今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
ただし私が参加したものではなく、ネタを探している時にこのシリーズの事が詳しく書かれてあるブログを見付け、とてもシナリオが素晴らしかったので是非書いてみたいと思って書いたものです。
なのでサブタイトルと物語の内容はそのままですが、「ミズキ」とのやり取りなどは私が考えて書いたものです。
今【ドンドルマ】では、【メゼポルタ広場】を拡張するとかであちこち工事が行われている。
そんな中で【ガイド娘】達は簡易的に作られたカウンターで、各仕事をこなしていた。
「ねぇハナさん、音楽に興味無いですか?」
【シリーズクエスト】を受け持つ【ミズキ】は、今日も相変わらず元気に(笑)通りすがりの者に声を掛けていた。
「音楽? 聞くのは好きだけど……」
急にそんな事を聞かれて戸惑うハナ。でも彼女とは親しいので話を聞いてあげる事にした。
「広場の工事中にですね、あちこちから【楽譜】のようなものが見付かったんです。貴重なものかもしれないので、修復のお手伝いをしていただきたいんですが……」
「へぇ、面白そう。良いよ♪」
「ありがとうございます。ではまず文字の復元に使うインクを作るために、【モンスターの濃汁】を集めて来ていただけますか?」
「了解~~」
丁度【繁殖期】で【ランゴスタ】や【カンタロス】が大発生しており、「どうにかしてくれ」という依頼も舞い込んで来ていたので、ついでにそれを受けて集める。
ハナ自身は虫は好きではなかったが、この時期に虫の素材を集めるのが一番手っ取り早いのだ。
【モンスターの濃汁】を納品して文字修復を行うと歌詞らしきものが浮かんで来、どうやら一つの物語になっているようだと分かった。
解読出来た部分を見てみると、こう書かれてあった。
『あるところに、街を龍から守った英雄がいました。
英雄は街が龍の脅威にさらされる度に、龍を討伐、撃退し、何度も街を守りました。
ある日英雄が龍を撃退した時、一人の美しい少女を助けました。
少女は英雄に一目惚れし、自分も街にとどまる事を決めました。
その少女の歌には、とても不思議な力がありました。
楽しげな歌を歌えば皆に活力を与え、寂しげな歌を歌えば皆が悲しみに暮れました。
少女は英雄が戦うために、さまざまな手助けをするようになりました。
料理や家の掃除はもちろん、傷んだ武具の手入れまで、自分から進んでやるようになりました。
英雄は自分に尽くしてくれる少女に、段々と惹かれていくようになりました』
この楽譜は、音符の並び方を変えると武具の設計図になる事が判明したのだそうな。
しかし修復作業は難航しており、専門の職人を招く事になった。
が、その職人が【雪山】を超えようという所で【ドドブランゴ】に足止めされているという連絡が来た。
「ということで、【ドドブランゴ】の狩猟をお願いしますー」
「任せて~~」
いつもの【デスパライズ】で狩猟したので牙は折れなかったが、職人さんの移動ルートは確保出来たからいっかと思った。
修復作業が進むと、こんな続きが浮かんで来た。
『互いに惹かれあった英雄と少女は、一緒に暮らすようになりました。
戦いに行く英雄を見て、少女はあることに気付きました。
英雄の着ている防具は古くてボロボロで、龍と戦うには心許ないものだったのです。
そこで少女は英雄の誕生日に、自分の歌の力を込めた防具を贈りました。
英雄は大喜びで、その後の戦いには必ず、少女に貰った防具を着ていくようになりました。
その防具を着て、英雄は何度も街を救いました。
しかし不思議なことに、英雄の着ている防具は幾度戦いを経ても、傷一つつくことはありませんでした。
運命の日の朝、いつものように古龍襲来を告げる鐘が、街に鳴り響きました。
英雄はいつもどおり、少女に貰った防具を身に着けて、いつもどおり、行ってくると告げて戦いに出ました。
……しかし英雄は戻ってきませんでした。
いつもなら次の日の朝には帰ってくるのに、二日経っても三日経っても、英雄は戻ってきませんでした』
ここまでで修復材料が足らなくなったとの事なので、その素材を取るために今度は【ヒプノック】の狩猟をする事となった。
臆病な【ヒプノック】は中々出て来ずに【樹海】を駆けずり回って探すハメになってしまったので、腹いせに討伐してやろうかと考えたハナだったが、やはり可哀想なので捕獲で済ませた。
