今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
私はいつも短編のネタを探しているせいなのか、時々「モンスターハンター」の夢を見るのです。
で、その中で印象深いものを目が覚めても覚えている事があり、それを基にして書いたりしています。
【ギルド会議】のために【ミナガルデギルド】の本部へ行く【ドンドルマギルド】の【ギルドマスター】を護衛する目的で、ベナトールは今【ミナガルデ】に来ている。
年に一回のこの会議では、各地の【ギルドマスター】が【ハンターズギルド】を離れて【ミナガルデ】に集結する事になるため、その間は歓迎のために祭りを催す事になっているのだという。
ただでさえ賑わっている【ミナガルデ】の大通りには出店が立ち並び、夜になると打ち上げ花火が上がる。
ハンターの【街】は普段から(特に【大衆酒場】の界隈では)眠らない【街】なのだが、祭りの間は一般人の住む区画も夜通し明かりが灯っていたりする。
歓迎祭ではかの有名な【黒龍伝説】の寸劇などが子供にも分かる様な形で催されたりし、デフォルメされた可愛らしい【黒龍】のぬいぐるみが売られて、子供達にはむしろ【邪神】や【災厄の化身】の物語などよりも、こちらの方が人気があるようだ。
売り物の中には技術者が腕を懸けて精巧に造った置物などもあり、こちらは大人に人気があるらしい。
ただし大きな物は子供が怖がるので、子持ちの家庭では人気が無いとの事。あまりにも精巧な物は夜中になると動き出すなどという噂も出たそうな。
地元の者やハンターだけでなく各地の市町村からも人が集まる程の大規模な祭りなので、この数日間の【ミナガルデ】は人で溢れかえる。
ベナトールは人混みが好きじゃない(というよりは賑やかな所が嫌い)なので、実は【ギルド会議】でここに赴くのは苦手だったりする。
【ミナガルデギルド】の本部は崖の中腹にある洞窟なので、(あくまでも中心部や広場に比べてではあるが)そこまで行く道路でも比較的静かである様子。
そのため幾らかホッとしたベナトールであった。
【ギルドマスター】の乗る竜車は数の関係で本部脇には直付け出来ないため、道路に沿ってずらりと並ぶ事になる。着いた順に早い者勝ちで近くに止められるため、なるべく近くで降りたい場合は早めに行く必要があるようだ。
【ドンドルマギルド】の【ギルドマスター】が乗った竜車が着いた場所は、後ろから三番目あたりだっただろうか? とにかく先に降りたベナトールが続いて降りる【ギルドマスター】を手助けしていた時である。
ふと、微かに風を切る音がしたような気がした。
振り向き、向かって来た物を、それが何であるか確かめる前に瞬時に掴む。
手の中でまだ振動している物は、【矢】であった。
「【マスター】、狙われております」
静かに言った彼に、驚きもせずに【ギルドマスター】は「そうか」と返した。
【ギルドマスター】は【ハンターズギルド】を統括している立場であり、言わば各地のハンターの【法】とも言える人物なので、それに抗う輩に命を狙われる事は珍しくは無いのだ。
「なるべく道の影をお通り下さい」
一部岩を削って作った道路の、なるべく岩の影になるような場所を選んで歩く。
が、岩から出た途端にまた狙われた。
今度はハッキリ矢が見えた。オーラを纏って飛んで来ている。当然掴む。
相手はどうも、彼を狙う事に切り替えたらしい。
最初に矢を掴まれた事で、まず邪魔者を排除してからターゲットを狙うつもりでいるのだろう。
「【オーラアロー】……」
「SR持ちか。【ドンドルマハンター】の仕業じゃな」
ならば、【ドンドルマギルド】の【ギルドマスター】だけを狙って来るという事も、道理なのかもしれない。
【SR】【GR】というランクは【ドンドルマギルド】でしか設けられていない。
それはそれだけ周辺の【モンスター】に強いものが現れるようになって、【HR】のランクだけでは対処出来なくなったためである。
【オーラアロー】の技を伝授されている者は【
恐らくSR百以上の者であろう。
「ここまでランクを上げながらこのような愚行を犯すとは、なんとも残念な事じゃの」
