今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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いよいよクレオが因縁の相手である「シェンガオレン」に挑みます。

そして、これで「アレク、【教官】になる?」という話は終わりになります。


アレク、【教官】になる?(クレオの章)5

 

 

 

 今回は【ラティオ活火山】の近くにある、【マンテ】という【街】を襲撃して来た【シェンガオレン】を討伐あるいは撃退する依頼であるらしい。

 上位試験も兼ねており、下位の者はこの依頼を成功させると上位に上がれるとの事。

 【ドンドルマ】と同じようにここにも迎撃用の【砦】が築かれているらしく、そこで迎え撃つ事になるらしい。

 

「助っ人に来ていただいて、ありがとうございます!」

 【マンテ】のハンターと協力して狩る手筈になっていたので、紹介を受けたハンターにそう言われながら握手を求められた。

 

「はじめまして! こちらこそよろしくお願いしますっ!」

 クレオも元気良く言ってその手を握り返した。

 

 

 彼らと伴って【砦】に着くと、もうすでに地響きが起きていた。

 

 バルコニーのように外に向かって丸く突き出ている《1》に向かって、徐々に近付いて来る巨大な【ラオシャンロン】の頭が見える。

 

【挿絵表示】

 

 【ラオシャンロン】の襲撃かに思えたがそれはよく見るとただの頭骨で、後ろに巨大な【甲殻種】の姿が見えた。

 つまり【シェンガオレン】である。

 

 クレオはごくりと唾を呑み込んだ。

 身が竦みそうになるのを無理矢理鼓舞させる。

 

 かつて自分が住んでいた【街】を襲撃された時、幼くてよく覚えていなかった。

 だが、やたら巨大な【モンスター】である。という事と、【街】が壊れていく恐怖だけは覚えている。

 その凄まじいまでの恐怖を思い出し、知らずに自分を抱いて震えているのに気付いてしまう。

 

 駄目だ! こんな恐怖なんかに負けたくない!

 クレオは首を振り、抱いていた腕を解いてギュッと拳を握り締めた。 

 

 【シェンガオレン】はゆっくりと頭骨の方をこちらに向け、鋏を地面に突き立てて踏ん張ると、まるで【ラオシャンロン】が口を開けるかのように上下の顎骨を開かせた。

 少し後に、その中から強酸液が【砦】に向かって吐き出された。

 

【挿絵表示】

 

 口からではなくヤドからなのでブレスではないのだが、爆発性の強酸液は非常に脅威である。

 これに当たってしまうと即死するハンターもいるそうだ。

 

 その攻撃を冷や汗と共に避けた後、クレオは【弓】を構え、【強撃ビン】を付けた矢を放って行った。

 

【挿絵表示】

 

 【砦】の《1》は、その地形故に【ガンナー】でしか攻撃出来ないのだ。

 だから【剣士】装備のハンターは、様子を見ながら《2》まで走って行った。

 

 《2》では【剣士】と共に攻撃していく。

 

 【シェンガオレン】は基本的には【ラオシャンロン】と同じでただ歩いて行くだけなのだが、その一歩一歩が武器になり、振動を伴って襲って来るために〈耐震〉スキルの無い【剣士】はまともに攻撃出来なくなってしまうのだ。

 今回は〈耐震〉の無い者はいなかったようで、振動に怯む事無く攻撃を加えて行っているようである。

 

 が、歩き始める脚に引っ掛けられてしまうとそのまま踏まれてしまうため、踏み込み過ぎるのも良くないようだ。

 それだけでなくたまに正面にいる者を鋏で叩き付けようとする事もあるので注意が必要だった。

 

 【ガンナー】であるクレオは、やや離れた位置から【貫通矢】を射掛けていた。

 アレクトロに教わったように適正距離を守っていたため、一番の弱点であるヤドの中を最大威力で射貫く事が出来ており、従って相手がよく怯んでいた。

 

【挿絵表示】

 

 他にも【ライトボウガン】を使っている者がおり、彼も【貫通弾】を使ってくれていたため、併せて連続で怯ませる事も出来ていた。

 