判明した続きはこうであった。
『英雄が戦いに出てから一週間が過ぎた昼過ぎのこと。
街の周辺を巡回していた警備の若者から、倒れている英雄を見つけたとの報告がありました。
物言わぬ姿で発見された英雄を目の前に、少女は悲しみに暮れました。
ふと、少女はあることに気付きました。
英雄が着ていた防具は、少女が贈ったものではなく、出会った時に身に着けていた物だったのです。
痛みきっていた防具は無残に砕け、英雄の身体には無数の傷が刻まれていました。
そして倒れていた英雄の近くには、傷一つない少女が贈った防具が置かれていました。
そう、英雄は少女から貰った大切な防具に傷がつかないように、街を出てから防具を着替えて戦っていたのです。
どうして彼の為を思って作ったのに、それを纏って戦ってくれなかったのか。
驚き、悲しみ、怒り、様々な感情が少女に浮かびました。
そして少女は、無意識に歌っていました。
その歌はとても悲しく、死者を憐れみながらも、この世の全てを呪うようなとても恐ろしい声でした。
それを聴いた人々は恐怖に怯え、歌が響いている間は誰一人として家から出ようとしませんでした』
【エスピナス】の毒がインクの材料になるからと専門職人に言われたらしく、次は【エスピナス】の狩猟をしなければならない。
こればかりは手強いのでカイに手伝ってもらったが、お互いにブレスを食らって毒麻痺状態になったりして散々だった。
判明した続きはというと……。
『英雄が見つかってから三日後、葬儀が執り行われる事になりました。
街は悲しみと、守ってくれる人がいなくなった不安で、暗く沈んでいました。
葬儀も終わりにさしかかったその時、古龍の襲来を告げる鐘が、街に鳴り響きました。
街の人が、どうすればいいのかと途方に暮れる中、少女は何と、ここで英雄と一緒に古龍を食い止めると言い出したのです。
普通に考えれば、一人の少女にそんなことが出来るはずがありません。
しかし人々はそれ以上どうすることも出来ず、少女と英雄だけ残して、街から逃げ出していったのです』
「酷い、無理にでもその子も連れて逃げれば良かったのに」
「少女の決意がそれ程固かったのかもしれませんよ」
「だからって、見捨てるようなもんじゃないっ!」
「そうですよねぇ……。でも続きがありますから最後まで見てみましょうよ」
「分かった……」
「職人さんから連絡が入りました。修復も大詰めに差し掛かり、今度の材料を集めれば終わりになるそうです」
「ホント!? 頑張る!」
「今度の材料は【風紋石】【オカサンゴ】【ロイヤルカブト】だそうですよ」
「じゃあ、【峡谷】で全部揃いそうね」
という事で【峡谷】に出掛けて採取して帰って来た。
そして、物語はこう締め括られていた。
『堅牢な門を突き破り、ついに古龍は街の中へ入ってきました。
少女はそれを見て歌い出しました。英雄が死んだと知った時に歌った歌を。
あの時のような恐ろしい歌声ではなく、とても優しい、全てを慈しむような歌声……。
心を揺り動かす少女の歌を聴いた古龍は、その場にうずくまり、やがて静かに寝息を立て始めました。
少女は英雄の隣に座ると、心の中でそっとつぶやきました。
「あなたの守りたかった街を、これからもずっと、一緒に守っていきましょう……!」
古龍を街から出さないように、少女はずっと歌い続けました。
その歌は五年経っても、十年経っても、風と共に遠く離れた地まで聞こえていたそうです。
英雄と街を守るための優しい歌が……』
「……悲しいお話ね……」
ハナは長い溜息を吐いた後、さめざめと泣いた。
「そうですね……」
【ミズキ】も涙を拭いている。
二人でしばらく泣いた後、落ち着いたハナは設計図になるように音符を並び変えてもらい、それを【武具工房】に持って行った。
出来上がった【ドグメアシリーズ】という防具には、少女の歌の力が込められているかのように〈龍属性耐性(小)〉と〈龍風圧無効〉のスキルが付いていた。
その後、この少女と英雄がどうなったのかを知る人は、誰もいないという。
悲しい話でしょ。
「ドグメアシリーズ」は配信されている間でしか素材が手に入らないので私は持ってません。
「イベントクエスト」でもそうですが、「フロンティア」ではこんな風に期間限定で配信されるクエストが多いため、必要な者は見逃さないようにしないと二度と手に入らなかったりする場合があります。