「【オーラアロー】ならばこちらが追う前に逃げ切れると踏んでいるのでしょうが……。まぁ、甘い考えですな」
【オーラアロー】は自身の精神力を矢に乗せて撃ち出す技なので、本来の【弓】の射程距離よりもかなり遠くに飛ばせる事が出来るのだ。
なので陰に隠れたまま【モンスター】に気付かれる事無く、一方的に攻撃する事も可能なのだ。【モンスター】が警戒を始める感覚外から攻撃出来るが故に。
【ギルドマスター】を無事に【ギルド本部】まで送り届けたベナトールは、会議中は同席出来ないので、終る前に先程の犯人を捜す事にした。
ちなみに全員の【ギルドマスター】が到着するまで会議は行われないために、各自で本部に設けられている宿泊施設に寝泊まりする事になるらしい。
なので、会議に移る前に何日も過ごすという事にもなり得るようだ。
だがその間は最高級の持て成しを受ける事が出来るので、それを楽しみにしている【ギルドマスター】もいるという。
もう祭りの客に紛れているはずなので、渋々ながら開催中の広場や中央部などに入る。
耳を覆いたくなるような騒ぎの中、それでも感覚を研ぎ澄ませて目を光らせる。
といってもあからさまに見回していては警戒されるため、こちらも祭りを楽しんでいるふりをして、気配だけを探る。
人が多い程攻撃音が紛れるからと思ってここに来てみたベナトールだったが、すぐに間違った考えだと気が付いた。
【オーラアロー】でいくら遠くから攻撃して来ようが矢は真っ直ぐに飛んで来るので、自分だけを狙うつもりならば人混みでは襲わないだろうと思ったからである。
剛腕の者ならば貫通特化の弓で通常攻撃すれば貫通させられるだろうが、他の者を巻き込んで、貫通させてまで狙って来るとは考え難い。騒ぎが大きくなると捕まりやすくなるからだ。
それに、【オーラアロー】では貫通する程の威力は無い。
ならば、人通りの少ない方へ行くべきか……?
【ミナガルデ】から逃げている可能性もあるが、目的を果たせていないので、再び狙って来るはず。
そこで、人通りの少ない一角に入ってみた。
時間は夕方頃。着いたのが日が傾く前だったので、今は夕焼けが辺りを覆っている。
【逢魔が時】に差し掛かった頃、ふいに風切り音がした。
掴もうとして手刀に切り替え、叩き落とす。
向かって来た矢が一本ではなかったからだ。
【オーラアロー】ならば一本ずつ射かけて来るはずである。数本撃ち出せる程精神力が持たないからだ。
ならば相手は狙撃ではなく通常攻撃をして来ている。とすれば、近くにいるはずである。
「出て来い。もう通用せん事は分かっただろう」
もう一度射られた数本を叩き落としてその方向を向いて静かに言うと、建物の影から男が出て来た。
逆光になっていて顔が見えない。どちらにしても目深にキャップを被っているので顔は分からないのだが。
「腕は良いようだが……。残念だな」
「……。残念、とは?」
「貴様は、今この場で処刑される事が決まったからだよ」
すると相手は高らかに笑った。
「何の権利でそんな事が言える。【ギルドナイト】にでもなったとでも? 確かにオレは人に武器を向けた。ましてや【ギルドマスター】を狙ったとなると処刑は確実だろう。だが、貴様とてオレに武器を向けたとなれば同じ罪になるのだぞ? それを踏まえて言ってるのであれば、とんだ愚か者だな」
「まあ、普通はそうだろうな」
ベナトールは指をポキポキと鳴らし始めた。
「武器を向けて処刑対象になるのならば、武器を向けなければ良いのではないか?」
ニヤニヤ笑うベナトールに、相手は呆れたように言った。
「貴様、もしかして武器無しでオレに挑むつもりか? 馬鹿にするのもいい加減にしろ」
「その武器が通用しねぇ奴に言われたくねぇがな」
「でけぇ口が叩けるのはそれまでだぜ!」
言うや否や、相手はたまたま通りかかった女を人質にした。
「き――!」
「おっと、声を出してみろ、このまま殺すぜ?」
矢を喉元に突き付けている。対【モンスター】用の矢は鏃が大きいので、そのままナイフ代わりにも使えるのだ。
「……。それで? 逃げる隙でも作ったつもりか?」
「そうだ。近付くとこいつの命はねぇぞ」
じりじりと下がって行く相手を溜息交じりに見ているベナトール。
