今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
ヘビィのリロードの仕草が、なんかカッコ良く好きです。
自分が使えるかどうかは別として(^^;;;)
「なぁカイ。【ボウガン】に挑戦してみねぇか?」
珍しくそう声をかけたのは、アレクトロの方だった。
「へぇ、アレクから誘うなんて、【古龍迎撃】の招集が掛からなきゃいいけど」
「んな縁起の悪ぃ事ぬかすんじゃねぇ!」
「大丈夫なんじゃない? ここんとこ【街】の近くには来てないみたいだし」
「万が一っつう言葉があるだろが! ……まぁいいや。あのな、俺が【ボウガン】に挑戦する気になったのはな――」
話を聞くと、どうやら以前上位【グラビモス】の狩猟をした時に、溶岩の中からグラビームを多発されたのが余程癪に触ったのだという事が分かった。
「それなら【弓】でも良いんじゃないの?」
「バーカ、飛距離が足りねぇっつの。おめぇは溶岩に入って攻撃してぇのかよ」
という事で、【ボウガン】に挑戦する事になったのだが……。
「意外にも重いんだな」
適当な【クエスト】を受けて、練習するべく【ベースキャンプ】で空撃ちしようと試みたアレクトロは、構えた【ヘビィボウガン】の重さに少し驚いた。
「やっぱアレクも【ライトボウガン】にしとけば良かったんじゃないの?」
「いやなんか、そっちは軽すぎる気がして」
とはいえ、構えたままでは走れない程【ヘビィボウガン】が重いとは思わなかったアレクトロ。取り敢えず一発撃ってみると――。
「反動きっつ!?」
元々が重いからなのか、【パワーバレル】を装着したからなのか、思った以上に反動がきつく、撃つたびに後ろに下がってしまう。
「こりゃ〈反動軽減+2〉は必須かもなぁ……」
【ライトボウガン】を撃っているはずのカイは、当然のように、隣で撃つたびにひっくり返りそうになっている。
「うし、分かった。出直すぞ」
そう言って一旦【クエストリタイア】し、改めて〈反動+2〉のスキルを付けて、【クエスト】を受け直した。
【ライトボウガン】を構えたまま軽快に走るカイを尻目に、アレクトロは撃つたびにいちいち【ヘビィボウガン】を仕舞うか、転がって避けるかするしかなかった。
が、それを煩わしく思いながらも、一発分の攻撃力の高さは気に入っていた。
「要はこの武器は、主に【固定砲台】みてぇに使うもんなんだろうな」
独りごちながら、だが同じ弾でも【ライトボウガン】より飛距離が長いようなので、【グラビモス】ではよく使うであろう【貫通弾】をより遠くから撃ち込めるのではないかと考えていた。
一人でも何度か練習し、他に必要だと思われる〈大量弾生産〉とか〈高級耳栓〉、〈回避+2〉などのスキルも揃えたアレクトロは、カイを誘って再び【グラビモス】クエストへ。
といっても今回は、通称【黒グラ】と呼ばれる【グラビモス亜種】である。
【貫通弾】の威力を試すには、通常種よりより硬い亜種の方がいいだろうと考えたからなのだが――。
「
不慣れな武器な上に素早い移動が出来ないアレクトロは、早速薙ぎ払いのグラビームを避け切れずに、回復しながら悪態をついた。
だが、〈回避+2〉のスキルを付けている事を思い出し、薙ぎ払いブレスの回避を試みて、成功したりもした。
カイが【麻痺弾】を撃ってくれたり【罠】を仕掛けたりしてくれたので、その短い隙を狙って【貫通弾】を撃っていく。
溶岩の中でグラビームを連発する時などは、【スコープ】を覗く余裕すらあった。
腹部の破壊のために【散弾】に切り替え、カイと二人でそれを中心に攻撃していると、時間はかかったが完全破壊に成功した。
(時折お互いに当ててしまって言い合いをする事もあったが)
「ねぇ尻尾はどうすんの?」
今更のようにカイが言ったが、二人とも【斬属性】の武器ではないのでそのままでは尻尾は切れない。
そう。
アレクトロは武器を仕舞って尻尾に回り込むと、何やら一生懸命に投げ始めた。
それは浅いVの字(もしくは【へ】の字)になっているような投擲武器で、投げるたびに手元に戻っている。
つまり【ブーメラン】である。
時に失敗して明後日の方向に飛んで行ったり、壊れてしまったりしたが、何度か繰り返す内に尻尾の切断にも成功した。
「器用だな~~!」
カイは感心した。
アレクトロは、切れた尻尾が溶岩に浸かっていないのを確認して、内心ホッとした。
部位破壊を全て成功させ、後は討伐か捕獲のみ! という頃。
だいぶ【ヘビィボウガン】の扱いに慣れて来たアレクトロは、【スコープ】を覗いて狙い撃っていた。
と、薙ぎ払いブレスをするべく横を向きながら息を吸う、【グラビモス亜種】が
ブレスを吐かれる前に【貫通弾】を撃とうと
ブレスの予備動作に気付かないのか、回避せずにそのまま構えようとしている。
カイがブレスに巻き込まれる事を悟ったアレクトロは、「カイすまん!!」と叫ぶや否や、なんとカイごと撃ち抜いた。
「……な……んで……!?」
いきなり背後から鎖骨の間を撃ち抜かれたカイは、混乱しながらその場に崩れ落ちた。
カイが倒れた事で敵だけ見えるようになった画面を見据え、更にもう一発。
それで正確に心臓を撃ち抜くとすぐに【スコープ】から目を離し、相手が死んだかとうかの確認もせずに、カイに駆け寄った。
「すまんかったな……」
そう言いながら、傷口に【生命の粉塵】を掛けるアレクトロ。
「なんか酷くないか?」
回復したカイは文句を言った。
「いやブレスに巻き込まれるよりはマシだと思ったんでな」
悪びれもせずに言うアレクトロ。
「おいらが死んだらどうするつもりだったんだよっ」
「急所は外しただろが。……それにな。おめぇは死なせねぇよ」
そして、その後「【モンスター】に殺されるぐれぇなら俺が殺してやんよ」と、多少凄みを持った口調で付け足した。
「――ま、殺す気なんかねぇけどなっ」
明るく言ったアレクトロを見ながら、寝首をかかれないように気を付けようと、密かに思ったカイであった。