今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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ハンターの仕事の中には「護衛」というものもあります。
今回はそんな話です。

少し長め(五千字超え)です。


初めての護衛

 

 

 

 

 四人は【ギルドマスター】に呼び出され、貴族の護衛を命ぜられた。

 ベナトールは何度も受けているようなのだが、他の三人は初めての任務だった。

 

「なんか緊張する……」

 

「あら珍しいわね、アレクが緊張するなんて」

「だってよ、貴族の護衛だろ? なんかあったら【ギルドナイト】がだな……」

「貴族がどうかなったぐらいで【ギルドナイト】は動かんだろうよ。【ハンターズギルド】には何も影響はねぇからな」

 

「えらく冷てぇんだな、【ギルド】ってよ」

「まぁそれだけ【国】には影響されない組織だっつう事なんだろ。自由で良いじゃねぇか」

 

「オレ、お腹痛くなってきた……」

 

「トイレなら今の内に行っとけよ? 貴族に会ってからじゃ間に合わんぞ」

「護衛ぐらいオッサン一人でなんとかなるんじゃねぇのかよ」

「馬鹿者」

「てっ!」 

 

 愚痴った途端にゲンコツされるアルバストゥル。

 

「相手は一人ではないのだぞ? 御付きの者や料理長などを含めれば二十人ぐらいにはなる。そんな団体が乗っている竜車が【モンスター】に集団で襲われでもしてみろ。俺一人で護り切れると思うか?」

「ったく、なんでそうまでしてそのお偉いさんは、【砂漠】越えなんぞを御希望なされたのかねぇ」

「向こうさんには向こうさんの都合があるんだろ、オレ達は依頼されたらそれをこなすのが仕事なんだから、文句は言えないよ」

「だいたいオッサンの筋から来てんだろ? この依頼。王族貴族に有名なのは辛ぇよな」

 

「お前の筋なんだが? アレクよ」

「マジかよ……」

 

「あんたも有名になったもんよねぇ」

「【レウス狩り】で目立つんじゃなかったぜ」

「いやあれは目立ちたくなくとも目立つだろう。なんせ【訓練士】の話も来たぐらいだしな」

「【リオス語】話しながら【リオレウス】と狩りが出来るのって、アレクぐらいだもんなぁ」

 

 

 ちなみに今四人は、砂漠地方の都市である【レクサーラ】という所に来ている。

 

 【砂漠】といってもハンター達が狩場に使う内陸部ではなく、【レクセ海】と呼ばれている、大きく切れ込んだ湾内の一部に面した都市だ。

 そこには【レク港】と呼ばれている港があり、主に海洋での取引を目的とした大きな商業施設がある。

 

 【レク港】から湾の向こう側を望めば遥か遠くに【ラティオ活火山】が吐き出す噴煙が見え、季節による大きな風向きによっては火山灰が降って来る事もある。

 ちなみに【レク港】側の海岸線の海は【レクセ海】、【ラティオ活火山】のある【エルデ地方】の方の海岸線側の海は【ジュワドレー海】と呼ばれているらしい。

 

 湾の反対側からは火山灰、砂漠側からは砂嵐が起きたりした時などに細かい砂が降るので、季節によっては空気が悪く、空も霞んでいる所である。

 今回の依頼は、その【レクサーラ】から湾の一番奥にあたる都市、【ジォ・ワンドレオ】まで護衛する任務らしい。

 

 【ジォ・ワンドレオ】は東西交易の中継地点であり、独自の技術を発展させながら拡大している都市なのだとか。

 

 大街道の丁度中間地点にあり、ここからの技術が各地方に伝わったとされる。今現在ハンターが使っている武器種の一つ【双剣】は、ここから伝わったと言われている。

 どちらも海に面した都市なので大型船での行き来もされているのだが、依頼主が船には極端に弱いとかで、陸路での護衛となったのだ。

 

 

「やあ、待たせたね」

 

 既に準備がされていた大型竜車で御者やら使用人やらと談笑していると、一時間程待たされた後に依頼主の貴族が現れた。

 【モンスター】に襲われた時のためなのか、立派な鎧を身に付けている。

 だが武器は案の定人間用だし、鎧も人間に対してのみ威力を発揮する代物なので、まあ裸よりは役に立つという程度にしかならないだろうなとアルバストゥルは思った。

 

