今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
少し長めです。
今二人は、レーヴェを伴って里帰りをしている。
いつもは竜車で帰るのだが、ちょっと驚かせようと思ってレーヴェに乗って帰って来たのだ。
当然【村】の中に降り立った【リオレウス】を見て大騒ぎになり、【村】付きのハンターが飛び出す事態になったのだが、背中から二人が降りて来たのを見ると、居合わせた全員が呆気に取られた。
「【村長】ただいま~~」
「おおお主ら、たまがせおって! 心臓が止まるかと思ったぞい」
「ごめんなさい【村長】。アレクが『驚かせよう』って言うものだから……」
「レインも『面白そうね』っつったろうがよ」
「ほっほっ、仲良くしておるようだの」
「はい、お陰様で」
村人やハンターは安堵し、歓迎した後それぞれの日常に戻って行った。
だがやはり血が騒ぐのか、ハンターだけは残念そうな顔をしていた。
子供達が遠巻きに見ていたので「乗せてやっても良いぞぉ」と声を掛けてみたアルバストゥルだったが、やはり怖いのだろう。全員尻込みして見ているだけだった。
【リオレウス】はしょっちゅう見掛ける地域ではあるものの、触れる程間近で見る機会はまず無いので、興味のある村人も遠巻きに観察したりしている。
「ところで【村長】」
アルバストゥルは、上空から見下ろした景色の中で気になるものがあったので、尋ねてみた。
「【村】からそう遠く離れていない所に、見事なまでの円形に見える湖があったんですが、あれは何ですかい?」
「【メルチッタ】の湖の事かの?」
「【メルチッタ】?」
「左様。――最も【メルチッタ】というのは湖の側に出来た【村】の事なんじゃがの。その湖というのがの、昔、隕石が落ちた跡なんじゃそうじゃ」
「隕石ですかい!?」
「んむ。での、その特殊性故に研究に来た学者が住むようになっての、【ミナガルデ】から来たハンターも住み始めて集落になったんじゃと。それが人口増加に伴って広がったのが今の【メルチッタ】なのじゃよ」
「へぇ~~~」
「希少な鉱物があるそうじゃから、興味があったら行ってみるが良い。なんなら紹介状を書くでの」
「それは面白い! 少し寛いだら行ってみます」
「そうか。なら用意しとくで、いつでも言うて来い」
「はい」
「私も行ってみたいっ!」
聞いていたレインは目を輝かせながら言った。
「オイ待て、希少鉱物なんざ興味ねぇだろおめぇは」
「ううん、湖に興味があるの」
「あの湖は上から見て初めて価値があるのであって、下から見ても【密林】のものとたいして変わらんぜ?」
「そんな事ないわ。隕石の跡というのなら、地層が違っているはず。なら周りに生えてる植物なんかも違っているかもしれない」
「おいおい、いつ学者になったんだよ」
「ここでは山菜取りの名人だったのよ? 私。どこにどんな植物が生えてるか、それが有毒なのか食べられるのかそうでないのかの見極めは昔から得意なの。だから、植物には興味はあるのよ」
その時、レーヴェが鳴いた。
「えぇっ!? お前も行きたいってか!?」
『グルル』
「あのなぁレーヴェ、田舎の連中は【街】みてぇに【モンスター】をペットにする習慣がねぇんだよ。ここの連中の驚き具合を見ても分かるだろ? 狩られても知らんからな」
『グルル、グワァ』
「そりゃもちろん護ってやるよ。確かにお前に運んでもらった方が竜車で行くより遥かに早く着く。実際それも兼ねてここまでお前と来たんだからな。だがなぁ……」
『グルルゥ、グワァ、グワァ』
「ねぇアレクぅ、連れてってよぉ」
「だーもぉ! おめぇが訳すんじゃねぇよ」
「良いじゃないの、ねぇお願いぃ」
「ったく、二人共どうなっても知らんからな」
「良かったねレーヴェ♪」
『キャウッ♪』
「ほっほっほっ! 面白いのぉお主らは」
アルバストゥルは苦笑いした。
せっかくの里帰りなのでのんびり寛ぎたかったアルバストゥルだったのだが、逸るレインがうるさいので、早々に出発。
【ココット村】と違って初めて行く【村】なので、配慮して【村】の外れに着陸したのだが――。
「り、【リオレウス】がすぐ近くに降りただ!」
「えええらいこっちゃ! すぐにハンターさんに知らせねば!!」
入村の許可を得る前に山菜取りをしていた村人に見付かってしまい、大騒ぎになってしまった。
勇んで飛び出して来たハンターと話し、誤解を解く。
そのままレーヴェは待機させておいて【村長】の元へ行き、紹介状を見せて詳しく話した。
許可が下りたのでレーヴェ共々入村したものの――。
「りり【リオレウス】が来ただ! 食い殺されるぅ!」
「いやこいつ俺のペットだからそんな事しませんぜ」
「【モンスター】をペットに出来るなんか聞いた事ねぇだ!」
「んだんだ! そんな事信じられねぇだ!」
