今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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クレオの成長が著しい今日この頃。
「教官」も「師匠」も鼻が高いと思います。


アレク、【教官】になる?(クレオの章)3

 アレクトロが【ドンドルマ】に着いた頃、【古龍】への理解を深めたクレオは師匠のアドバイスを受けて他の【古龍】にも挑戦し、【クシャルダオラ】や【テオ・テスカトル】なども狩れるようになった。

 【クシャルダオラ】は予めアレクトロから聞いていたので比較的狩りやすかったのだが、【テオ・テスカトル】の方は彼から何も聞かされていなかったため、師匠の助言を頼りに実践した。

 

 だが炎そのもののような攻撃に文字通り煽られ、何度も死ぬかと思った。

 

 辛うじて勝利をもぎ取った彼女に【村長】も絶賛したが、アレクさんにも見てもらいたかったなと思った。

 彼女は改めて【シェンガオレン】を狩るという目標を掲げた。

 

「それなら【剣士】より【ガンナー】で行った方が良い。【剣士】では〈耐震〉スキルを付けないと奴の歩く振動でまともに攻撃出来ないし、踏まれて重傷を負う可能性が高い。あの日【街】を襲撃された時も、そのせいで何人ものハンターが犠牲になったのだ。【ガンナー】ならば離れて攻撃出来る分踏まれずに済み、安全に攻撃出来る。そして何より【貫通弾】や【貫通弓】を使う事で、一番の弱点であるヤドの中を攻撃出来るのだ」

「分かりました。では【貫通弓】で挑むべく準備を進める事にします」

 

 

 そんなふうに狩りを進めていったクレオであったが、どうしても狩れない【モンスター】が出てきた。

 それは狩場が近いからと【古塔】での依頼を中心に受けていたのが災いしたのであるが、そこで【デュラガウア】に遭遇したのである。

 

 狩り方も分からずに挑戦するも失敗に終わって逃げ帰り、師匠に助言を求めた。

 

「すまない。実は私も狩った事がないのだ。【デュラガウア】は警戒心が強く、目撃例も少ない。だからその生態には謎の多い【モンスター】なのだよ。だから私からは何も助言は出来ないのだ。残念ながらな」

 

 困り果てたクレオは、【ミズキ】に連絡してみた。

 ハンターの【街】である【ドンドルマ】なら、狩り方を知っているハンターに彼女が教わる事があるかもしれないと思ったのである。

 すると彼女は「アレクさんにお手本を見せるようにお願いした」と連絡を寄こして来た。

 

 という事で、再びやって来たアレクトロと共に【デュラガウア】を二頭狩る事になった。

 

 

 挨拶を済ませた彼は、早速クレオを伴って【古塔】に赴いた。

 

「あぁクレオ、言ってなかったからこれ持っとけ」

 【秘境】と呼ばれる場所に降りる前に、アレクトロは【ホットドリンク】をくれた。

 

「あそこって、寒くなかったよ?」

「寒くなくても必要なんだよ。おめぇ【デュラガウア】と遭遇して逃げ帰ったんだろ? そん時に特殊な攻撃受けなかったか?」

「えっと、なんか氷の竜巻みたいなのに吹き飛ばされたんだ。その後体が凍えて走れなくなっちゃったんだよな」 

 

「そうそれだ。【凍傷】になっちまうのさ。そいつは氷ブレスを受ける事でもなるんだが、そうなった時に【ホットドリンク】を飲む事で解除出来るんだよ。奴特有の攻撃でな、どうも奴は氷を操る【モンスター】らしいんだわ」

 

「へぇ~~! そうなのかぁ」

「あとな、怒った時には普通は体温が上昇するもんなんだが、奴の場合は逆に低下するらしい。で、氷点下まで低下した事によって体の一部が凍り付く。それが怒った証拠だからそうなったら気を付けな。氷攻撃が加速すっからよ」

「了解」

 

「怒り時に移る咆哮は吹き飛ばし効果があるから近くで受けるなよ。これは〈高級耳栓〉を付けてたとしても免れんぞ。まぁガード出来る武器ならタイミング良くガードする事によって飛ばされる事を防げるがな」

「了解」

 

「狐みてぇなぶっとい尻尾は長ぇが、切断する事は出来ん。部位破壊は先端の棘のみ。しかも怒り時じゃねぇと破壊出来ねぇぞ。棘を逆立ててねぇと壊れんからな。確か他もそうだったはずだ。ちなみにその破壊可能ヶ所は【角】【爪】【背中】な」

「了解」

 

「ただし【背中】は非常に難しくて、特に【剣士】では中々壊せん。【ガンナー】でも余程意識して狙わん限りは壊れねぇ。だから無理して狙う必要はねぇぞ」

「分かった」

「まぁアドバイスはこんくれぇかな。後は自分で体験して考えろ。んじゃ行くぜ」

「おうっ!」

 

 【秘境】に飛び下りると、【デュラガウア】は中央辺りで待ち構えていた。

 

 艶やかな青緑の鱗で覆われた体躯。

 氷を操り、狐を思わせるその姿から別名【氷狐竜(ひょうこりゅう)】と呼ばれている【モンスター】である。

 

 体形は【ティガレックス】を彷彿とさせる。

 という事は、太古に滅びた【モンスター】である【ワイバーンレックス】から進化したという、原始的な【飛竜】なのだろう。

 

 【デュラガウア】は吠えるや否や真っ直ぐに向かって来た。

 直線の突進なので左右に分かれて躱し、対峙する。

 

 遠く離れた相手は息を吸い、氷ブレスを吐いた。

 

【挿絵表示】

 

 直線状に地面を凍らせながら走って来るブレスを避け、側面に回り込む。

 

