今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
今年のものじゃないのは、今年のクリスマスイベントのクエストが、私の持ちキャラのランクでは全員参加資格が無かったためです。
(一応生産素材を集めるクエは行けるようなのですが、強化が出来ないので諦めました)
「ねぇベナ、これ被って?」
ベナトールが目を覚ました早々やって来たハナは、勝手知ったるというふうに彼の武具倉庫に入り込んでゴソゴソし始め、奥の方から何やら引っ張り出して来てそう言った。
差し出された物を見てみると、それは【サンタ帽】だった。
どこぞの国で【サンタクロース】というとても偉い人物がいて、毎年【寒冷期】の終り頃になると、子供達にプレゼントを配って回るという言い伝えがある。
【サンタシリーズ】は、それを模したハンター用の防具で、兜に当たる【サンタ帽】は、赤い三角帽の先に白いボンボンの付いたものと付け髭、先端の巻いた髪のカツラがセットになっている。
それを被る事で【サンタクロース】とやらになれるのだそうな。
「もう、そんな時期になったのか……」
「うん。【掲示板】にもね、【クリスマスイベント】用のクエストが貼ってあったよ」
一般人には【クリスマス】というイベントがあり、【雪山】に赴いて切って来た針葉樹に飾り付けを施した物を家に飾り、夜通し御馳走を食べて家族や恋人などと過ごすという特別な日にする。ハンターにはこの時期に特別なクエストが設けられ、この時期だけに作られる特別な武具がある。
毎年の事なのでその武具を持っていたベナトールは、それを知っているハナによって、毎年のように【サンタシリーズ】の格好にさせられるのだ。
女性用の防具もあり、こちらは付け髭などのない可愛らしいデザインになっている。
ハナはもう着替えて来ているようだ。
ちなみにその武具を手に入れているハンターは、毎年その恰好でその時期を過ごすという恒例になっていた。
そして、まだ手に入れられていないハンターは、それを見て羨ましがり、我も我もと特別クエストに殺到して作っていく。
毎年の事ではあるがクエストの内容は変わるため、とうに手に入れている者がまだ手に入れていない者の手伝いをする際も、飽きないようになっている。ただし時には初心者向きではなかったり、ベテランでも苦戦するような内容だったりする場合があるので注意が必要である。
「メリークリスマス!」
ベナトールが【サンタシリーズ】に着替え終わった頃、元気良くそう言いながらカイが入って来た。
続いてあまり乗り気が無いような顔をしたアルバストゥルも入って来る。当然二人も【サンタシリーズ】に着替えているのであるが、武具職人がハンターそれぞれの髪の色に合わせてカツラを作ってくれるので、たまたま髪色の違っていた三人は、髪色だけ違う【サンタクロース】が並んでいるような感じになっている。
黒髪のベナトールが黒いサンタ、青髪のアルバストゥルが青いサンタ、茶金のカイが茶金のサンタという具合である。
ただし防具の色は変わらないので、全員が赤い服に白いボアが付いた同じ色の防具を着ている。
「にゃはは、変なのぉ」
「うるせぇよ」
ハナが早速アルバストゥルをからかっている。
「その恰好する時、レインに笑われなかった?」
「いいや、『良く似合うよ♪』って言ってたぜ」
「ただし、すぐに後ろ向いて吹き出すの堪えてたけどな」
「じゃかましぃ」
「殴んなよぉ」
【大衆酒場】に赴くと、サンタハンターが一杯いて賑わっていた。
防具だけでなく武器もクリスマス用の物に揃えていたりしているため、大抵の者が【ガウシカシリーズ】で固めている。
ベナトールとアルバストゥルの二人も、渋々ながら【ガウシカ・サンキエム(初期段階のガウシカウッドをG級強化したハンマー)】と【ガウ・カリバ(同じく初期段階のガウシカラデンをG級手前まで強化した大剣)】を装備していた。
「良いなぁ……」
ハナが心底羨ましそうに見ている。カイも欲しそうではあるのだが……。
この武器シリーズは今のところ、他の武器でも【ランス】【ヘビィボウガン】【弓】ぐらいしか提供されている武器種が無いのだ。
「私、【弓】作っちゃおうかなぁ……」
「ならオレ【ヘビィボウガン】作ろっと」
「今回のクエ、割ときつめなんだが、付いて来れんのか?」
アルバストゥルがニヤニヤしながら言う。
「どんなのだっけ?」
