今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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ハナが攫われる話その三。
今までの流れから助けに来る者が誰かはもう分かると思いますが、あえて伏せておきます。


美貌さ故の……?(その三)

 

 

 

 【メゼポルタ広場】を歩いていたハナは、「よぅ、姉ちゃん」と声を掛けられた。

 無視して歩いていると、「無視すんじゃねぇよ」と背後から肩を持たれ、乱暴に振り向かされた。

「いったいわね! 何す――!?」

 言い終わらぬうちに口を塞がれ、拳を鳩尾にめり込まされる。 

 ぐったりとなったハナを担ぎ上げ、男は路地裏に入って行った。

 

 そこには数人の男が待ち構えていた。

 

「首尾良くいったか?」

「あぁ、バッチリ攫って来たぜ」

 やや乱暴に転がされたハナの顔を見て、男の一人が呟いた。

「随分ガキだな。おめぇロリコンの趣味でもあんのか?」

 ハナはその性格同様、外見も幼く見える事があるのだ。

「ガキかもしれんが見てみな。育つとこはしっかり育ってんぜ」

「だなぁ……」

 男共は下卑た笑いを浮かべた。

 

 その僅か前、一人の人物がハナが運ばれて行くのを遠目で見ていた。

 担がれた者が誰かは分からなかったが、屈強な男が華奢な体型の者を路地裏に運んで行くのを見て、女を連れ込んだなと判断する。

 なので犯される前に助けようと、遅れて路地裏に入って行った。

 

 

 乱暴にインナースーツを引き裂かれた感覚で目が覚めたハナは、一瞬自分がどういう状況になっているのか判断出来ずに混乱していた。

 が、胸を揉みしだかれ始めたのを見てようやく理解し、その内の一人を「触らないで!」と蹴飛ばす。

 不意を突かれた者は無様にひっくり返ったが、「元気が良いなぁ姉ちゃん」と、意に介さずに起き上がって来て続きをしようとしている。

「お、目ぇ開けたら意外にも色っぺぇ顔してんじゃねぇか」

 目が覚めて色気が増した事で男共はなおも興奮し、熱い息を吐きながら首筋や乳首に舌を這わせ始めた。

 その虫唾が走る感覚にいくら暴れても、押さえ付けられて反撃もままならない。

 男共が待ち切れない様子でお互いの下半身を露出させようとした時、覚えのある声が掛かった。

 

「やめろよ、集団で襲うなんて卑怯じゃないか!」

 

 全員が振り向くと、少し離れた場所に誰かが立っていた。

 華奢な体付きのその者は、逆光になっているので顔は見えないが、くせ毛の多い茶金の髪だけ光に透けている。

 

「……カイ、なの?」

 半信半疑で声を掛けるハナ。

 

「ハナなのか!?」

 驚いた様子でそう言ったその人物は、近付いて確信しつつ、彼女の露わになった胸が目に入った途端に赤い顔をして慌てて目を逸らせた。

 

 その様子に面白がった男の一人が近付く。

 

「勇ましい姉ちゃんだなと思ったら、よく見たら男じゃねぇか」

「えぇ!? そいつ男なのかよ?」

 

 しゃがんでいたもう一人が素っ頓狂な声を上げる。

 

「どうもそのようだぜ。女みてぇな綺麗なツラはしてるけどな」

「うそでぇ、単に男っぽい恰好してるだけなんじゃねぇのかぁ?」

 脇にしゃがんでいた一人が言った。

 恐らくこれはわざとだろう。

 

「……るな……!」

 その時、俯いた彼の口から低い呻くような声が漏れた。

 

「あん?」

「女扱いするなあぁ!!!」

 彼は叫ぶや否や、いきなり近くにいた男の股間を蹴り上げた。

 不意を突かれて吹っ飛んだ相手は、倒れた先で泡を吹いて動かなくなっている。

 

 もしかしたら睾丸の一つが潰れてしまったかもしれない。

 

「……。兄ちゃんよ、威勢は良いようだが、この体格差の数人を相手に出来るのかい?」

 相手は全員屈強な体躯をしている。

 華奢な体型の彼が敵うのだろうか?