 と、反動を付けてタックルして来た。

 

「いってぇな!」

 アレクトロが巻き込まれている。この横に大きく繰り出されるタックルは範囲が広く、避けにくいのだ。

 

 吹っ飛ばされた事でヘイトが移ったのか、クレオに狙いを定めて左右に腕を振る。

 逃げ帰った時に食らった氷竜巻が、再び彼女を襲った。

 

【挿絵表示】

 

 回り込みながら向かって来るそれをどうにか避け、お返しとばかりに顔に矢を浴びせる。

 鬱陶しそうに頭を振った相手は、いきなり飛び付いて来た。

 

「うわわっ!?」

 慌てて転がって避ける。

 立ち上がると体を丸めるようにして構えた。

 

「離れろ!!」

 叫ばれて慌てて離れようとしたものの、範囲の広い回転攻撃に巻き込まれ、吹っ飛ばされた。

 

「クレオ!」

 ダメージが大きく、立ち上がれない。

 

 が、体全体で巻き込むようにして大きく二回転した相手が息切れし、喘いでいる間に大きな隙が出来た。

 その間に彼女は立ち直って回復し、アレクトロはそんな彼女を気にしつつ溜め攻撃をお見舞いした。

 

 二回目の溜め攻撃のあたりで相手が吠えた。

 その瞬間に顔、爪と手、尾の先端辺りが凍り付いた。

 

「本番だぜクレオ!」

 

 怒った相手は突進、飛び付き、ブレスなど、その全てが素早く、攻撃力が高くなり、彼女に取っては脅威そのものになった。

 

 と、ジャンプして一回転しながら飛び付いて来たのを慌てて避けたクレオは、着地時に尾を地面に打ち付けるのを見た途端、急に眠気に襲われてしまった。

 それは怒り時特有の攻撃で、着地の勢いで尾で地面を叩いた時、尾の先端に仕込んだ睡眠塵を周囲にばら撒くのだ。

 

【挿絵表示】

 

「寝てんじゃねぇっ!!」

 眠ったまま追撃を受けそうになっている彼女を斬り上げたアレクトロは、代わりにそれを受けて吹っ飛んだ。

「ごめんなさいっ!」

 慌てて【生命の粉塵】を投げたクレオに、彼は親指を立てた。

 

 元々素早く、怒り時は特に隙が無いように思えたが、闘っている内に案外大きな隙が出来る事があるのにクレオは気が付いた。

 特に二回転攻撃は大きく二回も体を回すためなのか、必ず攻撃終りに息切れして喘ぐ。

 ブレスの後も必ず爪を打ち合わせて威嚇するので、隙が大きい。

 

【挿絵表示】

 

 アレクトロもそれを熟知していて、そういう時に最大溜めを叩き込んでいるようである。

 アレクトロの溜め攻撃が主に(立ち位置の関係で)肩より前に集中するので、爪と角は簡単に壊れた。

 

「後は尻尾か……」

 彼は呟いていたが、激しく動き回る尾の先端のみを狙うのは難しいらしく、苦労していた。

 そこで側面後ろに回り込み、クレオも矢を射かけて手伝ってあげた。

 

 下位だったのもあってかそれ程体力も多くなかったようなので、二頭狩猟を済ませて帰る。

 

 

「わざわざこのためだけに、遠くから海を渡って来て下さってありがとうございました」

 

 師匠に礼を言われたアレクトロは、「いやいやどうせ【樹海】や【塔】でのクエストではこの地方に赴くために海を渡るのです。だからわざわざ手数を掛けて渡ったという訳ではありません」と言った。

「それに俺、今んとここいつの【教官】やってますし」

 

 照れ笑いした彼は、「そういやな」と切り替えてクレオに話しかけた。

 

「【ミズキ】がな、なんかやたらと心配してたぜ。『【シェンガオレン】を討伐できるんでしょうか』ってな」

「心配すんなって言っといて。アイツにはもう『【ハートショットボウⅡ】を使う事にした』って連絡してあるから」

「あぁ俺もあいつから聞いた。そんでもって『しっかり溜めれば、貫通矢を撃てますから、良い選択だと思います!』って言ってたんだがよ、『武器や防具が整いつつある今だからこそ、別の心配が頭を過っちゃうんです』とさ。【シェンガオレン】はトラウマのきっかけになった【モンスター】だろ? だから『考えれば考えるほど、心配になってきちゃいますよー! どうしよう、どうしよう』ってずっとオロオロしてたぜ」

 

 その様子を思い出して笑っている彼に、クレオも「心配性だなぁミズキは」と呆れながら笑った。

 

「だよなぁ。だがよ、それ程心配されてんだ。必ず帰って来て安心させてやれよ?」

「おうっ!」

 

 二人のそんなやり取りを、師匠はにこやかに見ていた。

 

 

 

 




「デュラガウア」による「凍傷(ダッシュ、回避などで大きくスタミナが減る)」は、「ホットドリンク」のような体を温めるものだけでなく、「狂走薬」などのスタミナ回復のアイテムでも解除出来ます。

怒った時に出す睡眠効果(ガード可能)ですが、情報サイトでは「体臭の類い」としているようです。
でも実際は尾で地面を叩いた瞬間に出しているように見えるため、こんな描写にしました。

瞬間的に出すので撮影が難しく、話の中では尻尾破壊を終える前なのに挿絵は破壊済みになってしまっていますが、睡眠塵がハッキリ撮れたものがこれしかなかったので気にしないで下さい(^^;;;)


あ、私の持っている女キャラが一人しかいないため、今までは「ハナ役」として演技させていたキャラを今回だけは「クレオ役」として演技させています。
彼女の「パートナー」を「アレクトロ」にしているので丁度良かったです(笑)

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