今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「フロンティア」以外でも成立するのかもしれないんですが、ゲーム内での一種の「バグ」などを利用して地形の裏に隠れたり、「モンスター」が発覚する感覚外からこちらはダメージを一切受けずに「火事場ガンナー」で一方的に攻撃する事を「スナイプ」と呼んで利用する事があります。

今はどうやら全部潰されているようですが、私もこれをよく利用しては一方的に狩っていました。
その当時も「卑怯だ」とか「邪道だ」とか言われておりましたが、「スナイパー」気分で楽しかったです。



雪山のスナイパー

 

 

 

 【フラヒヤ山脈】の狩場に宛がわれている山の頂上付近(地図で言う8)に、人間はしゃがめばどうにか通れるが【モンスター】は到底通れそうにないくらいの横穴が空いている。

 そこを抜けると高めの段差があり、飛び下りて段差を上がったり崖を登ったりしていると、【クシャルダオラ】が脱皮したと思われる残骸が残っている事がある。そしてその崖から飛び下りると、また《8》の雪原に戻れる所である。

 

 その横穴を上手い具合に利用すれば、【ガンナー】限定ではあるがそこから安全に、尚且つ一方的に攻撃出来る事が可能な場所であった。

 ただし横穴の入り口付近に【モンスター】をおびき寄せなければ攻撃出来ない関係で、必ず【囮役】が必要になるのだが。

 

 

 さて、そのやり方で狩猟をする事にした二人は、相手に気付かれないような移動ルートを通って《8》に来ていた。

 ちなみに今回の狩猟ターゲットは【ティガレックス変種】、つまりHR100以上の【凄腕】と呼ばれているランクじゃないと狩猟許可の下りない【変種モンスター】である。

 【通常種】だろうが【変種】だろうが、ついでに言えば【特異個体】だろうが【剛種】だろうがこの二人にとってはそれ程変わらないのだが、安全な横穴での狩猟をする事にしたのには訳があった。

 

 このクエストでは、二頭出るのだ。

 

 しかも番なのか常に同行している事が多いため、同時に二頭を相手にしなければならない場合が殆どなのだ。いくら【ティガレックス】に慣れていたとしても二頭同時に狩猟するというのは通常個体でもかなりキツイので、安全なこの方法を取った訳である。

 

 なので、二人は滅多に装備しない【ガンナー】の姿をしていた。

 そして更に言うと、〈火事場+2〉と呼ばれているスキルを発動させていた。

 

 〈火事場〉というスキルは体力が40になると攻撃力が 1.5倍(ボウガンは1.3倍)に増大し、防御力増加量が90に増大するというスキルである。つまりこのスキルを発動させるには、わざと体力を減らす必要があるのだ。

 

 【火事場飯】と呼んでいる食い合わせの悪い食事をとる事でわざと体力低下を促す他に、【モンスター】の通常攻撃をわざと食らったり爆弾を利用したりしてこの状態に持って行くハンターもいるにはいるが、一発食らっただけで死に兼ねない程のかなり危険なスキルなため、自殺行為と言われても仕方がない。 

 ベナトールならばやれない事もないそうだが、本人もなるべくやりたくないらしい。

 

 ちなみに、武器は【ヘビィボウガン】である。

 

 

「囮は俺がやるよ。オッサンは中に入っといてくれ」

 相手が来るのを待つ間に、アルバストゥルは囮役を買って出た。

 

「……。女がいる奴にそんな危険な事を任せられるか。俺がおびき寄せる」

「あのなぁ、女がいようがガキがいようが兄妹がいようが親養ってようが狩場では一切関係ねぇだろが。むしろあんたにんな気遣いなんざされたくねぇぜ。逆に聞くがよ。俺らは人生において状況が変わったら関係が変わる程度の仲だったのか?」

「そんな事はねぇが……」

「だろ? こういう役はあんたよりちっせぇ俺の方が良いんだよ。横穴に素早く入り込めるからな。だから俺に任せな【デカマッチョ】」

「――分かった。ヘマすんなよ【チビ助】」  

 

 二人はキャップの中で笑い合った。

 

 

 少し待つと滑空音がし、雪原にターゲットが降りた。

 遅れてもう一頭が降り立つ。だが時間差はそれ程変わらなかった。

 

「よぉデカブツ共。ここまでおいで」

 アルバストゥルは凍った岩壁の端から身を出し、馬鹿にしたような声を掛けて二頭に【ペイント弾】を撃ち込んだ。

 【ペイント弾】のダメージは無いに等しいが、気付かせるには充分である。

 

 振り向いた二頭が威嚇の声を上げる。一頭が向かって来た。

 が、もう一頭は動かずに、雪の塊を投げ付けて来た。

 

「うおぉっ!?」

 突進より早く飛んで来た雪塊を避け、直後に迫って来た巨体を寸での所で躱す。

 横穴のある場所は狭いので、自分のいる位置が敵とほぼ密着状態になってしまう。〈火事場〉状態なので、爪が掠っただけでも死に兼ねない。

 

 方向転換した隙を狙って横穴に飛び込むと、直後に雪塊を投げていたもう一頭もぶつかるように横穴の前に滑り込んで来た。

 

「あっぶねえぇ!!」

「御苦労。ギリギリだったがな」

「少しでも当たってたら全身グチャグチャだったなこりゃ」

「二頭に踏み拉かれたらさぞや面白ぇ死体になってたろうになぁ」

「楽しそうに言うんじゃねぇよ」

「おめぇも楽しそうにしてるじゃねぇかよ」

「くくっ、俺ら結構マゾなんかもな」

「言えてるな。じゃねぇと、好き好んで二頭クエに〈火事場〉で行こうなんざ思わんだろうよ」

「受付の姉ちゃん青褪めて口開けたまんま、言葉も出なかったもんなぁ」

 

 二人でクスクス笑いつつ、【貫通弾】を装填する。

 【ティガレックス】には【貫通弾】が有効だからである。

 

 横穴の中でお互いに位置取りを調節し、干渉し合わない位置で射撃する。

 【通常弾】ならば多少撃たれても(彼らにとっては)それ程問題無いのだが、今回撃っているのは【貫通弾】なので、干渉する位置にいると弾が通り抜けてしまう。

 なので、お互いに気を付けながら撃っていた。

 

 【貫通弾】なので二頭が重なっても通り抜け、二頭同時に攻撃する事も出来ていた。

 だがやはり体力差があるようで、やや小さい個体が先に死んで大きい方が残った。

 何頭いようがやり方は変わらないのだが、あまり時間をかけてしまうと調合素材も使い切ってしまうので、頭数自体はなるべく少ない方が良い。

 

 この二頭クエはソロでも出来るのだが、やはり人数が増えた分火力が出、結局調合素材を使い切る前に【クエストクリア】出来た。

 

  

 

 

 




このやり方で、「雪山8」に来る「モンスター」は(横穴前に誘えるなら)「キリン」や「ラージャン」など手強いものも狩れたものでした。

ちなみに今はこの方法でボウガンを構えてもスコープを覗けない(スコープ画面が出ない)ようになっているようです。

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