【挿絵表示】

 

 だがやはり早々順調にはいかないようで、踏まれたり、【ガンナー】が怯ませた際にヤドの下に入り込んで潰されてしまったりしたため、主に【剣士】の負傷者が後を絶たなかった。

 

 

 陸橋に差し掛かった時【シェンガオレン】が立ち上がったのを見て、クレオはその高さに度肝を抜かされて腰を抜かしそうになった。

 

【挿絵表示】

 

 それは良いのだが、今まで低い位置だったから攻撃し放題だったヤドが遥か高い位置になってしまい、矢が届かない。

 

 仕方なく脚を狙って攻撃していると、【剣士】が陸橋の真ん中で待機しているのが分かった。

 その場所で近接武器が届くのだろうかと攻撃しながら見ていると、なんとその【剣士】は強酸液を出すために額骨を開いた【シェンガオレン】のヤドの中に、飛び下りてしまった。

 そして、そこで黄色い樽で出来た【大樽爆弾G】のようなものを置き、外に飛び下りたのだ。

 

 なんて無謀な事をするのだろうとクレオは思ったが、直後にその爆弾が爆発して相手が怯んだのを見て、こういう戦法もあるのかと思った。

 後で聞くとそれは【対巨龍爆弾】というもので、【ラオシャンロン】の背中に飛び下りて使ったりもするのだという。

 

 【シェンガオレン】の時でもそうだが、少しでもタイミングを誤ると乗れず、それどころか踏まれたり警護の者が【砦】の上から落とす大岩などに当たったりして失敗し、場合によっては重傷で済まずにそのまま死んでしまう事にも成り兼ねない危険な行為である。

 いかに効果的な攻撃だとはいえ、命知らずって凄いなとクレオは戦慄すら覚えた。

 

 《2》を通り過ぎた【シェンガオレン】は《3》《4》と進んだが、その間いくら懸命に攻撃しても怯んだり蹲ったりはするものの、その歩みは決して止まろうとはしなかった。

 それどころか立ち塞がるバリケードなど、進行上邪魔なものは全て破壊してしまった。

 

 そしてとうとう街門である《5》まで辿り着いてしまった。

 ここを突破されてしまうと【街】に入られてしまう。それだけは何としても死守せねばならない。

 

 街門には迎撃命令が下ったハンターだけでなく、【ドンドルマ】では【守護兵団(ガーディアンズ)】に当たる様な、【マンテ街】を守る警護団も集まって、忙しく【大砲】を作動させるべく弾を運んだり、【大型固定弓(バリスタ)】の弾を【砦】の中に設けられている簡易武器庫から運び出したりしていた。

 

 クレオも【バリスタ】で応戦した。

 その方が【弓】より威力があると思ったからである。

 

【挿絵表示】

 

 それでも【シェンガオレン】はどんどん近付いて来る。

 相手はついに街門に密着し、そこを破壊しようと鋏を振り上げ始めた。

 

「【龍撃槍】の準備が出来たぞぉ~~!」

 その時、警護団と思われる者の中から声が上がった。

 

「よし! 俺が撃とう!」

 ハンターの一人が宣言し、【龍撃槍】を作動させるための巨大なスイッチの前に進み出た。

 【シェンガオレン】は立ち上がり、今やクレオ達がいる街門の上に攻撃を仕掛けようとしている。

 

 そう。まるで自分の進行を阻む全ての元凶が分かっているかのように。

  

 相手が鋏を振り上げたまさにその時、それは作動した。

 

 ガシュンッ!

