今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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クレオがピンチの予感!?

相変わらずうんちくが多いです。


アレク、【教官】になる?(アレクの章)5

 

 

 

 

「今回のターゲットですが、【ガノトトス】でいかがでしょうか。クレオ、【片手剣】が好きだったのですが、そろそろ他の武器も覚えてみたいそうなんです。【ガノトトス】は、【ランス】、【弓】などの、クレオが使ったことのない武器種で狩りやすい相手ですし……。また、パーティを組んで狩猟する場合は、【狩猟笛】の『音爆演奏』を使用すれば、水中の【ガノトトス】に刺激を与えて、飛び出させることもできちゃいます」

「なるほど、考えたな」

「というわけで、クレオにとって、新しい経験になりそうな【ガノトトス】二頭の狩猟をお願いします!」

「二頭だな。了解」

 

 

 今回は昼の【密林】である。

 そしてアルバストゥルは、彼にしては滅多にしない、【弓】装備で来ていた。

 

「あ、アレクさん、【大剣】以外も使えるのか!?」

 クレオは目を真ん丸にして驚いている。

 

「まぁなるべく【大剣】以外は使いたくはねんだけどよ。今回は違う武器種を使いてぇという事だったからな。【ガノトトス】とは比較的相性の良い【弓】を装備してみた訳だ」

 

 ニヤリと笑って見せた彼に、クレオは言った。

「俺のために無理しないでくれよ?」

 

「馬鹿言え、まったく使えねぇ訳じゃねぇよ。ただ【大剣】よりゃ下手なだけだ。そこだけ大目に見てくれれば……」

 

 苦笑いしたアルバストゥルに、クレオはクスっと笑った。

 アルバストゥルはオッサンだったら襲っただろうと(以下略)。

 

 【ミズキ】には「【狩猟笛】なら『音爆演奏』で……」などと言われたが、アルバストゥルは【狩猟笛】はほぼ手付かずだったので、そんな演奏の仕方なんぞ知らない。

 なので、普通に【音爆弾】を持って来た。

 だがその前に見せたいものがあったので、クレオに「隠れて見てろ。合図するまで出て来んじゃねぇぞ」と言い残し、【ガノトトス】が泳いでいる水辺にこっそり近付いた。

 

 クレオは、いきなり釣り糸を垂らした彼を見て、面食らった。

 よくよく見てみると、釣り糸の先にはカエルが付いていた。

 つまり【釣り蛙】である。

 何を始めたんだこの人は!? と見ていると、少し待ったあたりでいきなり勢いよく浮きが沈んだ。

 

「うぉっしゃあぁっ!!」

 

 叫んだ彼は引き込まれまいと竿を掴んで踏ん張っている。竿の先は折れんばかりに大きく曲がり、水飛沫が上がっているのがよく見える。どうやらかなり大きな【魚】が掛ったらしい。

 

【挿絵表示】

 

「ふんぬっ!!」

 豪快に引き上げた【魚】は勢いよく打ち上がり、陸地でビタンビタンと跳ねはじめた。

 

【挿絵表示】

 

「うぉし! 出て来て良いぞぉ」

 言われて飛び出したクレオは、脚が生えて大きなヒレを持つ馬鹿でっかい【魚】を見て度肝を抜かした。

 

「ななな何コイツ……?」

「ん? 知らねぇのか? 【ガノトトス】だよ」

「こ、コイツが……」

「今見せたのは【ガノトトス】の釣りだ」

「つ、釣りだってえぇ!?」

 

「おう。こいつはなんでかこんな馬鹿でっけぇ癖に【釣り蛙】に目が無くてな。見付かってねぇ時限定だが、こうやって釣り上げる事が可能なんだわ」

「へ、へえぇ……」

「打ち上げられるとその勢いでダメージ食らうらしいから、覚えといて損はねぇぞ」

 

 親指を突き出してニッと笑う(今回は顔の見える【キャップ】を被っているので表情が分かる)眩しい白い歯(単に肌が褐色で歯が目立つだけ)に、クレオは引き攣った顔で「お、おう……」と答えた。

 

「さて、【弓】の使い方だが……」

 立ち上がった【ガノトトス】を見据え、アルバストゥルは言った。

 