「君達が今回の依頼を受けてくれたハンターかい?」

「はい。宜しくお願いいたします」

 

 四人で形式ばった挨拶を交わす。

 

「貴殿は【ジォ・ワンドレオ】には初めての御旅行ですかな?」

「いや、何度かは赴いているのだ」

「ならば、どんな【モンスター】に遭う可能性があるかは、ある程度は御分りですかな?」

「分かってはいるつもりだが……。それでも運が良いのか【ドスガレオス】ぐらいにしかまだ遭っていないのだよ」

「それはようございました。【ディアブロス】などに出遭おうものなら、生きた心地がしませんからなぁ!」

 

 ベナトールは面白そうに笑っているが、貴族の顔は青ざめている。

 

「念のために【音爆弾】を多めに御用意下さいませ。それと【クーラードリンク】と【ホットドリンク】も」

「分かっておる」

 

 長旅になるはずなので、こちらも手持ち分と調合分を用意した。

 

 

 使用人達の乗る大型竜車と、それよりは小さな貴族の乗る竜車に、それぞれを護るように分かれて乗る事になった。

 何かあった時にすぐに護れるように、一番腕の立つベナトールだけ貴族の乗る竜車に同乗する。

 というか彼は王族の近衛が務まる程の身分を与えられているので、どちらにせよ貴族の身を護る役目は当然とも言えた。

 アルバストゥルはその大変さを慮りつつも、緊張しなくて良い使用人を護る側に付けたのを喜んでいた。

 

 道々で【ガレオス】や【ゲネポス】などが襲って来たが、大型のものは運良く襲って来ずに途中にあるオアシスで休憩する。

 

 まず【アプトノス】に水を飲ませなければならないが……。

 

「ちょっと待て」

 御者に声を掛け、喜び勇んで水場に駈け出そうとする【アプトノス】を抑えさせる。

 

 【アプトノス】達は文句を言っているが、アルバストゥルは慎重にオアシスに近付いた。 この辺りでは一番大きな水場のあるオアシスの水面は、穏やかなように見える。

 

「いない、みたいね?」

「今のとこは、だがな」

 

 同じようにして近付いて来たハナに返事をしたその時、「おいまだだ! 待て待て!!」と慌てた様子の声がして、貴族の乗る竜車を引いている【アプトノス】が近付いて来ているのが見えた。

 余程喉が渇いているのか、御者の制御が効かない。

 と、水面のずっと奥の方で、チラリと何かの背ビレが見えた気がした。

 

奴の背ビレじゃなきゃ良いんだが……。

 

 そんな事を考えつつ、御者が引き絞った手綱に抵抗しながらもどんどん近付いて来る【アプトノス】を可哀想に思い、水飲みの許可を与えようとしたその時、かなり近くで先程の背ビレが水面に現れた。

 

 まずい!

 

「オッサン! そいつを抑えてくれ! ハナはそこから離れ――」

 言い掛けたアルバストゥルは、突如水面から飛び出した巨大な魚と思われる相手に、水鉄砲を食らわされた。

 振り向いて完全に水面から目を放してしまっていた事を後悔したが、もう遅い。

 後ろから来た水鉄砲が、彼の肋骨の一番下あたりを貫通した。

 

「……っ!」

 そこを押さえながら、がくりと膝を付くアルバストゥル。

 

「アレク!?」

 ハナと後から来ていたカイは狼狽したが、次の瞬間「い……ってぇな! このクソ【魚竜】!!」と立ち上がり、傷を押さえたまま反対の手でポーチを探って【音爆弾】を掴み出し、水面に向けて投げ付けた。

 

 キイィン!

 

 慣れない者ならしばらく耳鳴りで苦しんでしまいそうな、大きく甲高い破裂音がした。

 

 ザバアァン!!

