憑依防空棲姫in ワンピ   作:ナガン

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三話同時投稿三話目です。 

相変わらずのガバ文だから期待しないで



アラバスタで意識改革第二段3/3

 少し、頭を冷やした。今、悔やんで何になる。時間は一秒たりとも無駄には出来ない。

原作では生き延びるんだ。こっちでもそう。そうであるはず。

 

 

「何ぃ! こいつ川を渡れねえのか!!?」

 

この蟹、泳げないらしい。確かに蟹が水面を泳いでいるのは見たことがないのでそう言われればそうなのだが、

 

「うん。ヒッコシクラブは水が苦手なのよ!」

「船は無いのか? 7人がのれる浮くものでもいい。それがあれば俺が曳航できる」

 

水上を高速で移動できるのは俺以外にはいない。そしてもともと艤装は一人乗りだ。そんなところに人間が7人+ラクダが乗れるはずがない。

 

「やべぇ! そう言ってる間に川が見えてきちまったぞ!」

 

ウソップの悲鳴に前を向けば確かに目の前に川が見えた。

 

この後ナミのエロパワーで20メートルは稼げた模様。尚幅は50キロの模様。

 

「ええい、こうなりゃビビ担いで先に行く! それでいいな!」

「仕方ねえ! 後から追いつく!」

「「置いてかないで~~~~!!」」

「ああもう! しっかりつかまれよ!」

 

船は見当たらない。艤装があるにしても全員運ぶのは無理。ならばビビだけでもかついで向こう岸にと思ったのだが、ナミとウソップに全力で縋り付かれた。しょうがないので艤装を召喚し、砲塔の上に座らせる。

 

そこに巨大な影が差した。ビビが言うにはサンドラマレナマズというらしく、俺たちを食おうと姿を現したらしい。このままでは皆食われて反乱を止めるどころの騒ぎではない。

 

 

「セイキ早く撃って!」

「逆にお前らミンチになるわ!」

 

ナミとウソップが狂乱して砲塔部分にしがみつくせいで砲撃が出来ない。まあ所詮は大きいだけのナマズなのでそのまま迫ってくるナマズの頭に強烈な拳を食らわせて昏倒させると。そいつは手ごろなボートに早変わりした。

 

「た、助かった……」

「はやくこれに乗って、曳航する」

 

嬉しいことに、この後エルマルでルフィが手懐けたクンフージュゴンが曳航の助力に参上し、一時間弱で川を渡りきることに成功した。そしてそこで待ち構えていたのはカルー率いる超カルガモ部隊。アラバスタ一の彼らの俊足により両軍の衝突の一時間前に俺たちは強行軍を完遂した。

 

 

 さあ、最後の決戦だ。

 

ここまで来たんだ。もう原作とか考えない。ただ俺ができることだけをやってやる。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

マツゲは置いてきた。この戦いには奴はついてこれない。まあただの定員オーバーなんですけどね。

 

で、馬鹿正直にアルバーナに行ったところで、ナンバーズに襲われるのは目に見えていた。そこで俺たちは一計を案じる。ビビとカルー以外が深いローブを羽織りカルガモ部隊でナンバーズを攪乱しようという作戦だ。

 

この作戦はかなりいい感じに決まった。ナンバーズたちは三方に分かれた俺たちを各個に追って来てくれたから。これでビビと反乱軍の間に邪魔するものは何もない。

 

後は俺たちがナンバーズを倒すだけだ。

 

「残念ハズレ」

「お前らは……あの時のォオ!」

「ギャー! ゴメーン!」

「おい離れろ顔を近づけるな」

 

抱き着くウソップを肘で牽制しつつ、自分の標的を改めて確認する。

 

「あの時以来だな オカマ野郎。部下さんたちにはすごくお世話になったよ」

「どうやらあちしは外れを引いちゃったみたいね……!」

「俺にとっちゃアタリだけどね」

「何おぉ! あんたたちを瞬殺すれば無問題よーーう!」

「ああそう」

 

