今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「フロンティア」の中のシステムに、「シリーズクエスト」と呼ばれている、順を追って様々なクエストをこなしながらストーリー仕立てで進めていくクエストがあります。
「ビギナーズシリーズ」と「ベテランシリーズ」というものがあり、「ビギナーズシリーズ」ではストーリーを追いつつ「フロンティア」の基本を学べるようになっていて、不足しがちな素材や使用頻度の高い消耗品も手に入る初心者には便利な仕様になっておりました。

今回はその「ビギナーズシリーズ」の話です。


全文が長すぎる(四百字詰め原稿用紙で計算すると128ページもある)ので、いくつか分けて掲載する事にします。



アレク、【教官】になる?(アレクの章)1

 

 

 

 【メゼポルタ広場】にいる【ガイド娘(受付嬢)】の中に、【ミズキ】という者がいる。

 

 【シリーズクエスト】と言われている順を追って様々な依頼をこなしていくクエストを担当している者なのだが、お喋りで通り掛かりの者にも声を掛けたり、自分の担当じゃないハンターにも仕事中にちょっかいをかけたりするので、たまに【ギルドマスター】から注意を受けたりするような存在である。

 お喋りだけならまだ良いのだが、おっちょこちょいな所があり、仕事でもミスをする事があるので注意されるのだ。まぁ本人は凹んでもすぐに立ち直るので、ケロッとしてたりするのだが。

 

 ちなみによくアルバストゥルにも声を掛けて来るので、彼本人としてはなるべくかかわりたくないタイプだったりもする。

 

 

 

「あっ、アレクさんこんにちは! いいところに!」

 

 いつものように依頼を探すべく、【総合クエスト(通常なものから期間限定のイベントのようなものまで受け付けている)】を担当している【ユニス】に話しかけようとしていたアルバストゥルは、これもいつものように声を掛けて来た【ミズキ】に対し、いつものように無視を決め込んだ。

 しかし今日は余りにもしつこく声を掛けて来たため、「なんだようっせぇな!」と苛つきながら、つい返事をしてしまった。

 アルバストゥルがそんな性格なのを分かり切っている彼女は、苛ついている彼を意に介さずに、こんな話をした。

 

「実はある女性からの依頼で、有能なハンターを探しているんです。わたしの見立てでは、アレクさんがぴったりだと思うんだけど……。まずは腕試しとして【ランポス】を五頭討伐してきてほしいんですよ」

「……。【ランポス】ぐれぇなら、討伐してやらんでもねぇが……」

 

 そう言うと【ミズキ】はアルバストゥルの眼前に人差し指をビシッと当て、「ただし、華麗に鮮やかに美しく狩って、並みのハンターとの差を見せ付けてください!」とのたまった。

 いちいち引っ掛かる物言いだなと思いながら受けると、「アレクさんなら、きっと簡単にクリアできちゃうって信じてますから!」と見送られた。

 

 

 適当に【ランポス】のいる狩場に出掛けてクリアして帰って来ると、【ミズキ】は目を輝かせながらこう言った。

 

「さすが、噂通りの見事な狩りでしたね。並みのハンターでは、なかなかあそこまで美しく狩れません!」

 

 どうやら陰でこっそり見ていたらしい。

 

「大袈裟な奴だなぁ、あんなもん【ランポス】に慣れた奴なら誰にでも出来るだろうに」

 そう言うと半ば強制的に、「それでは、有能なハンターさんを探している依頼人さんに、アレクさんを正式に紹介しちゃいますね!」といそいそと紹介文を書き始めた。

 呆れたが、まぁ依頼が来るならいっかと任せる事にした。

 

 

 数日後――。

 

「アレクさん、こんにちは! 腕試しも無事に終わったところで、正式な依頼をご紹介しますね」

 

 どうやら依頼人との承諾がなされたらしい。

 

「依頼人は、『花のように美しい女性』です! これからもしばらく、お世話になりますので、よく覚えておいてくださいね!」

 

 是非会ってみたいと思ったアルバストゥルだったが、即座にレインの顔を思い浮かべてその思いを掻き消した。別にやましく思っている訳では無かったのだが、なんとなく怒られるような気がしたのだ。

 

「その『高貴で優雅な女性』ですが、最近、幼馴染と再会したんですって。ところが幼馴染は人がすっかり変わって、曇った表情をしていたとか……」

 

