大歓迎である。だが男として、この化粧をやると言うのはいかがなものか。その感性が微妙な表情を作り出していた。

 

「髪の長さも変えて欲しいところだけど、まさか切れないなんて。あんた一体どういう体してるのよ」

「いやあれは本当に予想外でして……というか自分でもよくわかってなくて……」

「ハァ……で、話変えるけどあなた服はそれしかないの?」

 

ここまでずっと、彼女はあの体正面に何もない公式絵の服装を着ていたわけではない。バラティエに転がり込んで以降、基本的に持ってきたバラティエの給士服に身を包んでいた。勿論一連のドタバタで買いに行く余裕なんてなかった。

 

「え、まあ……あるにはあるけど」

「あれは服とは言わせないわよ。なんだってあんな……。よく男どもに襲われなかったわね」

「俺だって好き好んで着てるわけじゃない!」

 

今思い返せば、シャボンディ諸島はローブが無かったら痴女としてしょっ引かれていた可能性があった。というか黄猿にばっちりみられてるじゃんと今更ながらに棲姫は赤面した。

 

「そう? なら次の島であなたの服見繕ってあげる」

「え、マジで!」

「ええマジよ。代金はあなた持ちだけど。足りなかったらいくらでも貸すわ」

「アッハイ」

 

こうして棲姫達はまず化粧品と服を買うためにローグタウンへ上陸した。

 

 

 

 

 

「よし、とりあえずはこれで大丈夫でしょ」

「化粧品って結構かさばるんすね……」

「当たり前でしょ。何言ってるの」

「ははは……後は財布買わないとなぁ」

 

化粧品。小物入れのポーチ。変装用の伊達メガネ。動きやすい服。その他もろもろ。買い物を終え、ドでかい袋にそれらを詰めてナミとセイキは歩く。因みに荷物は全て棲姫持ちである。利子はゾロより安くなった。

 

「セイキ、今のうちにローブ着ときなさい」

「なんで?」

「気圧がさがってる。もうすぐ雨が降るわ。化粧が取れたら一大事よ」

「りょー」

 

 

やがて二人が広場に差し掛かると、ちょうどサンジ、ゾロ、ウソップと鉢合わせた。が肝心のここに行くと言った筈の船長が見当たらない。自然と皆があたりを見まわし始める。

 

「ねえ! あそこ!」

 

そしてナミが指差した先は、ゴールド・ロジャーが処刑された死刑台。そのてっぺんでルフィがバギーに今まさに殺されそうになっていた。

 

「「「な、なんであいつが死刑台に!!?」」」

 

流石主人公、物語がありますなぁと、男どもが驚く横で棲姫は悟った目で処刑台を見上げていた。

 

「ゾロ、サンジ君。それとセイキ、何とかしなさい! ウソップは私と来て!」

 

購入品を担いで二人は船にダッシュで戻って行く一方で、棲姫達はルフィを救出するべく駆けだした。

 

血気盛んなゾロとサンジはそのままダッシュで行くが、バギーの手下どもに妨害を受け思うように進めない。

勿論彼女も一歩出遅れたが自分の船長を助けるべく行動を開始していた。普通に走るだけじゃ間に合わない、そう考えた彼女は次に砲撃を考えた。だがバギーとルフィの距離が近すぎる。直撃しなくても爆風と破片で死ぬ可能性があるし、広場をスプラッタ会場にして平気な価値観も持ち合わせていない。その時、ポケットに入れた小銭が音を出した。

 

棲姫は数枚のコインを重ねて握りこみ、死刑台に向かって投げつけた。拙いフォームながらも彼女の怪力により、時速200キロを優に超えた速度で死刑台に向かってコインは飛翔する。そのうちの一枚がバギーの胴体に直撃した。予想外の衝撃にバギーはよろける。だがバギーを死刑台から叩き落とすにはまだ足りない。ゾロとサンジもまだたどり着いてない。

 

ルフィはどう助かるのか? その前兆があったのかも彼女は皆目見当はつかなかった。もしかしたら原作と乖離してここで本当にルフィは死んでしまうのだろうか。そんな考えさえよぎってしまう。

 

ウソップがここにいればと投擲物を必死に探していたが、唐突にその最悪の考えは杞憂に消えた。

 

バギーが振りかぶった剣。それに雷が落ちたのだ。ルフィは絶縁体故に無傷だがバギーは感電して黒こげに。死刑台も熱で発火し、崩落した。炎の中からカラカラとルフィは元気そうに笑って現れる。

 

「おい、お前、神を信じるか?」

「馬鹿言ってねえでさっさとこの町出るぞ。もうひと騒動ありそうだ」

「……うん、行こう」

 

こっちの気も知らずに儲け儲けと無邪気に笑う船長に、棲姫は脱力した深い息を落とした。しかしすぐに切り替えてすでに海軍の包囲が始まっている中を三人と一緒に西に向かって爆走する。

 

「やべえ化粧があぁ!」

 

雨あられに降られ、化粧が崩れる中、棲姫は深くローブをかぶり、顔を隠しつつ海軍の追走を振り切っていた。途中たしぎを抑えるためにゾロが離脱。そして彼女たちの前方に先回りしたスモーカー大佐が待ち構えていた。

 