ウソップに下がれと手で後ろに押しやり、ボンクレーに向かって走り出す。

 

原作だと、ここら辺で熱いバトルが繰り広げられるだろうが、そうはいかない。ここは俺にとってもはや現実だ。ならば、山もなく谷もなく、一瞬で終わらせる。

 

「"どうぞオカマいナックル"!!」

 

さっき言った通りボンクレーは俺にとってアタリだ。何故ならこいつは純粋な体術使いだから。その攻撃はよけれなくても純粋な運動エネルギーだから防御を貫けない。

鋭い正拳突きは付け焼刃ではよけられなかった。だがその左手をつかんで、返す刀で強めの腹パン。受けた左胸がじんわりと痛むが、そのまま腕をホールドして、悶絶する彼の股間に向かって足を蹴りあげた。

 

「お、鬼……」

「残念ハズレ、正解は姫だ」

 

急所にあたったボン・クレーは力尽きた。

 

本当に、あっさりと、一瞬で決着はついた。

 

「アッセイキサンオツカレサマデス」

「……止めさした方がいい?」

「ヒツヨウナイトオモイマス。ハイ」

 

 気持ちわかるけど、ちょっと引きすぎじゃない?

 

崩れ落ちたボンクレーを適当に縛り上げ、かなり引き気味になったウソップと共にビビの元に急いだ。

 

――――――――――――――――――――――――

 

反乱は止められなかった。

 

ビビの声は砲弾にかき消され、軍と反乱軍は乱戦へと突入する。それでもビビは諦めなかった。一時的にでも戦いを鎮静化出来れば、まだ間に合うと、そう考えた。その具体的な手段には俺にも度肝を抜かれたが。

 

「この王城を爆破するぅ!? おお前そんなことしたら」

「今戦っているアラバスタの人達こそが国よ! 大丈夫。数秒間だけでいいから、後は私が何とかする」

 

ビビは最高責任者のチャカを説き伏せ、爆破の準備にあたらせる。その間に俺はクロコダイルの襲撃に備えるため、樽、ワイン、瓶と種類を問わず水気を片っ端からかき集めていた。

 

「おいセイキ。お前ルフィのこと信じてねえのかよ」

「負けなくても、勝てない。砂嵐をゴムで防げると思うか? 保険はかけるべきだ」

 

ウソップは言葉に詰まった。

 

「あの男の主目的はこっちだ。いざとなりゃ尻尾巻いてこっちを絶対優先する」

「いい読みだな。だがちょっと違う」

 

多分この世界に来て、一番強い衝撃だった。背中から貫通するように、いや俺じゃなかったら確実に貫かれていただろう痛みに声が出る。だがその声は奴の左手でふさがれてくぐもったうめき声として響いた。

 

即座に左腕を握りつぶして距離をとる。相対したクロコダイルは興味深そうに自分の右腕を眺めていた。

 

「並の人間なら貫いてるはずだが、テメェ一体ナニモンだ?」

 

燃料の関係でレーダー切ってたのが災いした。全然気づけなかった。初手で枯らしに来られたら間違いなく負けてた。

クロコダイルが放つ濃厚な死の気配に、血の代わりに背中から冷や汗が吹き出た。

 

「ククク、敵には情報は渡さないか。なかなか有能じゃないか。始末したあの男に比べれば」

「ルフィが、負けた? 」

 

俺は原作で知っていたから動揺はしなかった。一方でウソップはクロコダイルの言うことが信じられなかった。というか信じたくないのだろう。ルフィが心の支えなんだから。

 

「嘘ついてんじゃねえ。ルフィが死ぬはずがねえ! 俺は信じねえぞ!!」

「だが俺はここにいる。それが真実だ」

「っ! ウソップ隠れろ!」

 

クロコダイルの気配が変わった。先手を取られたら負ける。

 

俺は手に持った大樽を正面に放り投げた。

 

艤装召喚! レーダー連動開始。目標、目の前の大樽。

 

 当たれ!