「油断させて置いて、一飲みにされるに決まってるだっ!!」
「これこれお前達、御客人に失礼だろう。それに【街】ではそのような習慣があるのだそうだ。所変わればという奴ではないか」
初老の【村長】が窘めると、渋々という感じで村人達が静まった。
「これは良い研究材料になりそうですな」
遠巻きに見ていた学者の一人が近付いて来た。
「人のペットを研究対象にしないでもらえますかね?」
「いや実際に触った事は何度もあるのだよ。しかし好きなようにいじれるのはハンターに剥ぎ取ってもらった【甲殻】や【鱗】ぐらいだし、捕獲してもらったものはいつ目覚めるかと冷や冷やしながら触る必要があるからねぇ。『生きた』対象をこれ程間近で触れる機会は早々ないのだよ。だから、少しだけ協力してはもらえまいか? 本当ならば解剖もしたい所だが……」
「解剖なんぞしたら殺しますよ?」
「怖い事を言うねぇ、もちろん冗談に決まっているだろう」
「……だとよレーヴェ。我儘言って付いて来たのはお前なんだから、ちっとは我慢するんだな」
『グルル……』
「【彼】の許可が出ました。ただし決して傷付けたりしないように」
「分かっている」
学者はそう言うと、仲間や助手を呼んで記録やスケッチをさせながら、嬉しそうにレーヴェの体をあちこち触り始めた。
「ふぅむ……。【甲殻】と【鱗】の繋ぎ目はこうなっているのか。背面や側面の頑丈な【甲殻】が柔らかい腹側とキッチリ分かれているのは興味深いな。ここまで硬さが違うのは、着陸してしまえば常に下側は護れるからなんだろうが、それはあくまでも【モンスター】からの視点であって、ハンター側から見れば完全な弱点になり得る。なるほど、だから【甲殻】は綺麗に残ったまま討伐される事が多いのか……」
「レイン、暇なら先に宿屋に行くか、植物学者を紹介してもらっといても良いぞ」
「ううん、私も【リオレウス】の体の仕組みはよく知らないから見とく」
「あそ」
「【翼膜】は……。君少し翼を広げてもらえるかね? そうそれで良い。――おぉ随分あったかいな! やはり血管が多く走っているのだな。それで細かく風や上昇気流を捉えられるのか。【翼爪】は……。やはり思った通り、一番上の大きなものが本物の【爪】で、後は爪に見える飾り鱗か。なるほどなるほど」
次に学者は、恐る恐るという感じで言った。
「レーヴェ君、口を開けてもらえないかね?」
「口の中でも見るんですかい?」
「その通りだよアレクトロ君。ほら顎の先に棘のような器官があるのは君も知っているだろう? 【リオレイア】ではそこが発達して授乳器官になっている所だ。だが雄はまったく役に立たないのに『名残』のように残っている。その部分がどうなっているのか知りたくてね」
「なるほど……。だそうだぜレーヴェ」
『グゥ……』
レーヴェは渋々という感じで口を開けた。
「かか噛むんじゃないぞ?」
そう言って、ビクビクしながらも学者は口の中に手を入れた。
「し、舌を持ち上げてくれると有難いんだが。そう先の方だけで良い。――あぁなるほど、やはり塞がっているな。【リオレイア】ならばここは口の中に穴が空いていて授乳器官に繋がっているんだが。そう管みたいになっているんだよ。乳だけじゃなくて消化した肉なんかも吐き戻して与える関係で。だがやはり【リオレウス】の場合はその必要が無いから穴が無いのだな。ふむふむ。有難うレーヴェ君。思った通りではあったのだが、実際に確認出来て良かったよ」
学者は満足したように言うと、再び隈なく全身を調べ上げ、ようやく解放してくれた。
「良い研究になった。貴重なスケッチも沢山描けたよ。無傷の標本として解剖出来ないのは非常に残念だが、まあそれは我慢しよう。お礼と言ってはなんだが、湖を案内したいのだが、どうだろうか?」
「本当ですか!? 是非お願いしますっ!」
これにはレインの方が飛び付いた。
「おや珍しい。女性で湖に興味がある方がおられるとは」
「湖というより、その周辺に生えている植物に興味があるんです」
「なるほど、確かに種類の違う花なども見られますね」
「そうでしょう? 隕石の衝突によって地層が変わっているはずですもの」
「中々お詳しいですな」
「私、【ココット村】では山菜取りの名人だったものですから」
「あぁそれで地層の変化に詳しいと?」
「はい。生えている場所と地層は深い関係がありますもの」
取り敢えず宿屋を借りて荷物を置いてから、二人は学者に付いて行った。
先程の学者には専門外との事だったので、植物学者を紹介してもらって案内してもらう事になった。
レーヴェは残したので、「狩ろうとした者は全員殺すからな!」と、きつく村人やハンターに言って置いた。
湖は、下から見たら変わらないと思いきや、大きく弧を描いているのはよく見えた。
「そこに青い花が群生しているでしょう?」