「そのまま射るだけじゃなく、鏃に【ビン】を付ける事によって様々な効果を付けられる。むしろ【ビン】を使いこなす事が【弓】の真骨頂と言って良い。その【ビン】に対応している【弓】が必要だが、矢の威力を高める【強撃ビン】だけでなく、状態異常を起こす【毒ビン】【麻痺ビン】【睡眠ビン】を使えば、一つの武器種で様々な状態異常を起こせるぞ。だから睡眠武器やアイテム無しでも眠らせる事も可能だぜ。ただし、【ビン】での状態異常の蓄積威力は薄くてな。例え調合分を持って来たとしても、せいぜい二回か三回程度しか状態異常にさせられねぇ。それは忘れんなよ」

 

「了解」

「射出構造にも種類があってな、溜める段階によっても威力や射出効果が変わったりするんだが……」

 

 そう言いながら、アルバストゥルは【弓】を構えて引き、ほぼ溜めずに放した。

 

【挿絵表示】

 

 一応【ガノトトス】の正面に当たった矢は、頭の甲殻に弾かれて落ちた。

 

「これが一段階な。見ての通りにまったく威力はねぇ。【弓】とは弦を引く筋力が必要になるもんだが、力がねぇからってこればっかやってると、例え【強撃ビン】を付けて矢の威力を上げたとしても、まったく狩猟にならんぞ。引く力がもしねぇなら、最後まで引けるように筋力を鍛えるこった」

「了解」

 

 次に引いた彼は、溜めオーラが一度光った時に放した。

 

「これが二段階。矢の本数と射出の形が変わったのが分かるか?」

 二段階溜めの矢は、縦に数本飛んで行った。

 

 最後に溜めオーラが二度光った時に放ち、「これが三段階。つまり最後まで溜めてから放った状態だ」と言った。

 最大溜めで放った矢は一本で、相手の鼻先から尾ビレにかけて綺麗に貫いて抜けて行った。

 

 つまり【貫通弓】を彼は使っているのだ。

 貫通に弱い【ガノトトス】は悲鳴を上げて怯んだ。

 

「こんなふうに、溜める段階で威力と射出の形、撃ち出す矢の本数が変わる。これは【弓】の種類によっても違うから、狩る【モンスター】に合わせて武具工房の親方と相談して決めると良い。射出構造には数本の矢が縦に飛ぶ【連射】、最後まで溜めても一本だけが真っ直ぐ貫いていく【貫通】、横に広がりながら多くの矢が飛んで行く【拡散】の三種類があってな、矢の威力だけで言えば【連射】が一番強い。だから【連射弓】を選ぶハンターは多いが、その代わりに弱点をピンポイントで狙う技術が必要になる。狙いが良ければけっこう怯むぜ。プロハンターなら連続で怯ませ続けられるらしいんだが、俺はそこまでは無理だな」

 

 アルバストゥルは苦笑いして続けた。

 

「【貫通】は今俺が使ってるように、【ガノトトス】なんかの大型や、【グラビモス】みてぇな硬ぇ【モンスター】に有効な【弓】だ。【甲殻種】のヤドの中みてぇな、体内の弱点を狙う時なんかにも有効だぞ。【拡散】を選ぶハンターは少ねぇが、威力が一番ねぇ分矢数が多く、小型【モンスター】に囲まれた場合や状態異常を多く用いる時なんかに有効だな。その際には〈状態異常強化〉のスキルを付けるとなお良い。ちなみに〈散弾強化〉のスキルを付けると威力の弱さを補えるそうな。だから【拡散弓】を使う場合は頭の隅に入れて置いた方が良いな」

 

「了解」

 

「それからな、今適当に射たように見えるが『適正距離』っつうもんがあるんだわ。これは【弓】に限らず【ボウガン】にも言える事でな。つまり【ガンナー】をやるんだったら必ず覚えて置く必要がある。【弓】の場合は各種類によって決まるが、【ボウガン】の場合は【弾】の種類で決まる。この距離は自分で試行錯誤して覚えるしかねぇんだが、やってく内に、どっちも適正距離で当たった時の矢と弾の威力がそれ以外で当てた時と比べて高い事が分かって来るから練習あるのみだぜ」

 

「分かった。頑張る」

 

「まぁ【弓】の中では【貫通】が一番適正距離が長ぇかな? 【連射】は中間ぐれぇだが、【拡散】に至っては相手と密着してても良いぐらい距離が近くても良いらしい。俺は【拡散弓】を使った事がねぇから分からんが、そう言う意味では【ガンナー】なのに【剣士】のような立ち回りを要求されると言っても良いのかもしれんな」

「そっか」

 

 ブレスや這いずりを避けながら話していたら痺れを切らしたかのように【ガノトトス】が水中に戻ったので、アルバストゥルは「おし、講義は終わりだ。仕切り直すぜ」と【音爆弾】を投げた。