 

「何!?」

 

高速で飛翔した砲弾は樽を貫通し屋上に着弾。その一帯を爆破した。そして広範囲に飛び散った水は突然出てきた艤装に虚を突かれたクロコダイルを襲う。

 

室内だったことが味方した。この限られた空間で数多の水滴を避けきることは不可能に近い。

 

  今しかない。ここで殺し切らなきゃ後がない

 

俺は今度こそ照準をクロコダイルに向ける。

 

室内だったことが災いした。砲弾の威力が強すぎて天井が崩落を始めた。

 

 予想外だった。逃げた方がいいのではと、一瞬思って手が止まった。

 

その一瞬の判断ミスで勝利を逃す。クロコダイルはすでに窓を突き破り外に出ていて、俺も崩落から逃れるために後を追う形で外に出る。

 

外からでもわかる程、廊下はひどい有様で、修復にいくらかかるかわからない有り様となっていた。補修代に一瞬頭を痛めながらも、思考はクロコダイルに。時間がないと城の耐久性とか周りの被害も考えずに残り7発全てを叩き込む。

 

幸運にもアラバスタ城はその衝撃に耐え続けた。一体どういう耐久性をしているのか謎だったが、祈る思いで立ち上る爆風を見つめた。集めていた水は衝撃波でほぼダメになってしまった。今手持ちの水はワイン瓶と首に下げた小ダルしかない。

 

 

「セイキてめえ殺す気か!?」

 

そんな時に後ろからウソップに怒鳴られた。マジでびっくりして肩が跳ね上がる。一瞬クロコダイルかと思って振り返る。

 

「ちょっとだ「セイキ前だ!」」

 

ウソップの切羽詰まった声が聞こえる。

 

 いや、いるんだろうけど、一瞬だぞ、目を離したの、1秒もたってないのに。そんなに早く動けるのこいつは?

 

次の瞬間、視界いっぱいに掌が広がったと思えば、激しい頭痛に襲われる。

 

「~~~~!」

「おしかったな。後数瞬早ければ俺の命は無かったぞ」

 

我武者羅に腕を振り回す。だけど砂を掴む感触だけしか返ってこない。めまいがする。吐き気もする。明らかな脱水症状だ。

 

命の危機を感じ始めた時、ようやく胸にぶら下げた小ダルに意識が向いて、右手で叩き潰した。

 

樽の中の水が飛び散り、三度目の正直で拳はクロコダイルの胸を穿つ。そこでようやく、白く明滅している視界を取り戻した。

 

脱水症状の苦しみから逃れようと、瓶の封を切り中の水を体内に流し込む。全てを飲みきって、ようやく普通の視界が戻ってきた。

 

「ウソップ水は?」

「駄目だ。さっきので全部だめになっちまった」

「そうか……」

 

拳は当たったが、多分軽い。倒れてはいないだろう。

 

これで勝ちの目は無くなった。

 

「なあウソップ……」

 

 体内から水を奪われてた時、初めて死を覚悟した。脱水症状がひどくなっていって。何もかもが白く塗りつぶされて、何処かに意識が飛んでいく感覚。それがとても恐ろしくて。

 

自分から死地に飛び込めるほど、肝は据わっていなかった。

 

クロコダイルはあそこにいる。でもそれは、ルフィが死んだことの証明にはならない。それはわかっている。でも万が一、完全に止めを刺していたら。そうなれば、もう俺たちの行為は殺され、革命は成就する。

 

「ルフィは必ずここに来るよな?」

 

だから、この戦いに意義がある事を信じさせてくれ。逃げ出したいけれど、それじゃもう仲間じゃないのはわかってるんだ。あの時、命を駆けることを了承したことを曲げさせないでくれ。最後の一押しが欲しいんだ。

 

「当たり前だろ! ルフィは絶対来る!」

 

