今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
【月刊・狩りに生きる】の今月号が出たというので、アルバストゥルは【総合ショップ】に行ってみた。
装備の特集号も出ていたので、何の気なしに手に取った彼は、表紙を見てぶったまげた。
そこに、どう見てもカイとしか思えない人物のスケッチが描かれてあったからである。
「なな、なんじゃこりゃあぁ~~~!!!」
思わず大声で叫んでしまい、売り子や近くの者にギョッと見られて、真っ赤になって慌てて両方を買ってそそくさと立ち去る。
カイの【マイハウス】に直行し、所在を確認する前にずかずかと中に入った。
「アレク、ノックぐらい――」
「こりゃどういうこったよ!?」
戸惑うカイの顔面に、特集号を張り付ける。
「みみ見えないよっ!」
そう言われてようやく少しだけ離してやった。
「……あぁ、これね」
「これねじゃねぇよ、おめぇ、いつの間にモデルなんかやってんだよ!?」
「この前ね、広場を歩いてたらスカウトされちゃってさ。興味本位で付いてって編集社を覗いたら、『明日から来てね』なんて言われちゃったんだよな」
「はぁ……。おめぇみてぇなヒョロヒョロが、よく男性装備のモデルが出来たよな。女性装備の方が似合うんじゃねぇのかぁ?」
「それ、実はスタッフの人にも言われたんだよなぁ……。最初のスカウト目的も女性モデルだったらしいし」
「だろうなぁ」
「でもね、オレが装備した方が受けが良いんだってさ」
「女に、だろ?」
「そう」
「ったく、時代も変わったよなぁ」
「それ、男性モデルにも言われたよ」
「いや、俺やっぱこっちの方が良いわ」
屈強な男性モデルが務めているページまでめくって言う彼。
「そりゃ『男受け』はそっちだろうな。オレはあくまでも『女受け』のためのモデルらしいし」
「あそ」
「でも売り上げ自体はかなり伸びたらしいよ。オレの活躍で♪」
「まぁ装備関係で買うのは女の方が多いだろうからなぁ……」
急に玄関が騒がしくなったと思ったら、レインとハナが入って来た。
「ちょっとカイ、凄いじゃないっ♪」
「カイさんついにモデルデビューしたの!?」
「えへへ♪」
「やっぱ似合うと思ったんだよねぇ、女性装備」
「いやそれ男性用だからっ!!」
「えぇ!?」
「そんな素っ頓狂な声出さなくてもさぁ」
「あらホント、よく見たら男性用だわこれ」
「ホントだぁ、女性用のモデルデビューしたのかと思っちゃった」
「君達ねぇ……」
少し遅れて、ベナトールが入って来た。
「おいカイ、おめぇとうとう女性用を着るようになっちまったのかぁ?」
「だからそれは男性用だよっ!!」
「ありゃそうなのか。俺ぁてっきり女性モデルを務めたのかと思っちまったよ」
「だよなぁ、俺も最初そう思ったもんなぁ。だからカイが載ってたのと装備とで二重にぶったまげてさ、ショップ前で変な声出して叫んじまったよ」
「俺も『うへぇ!?』なんて言っちまったよ」
ベナトールは苦笑いした。
「みんなしてなんだよぉ!」
「でもよオッサン、カイのお陰で雑誌の売り上げが伸びたんだと」
「女が買うからか?」
「そういう事らしいぜ」
「時代も変わったよなぁ……」
「だよなぁ……」
「二人してしみじみ言わないでくれるかな」
「良いじゃないの、カイが人気がある証拠でしょ♪」
「そうそう、なんかアイドルみたいね♪」
「どやっ♪」
「いや俺やっぱ、こっちの方が良いわ」
「……。俺は中々、良いと思うぞ。うむ」
「おいオッサン、本人がつれないからってスケッチ相手に変な事考えてんじゃねぇぞ」
「やだ、ベナってそういう人だったんだ。やらしぃ~~」
「いやそういうつもりじゃなかったんだが……」
「意外にムッツリスケベだったりして?」
「てか、その前に相手がおかしいのを突っ込めよレイン!!」
「私もモデルやってみよっかな」
「いや待てなぜそうなるレイン俺は反対だぞそもそもおめぇに稼いでもらわなくともウチには余裕があるんだし――」
「アレクがテンパってるからやめといた方がいいわよレイン」
「やだ冗談よ。こんな人の目に晒されるような仕事なんて、恥ずかしくて出来る訳ないじゃない」
「そ、そか……」
「見られて良いのは、あなただけよ、アレク♪」
ボッ!!
「顔から火が出とるぞアレク」
「きゃははは! かんわいぃ~~~♪」
「う、る、せえぇっ!!!」
「わあぁっ!? なんでオレに来る!?」
「顔はやめたげて、モデルだからっ!」
「いやその前に止めろよおぉ」
何につけても賑やかな五人であった。
オッサンの、ムッツリスケベ発覚(違)