 

 再び陸上に出された【ガノトトス】に、「本気で行くぜ」と【強撃ビン】を装着。

 今回【太刀】を装備して来ていたクレオは足元に潜り込んで攻撃を始めたが、やはり『亜空間タックル』に悩まされていた。

 

 だがブレスを避けつつ正面で攻撃し続けているアルバストゥルが結構な頻度で怯ませていたので、初見だったらしいクレオにしてはそれ程苦戦せずに狩猟出来たようだった。

 

 二頭目の依頼を受けた時にはアルバストゥルは【ランス】で来ていたのだが、こっちは苦手な武器だったのもあって、時折『亜空間タックル』を防ぎ損ねて飛ばされた先で苦笑いしていた。

 クレオは早速【弓】で挑戦していたが、やはりまだ最後まで溜める筋力が無い様子で、途中で耐えられずに放してしまっては悔しがっていた。

 

 

「お疲れさまでした!」

 帰ると【ミズキ】は「さて」と言い直し、「お蔭でクレオも色々な武器種の特徴が分かってきたみたいです」と言った。

 

「中でも【弓】が気に入ったそうですよ!」

「なら、俺が長々と講釈垂れた甲斐があったっつうもんだな」

「【ガノトトス】のような大きい【モンスター】でも、弱点の部位を狙いやすいんですって」

「ほぉ、もう弱点が狙えるようになったのか。あいつ随分飲み込みが良いんだな」

 

 アルバストゥルは感心した。最後まで溜められずに悔しがっていた中でも、弱点は狙えていたらしい。

 

「武器の幅が広がり、防具の準備も整いつつあり……。クレオが【古龍】と対峙する日もいよいよ近そうですね……」

「それだけ成長が早ぇっつう証拠だなぁ」

「それでは、次回もよろしくお願いします」

「ういす」

 

 

 次の日【ミズキ】は、「アレクさん、聞いてください」とこんな話をした。

 

「クレオ、今でも夢に見るそうなんです。住んでいた【街】が【モンスター】に襲撃された、その日の出来事を……」

「そりゃ辛ぇな。うなされたりしてんだろうなぁ」

「ハンターとして尊敬していたお師匠様が、大型【モンスター】に立ち向かうこともなく、狩らないと約束していた【ケルビ】を狩っていた……。幼いクレオには、ハンターが、ただ弱いものいじめをするだけの存在に見えてしまったのでしょうか?」

 

「う~~ん」

 アルバストゥルは腕組みして唸った。

 

「あの日の記憶は、はっきりしないところもあるそうですけど……。ともあれ、大きなトラウマを背負ったのは間違いないようです」

「むぅ……」

「でも、ついに決心したようなんですよ。あの日の出来事を、乗り越えるんだって」

「へぇ、強ぇんだなあいつ」

 

「立派なハンターになるために、初心者クレオの最終目標は、【街】を襲った【モンスター】の正体を突き止めて、自分の手でそれを狩ること! ハンターの可能性を自分自身で証明し、過去のトラウマを克服することで、さらに前へ進むつもりなんだそうです」

 

「おぉ、やるな!」

「クレオ、本当に前向きになりましたよね」

「だなぁ~~」

「アレクさんのお陰です。わたしも精一杯協力しなくっちゃ!」

「おう。お互いに応援してやろうぜ!」

「さて、クレオの心が決まったなら、わたしに出来ることは、【街】を襲撃した【モンスター】の正体を調べるお手伝いですね」

 

 そこで【ミズキ】はこう言った。

 

「なんでも、クレオの過去を知る人が、【砂漠】を越えた先に住んでいるとか。でも、途中で【ディアブロス】と遭遇しやすい場所を通る必要があるそうで、クレオ、一度は引き返したみたいです。アレクさん、お願いします。【ディアブロス】の狩り方を教えてください」

「おう。任せな」

「クレオへのご指南として、【ディアブロス】三頭の狩猟、受けていただけますか?」

「三頭か。了解」

 

 

 【砂漠】のテント前で待っていたクレオは、アルバストゥルが到着すると夜だったので【ホットドリンク】を飲もうと自分のポーチから取り出した。

 

「ちょい待ち」

 それを制したアルバストゥルは、「こっちに来な」と、すぐに地下に通じる【ベースキャンプ】から行ける枯れ井戸に飛び下りた。

 

 慌てて続いたクレオは、サッサと《7》へ向かう彼を追い掛けた。

 そのエリアの中程にある円柱状の岩の上に、今回のターゲットである【ディアブロス】が休んでいた。

 

「大抵最初にここにいる事が多いもんでな。ちんたら砂漠地帯に向かって探すより、枯れ井戸からすぐにこっちに向かった方が早ぇ場合が多いんだよ」

「へえぇ~~!」

 

 こちらに気付いた【ディアブロス】は飛び、ゆっくり羽搏きながら地面に降りるや、すぐさま潜った。

 すでに【音爆弾】を手に持って用意していたアルバストゥルは、すかさず投げた。

 

 キィン!