ありがとう、ウソップ。根拠のないその断言。今だけはあてにする。

 

「行くぞ!」

 

 

 もう少し利口な奴だと思ってた? 生憎だな。この海賊団は馬鹿にならなきゃやってられないんだよ。クロコダイル。愚かだと笑うなら笑えばいい。自覚はある。勝ち目がないのは百も承知。

 

 だけどさ。みんなはいつもそうなんだ。怪力も、防御力もない。仲間の為に命張ってきたんだ。

 

 なら俺も命張らなきゃフェアじゃないだろ。

 

「無駄なあがきを。船長が船長なら部下も似るのかテメエらは?」

 

それはお前が決めることじゃない。船長が決めることだ。この一秒一瞬は、ルフィのため。船長は必ず来る。せいぜい舌舐めずりでもしてろ。

 

水分を奪う手を躱し、捕まれれば怪力で握りつぶして拘束から逃れる。だがそれでも少しずつ体から水分が失われていく。

 

結局俺は未来を変えるほどの力は持っちゃいないんだろう。ああくそ、また先のことを考えた。未来なんてわからないんだ。今ここにいるのは俺とクロコダイルだけだ。

 

肺が張り付き、視界がうまく機能しなくなってきてもひたすら時間を稼ぎ続ける。

 

 ああ畜生。最強クラスの姫なのに、どうして俺は避けることしかできないのだろう。

 

三日月形砂丘(バルハン)

「ッアアアアアアア!!!!」

 

しなびれた左腕の痛覚神経が、乾燥で暴走している。脂汗が全身からにじみ出て、立ってられない。再び、死の足音が脳裏に響いた。

 

「まだまだぁ!!」

 

だけれども、まぶたの裏はビビの覚悟が映っていた。

 

「下らねェ面しやがって」

 

不快気な彼の言葉に、俺は不敵に笑ってやった。

 

 あと一つ。お前に言っておく。

 

「艤装、しょうかん」

 

 油でも砂は固まるだろ?

 

「ガッ!? この女ァ!!」

 

聞こえないよクソ野郎。何か蹴り砕いた感触はあったけど、頭が痛くてもう見えないし聞こえない。

 

 

 ここ、まで……かな……

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「気が付いたかセイキ!」

「……ウソップ?」

「ああそうだ! 大丈夫か?」

「もっと水飲ませて」

 

水を振りかけられる心地よさに目を覚ませば、ウソップが大慌てで樽をひっくり返していた。とりまウソップが持ってきた水をたらふく飲んだら、大分気分がよくなった。しかし起きたら全てが終わっていたわけではないらしく、むしろ事態は愉快ではない方向には進んでいた。彼によれば今から10分もないうちに町の半径5キロが砲弾で消し飛ぶとクロコダイルが宣告したらしい。すでにビビ達は件の大砲を探し回っているとも教えてくれた。

 

「俺らもはやく合流して砲弾を探さねえと」

「待った。今更我武者羅に探したって、意味がない。せめて目星はつけるべきだ」

「つけるったって、どうやって考えるんだよ? クロコダイルの気持ちにでもなれってか?」

 

未だ鈍痛が響く頭で必死に考える。クロコダイルの思考をたどるのもありかもしれないが、彼の人となりを知らないならあまり有効ではない。それにあまり時間も掛けられない。

 

「爆弾ではなくて、砲弾って言った?」

「ああ、クロコダイルがそう言ったのを聞いたんだ。それがどうしたんだ」

 

砲弾にした意図を考える。多分、ある程度はフレキシブルに爆発地点を変えたかったから?