 

 その途端に苦し気に上半身を水面から飛び出させ、直後に地上に跳ね上がったものがいた。

 【アプトノス】が暴れ出し、その姿を見た事のある使用人の何人かが悲鳴を上げる。

 

「なんという大きさである事か! このように巨大な魚がオアシスには棲んでいるものなのだなぁ」

 

 ビチビチと地面で跳ねている相手を見て、呑気な声を出す貴族。

 どうやら見た事が無かったらしい。

 

「閣下、これは【魚】などではありません。【ガノトトス】と申しまして、【モンスター】の――」

「オッサン!!」

 

 説明しかけたベナトールだったが、掛った声と共に立っていた相手が首を横にしつつ息を吸い込んだのを見るや、貴族を庇うようにして竜車の前に立ちはだかった。

 

 直後、彼は切り裂かれた。

 

「お怪我はありませんかな?」

 振り向いた彼が水と共に赤い雫を滴らせているを見て、貴族は真っ青な顔で腰を抜かしている。

 

「ブレスの届かない所まで避難してくれ!」

 御者に声を掛け、そこまで下がらせる。

「竜車と【アプトノス】には損傷は無いな?」

 確認し、大型竜車側にも被害が無いと分かると、ベナトールは戻って来た。

 

 アルバストゥルは回復していたが、ベナトールはそのままである。

 胸を一文字に裂かれているのだが、痛くないのだろうか。

 

「さて、サッサと済ませるぞ」

「その前に回復しろよオッサン」

「こんなもん唾付けときゃ――」

「唾で治る状態じゃないでしょっ!」

「痛そうだから早く回復してくれよぉ、ほら見て気絶してる人出てるから!」

 

 三人に言われて、ようやく(見ている者のために)回復するベナトール。

 

 狩猟自体は順調に進んでいると思われたが、足元で闘っていたハナがタックルされて跳ね飛ばされた。

「きゃっ!?」

「おい大丈夫かよ」

「いたた、避けたと思ったのにぃ……」

「【亜空間タックル】って奴だな」

「それ避けにくいよなぁ」

 

 【ガノトトス】のタックルは、巨大な体躯で距離感が掴みにくいのと、勢いよく繰り出される動作に圧力が加わるのとで避けたと思っても当たる場合がある。

 それも当たらないと思うような位置でもなぜか当たってしまうという事があるため、ハンターの間では【亜空間タックル】などと呼ばれている。

 

「ならタックル前にこかすまでっ!」

 叫んだカイはハナの反対側から足に連撃を加え、【ガノトトス】を横倒しにした。

 

「腸ぶちまけやがれえぇ!!」

 そこにアルバストゥルが滑り込み、腹に最大溜めを落とし込む。

 

 同じく頭に【極ノ型(ごくのかた)】の最大溜めを叩き込んだベナトールの攻撃で、【ガノトトス】の頭は潰された。

 

 それでも立ち上がろうとする相手に、「させないわよっ!」と抜刀のままアイテムを使える事を利用したハナが、【落とし穴】を仕掛ける。

 

 落ちてもがいている間に麻痺が決まる。

 

「ナイス♪」

 親指を立てて笑顔を交わし合っている二人を無視して、「さっさとくたばりやがれえぇ!!」と再び溜め攻撃をかます二人。

 勢い余ってカイを切り上げてしまったアルバストゥルだったが、討伐には成功した。

 

「またつまらぬ者を斬ってしまった……」

 

「いやそれオレのセリフだろ!? 武器種的にっ!」

「いやつまらぬ者だろうよ、斬ったのおめぇだし」

「だったら注意して攻撃しろよなぁ」

「てへっ♪」

「うわ気持ち悪いっ」

「うっせぇよハナ!」

「こらお前ら、貴族の前だという事を忘れてはいまいな?」

「やべっ!」

 

 慌てて取り繕う三人である。

 

 

 居合わせた全員に感謝された四人は、ついでに【ガノトトス】を捌いて料理長に渡し、大喜びされた。

 【ガノトトス】の、特にトロは絶品で、ハンターでなければ手に入れられない、いやハンターでも滅多に口に入らない程の貴重であり高級な食材だからである。

(もっともハンターの口に入らないのは、トロが王族貴族に回されるからという理由からなのだが)

 

 ここの【主】だったと思われる【ガノトトス】を退治して、安全が確保されたのもあって、今夜はここで一夜を明かす事にした。

 

「特別な褒美だ。君達にも与えよう」

 

 本来は保存して置いて、王族貴族に回すために【ハンターズギルド】に届けなければならないトロの一部を、特別に賜る事になった。

 しかも今捌いたばかりの新鮮な物なので、生でも味わえる程の物である。

 

