今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
ですが、実際(ゲーム内)ではストーリーのキャラは参加せず、プレイヤーだけもしくは募集をかけた者でPTを組んでクエストをこなす事になります。
前回も書きましたが「ビギナーズシリーズ」は初心者用なので、少々説明臭いストーリーになっております。
数日後――。
「アレクさん、こんにちは」
「おう」
「幼馴染のクレオに伝えたんですよ。『ハンターを目指したらどうか』って」
「そうか。で、どうだった?」
「まだ、少し迷いがあるみたいですけど、いちおう、承諾してくれました! よかったー!」
「お、良かったじゃねぇか」
「それで、またお願いがあるんです」
【ミズキ】はこんな事を言った。
「クレオ、剥ぎ取りは上手なんですけど、【モンスター】の捕獲が苦手なんですよ。確かに、捕獲ってちょっと大変ですよね。【モンスター】を弱らせてから、罠を仕掛けて、罠にかかったら、【捕獲用麻酔玉】を当てる。実際に見ないと、なかなか覚えられません!」
【ミズキ】は「そこで、アレクさんの出番です!」とビシッと人差し指をアルバストゥルに突き付けた。
「【モンスター】を実際に捕獲する様子を見せてあげてほしいんです! そうですね。【潮島】に生息するという【ゴゴモア】を三頭捕獲していただけませんか? クレオには、物陰からその様子をこっそり見学するように伝えておきます」
そして、「もちろん、引き受けてくれますよね?」と威圧を孕んだ笑いで見る。
「おめぇなぁ、その『何が何でも受けさせてやる!』みてぇな目で見るのやめろよぉ」
引き気味に受けたアルバストゥルだったが……。
実は、アルバストゥルも捕獲は苦手なのだ。
ましてや相手は【ゴゴモア】である。
今までは討伐の依頼だったので下位のものでもクリア出来ていたのだが、【ゴゴモア】の体力は低く、上位のものでもつい手加減を誤って捕獲前に殺してしまうという事がしばしばあるのだ。
だが、最後まで世話をするつもりで引き受けた以上、今更断る事も出来ず、彼は【潮島】に出掛けた。
【ベースキャンプ】に着くと、そこに誰かが待っていた。
見た目から言うと十代後半もしくは二十代前半あたりだろうか。華奢な体型と端正のある顔立ちは、カイを彷彿とさせた。
だが違うのは、顔に抉られたような大きな古傷があった。
「よぉ、お前が【クレオ】か?」
声を掛けるも怯えた様に引き下がり、黙ったまま睨んで来た。
「人見知りなんだな」
アルバストゥルは苦笑すると、「まぁいいや。とにかく危なくねぇ所でこっそり見てな」とだけ言って、サッサと隣のエリアに入って行った。
【ゴゴモア】という【モンスター】は、【ラージャン】や【ドドブランゴ】に似た体型をしている【牙獣種】である。
特徴的なのは主に樹上生活をしており、【潮島】の樹木を渡り歩くために進化したと思われる、手の平から蜘蛛の糸のような構造をしている糸を出してはそれを操る事。攻撃の際にその反動を利用して、体を素早く移動させながら闘う事も知られている。
雄雌に関係なく世話好きなようで、【ココモア】と呼ばれる幼体を背負っている事が多い。
【ココモア】の握力はかなり強いようで、縄張りに入った敵を排除するために親がどんなに暴れても、滅多に落ちる事は無い。
愛情が強いのも知られており、【ココモア】に被害が及んで背中から落ちると大慌てで背中に乗せようと向かって来、その間は糸を使った闘いをせずに地面に下り、背に乗せるまでは護るようにその場で闘おうとする。
そして万が一【ココモア】に命の危機が訪れて地面に潜ってしまうような事があると、烈火のごとく怒りだして普通の怒り状態よりも更に攻撃力、素早さを加速させる。
だがその反面怒りのあまりに防御力を完全に無視し、攻撃のみに集中しようとするため、そこを上手くつけば早く狩猟出来たりもする。
(ただしこちらも重傷を負う事が必至の戦闘になるのだが)
ちなみに赤褐色の毛色と跳ねるような行動から、別名【跳緋獣(ちょうひじゅう)】とも呼ばれている。
【ゴゴモア】にはなぜか、糸を使って攻撃している最中(正確にはその反動を利用した高速移動中など)にカウンター攻撃すると体内組織が爆ぜて大ダメージを与えられる(通常の十二倍になる)という特徴があり、わざとこれを狙って他の攻撃を控えてまで待つハンターも多い。
色々なタイミングがあるが少しでもずれるとこちらも重傷になる(糸の反動で高速になる分通常攻撃よりも深い傷を負う)ため、勇気を見せるというよりは無謀な挑戦に近い。
それでも命知らずなハンターが挑戦しては、時には命と引き換えにして成功させたりしている。
(特に【ココモア】が瀕死になって激昂した時にカウンターを成功させると、防御力が極端に低くなった状態で通常の十二倍のダメージを叩き出せるため、それを知るプロハンターはわざと【ココモア】をいじめて激昂させてからカウンターだけで狩るのだとか)
アルバストゥルも例に漏れずに挑戦し、失敗しては【回復薬グレート】のお世話になったり成功してドヤ顔になったりしていたのだが、もうそろそろかなと思う頃に、罠を掛ける前に殺してしまった。
「すまん、実は俺も捕獲は苦手なんだよ」
物陰から見ていたクレオに謝ると、クレオは少しだけ笑った。
二回目は足を引き摺った事を確認してから罠をかけたのだが、罠が発動したショックで死んでしまった。
三度目の正直で捕獲に成功したものの、後二頭を捕獲しなければならないので、クレオには失敗も含めて何度か付き合ってもらう事になってしまった。
