今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「おじいちゃんと一緒(未来編)」その三。
これで「おじいちゃんと一緒(未来編)」は終わりです。



おじいちゃんと一緒3(未来編)

 

 

 

「じいちゃん」

「おうラファールか。どうした?」

 男の子に声を掛けられたベナトールは、見上げている彼に向き直った。

 

 ちなみにラファールは、アレクトロの子供である。

 

「あのね、オレあそこの家の子とよく遊ぶんだけど……」

 指差した先には【大老殿】に隣接する大きな家があった。

 

「ならカイの倅だな。で、それがどうした?」

「出まかせに『オレ【ドスファンゴ】を退治したんだぜ』って言ったらさ、『凄いね! 戦ってるとこ見たいから連れてって♪』って言われちゃってさ」

「呆れた奴だなぁおめぇは、あれは気絶してる所を一方的に切ってただけだろうが。それに小僧の【鬼人化乱舞】でかなり弱ってたからお前でもやっつけられたんだぞ?」

「分かってるよ。でも流れでそうなっちゃってさぁ」

 

「で、手伝って欲しいという訳か」

「うんそう。良いでしょじいちゃん」

 

「……。あれだけぎゃあぎゃあ逃げ回ってたような奴が誰かを護れるとでも? あ奴はまだ【ランポス】すら狩れんのだぞ?」

「だってぇ……」

「諦めろ。口から出任せを言う奴が悪い」

「そんなぁ、だってもう『連れてく』って言っちゃったんだよぉ」

「狩りは遊びではない。命にかかわる仕事なのだ。自分の技量が分からんような奴はハンターになる資格は無い」

 

 険しい目でぴしゃりと言われたラファールは、しょぼんとなって帰って行った。

 

 

 

 その晩の事。

 

「ベナ、うちの子知らない?」

 ハナが、どことなく不安そうな顔をして、ベナトールの部屋に入って来た。

 

「今日は()うとらんぞ?」

「おかしいわねぇ……」

「まだ帰って来とらんのか?」

「そうなのよ。アレクに聞いたらラファールもまだだって言うの。てっきりアレクんちで遊んでるとばかり思っていたのに」

 

「まさか――!」

 

「ベナ、何か知ってるの?」

「朝にな、そのラファールが声を掛けて来たのだよ。『【ドスファンゴ】をやっつける所を見せる』とかほざいていてな、手伝いを頼まれたのを断ったのだ。『技量を分からん奴にはハンターになる資格は無い』とな」

 

「もしやあの子、うちの子を誘って二人だけで【密林】に行ったんじゃないでしょうね!?」

「そんな聞き分けの悪い奴とは思えんが、『もう連れてくと言った』とか抜かしていたから後に引けなくなったのかも……」

 

「私探して来る!」

「待て、俺が行こう」

「いいえ、例え【ドスファンゴ】と対峙していたとしても、私一人で充分だわ」

「それは分かっている。だが、俺には断った責任がある。まさか諦めていないとは思わなんだのだ」

「じゃあ一緒に行きましょう。心配で待ってなんかいられないわ」

「承知した」

 

 

 一番早い竜車を選んで【密林】まで飛ばし、【ドスファンゴ】が通るヶ所を息せき切って探し回っていると、《9》で二人は頑張っていた。

 このエリアは弱った【ドスファンゴ】が休眠を取る場所なのだが、弱らせるまで追い詰めてここに来させたのか、たまたまここで闘う事になったのかは分からない。

 

 逸るハナを押さえて少し観察してみると、意外にもラファールは上手く立ち回っているようだった。

 

「ほぉ、ちゃんと『見て』いたのだな」

 呟いたベナトールに、「どういう事?」とハナは聞いた。

「前にな、【訓練所】を出たばかりのルーキーとあ奴を連れて【ドスファンゴ】を狩りに行った事があるのだよ。その時にアレクも付いて来ていてな、あ奴に『見せて』おったのだ。どうもその時の教訓を活かしているようだ」

「へぇ、じゃあこんなに心配しなくても良かったのかもねぇ」

「もしかしたら取り越し苦労だったのかもしれんなぁ」

 

 そう話しながら見ていた矢先、ラファールがその場で振り回された牙に引っ掛けられ、飛ばされた。

 

「いかん!」

 慌てて飛び出すベナトール。あの攻撃力は高いため、かなりのダメージを負うはずである。

 

「わあぁっ!!」

 直後に違う悲鳴が上がった。見るともう一人に相手が突進して行くのが見えた。

 

「止まれ馬鹿者!」

 ベナトールはその尻尾を引っ掴んで踏ん張った。多少引きずられつつも急停止させる事に成功する。

 

「リルっ!」

 その隙にハナは息子を掻っ攫うようにして抱き、突進の軌道から逃れた。  

 

「お母さん……」

「大丈夫だった?」

 

 抱き合う親子を尻目に、ベナトールは【ドスファンゴ】を殴り殺してからラファールの元へ駆け寄った。

 

「……じい……ちゃ……」

「馬鹿者喋るな」

 案の定脇腹を裂かれている。ベナトールはポーチから【生命の粉塵】を出して掛けてやった。

 

 

「よう頑張ったなぁ、見直したぞ」

 回復したラファールは、怒られると思っていたので少し拍子抜けた。

 

「お前が、ここまで追い詰めたのか?」

「うん。怖かったけど、頑張って切ってたらここに移動したんだよ」

「そうかぁ、ちゃんと『見て』たんだなぁ、お前」

「うん『見て』た。だから突進も避けられたよ」

 

「やるなぁ、偉いぞ」

 頭をポンポンしたベナトールは、それに飽き足らずにぐしゃぐしゃと髪を乱暴に掻き回した。

「じいちゃん痛いよぉ」

「がっはっはっ! 悪い悪い」

 

 豪快に笑うベナトールは、戦利品とばかりに【ドスファンゴ】を担ぐと竜車に括り付け、四人揃って【街】に帰って行った。

 (子供二人は大人が操る竜車で送ってもらったらしく、後で迎えの連絡をする手筈になっていたようだ。従って待機している竜車は無かった)

 

 

 帰るなりアレクトロに大目玉を食らったラファールであったが、その日はカイも呼び、彼の家で【ドスファンゴ】の焼肉を堪能した。

 

 その宴の中心がラファールの武勇伝だったのは、言うまでもない。




殺した「ドスファンゴ」を剥ぎ取らずに丸々持って帰った事になってますけども、猪系は間引きの依頼が来るぐらいですから一頭ぐらいは許されるでしょう。
多分(笑)

ハナは(友人の希望により)カイと結婚した事になっていますので、アレクトロは他の人と結婚した事になっています。
ので、この話でのハナはアレクがラファールに「見せる」ためにルーキーとクエストに行った事を知りません。

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