 

 甲高い爆発音に驚いた【ディアブロス】はザバッと砂地から上半身だけ飛び出させ、まるで【落とし穴】にはまったかのようにそのままの状態でもがき始めた。

 

 密着したアルバストゥルは溜め、最大溜めを一度か二度叩き込んだ所でまだもがいている最中の相手から離れて前の方に回り込んだ。

 【落とし穴】から抜け出たように飛び上がり、少し空中で羽搏いている最中に「目ぇ瞑れ!」とクレオに注意しながら相手に背中を向けた状態で【閃光玉】を投擲。そのまま落ちた鮮やかな流れに、クレオはただ感心した。

 

「慣れりゃ誰だって出来るぜ」

 

 そう言われて次に潜った時に挑戦してみる。

 が、つい連続で攻撃してしまって【閃光玉】の投擲が間に合わない。

 

「まだ攻撃出来る手数を我慢しねぇと間に合わねんだよ。この『攻撃出来るのを我慢する』っつうのが意外に難しくてな。俺もよく失敗してた」

 アルバストゥルはそう言って笑った。

 

 次こそは! と【音爆弾】を投げたクレオだったが……。

 

「馬鹿危ねぇっ!!」

 叫ばれてビクッと止まる。その頃には振動が足元に来ていた。

 

 ドォンッ!

 

 逃げる間も無く足元から【ディアブロス】が飛び上がり、突き上げをもろに食らったクレオの体が派手に吹っ飛ぶ。

「クレオぉ!!」

 遠くに転がって行く彼を追い掛けるように相手が突進して行く。

 

「チイッ!!」

 アルバストゥルはクレオの前に立ち塞がり、【大剣】をかざして突進を止めた。ギチギチと悲鳴を上げる【大剣】と筋肉を無視し、力比べをしながら首だけ曲げてクレオの様子を見る。

 

 クレオは俯せで倒れたまま苦し気に呻いている。

 そしてもがいて仰向けになった時、アルバストゥルの血の気が引いた。

 

 下腹部あたりに、穴が空いていたからである。

 そこからとめどなく血が溢れ続けている。やはり突き上げられた時に角で刺されていたのだ。

 

「クソッ!」

 

 アルバストゥルは無理矢理【大剣】で相手を突き放し、頭に一撃食らわせた。

 悲鳴を上げて怯んだ隙にクレオを抱え、【モドリ玉】を地面に叩き付けて一旦キャンプへ帰る。

 荒い息を吐いている彼のウエスト部分の鎧を外し、【回復薬グレート】を布に染み込ませて傷穴に宛がった。

 

「うあぁあ!!」

「我慢しろ!」

 暴れる彼を恫喝しながら無理矢理押さえ付ける。

 回復したのを確認すると、鎧を着けてやった。

 

「一応飲んどけ」

 【回復薬グレート】を渡して口からも摂取させ、落ち着いた所で「もう大丈夫だな?」と確認する。

 

「うん。ありがとう……」

「分かってなかったようだから言って置く。さっきおめぇが【音爆弾】を投げた時、飛び出さなかっただろ?」

「うん。タイミングは合ってたはずなのに」

 

「それはな、怒ってたからだ。【ディアブロス】、つまり【ブロス科】の奴らはな、怒ると【音爆弾】が一切効かなくなるんだわ。まぁ怒りが解ければまた効くようにはなるんだが、だから怒ってる間は投げるだけ無駄になっちまう訳」

 

「潜ってる時に怒ってるかどうかなんて分かんねぇよ」

「その前に潜る仕草をよく見て置くんだ。怒ると通常より潜行が早くなる。まぁこれも見極められるまでに慣れが必要だが、これが分からんと【音爆弾】を無駄にするだけじゃなく、怒りで素早くなった潜行を逃げ切れんぞ。今回食らったみてぇにな」

「分かった。頑張って分かるように練習するよ」

 