申し訳ない気持ちを引き摺りながら帰って【ミズキ】に報告すると、「見事なお手本、ありがとうございました!」と言われて【雷光虫】を三十匹渡された。
「これは、アレクさんのためにクレオが頑張って集めたものです!」
「え……」
あいつ、見学だけじゃなくて俺のためにそんな事までしてくれてたのか……。
「それでは、クレオから【感謝の手紙】が届いていますので、読ませていただきます!」
「ちょっと待て! 俺は感謝されるような事は――」
【ミズキ】は言葉を遮るようにして読み始めた。
「アレクさん、ありがとう。あんたのお陰で、俺もハンターの道を目指す決心がついたよ! 久しぶりに狩場へ出て気付いたんだ。ハンターって、挫折しない人たちのことなんだな、ってさ。獲物に逃げられたら、追い掛ける。クエストに失敗しても、また出直す。見事、素材を手に入れたと思ったら、新しい武具を作って、また狩りへ行く。いつも、前に進むことを考えている。小さい頃の俺は、その姿勢にこそ憧れてたんだって、思い出したよ。まだまだ駆け出しの俺だけど、その姿勢だけは忘れないよ。だから、これからもよろしく頼む!」
読みながら目を潤ませていた【ミズキ】は、「クレオ、立ち直ってくれたんですね! アレクさん、本当にありがとう!」と目を擦った。
アルバストゥルも、何度も失敗した事は無駄ではなかったんだと救われた思いがした。
「でも、ハンターとしてはようやくスタートラインに立ったばかり。アレクさん、これからも、ご指導をよろしくお願いします!」
勢い良く【ミズキ】に頭を下げられて、「お、おう」とアルバストゥルは引き気味に返事を返した。
翌日、「こんにちは」と声を掛けられたアルバストゥルは、こんな話をされた。
「アレクさんのお陰でクレオも立ち直ってきました。次は、クエストの種類についてクレオに教えてあげたいんです。わたしの理解が正しいかどうか、聞いてもらえますか?」
「ふむ」
「えーと、まず、クエストは大きく二種類に分けられるんですよね。『いつでも受けられるクエスト』と『期間限定で受けられるクエスト』の二種類です。いつでも受けられるクエストの代表は『ハンターズクエスト』って言いましたっけ。狩猟生活に欠かせない、基本的なクエストが揃っているって聞いてます。次に『期間限定クエスト』ですね。期間限定クエストは、その名の通り、『決まった期間』にしか受注できないクエストの総称です。ハンターズクエストと違って、いつでも受けられるわけではありませんが……、その代わり、『報酬がお得』だったり、『珍しい【モンスター】』に出会えたりと、楽しみもたくさん!」
「ふむ合ってるぜ。良く覚えてんじゃねぇか」
嬉しそうな顔をした【ミズキ】は、「でも何事も、最初は基本からですね!」と一人合点している。
「ハンターズクエスト攻略のお手本を見せてください! ハンターズクエストの中から、クエストをひとつ選びました。今すぐ受注していかれますか?」
「オイいきなりかよ」
苦笑して依頼書を見てみると、【樹海】に来た【リオレイア】の狩猟をしてくれという内容のものだった。
受けてやると「クエストの準備ができましたー。同じ目的のハンターさんを探すか、クエストに出発してくださーい」と言う。
下位の【リオレイア】ごときに他のハンターを募集する必要も無いと思ったアルバストゥルは、そのまま出発した。
【樹海】に着くとテントの前でクレオが待っていた。
「よぉ、ミズキに手紙読んでもらったよ。ありがとな」
そう言うと、はにかんだように笑った。
笑うと意外にも可愛い。これはカイよりも女顔なんじゃねぇかと思った。
今回は『捕獲』ではなく『狩猟』との事なので、サッサと討伐で済ます。
ただしクレオに「実戦として教えてくれ」と言われたので、【閃光玉】の使い方と尻尾の斬り方だけ教えてやった。
今回初めてクレオの声を聞いたアルバストゥルは、まだ声変わりしてねんじゃねぇかと思った。
それ程高い声だったからである。
という事は、もしかしたら見た目よりもずっと幼いのかもしれない。
だが二十を超えているカイの声も甲高いので、生れ付き声質が高いのだろうという事にした。
「お疲れ様でした!」
帰ったアルバストゥルにそう言った【ミズキ】は、「ハンターズクエストは、いつでも受けることができて、便利ですよね。今回、お願いしたクエスト以外に、どんなクエストがあるのか、チェックしておきたいですね」と自分に言い聞かせるように言った。
「それでは、次もよろしくお願いします」
手を振られてやれやれと家に帰る。
話を聞いたレインは、「あなたって【教官】向きじゃないと思うんだけど」とからかった。
「俺もそう思うんだがな、流れとしてこうなっちまったっつうか……」
「その【クレオ】って子、可哀想」
レインはクスクス笑っている。
「そういう事言うかぁ?」
「……ま、頑張って♪」
「ゴゴモア」が「フロンティア」の固有種(オリジナルモンスター)なので載せようと思い、「パートナー」など手助けをするNPCを全て切って撮影しました。
「カウンター攻撃」の場面を載せたかったので頑張ったんですが、中々難しかったです。
(撮影の際に大剣の種類を変えて何度も挑戦したりしておりましたので、写っている大剣がバラバラになっております)
おまけ。
【挿絵表示】
弱って寝ている「ゴゴモア」。
瀕死になって巣まで帰らせると必ずこの状態になってしまうため、落としてから戦闘を再開する必要があります。