 【ミズキ】は悲しそうな表情をしてから続けた。

 

「依頼人さんは考えたんですね。なんとか昔の明るい幼馴染に戻ってもらおうと! んー、なんという健気さと優しさ! まるで『女神のような女性』です!」

 

 【ミズキ】はなんだか恍惚としている。

 

「そして、出た答えは、有能なハンターの助けを借りること! 具体的には、【イャンクック】を一頭討伐してもらうことです。【イャンクック】の討伐がなぜ幼馴染のためになるのか、それは後でご説明します。でも、依頼人さんは、それが一番だと信じているんですよ!」

 

 妙に力を入れて語った【ミズキ】は、「というわけで、【イャンクック】の討伐、もちろん引き受けてくれますよね?」と言って来た。

 顔は笑っているが威圧を含んだような雰囲気に、若干引きつつ受注する。

討伐して帰って来ると、【ミズキ】は嬉しそうに言った。

 

「どうもお疲れ様でした! 依頼人さん、大喜びしていましたよ! 幼馴染が元気を取り戻してきたって!」

 

 それから真面目な顔を作って「幼馴染さんのこと、詳しくお話しますね」と言った。

 

「名前は【クレオ】さんっていいます。クレオさん、子供の頃はハンターに憧れていて、素材の剥ぎ取りに関してはプロ顔負けの腕前だったんですって! でも、何かつらい目にあったのかな……。最近では、ハンターへの憧れをすっかり失っていたみたいですね。依頼人さんは、昔の気持ちを思い出させようとして、クレオさんに素材剥ぎ取りの機会を与えたんです。それが、アレクさんにお願いした【イャンクック】討伐の理由です。お陰で、少し元気になったみたいです!」

 

 つう事は、俺が討伐して帰った後、こっそり【クレオ】とやらが剥ぎ取りしてたのか。

 

 なんとなくけったクソ悪ぃなとアルバストゥルは思った。

 

「でも、その気持ちを取り戻させるにはまだまだ時間がかかりそうですね……」

 【ミズキ】は少し考えて、「アレクさん、もうしばらくお手伝いをお願いします!」と言った。

 

 

 翌日、アルバストゥルは「ねぇ、アレクさん」と声を掛けられた。

「依頼人さんの幼馴染、クレオさんのこと、ずっと考えていたんですけど……」

 

 何故だか【ミズキ】は、その依頼人の幼馴染、つまり【クレオ】の事を妙に気にかけている様子である。

 

「何かしてあげること、ないのかな。【ハンター】という仕事の素晴らしさを思い出させてあげられたらなぁって」

 

 【ガイド娘】、つまり【ハンターズギルド】で働いている【ミズキ】は、やはり【ハンター】に関わる中でこの仕事の素晴らしさを知り、親切にも依頼人の幼馴染である【クレオ】という人物にもハンターの素晴らしさを知らしめようとしているらしい。

 アルバストゥルは余計な世話なんじゃねぇかと思ったが、お喋りが大好きで人との付き合いを大切にする【ミズキ】の性格上、かつてハンターに憧れていたという【クレオ】を、なんとかしてあげたいと思うようになったのだろう。

(それをお節介と言えなくも無いのだが)

 

「そういえば」

 【ミズキ】は思い出したように言った。

 

「クレオさんなんですけど、この前、砂漠で【ドスガレオス】に遭遇して、命からがら逃げ帰ったらしいんですよ。【ドスガレオス】って、一度砂に潜ったらなかなか出てこないし、やっかいな【モンスター】なんですよね。でも、その場にハンターがいたら、アイテムの【音爆弾】を使って、討伐して、すぐに安全を確保できたと思うんです」

 

 そうして「うん、これかも!」と手を打った【ミズキ】は、「アレクさんが、【ドスガレオス】を見事討伐して見せたら、クレオさんがハンターへの憧れを思い出すかも!」と目を輝かせた。

 

「数は……。そうですね、三頭くらいかな! 【ドスガレオス】を三頭討伐する仕事、引き受けていただけませんか?」

 

「今度は威圧じゃないのな」

 苦笑しつつ受けてやる。

 どうやら【クレオ】には、今回も見付からないようにこっそりどこかで見させるつもりなのだろう。   

 

 

 クリアして帰って来ると、「アレクさんのことをクレオさんにお話したところ、興味深々でしたよ!」と言われた。

 