 

 機械的な音と共に巨大な槍が数本、街門壁から突き出て【シェンガオレン】を貫いた。

 

【挿絵表示】

 

 相手は【甲殻種】特有の青黒い血を噴出させながらビクビクと痙攣し、【龍撃槍】が壁に吸い込まれて元の場所に納まるのに合わせてガシャン! と崩れ落ちた。

 

 そして、そのまま二度と動かなくなった。

 

【挿絵表示】

 

 

 一瞬の静寂の後、大歓声が上がった。

 ハンター警護団関係なく激励し合い、功績を称え合い、手を取り合って抱き合った。

 特に【龍撃槍】の作動を成功させたハンターは英雄扱いされるようで、取り囲まれて絶賛されているのを遠巻きに見て羨ましがるハンターもいた。

 

「やりましたね!」

 【マンテ】に着いた時に挨拶をしてくれたハンターの一人が声をかけて抱き締めてくれ、クレオも心底安堵した表情で笑った。

 

 

 

 しかし、クレオがついに因縁の相手である【シェンガオレン】討伐を成し遂げたという【ミズキ】が待ちに待っていた知らせは、中々届かなかった。

 

「ねえねえ、アレクさん。まだクレオから連絡が届かないんですよ。出発してからけっこう経つんですけどね」

「そうなのか。そりゃ心配だな」

「やっぱり、あの件が関係しているのかなぁ……」

「あの件、とは?」

 

「実は、【ラージャン】の活動が活発化しているそうなんです。そのせいで、一部の交易ルートが封鎖されてしまいまして、遠隔地からの連絡も遅れが出てるんですって。もしかしたら、クレオはとっくに【シェンガオレン】を討伐できているのに、途中で連絡が止まっているのかも……」

「【ラージャン】か……。そりゃちと厄介だな」 

 

「えっ【ラージャン】の狩猟ぐらい朝飯前ですって?」

 

「オイ待て、誰もんなこた言ってねぇだろ」

「さ、さすがはアレクさん! 言うことが違いますね! あの狂暴な【ラージャン】を狩猟して、安全な交易ルートを確保するなんて、『アレクさんにしか』頼めない仕事ですよ」

「待てオイ! 誰が受けると――」

「それでは、【ラージャン】一頭の狩猟をどうぞよろしくお願いしますー」

「待てやコラァ!!!」

 

 そうして半ば無理矢理(笑)【ラージャン】狩猟を受けさせられたアレクトロの活躍により、遠隔地との交易ルートが正常に戻り、クレオとの連絡も付いて、その知らせを受けた師匠も大喜びしたそうな。

 クレオは正式に【上位ハンター】として認められ、共に闘った【マンテ】のハンターと意気投合してそこの【猟団】に入る事となった。

 

 なんでも師匠と再会するまでは一人で狩りをする事が多かったらしく、【マンテ】のハンターに気に入られてしばらく世話になっている間に、その【猟団】に居心地の良さを感じたらしい。

 初めて誘われて舞い上がったクレオはしかし、苦手な【アビオルグ】を克服し、名実ともに上位ハンターになってから入ると決めて待ってもらっているとか。

 

 

 これでアレクトロから卒業かに思えた彼女だったが、それでも時々は彼を頼り、自分だけでなく【猟団員】の指導も懇願したりした。

 それらは全て【ミズキ】を通して行われ、形式上では【ハンターズギルド】からの依頼を受ける形になっていたため、アレクトロ本人も迷惑がりつつも手伝ってやったりしていた。

 

 クレオの成長は凄まじく、【猟団】に誘った先輩を追い抜く勢いになっているという。

 

 

 

 




今回は見知らぬハンターと組む事になっておりましたので、「フォスタ」と呼ばれている助っ人NPCを使っております。
普段は同行を切っているものなので今までの挿絵には登場しておりませんが、話の内容から「フォスタ」がいた方が雰囲気が出るんじゃないかと思って今回は「同行させる」事にしました。

ちなみに「パートナー」の方は切っております。
でないといないはずの「アレクトロ」が参戦しているようになってしまいますので(笑)


実際の「シリーズクエスト(ビギナーズ)」にはまだまだ続きがあり、「猟団」に入ってその中で一悶着あってどうのこうの……と続いて行くのですが、これは私が「クレオが上位ハンターになるまで」を書くつもりで書いた話ですので彼女が上位になった時点で終えるつもりでいました。

いつか続きを書いても良いと思っていたのですが、残念ながら「ビギナーズシリーズ」自体が廃止されてしまったのでもう二度と書けなくなってしまいました。
シナリオとしては全体的に面白かったんですが、残念です。

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