 

「カイ、無理よ! 【守護兵団(ガーディアンズ)】を――」

「そう思うんならまとめて掛かって来てみろ!」

 言い掛けたハナを制するように放たれた言葉に、「おもしれぇ!!」と一斉に向かって行った男共。

 ハナはカイが一方的に痛め付けられる図を想像して、思わず目を覆ったのだが――。

 

「うぐぉっ!?」

「ぐえぇ!?」

 そんな声を次々に上げながら、倒れたのは男共の方だった。

 足元で蹲って呻いたり、叫び声を上げながら転がり回ったりしている男共を見て、ハナはあんぐりと口を開けた。

 

「怪我ない?」

 極力胸の方を見ないようにしながら、カイはそう言ってハナに手を差し出した。

 

「う、うん。大丈夫……」

 引き上げてもらいながら、まだ信じられないような表情で、転がっている男共を見るハナ。

「かなり手加減したつもりだったんだけど、やっぱり骨までやっちゃった人もいるみたいだね」

 

 カイはそんな事を言いながら、すまなそうに男共を見ている。

 

「あ、あんたこそ怪我ないの?」

 気が付いたように言うハナに、「うん。おいらも大丈夫だよ」と、彼特有の人懐こい笑顔でカイは笑った。

「ほ、ホントに? だってこんなに体格差あったんだよ!?」

「いくら体格差があったって、相手は一般人だよ? ハンターの筋力で、しかも【モンスター】相手じゃない者の相手に負ける訳ないじゃない」

「そ、そうかもしんないけど……」

「それにね、女扱いされた時、おいらかなり頭に来たんだよね。このやろぉ~~! ってね」

「んじゃ怒ってて力が出せたわけ?」

「それもあるかもね」

 

 カイは照れ臭そうに笑った。

 

「あ、そだ!」

 カイは急に何かを思い付いたように声を出し、慌てた様子で自分が着ていた【狩人(かりんちゅ)Tシャツ】(筆書きで書いた【狩人】のロゴが入ったTシャツ)を抜いだ。

「取り敢えずこれ。良かったら……」

 

 赤くなって顔を背けつつ、おずおずと差し出す様子が可愛くて、「ありがとっ♪」と満面の笑みで受け取ったハナ。

 着てすぐに、「助けてくれてありがとねっ♪」と抱き付かれて頬にキスされたカイは、更に顔を赤くしてわたわたした。

 

 

 男共は、後で【守護兵団(ガーディアンズ)】に捕まって、しばらく牢屋暮らしをしたという。  




「カイ」の推定年齢は「アレクトロ(二十代前半)」の一つか二つ下ぐらいなんですけども、アレクとの違いェ……。

ちなみに「狩人(かりんちゅ)Tシャツ」というのはリアルで売られていた事もあるTシャツで、「フロンティア」内では今でも作れる胴のみの防具です。
「フロンティア」では作成時の表示は白なんですが、作った後は「シンボルカラー」で好きな色に出来る優れものです(笑)。
リアルでは黒、赤、茶色、オレンジなど、数種類の色があるみたいです。

リアルTシャツのweb画像を友人に見せ、「カイならどれを着てると思う?」と聞いてみた所、「黒なんじゃないかな」と言ってました。
やはりどの組み合わせでも合う無難なものを選ぶみたいです。



十二月三日追記

「フロンティアZZ」にログインしてカイ(パートナー)に「狩人Tシャツ」を着せて撮影しました。

【挿絵表示】


【挿絵表示】

ただし、アレクトロ役のキャラのシンボルカラーが緑しか選べなかったので、緑色になってしまいました。
どうも「パートナー」のシンボルカラーは操作キャラと連動しているみたいです。

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