ルフィは道をこじ開けるべく突撃するがロギア系の彼に打撃は通じず、逆に彼の操る煙にまかれてあっさり捕らえられてしまう。

深海棲艦特有の不思議体質で悪魔の実無効とか、少しだけ期待して棲姫もルフィを解放すべく攻撃を仕掛けるが、彼女も同じく煙に巻かれて壁に叩き付けられる。

やはり自然現象に純粋な打撃が通じないように、肉弾戦では防空棲姫と言えどもロギア系の流動する体には攻撃を加えられない事を彼女はこの時初めて理解した。

 

打つ手なしかと思われたその時、謎の男がいきなり現れ、スモーカー大佐の行動を阻害した。そして直後に嵐による突風が吹き荒れ、その男以外は皆風に押し倒される。この混乱に乗じて何とか彼女達は包囲網を突破し、慌ただしくも麦わら一味はローグタウンから脱出した。

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

島を脱出してから、メリー号は嵐に揺られ続ける。グランドラインに入るための入口、リバースマウンテンに向かって、一向は進んでいた。だがしかし、不意に嵐が止み、海も静かになった。船の後方はまだ嵐なのに今いる場所はとても静かで、風もない。

 

この奇妙な現象に棲姫とナミには心当たりがあった。

 

「あれ? 急に静かになったな。なんでだ?」

「しまった。カームベルトに入っちゃった! すぐに帆をたたんで! オール用意して!!」

「まった。俺が曳航する。ロープくれ! いや錨でなんとかする。ゾロ取り舵!」

 

左舷に取り付けられた錨を担ぎ彼女は艤装召喚しつつ海に降り立つ。ここの危険性は身を以て体験している。なので対応はとても素早い。

艤装に前進を命じると、その馬力は楽々とメリー号を動かし始める。風を受けていた時よりも速い速度で。

 

彼女の暴挙にナミは最初ひたすら混乱していたが、やがて彼女のしでかしたことを目の当たりにして今度は声を失った。

 

「はえーーーーーぞーーーー!」

「何よこれ。でたらめもいいところじゃない。ちょっとセイキ、なんでもっと早く言わなかったのよ!」

「あれ? 話してなかったっけ?」

「あのねえ。こんな速さを! 安定的に! 出せるのがでたらめって言ってるのよ! 風を読む必要が無いなんて、私いる必要ないじゃない!」

 

私もしかしていらないとナミはうずくまって自分の存在意義について悩み始める。しかし不意にあくどい気配に雰囲気が変わったのを棲姫は敏感に感じ取った。具体的にはこのままリバースマウンテンまで曳航させられそうな雰囲気を醸し出していた。

 

「いや、そんなことはないぞ! 航続距離も限りがあるからいつまでもはさすがに曳航できないから! つーかもう無理!」

「……一回あんたとはゆっくり話し合う必要があるみたいね」

「お、お手柔らかに」

 

 

こうして何事もなくカームベルトから脱出できた麦わら一味は、無事リバースマウンテンを越えて、グランドラインへと足を踏み入れる。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

幕間④ 覇気とは?

 

 

ある日のメリー号。ラウンジで調理の下ごしらえをしているサンジとセイキ、そしてルフィが雑談に興じていた。その流れで、スモーカー大佐の話が成り行きで交わされ始める。

 

「あの煙野郎てごわかったよな」

「あの海軍の野郎か。ありゃ絶対悪魔の実の能力者だ。しかもロギア系。打撃や斬撃は全部文字通り煙に巻かれちまう」

「そうなんだよな。俺やセイキのパンチもサンジの蹴りも全部煙になって避けられちまった。正直今のままじゃ打つ手がねえんだよなぁ。なぁ、お前ら何か対策とか知ってっか?」

「いや、知らねえな」

「知ってる」

 

困った表情で問いかけるルフィに何ともなしに棲姫は肯定した。何しろその知識はロギア系最強の地位を崩した印象深い要素なのだ。そう簡単に忘れるわけがない。

ルフィは身を乗り出して彼女に先を促す。

 

「本当か!?」

「あんまり詳しくないんだけど。覇気って呼ばれてて、気配とか気迫の強化バージョンみたいなもの。武装色と見聞色、覇王色の三種類があって、そのうちの武装色を習得することが確かロギア系の実体を捉えられて攻撃が入れられるようになる、はず。ごめんこれぐらいしか知らない」

「じゃあ、その武装色の覇気を覚えればあのケムリンに一発入れられるようになるのか! 」

「そういうこと」

「じゃあその、武装色の覇気ってやつを教えてくれ!!」

「いんや、知ってるだけで俺は使えない」

 

そういや俺も覇気は使えるようになるのだろうか? と棲姫は今更ながらに心配になってきた。深海棲艦だから覇気使えないとか言われたら、新世界では確実にやっていけない。その事実に彼女は少し身震いした。

 

「なんだ使えねーのか」

「すまんな」

 

興味を引かれていたからこそルフィはすぐにはモノにできないことを露骨にがっかりした。彼女は軽く謝罪する。

 

「大丈夫です。セイキさん。あなたの覇気で私の心はすでに虜です。どうぞ、本日のおやつです」

「どーも」

 

そこで話は一旦終わり、サンジが作った軽食にルフィが飛びつく。そんな感じに今日は珍しく穏やかな時が続いた。

 




ワンピース世界に艦娘、深海棲艦という概念は無い。
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