「【リオレウス希少種】の捕獲と【リオレウス】の狩猟。もちろん上位だぜ」
「う……。無理かも」
「一頭ずつやれば、なんとかなるかも……」
汗笑いをする二人。
「でもな、なんと今回は今まで提供されてた全ての武器のキー素材を報酬で出してくれるんだと」
「ほぉ、それは椀飯振舞だな」
「だろ? だから今までに作って無かった奴らもけっこう受けに行っているって話だぜ」
「そうなんだ。ならやってみよっかな」
「そうだね。やるだけやってみようよ」
という事で、四人で受ける事にした。
【古塔】のクエストとの事で、二人は嫌な予感がしつつアルバストゥルに案内されて付いて行った。
案の定【秘境】と呼ばれている場所に彼が飛び下りたのを見て、二人同時に溜息を付く。
ここが狩場という事は、二頭同時にいる可能性が高いからである。
だが付いて来た以上後戻りは出来ないので、深呼吸して覚悟を決め、二人も飛び下りる。
アルバストゥルに続いてとっくに飛び下りていたベナトールは、二人が戦闘態勢に入る前にすでに【銀レウス】と闘っていた。
参加しようとしてふと脇を見ると、アルバストゥルが【リオレウス】と遣り合っている。どちらに付こうか決めかねている内に、アルバストゥルが尻尾を切ってしまった。
同じようにベナトールが【銀レウス】をスタンさせている。
このまま眺めている間に彼ら二人だけでクリアしてしまいそうなので、二人は取り敢えずアルバストゥルの方に付く事にした。
ベナトールの場合、逆に邪魔に成り兼ねないからである。
【デスパライズ】を愛用している(というよりは他の属性は滅多に使わない)ハナによって面白いように麻痺が決まるので、アルバストゥルも溜め攻撃がやりやすい様子。
カイも的確に脚を狙っては転ばせるため、二人によってアルバストゥルの溜めチャンスが広がり、大きなダメージを稼ぐ事が出来ている。
上位といえどもやり方は下位と変わらないので、攻撃を食らいさえしなければ、スムーズに狩猟が進んでいた。
だがベナトールと違って三人は『食らわない立ち回りをする』というのは難しく、どうしても食らってしまうので、時々誰かが飛ばされては回復するという立ち回りをしていた。
【リオレウス】を討伐し終えてベナトールの方を見てみると、とっくに『討伐』してしまっていた。
しかしそれを見て、アルバストゥルは深い溜息を付きつつがくりと膝を付いて落ち込んだ。
「……ん? どうしたのだ?」
「オッサンよぉ、クエスト内容、よく見てみな」
ベナトールは言われるままに懐から取り出した【依頼書】をよく見て、兜の中でバツの悪そうな顔をした。
【依頼書】にはこう書かれてあるのである。
『【リオレウス希少種】の
「これって、クエスト失敗って事よね?」
ベナトールの脇で【依頼書】を見ていたハナが言った。
「まぁ、そうなるな」
「えぇ~~~!? オレ頑張ったのにぃ~~」
「ガハハ悪かった。ついな」
「てめぇは大体力あり余り過ぎなんだよ! ちっとは加減しろよなぁ」
失敗扱いになると、どんなに苦戦していようが報酬は一切貰えない。
その上『リタイア』するわけではないので今までに使ったアイテム類や契約金も戻して貰えない。つまりかなり損をしてしまうのだ。
「いやすまんすまん」
ベナトールは頭を掻いているが、兜の中では悪びた顔はしていないはずだ。
「ったく……!」
文句を言いつつも仕切り直したアルバストゥルは、今度は【リオレウス】の方をベナトールに担当させて事無きを得たのであった。
「フロンティア」世界のクエストには「狩猟クエスト」「捕獲クエスト」「討伐クエスト」というものが存在します。
依頼書に「狩猟」と書かれてあるものは討伐しても捕獲してもどちらもクリア扱いになるのですが、「捕獲」と書かれてあるものを討伐してしまうと、その時点でクエスト失敗してしまいます。
そして「討伐」と書かれてあるものを捕獲してしまうと、こちらもその時点でクエスト失敗します。
なので、依頼書をろくに見ないハンターは条件を満たさずに失敗してしまう事があります。
ところでその話とはまったく関係の無い事なのですが、カイの自称が前回から「おいら」ではなく「オレ」に変わっています。
それは友人に「カイはずっと『おいら』で通すのか?」というような事を聞いた時に、「まさか。いつまでもそんな呼び方しないで『オレ』になってるよ」というような事を言われたためです。
なので、ハナとくっ付いたのを機に「オレ」と言うようになったという設定にしています。