 

そうだとすれば、その範囲は可能な限り広げたいはず。

つまりそこは、可能な限り高い場所。

 

この推測をウソップにそのまま伝えると、彼はそれに該当する場所をすんなりと口に出してくれた。すなわちそこは、時計塔。

 

 

目的地の時計台につく途中にビビ、チョッパー、ナミと合流したのは僥倖と言えるだろう。彼女達も時計塔を目指していたのだから。頂上の時計の裏は巨大な空洞になっているとくれば、確信をますます深めた。

 

 

残り五分を残して、時計台に到着。ビビの先導で時計の内側の空洞に突入し、そこにいたMr.7ペアを装甲に物言わせて速攻で鎮圧した。

 

砲撃は止められたと一安心しようとしたが、ビビが衝撃的な事実を告げる。砲弾は時限式であると。

 

期限まで、残り4分

 

 

「おいおいおいどうすんだよ。このままじゃ皆消し飛んじまう!」

 

爆発範囲は半径2.5キロ。余裕をもって三分半で町からそれだけ離れ無ければならない。必要速度分速1キロ弱。つまり60km/h。

 

俺なら走れるし、巻き込まれたとしても、耐えれる。

 

―――死ぬかも「俺が、運ぶ!」

 

皆の、そして自分の意思さえも有無を言わせずに砲弾を抜き取り、時計台から飛び降りる。着地の衝撃で起爆しないなら、ちょっと乱雑に扱っても問題ないだろう。

俺は艤装で砲弾を挟み全速力で足を回し始めた。

 

南から反乱軍、西にはマツゲ、北にはアラバスタ城、最も被害が出ないのは東。

 

本来艤装は海上を想定しているし、爆弾を引っ張って運ぶことなんてそれこそ想定の外の外だ。それでも艤装は必死に振動を抑えて、可能な限りのサポートをしてくれていた。

 

気分は馬娘。本日の会場は砂埃が立つ最悪を通り越した地獄のコンディション。2.5キロ離してのぶっちぎり一位が絶対条件のアラバスタダービーここに開幕。

 

1000m60秒は切りたい。57.4秒なんてもう最高。

 

一分過ぎたところで正面の道が無くなっているのが見えた。街の外側は崖であることをすっかり失念していた。これは不味い。このダービークソすぎワロエナイ。

 

着地の衝撃で信管が作動してしまう可能性があるから、爆弾抱えたまま飛び降りるなんてことはできなかった。必然的に大幅なロスが生じる。

 

階段を降りきった時、リミットはあと二周もなかった。

 

さっきよりも劣悪な足場を駆ける。姫級の体とは言え、もう体は悲鳴を上げ始めていた。

 

一周を切った。

 

 ダメだ止まるな止まるな。止まれば死ぬぞ。皆死ぬ。

 

ギリギリまで走って、その運動エネルギーをそのまま砲弾に移して投げ飛ばす。それを視認してから回れ右をして、何を言うでもなく艤装が自分の背後に回り、

 

 

激しい熱が全身を襲った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 生きてた。(中破ストッパー)

 

艤装を盾にできたからか、生身部分はかなり軽いけがだけですんだ。装甲乱数上振り万歳。因みに、回収してくれたのはサンジらしいです。

 

但し、盾にした艤装はそうはいかなかった。砲身は爆風で歪み、装填機能や機関も破損が見受けられた。大破よりの中破、といったところ。

 

ここから完治にはどれぐらいかかるのか、もしかしてこのまま直せない……? と危機感を覚えたが、時間をおくと修復がはっきりと見て取れたので、一安心。

 

しかしながら、食事だけでは完治まで月単位の時間がかかるので、何かないかと争いの爪痕が残る市内を巡りそして見つける。集積された廃棄予定の剣や銃の類を。

 

燃料、弾薬、そして艤装の修復やメンテは全て自動で行われてきたが、その材料はどこから来たのかというのは日々の食事の鉄分や油分からきてるとある程度予想はしていた。

 

で、直接鉄や油を摂取すればどうなるのかと言うのは試していなかった。

 

すぐに係りの者と掛け合い、それらを全て譲り受けて艤装に食べさせた。ビビにも頼んで油も調達してもらった。それで艤装に呑ませてやると潤沢な鉄分と油を取れたのか、修復作業が明らかに早くなり、船に戻る時にはどうにか一門だけは砲撃を行える程度には修復が完了していた。