「有難き幸せに御座います」

 恭しく引き下がった四人は、テントの中で喜びを爆発させた。

 

「もう一生食えねぇかもしれんから、しっかり味わって覚えとこうぜ!」

「だよなぁ、オレなんかせいぜい【サシミウオ】ぐらいしか生で食べた事ないというのに」 

「小せぇなぁ、【ドス大食いマグロ】ぐらい食っとけよ」

「あれ変なもの食べてるじゃん、やだよ」

「バッカだなおめぇ、あいつたまに【秘薬】とか飲んでる事あるってのに」

「滅多に無いじゃん、逆にお腹壊すだろ寄生虫いるから」

「相変わらず弱ぇ腹だなぁ、寄生虫ぐらい消化しろよ」

「いやそれ出来るのあんたら二人だけだからっ!」

 

「ハンターさん達、御一緒しませんか?」

 テントの外で声が掛かり、四人も宴に呼ばれた。

 

 無礼講だと言うので(特に乗せられやすいアルバストゥルが)騒いだが、念のために火の番をすると言うベナトールは、焚火の前で静かに飲んでいた。

 まあ元々が語らないタイプなので、彼の場合はどこにいてもこの調子ではあるのだが。

 

 

 朝、案の定酒に弱いくせに調子に乗って飲まされたアルバストゥルが、二日酔いの醜態を晒している。

 それに苦笑しながらも、使用人達が竜車の中で介抱しつつ移動。

 だが【モンスター】が襲って来たとなると別なようで、【ゲネポス】などを追い払ってからまた竜車の中でダウンするのだった。

 

 彼が立ち直って来た頃、前方遠くに【ディアブロス】が現れたとの声がした。

 

 竜車を近付ける訳にはいかないのでなるべく影のある所で待たせ、四人が向かう。

 こちらに気付いて飛び出した【ディアブロス】は、通常よりも小さな個体だった。

 

「子供だなこりゃ」

「そのようだな」

「狩るの可哀想ねぇ」

「そうだねぇ、じゃあ追い出そうか」

「でもどうやって? 角もちゃんとあるわよこの子。親よりは小さいけど」

「ふむ……」

 

 そんな話しをしている間に、相手が向かって来た。

 

「やべぇ避けろ!」

 慌てて散った三人を尻目に、ベナトールだけ微動だにしていない。

 小さくとも【ディアブロス】である。そのまま突っ立っていれば角が易々と鎧を貫くだろう。

 

「ちょ、オッサン!?」

「危ないっ!!」

 三人が狼狽するその中で、彼は相手を受けた。

 

 当然のように角が体を貫通すると思いきや――。 

 

「ぬぅん!」

 気合もろとも、彼はなんと角を抱えて踏ん張り、突進を止めたのだ。

 

「でりゃあぁ~~~!!!」

 そしてそのまま相手を振り回し、遠くに放り投げた。

 

 呆気に取られたのは三人だけでなく、【双眼鏡】で観察していた竜車に残った人々にも及ぶ。

 

「ふぅ、これでもう安心だ」

 慌てて逃げて行く子供の【ディアブロス】を見て、パンパンと手の埃を払うベナトール。

 開いた口が塞がらない三人は、物も言えなくなっていた。

 

 そんなこんなで無事に【ジォ・ワンドレオ】まで護衛した四人は、功績を認められて【レクサーラ】を拠点に狩猟出来る権利を与えられたという。  

 

 

 

 




地名や場所などは公式だと思われる世界地図が出回っていたため、それを見て書きました。
そこの環境などは想像しました。
「ジォ・ワンドレオ」の設定は情報サイトを参考にして書いています。

情報サイトにも「ガノトトスのトロは絶品」と書かれてあったのでかなり美味しい食材なんだろうと思うのですが、淡水魚はちゃんと処理しないと臭みが強い(特に内臓)ため、とても生では食べられないと思います。
(他の世界では海洋生物としても登場してますが、「無印」からの流れを受け継いでいる「フロンティア」世界の「ガノトトス」は淡水にしか生息していないので)

なので「サシミウオ」や「大食いマグロ」などを生でかぶり付くハンターは、臭みどころか寄生虫すら克服するのでしょうね(笑)
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