 つまり【クレオ】に見学させた訳じゃなく、単に『【アレクトロ】というハンターは【ドスガレオス】三頭なんざ朝飯前に討伐出来る腕前を持つ者なんだぞ』という事を知らしめるために依頼を出しただけらしい。

 

「あんな顔を見たのは久しぶりです」

 嬉しそうに言う【ミズキ】。

 

 ふと、そこでアルバストゥルは引っ掛かった。

「おいミズキ、お前、ちと【クレオ】とやらを知り過ぎてやしねぇか?」

 

 【ミズキ】は困ったような顔をして、「んー、アレクさんは鋭いなぁ……」と呟いた後、こんな事をのたまった。

 

「実は、依頼人の女性って、このわたし、【ミズキ】なんですよねー」

「……。なんだと?」

 

 威圧を含んだ目で彼女を見るアルバストゥル。「花のように美しい女性」だの「高貴で優雅な女性」だのと聞かされた時に、一瞬でも会いたいと思った自分を殺したいと思った。

 

「内緒にしててごめんなさい!」

 【ミズキ】は焦りながら頭を下げ、こんな言い訳をした。

 

「最初に、アレクさんの腕前を試させてもらいましたよね。その前に、少しでも腕を疑っているって思われたくなかったんです……」

「……。まあ、【依頼人】となるのなら、分からんでもねぇ話ではあるが……」

「でも、もう大丈夫ですよ! 今となっては、わたしとアレクさんは固い信頼で結ばれましたから! こうなったらもう一蓮托生です!」

「……そ、それは良かった」

 

 勢い良く手を握って来た【ミズキ】に、引きつつ苦笑いするアルバストゥル。

 

「それで、クレオさん……。じゃなくて、もう、いつも通り【クレオ】でいいか」

 【ミズキ】は開き直った。

 

「クレオのことなんですけど……。子供の頃を思い出して、ハンターを目指したらいいんじゃないかなぁって。夢を持つのって、素敵だと思うんです」

 

 なるほど、だから色々【クレオ】の世話を焼こうとしてたのか。

 自分の幼馴染だもんな。そりゃ再会した時に曇った顔してたらなんとかしてやりてぇと思うわな。

 

「わたし、クレオに伝えますね! アレクさんも、先輩ハンターとして、ご協力をお願いします!」

「おう! 任せな!」

 

 アルバストゥルは力強く言ってニッと笑った。

 もうこうなったら乗り掛かった舟だから最後まで世話してやんぜと思ったのだ。

 

 

 

 




案内役を務めている「ミズキ」のセリフは、ゲーム内で喋っているものをそのまま書き出しています。
アルバストゥルと絡ませるためにセリフの途中で無理矢理切ったりしているため、違和感のある部分もあるかもしれません。

「アレクの章」はアルバストゥルの視点で進めていますので、「アレク」または「アレクトロ」ではなく、全て「アルバストゥル」表記にしています。
途中「クレオ」の視点になっているような所もあったので「アレク」表記にしようか迷ったんですが、急に違う表記にするのもおかしいと考え、ここの部分は「神視点」として全部「アルバストゥル」表記で通す事にしました。
(今回はクレオ視点の部分はありませんが)

なので、この先も「アレクの章」の間は全部「アルバストゥル」表記になります。


「ビギナーズシリーズ」についてなんですが、今まではあったのに何故か去年アップデートしてファイルバージョンが「MHFZZ」に変わった途端に急に廃止されてしまいました。
確かに「フロンティア」に慣れた者にとっては「面倒臭い」と思う事もありました。一から十まで親切丁寧に手取り足取り教えていくストーリーになっていましたから。
ですが、「フロンティア」の仕組みをまったく知らない初心者には充分に楽しめるようになっていたはずなんですよ。

だから廃止は勿体無いと思いつつ、しかし右も左も分からない初心者が、そもそも「シリーズクエスト」の存在を知っているかと聞かれれば疑問だったわけで。

常に数人で受付場所に待機している「ガイド娘」の中で「ミズキ」に話し掛けようと思う初心者が果たしているのかと考えると、これは運営側が非常に勿体無い失敗をしたなと私も思っておりました。

「ビギナーズシリーズ」は(狩猟対象になるモンスターの関係で)途中までは無料でも進められたんですが、今現在では「ベテランシリーズ」だけになっておりますので、有料コース(ハンターライフコース)ではない者(無料で出来るトライアルコース)には受けられなくなっております。
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