 

そう、ビビとの別れの時が近づいていた。

 

ルフィが起き上がり、王城全体を巻き込んだ宴会を楽しんで、風呂でナミが幸せバズーカを放ったその夜にアルバーナを発った。

 

電伝虫でMr.2がメリー号を押さえたと言われれば動かざるを得なかった。現場に向かうと彼は海軍の包囲網を突破するために協定を結ぶべくメリー号を隠してくれていたらしい。(トラウマを持たれたらしく、若干俺に距離を取っていた)、ルフィは協定に即座に同意した。翌日沖に出ると、すぐさま情報を掴んでいた海軍の船に取り囲まれた。ビビには今日の正午、東の港に船を寄せると言ってある。その為には、海軍の追撃を振り切る必要があった。

 

俺なら、たとえ一門しか砲が無くても鎧袖一触だろう。あの程度の大きさの船ならば、オーバーキルですらある。

それはすなわち、中の人を殺すことと同義。

 

だけど、俺は決めた。仲間と共に生きると。それを反故にするようなまねはできない。したくない。

 

 

 だから、俺は撃つ。

 

 

砲弾ではなく鉄槍を放ってきたときはビビったが、所詮はガレオン船だ。速度は出て10数ノット。偏差もいらない

距離で、こっちが負けるはずが無く、一発で上部構造はめちゃくちゃになる。ちょっと上に的を反らしたうえでもだ。これで負けるはずがない。

 

黒檻部隊は10分もたたないうちに全てがマストを叩き折られる羽目に会った。一部の船からは火の手も上がっていた。そしてどす黒く赤くなった木材も。

 

「っ……」

「アノ娘、一体何者なのよう……!?」

「仲間」

「馬鹿力」

「鉄より硬い」

「……聞こえてんぞ」

 

努めていつものように、ボケに突っ込んだ。

 

「おい、また新手だ。今度は数が多いぞ!」

 

 船の正面を見ると、水平線に重なる形で船影が10数隻見えた。

 

さっきと同じように、やればいいとは思えなかった。水兵の数がさっきとは桁が違う。その命を身勝手に奪うことはさすがに抵抗があった。

 

「船長。海軍と停戦交渉してきていい?」

「? おう、いいぞ」

 

―――――――――――――――――――――――

 

海上を滑り、海軍船の下へと向かう。海軍の発光信号を知らないのを船を降りてから気付いたが、しょうがないとして声の届く距離まで近づくことにする。機関に異常がみられるので最大戦速の半分の15ノット。だがこれでもこの時代にとっては十分高速。そして炸裂する砲弾ではなく、純粋な鉄槍を放つ奴らにこの小さな目標は当てづらいことこの上なく、あっさりと船首付近まで接近できた。

 

「スモーカー! 話がある! 出て来い!」

 

手の中の物を振り回して戦闘の意思はないことをアピールしつつ、スモーカーを呼び出す。 

 

「スモーカーはここにはいないわ。私はヒナ。スモーカーと同じ海軍大佐よ」

「あれ? スモーカーじゃないの? まあいいか」

 

予想外の人物が出てきて面食らったが、こちらの要求は変わらない。気を取り直して、大佐に停戦要求を提案する。

 

「さっき、八隻の船を大破させました。撃沈確実の船もあります。急がないと溺れる人が出るかもしれませんよ?」

「その程度で死ぬほどやわな鍛え方はしてないわ。ヒナ屈辱」

「砲撃で怪我をしてる人はどうするんです? 満足に泳げないのを見殺しにするんですか? 重ねて言いますけど、そちらが手を出さない限り私達は絶対に攻撃しません」

「海賊の言うことなんて信用できないわ」

 

取りつく島もなく、俺の放り投げる会話のボールはことごとく撃ち返される。言う資格は無いだろうが大破させた水兵の救助を行ってほしいのは間違いなく本心だ。

 