「潜行中の逃げ方は分かるか?」

「それがよく分かんなくて……」

 クレオは困った顔をしている。

 

「奴らはな、『完全に潜り切ってから改めて相手に向き直る』という癖がある。だから潜ってすぐに大慌てで逃げようとしてもその時間差で狙われちまうぞ。動きの遅い武器でも仕舞ってから回避する時間が充分にあるからテンパるな。まぁ【弓】の場合は武器出しのまま余裕で移動出来るけどな。潜る際の頭の向きを見られればなお良いんだが、それが出来なければ潜り切ったのを見てから回り込むように移動すると避けやすい。逆にテンパって直線状に逃げようとしても突き上げの餌食にされるだけだぞ。これは通常時も同じだから覚えて置けよ。ただし怒り時と通常時の速い遅いの違いは把握しとけよ」

 

「分かった」

「地上での怒り時の区別は容易いが、【火竜】みてぇに口から火の粉を漏らしてる訳じゃねぇから見にくいかもしれんな。まぁ吐いてる息が黒かったら要注意だ」

「了解」

 

 アルバストゥルはクレオの目を見詰めながら、聞いた。

 

「怖くなったか?」

「ううん、そりゃ『怖くない』と言えば嘘になるけど、今までも命の危機はあったんだ。こんな事で逃げてたら、前には進めない」

「おし。ならいけるな?」

「おうっ!」

 

 二人は笑顔で拳を突き合わせてから【ディアブロス】の待つエリアへと駈け出した。

 一応怒った時に注意を促したものの、飲み込みの早いクレオの動きが良くなったので、アルバストゥルはその後はフォローだけして狩猟を続けた。 

 

 

「お疲れさまでした!」

 帰ったアルバストゥルに、【ミズキ】は「アレクさん、知ってました?」と目を真ん丸にしながらこう言った。

 

「【ディアブロス】って、『草食』なんですよ! 【モンスター】の生態って、奥が深いですねー」

 

 そう。【ディアブロス】はあぁ見えて【サボテン】を好む【飛竜】である。だから同じ【ブロス科】の【モノブロス】も草食である可能性が高い。

 

 だがアルバストゥルはこの点が納得いかず、「ぜってぇ肉食だろっ!!」と言い張っている人間の一人である。

 まぁ単に認めたくないだけではあるのだが。

 

「さて、クレオから連絡がありました」

 クレオは別れた後、彼の過去を知るという人物に会うために出発したらしい。

 

「【ディアブロス】の狩猟は、クレオにとって、とても良い経験になったみたいですよ。お蔭さまで【砂漠】も越えられたそうです」

「まぁ死にかけた経験が役に立ったのなら何よりだ」

「そして、クレオの過去を知る人……。大怪我をしたクレオを治療してくれた、お医者様に会ったんですって」

「医者?」

「【街】が【モンスター】に襲撃されたあの日、クレオは重い怪我をしたのだとか……」

「あぁそう言う事か」

 

「確かに、クレオの顔や胸には大きな傷跡が残っているんですけど、まさかその時のものだったなんて……」

「顔は知ってたが、胸の方にもあるんか。なら相当酷い怪我だったんだろうな」

「そのお医者様がクレオの事を覚えていて、そこから、いつ【街】が襲撃されたのかを正確に知ることができました」

 

 そこで【ミズキ】は「でも、おかしいんです」と言った。

 

「【古龍】の活動を記録した書物によると、その日に、【古龍】の姿が目撃されたという情報は記されていないんです」

「そりゃ妙だな」

「クレオの【街】を襲った【モンスター】って、【古龍】ではなかったのでしょうか?」

「ふぅむ……」

「どうやら、もっと詳しく調べる必要がありそうですね」

 

 アルバストゥルは「次回も、またよろしくお願いします」と言われたので、そのまま帰って行った。

 

 

 




釣りのシーンを撮ろうと撮影のためにログインした時に、「ガノトトス」が「密林」にいなかったので仕方なく「砂漠」で撮影しております。
(亜種はいたんですが、今回はあくまでも原種の話だったので)

釣りに関してですが、例えプレイヤーが一人でも、「パートナー」などの助っ人キャラが一人でもいると「ガノトトス」は食い付いてくれません。
なので「ガノトトス」を釣りたいならばそれらのNPCを予め全て切っておく必要があります。

従って本来ならばクレオが隠れていようが同じエリアにいる限りは釣れないんですが、それだと釣る所を見せられなくなってしまうので、話の中では隠れていれば発覚しないという事にしました。


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