学者は湖の脇の、森との境界線付近に生えている青い花を指差して言った。
【アルコリス地方】では見掛けない花である。
「随分珍しい花ですね」
「【キイロノミ花】といいましてね。花はこのように青いのですが、実の色は黄色いのです。その実は水分が多く含まれておりましてね。植物食の【モンスター】や鳥などが好んで食べるようです。それで水分補給をしておるのでしょうな」
「なるほど……」
「それからここ」
次に学者は茂みの中に生えている植物を指した。
「可愛い実が生っていますね」
「でしょう。【コチの実】という実です。見た目だけじゃなくて、乾燥させると更に可愛らしい事になります」
そう言うと、学者は乾燥させた実を懐から取り出し、レインに渡した。
「耳元で振ってごらんなさい」
微笑まれて言う通りにしたレインは、「まぁ可愛い♪」と声を弾ませた。
コチコチと可愛らしい音がしたからである。
「そうでしょう、癒されるので懐に入れてはたまに鳴らしているのですよ」
その時、どこからかサラサラという音が聞こえて来た。
「【サラサラ草】があるようですね」
生えている所まで歩いて行くと、大きな葉がサラサラと音を立てながら風に揺れていた。
「サラサラ鳴るから【サラサラ草】なのか?」
「それもありますが、この大きさを利用してお皿に出来るのですよ。その両方でこの名前が付いたようです」
「へぇ、面白いな」
と、なんだか変な臭いがした。
「なぁ、なんか糠みてぇな臭いがするんだが……」
「流石ハンター。よく気付きましたね。私はまだ何も臭いませんが、その臭いがしたのならば、恐らく【ヌカバッタ】が近くにいるんでしょう」
「私も何も臭わないけど……?」
念のために【サラサラ草】の中に踏み込んでみたアルバストゥルは、飛び出したバッタを捕まえた。
一見どこにでもいる普通のバッタに見えるが、やはり糠臭い。
「この虫を必要とするハンターは、姿よりも先に臭いで探すそうですよ」
「そうだろうなぁ」
そんな風に色々説明してもらいながら湖の周りを回っていたアルバストゥルは、ある事に気が付いた。
「なんか【開拓遊び】にいる動植物と同じ感じかする」
「何ですか? その【開拓遊び】とは」
「【ドンドルマ】の脇によ、【パローネ・キャラバン】つう気球キャラバンが停泊してんだが、そこが提供してくれる航路の一つにハンターが自由に開拓を許されてる開拓地があるんだわ。そこを開拓していくと、今見ている動植物みてぇなのが生息する事がある。それと同じものが隕石跡に生息するってのは、なんか面白ぇな」
「それは面白いですねぇ。隕石が落ちた跡というのは超高熱で岩盤などが溶けてガラス質になる事が多いのですが、それに適応したものとその【開拓遊び】とやらの開拓地に生息していく動植物が同じ傾向を辿るとは。もしかしたらそこの地層もガラス質のものが多いのかもしれませんよ」
「なるほどねぇ、俺は自由に入って採取、採掘しても良いと許可を出しているハンター開拓主の所しか行かないようにしてるんだが、ならそこの開拓地の地層がそうなってるのかもな」
レインが満足するまで案内してもらった二人は、次の日は地質学者を紹介してもらって鉱物の説明を聞いた。
その結果、やはり【まな板石】【メナウ石】など、【開拓遊び】と同じような鉱物がある事が分かった。
だが動植物といっても動物群はせいぜい昆虫ぐらいで、【モンスター】の生息変化は無い模様。そしてそれは【開拓遊び】でも同じだったため、極小さい変化にとどまるのだろうという事になった。
【村】に帰ると「やたら強い【イャンクック亜種】が出て手に負えないので協力して欲しい」とハンターに頼まれた。
今度はレインも置いて行く事になったため、アルバストゥルは声を張り上げた。
「おめぇらよく聞けぇっ! 俺の【嫁】に手ぇ出したら全員殺ぉす!! もちろんレーヴェに手ぇ出しても全員殺ぉす! 帰って来て少しでも変化があったら覚悟しとけえぇっ!!」
レインが真っ赤になったのは、言うまでもない。
「リオレウス」の仕組みは全て私が観察した時に考えた自己解釈です。
これを読んだ友人に、「アレク性格変わった?(笑)」と言われました。
「彼女が出来たら大胆になるんじゃね?」と答えると「大胆というか、軽くなった」と。
でも、最後のセリフを吐いた時、耳まで真っ赤になってたのを隠していたのです。
そんでもって「バレバレですよwww」と村付きハンターにからかわれ、クエ中は恥ずかしくてやたら吠えまくっていたのです(笑)
「パローネ・キャラバン」の開拓遊びについてですが、今の所「密林」「雪山」「砂漠」「火山」が開拓出来るようになっており、それぞれの場所や開拓レベルによって採れる素材が違います。
なので今回は「密林」で採れるものだけを採用しております。
(素材の説明も全てアイテム説明欄に書かれてあるものです)