「そうですか……。交渉は決裂、と言うことでよろしいでしょうか?」

「交渉もなにもないわ。さっさと降参しなさい。この黒槍の陣で落とせなかった船は無かった。さあ、砲撃用意!」

「し、しかし本艦との距離が近すぎます。同士討ちになる可能性が……!」

 

ため息一つ吐いて、手の中のそれを眺める。

 

交渉は終わったと言わんばかりの態度で上でなにやら話し合っているが、そもそもとして近づいている最中に暴れられなかったことを省みるべきだった。そうとしか俺からは言えない。つーかそれで戦意喪失してくれよ。あるいは戦意が無いことを見抜いて強気に出ているだけなのか。

この世界では命は軽い。だからこそ仲間の命は、なによりも大事なんだ。殺人に忌避感があってもいい。それが正常。だけど仲間数人と見ず知らずの海兵数百人。俺は仲間を取る。大佐がそこまで突っ張るなら、いっそ見せつけてやろうじゃないか。自分のした決断の愚かさを。

 

「……ッ」

 

 いや、違うだろ。そんな二極化していい場面じゃないだろ。

 

落ち着け、威嚇でいいんだ。勝ち目がないと、全滅すると思わせればそれでいいんだ。一番効率がいいのは轟沈させることだけど、それをするほど切羽詰まってるわけじゃない。ルフィ達もそれは望んでいない。俺は殺人に動揺しているだけだ。

 

「全員物陰に隠れろォ!五秒後に爆破する!!」

 

あらん限りの大声を上げた。そしてきっかり五秒後に手の中にあった魚雷を甲板の上に行かないように心持ち低く何もない海面に放り投げる。そして樽の時と同じ要領で、俺はそれを砲弾で吹き飛ばした。

 

次の瞬間、魚雷は巨大な爆炎と共に、周囲の船を襲った。衝撃波は船の側面を叩き、浸水を発生させ、その閃光と熱戦は他の船の甲板にいた海兵たちの目を一時的につぶした。最後に、強烈な爆風と破片が多数の船のマストを破り航行能力に影響を及ぼした。もし直撃していたら……。そう思った水兵たちは多いだろう。

 

「もう一度言う。これは降伏勧告だ」

 

新たに魚雷を両手に四本構え、ヒナ大佐にもう一度話し合いの機会をあげた。

 

 

この後、麦わら一味は無事に東の港に船を停泊させた。

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

「ルフィ。海軍は追ってこないってさ」

「そうか。よ~し野郎ども。ビビを迎えに行くぞ!」

「……殺した方が、良かったりした?」

「ん? そんなわけないだろ。なんで殺すんだよ」

「……だよな!! すまん。変なこと聞いた! ビビを迎えに行こう!」

 

 

 

「大丈夫?」

「え?」

「あなたおかしくなってるわよ。海軍を追い払ってから」

「……はは、やっぱりわかる?」

「当たり前じゃない。多分皆気づいてるわよ」

「マジかぁ~。そっかぁ~」

「……あんた、初めて人を殺したんでしょ?」

「まあ、殺そうとして撃ったのは初めて」

「あのね、殺したくないなら、そう言えばいいじゃない。戦いたくないなら男どもに任せればいいじゃない。あなたがそこまでする必要はなかったじゃない」

「……ありがとう。でも、決めたんだ。俺の為に命張ってくれるなら、俺も命張って仲間を守るって」

「はぁ、やっぱりセイキと会話する時って男と会話してる気分になるわ」

「はは……、まあそう言うことだから。自分なりに気持ちの整理はつけるさ」

「……そう。じゃあいつでも何か言いたくなったら言いなさいな。相談、のってあげる」

「……じゃあ化粧以外で何かいい変装方法「無いわ」あ、ない……」

 

 




最後の会話文は力尽きました。

また気が向けば加筆修正します。

やっと自主的に行動してくれるようになったよこいつ
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