と、横から飛び掛かって来た者がいた。
「その女を放せ!」
どうやら正義感の強い者が割って入ったようである。
「邪魔をするなあぁっ!!」
男は怒号し、矢を相手に突き刺そうとした。
「一般人を巻き込むんじゃねぇよ」
次の瞬間男は矢を持っていた腕を折られた。ベナトールがいつの間にか近付いていたからである。
「ぐわぁっ!!」
矢を落として腕を押さえる相手を無視し、まず女を逃がす。
「おいお前、勇気があるのは良いが、ハンターは一般人が到底相手出来る連中じゃない。早くその女を連れて逃げろ。こいつは俺に任せ――」
「くそがぁっ!!」
向かって来た男を躱す。密着に近い状態で【剥ぎ取り用ナイフ】で腹を刺されそうになったが、それに当たるベナトールではない。
「ふん、まぁ【弓】を使わん方が正解かもな。ほれ待ってやるから回復しろ。俺とは万全の状態じゃねぇと闘う事すら出来んぞ」
「……。敵に回復を促すとは、何を考えてんだてめぇは?」
「もちろんその方が楽しんで処刑出来るからに決まっとるだろうが」
「だから何の権利でハンターが――」
ベナトールは耳元に口を寄せて言った。
「俺は【ギルドマスター】から、違反者を処刑する権限を与えられているからだよ」
「お、お前、まさか……!?」
「……。【ギルドマスター】を狙撃した罪により、【ギルドナイト】が貴様を処刑する」
そう耳元で言われ、動揺する男。
だが、それでも引き攣ったように笑った。
「……へっ、伝説の【ナイト】がお出ましって訳かい。そんな都市伝説を信じるとでも? 脅してるつもりならお笑い種だぜ」
「まぁ信じなくとも勝手だがな。あぁ生憎今回は、制服は用意してねんだよ。すまんな」
「ふざけやがって!」
話している間に回復した男は、【剥ぎ取り用ナイフ】で向かって来た。
どっちみち【弓】では敵わないという事が分かったので、他に武器が無かったからである。
「ほれ頑張りな。俺に当てられたら見逃してやらんでもねぇぞ」
「嘘付け!!」
「クックッ、そういうとこは弁えてるんだな」
「うるせぇっ!!」
「そんな大振りでは一般人でも簡単に避けられるぞ」
「黙れえぇっ!!」
「ふむ……。お前、もしや近接武器を扱った事が無いのではないか? せいぜい【訓練所】の時ぐらいだろう。【弓】の腕は長けているようだが、他はからきしと見た」
「知ったような事を言うんじゃねえぇっ!!」
「処刑対象に処刑者が言うのもなんだが、もう少し近接も練習しとくべきだったな。対象にならなかったら教えてやっても良かったんだが……」
「そうかよ、残念だな!」
「あぁ。残念だよ」
それまで避けていたベナトールは、そう言うと相手の首を掴んで片手で持ち上げた。
相手は放せとばかりに【剥ぎ取り用ナイフ】を彼の腕に突き立てたが、彼は一瞬僅かに眉を顰めただけで平然としている。
普通ならば痛みのあまりに手を放すはずである。
その様子を見て、男は化け物だと思った。
「……。SR所持者、しかも凄腕ランクの者を殺すのは正直忍びないのだが、決まりなのでな。悪いな」
そして次の瞬間、首の骨を折った。
「黒龍伝説」については御伽話の一つとして子供でも知っているという自己解釈にしています。
ただし、「ミラボレアス」は禁忌の「モンスター」なので一般人どころかハンターの間でも本当の姿を知らない(という事に私の中ではしている)ため、絵本や小説、祭りで売られているぬいぐるみや置物などはそれぞれで想像した姿をしています。
なので、ある程度の形は決まっているものの、各製作者によって多少姿が違っているようです。
今では廃止されている「SR」と旧ランクをランクの幅や差別化を図るために私の小説では採用しておりますので、「オーラアロー(嵐ノ型)」が伝授されるSRは100からです。
※今ではHR5になった途端に嵐ノ型までの秘伝書を「ギルドマスター」から伝授される形式に変わっております。
「オーラアロー」の挿絵撮影は、「マイハウス」のベッドで行える「睡眠学習(クエストに行かずに全ての武器の型を試せる)」で演技して撮影しています。
一応建物(というよりは朽ちた遺跡ですが)の影から狙っているようにやってみました。