今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
(その一)とあるように色んなパターンで書いていますので、これからしばらくまったく同じ内容で登場人物だけが変わる話が続きます。
【メゼポルタ広場】を歩いていたハナは、「よぅ、姉ちゃん」と声を掛けられた。
無視して歩いていると、「無視すんじゃねぇよ」と背後から肩を持たれ、乱暴に振り向かされた。
「いったいわね! 何す――!?」
言い終わらぬうちに口を塞がれ、拳を鳩尾にめり込まされる。
ぐったりとなったハナを担ぎ上げ、男は路地裏に入って行った。
そこには数人の男が待ち構えていた。
「首尾良くいったか?」
「あぁ、バッチリ攫って来たぜ」
やや乱暴に転がされたハナの顔を見て、男の一人が呟いた。
「随分ガキだな。おめぇロリコンの趣味でもあんのか?」
ハナはその性格同様、外見も幼く見える事があるのだ。
「ガキかもしれんが見てみな。育つとこはしっかり育ってんぜ」
「だなぁ……」
男共は下卑た笑いを浮かべた。
その僅か前、一人の男がハナが運ばれて行くのを遠目で見ていた。
担がれた者が誰かは分からなかったが、屈強な男が華奢な体型の者を路地裏に運んで行くのを見て、女を連れ込んだなと判断する。
なので犯される前に助けようと、遅れて路地裏に入って行った。
乱暴にインナースーツを引き裂かれた感覚で目が覚めたハナは、一瞬自分がどういう状況になっているのか判断出来ずに混乱していた。
が、胸を揉みしだかれ始めたのを見てようやく理解し、その内の一人を「触らないで!」と蹴飛ばす。
不意を突かれた者は無様にひっくり返ったが、「元気が良いなぁ姉ちゃん」と、意に介さずに起き上がって来て続きをしようとしている。
「お、目ぇ開けたら意外にも色っぺぇ顔してんじゃねぇか」
目が覚めて色気が増した事で男共はなおも興奮し、熱い息を吐きながら首筋や乳首に舌を這わせ始めた。
その虫唾が走る感覚にいくら暴れても、押さえ付けられて反撃もままならない。
男共が待ち切れない様子でお互いの下半身を露出させようとした時、ふと路地に影が落ちた。
全員が振り向くと、離れた場所に大男が立っていた。
逆光になっているので顔は見えないが、一目でかなりの筋肉があるシルエットをしていると分かる。
のしのしという感じで黙ったままゆっくりと近付いて来る大男に、ハナは叫んだ。
「助け……むぐぅっ!」
直後に口を覆われたが、聞こえたのか大男は立ち止まった。
そして次の瞬間、彼の全身から凄まじい【殺気】が放たれた。
「ひっ!!」
息を飲んだのはハナだけではなかった。その場にいる全員が凍り付き、ガクガクと震えながら動けないでいる。
彼が一歩踏み出すと、「ひいぃっ!!!」「殺される!!!」などと情けない声を上げながら、立てる者は脱兎のごとく逃げ出し、腰を抜かした者はカサカサと虫のように這いずって逃げた。
残されたハナは生きた心地がしなかったが、彼がその場で【殺気】を消し、間近まで近付いて来たのを見るや否や、その顔をくしゃくしゃにした。
「ベナぁ……」
「……。怖い思いをさせてすまんかった。怪我はねぇか?」
しゃがみ込んで見ている前でハナが頷くと、ベナトールは優しく笑ってハナを引き起こし、頭をポンポンした。
「取り敢えず……。これで隠すか、胸出しとくよりゃマシだろ」
ベナトールは自分のインナーを破いてハナに渡した。
ハナはそれを上手い具合に結び、胸だけを隠す事に成功する。下半身は幸いにも破られる前だったので、隠すのは胸だけで良かった。
傷の手当てで見慣れているのか、それともそもそも女自体に興味が無いのか、露わになっていた彼女の胸を見ても、彼は眉一つ動かさなかった。
男共は、後で【守護兵団】に捕まって、しばらく牢屋暮らしをしたという。
今回は「ベナトール」が助けるパターン。
やはり女を攫う話が王道なので、しばらくハナには攫われ役を演じてもらいます(笑)
捕捉しますが、彼は「ハナ」だと分かったから殺気を出した(怒った)のです。
他の女なら無言のままただ近付いて、女以外を気絶させるか近付いた事による威圧で逃がすかするつもりでいました。
その際の感情の起伏はまったく無かったはずです。
つまり彼にとって、ハナはそれだけ大切な存在なのです。