今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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これは「シリーズクエスト(ベテランシリーズ)」で配信された「クレア叙情詩」について書いたものです。
こちらは過去に「ベナトール」のキャラで参加した事があります。

シナリオと「ミズキ」のセリフはゲーム内のものをそのまま書き起こしておりますが、三人と絡ませるために「ミズキ」のセリフを「カイ」や「ハナ」に喋らせている所もあります。

シナリオ自体が長いのと、丁度章分けされていたので章ごとに投稿するつもりですが、章自体が長いヶ所は分けるかもしれません。

今回の「破滅の章」は分けませんでしたが、少し長い(八千字超え)です。


《クレア叙情詩(破滅の章)》

   

 

 

 

 「ねぇ聞いた? 【C.P.T.】の一座が近くに来てるんだって!」

「ホント? それは是非鑑賞してみたいもんだね!」

「でしょでしょ? 今回はどんな劇を演じるんだろ……!」

 

 カイとハナがそんな事を話している。

 

「なんだ? その【C.P.T.】とかいうのは?」

「やだアレク知らないの? 【街】から【街】へと渡り歩く事で有名な、旅する劇団の事じゃない」 

「んなもん知るかよ」

「あんた狩り以外何も知らないのねぇ、他に趣味とか無いわけ?」

「別に。強いて言うなら生物観察ぐらい?」

「それ狩り中にいつもやってる事じゃない」

「アレク、うんと小さい頃からずっと生物好きだったもんねぇ」

「それって【リオレイア】に育てられたからなのかな?」

「どうだろな? 自分では分からんが、気が付くと山ん中とかで【ケルビ】や【アプトノス】なんかと遊んでた」

「【レーヴェ】が私達とは比べ物にならないぐらい信用を寄せてるのは、たぶんあんただけ言葉が通じるからっていう事だけじゃないんでしょうねぇ」

「ところでさ、C.P.T.って何の略だったっけ?」

「なんとか、かんとか、シアター? 私も忘れちゃった」

 

 そんな三人の話を聞き付けたのか、【ミズキ】が「【C.P.T.】の話ですか!?」と興奮気味に聞いて来た。

 どうやら彼女も来るのを楽しみにしていたらしい。

 

「おめぇなぁ、人の話に首突っ込んでばっかいねぇで仕事しろよなぁ」

「それがですねアレクさん。聞いてビックリ【仕事】に繋がる話なんですよ!」

 

「どう言う事?」

 ハナがキョトンとして聞くと、次のように言った。

 

「なんとなんと、そこの座長さんから依頼が届きました! ハンターさんを紹介してほしいんですって!」

 

「なんでまた?」

 不思議そうにカイが聞く。

 

「その前にですね、腕を試したいとの事なので、指定された【ディアブロス】一頭の狩猟を成功させて、実力を証明してきてください!」

 

「【ディアブロス】ねぇ……」

 相変わらず興味無さそうに答えるアルバストゥル。

 

「見事、座長さんの信用を勝ち取ってお仕事を引き受ければ、あの有名な【C.P.T.】のお役に立てちゃうかもしれないんですよ! こんなに素敵なことってありません!」

 

 【ミズキ】は鼻息が荒くなっている。

 恐らく名誉な事だと思っているのだろう。

 

「いかがでしょう、座長さんの依頼を引き受けてみませんか?」

「興味ね――」

「うんっ! 受ける受けるっ♪」

「オレもオレもっ♪」

 

 二人は思い切りアルバストゥルの言葉を遮って手を上げた。

 

「だったら二人で行きやがれ」

「え、もう三人で受注しちゃった♪」

「取り消せてめぇ!」

「アレクに選択肢なんかあると思う?」

「アレクさんはわたしが知る中で、『最も優秀』で『最も信頼できる』ハンターなんですから、まさか断るなんてことはしませんよねぇ?」

「ぐぬ……」

 

 威圧を含んだ笑顔を向けられ、言葉が詰まるアルバストゥル。

 

「ハイ決まりね~~。ほらサッサと行くわよアレク」

 という事で、今回もどうやら【ミズキ】(+二人)に振り回されそうである。

 

 

 狩猟を終えて帰り、【ミズキ】に報告すると、「お疲れ様でした! 素晴らしい狩りだったそうですね」と言われた。

 

「C.P.T.の座長さん、とっても感心してくたさいまして、改めて正式な依頼が届きましたよ」

 どうやら今回も、その座長とやらが隠れてこっそり自分達の狩猟の様子を見学していたようだ。

 

「依頼の内容ですが、劇に登場する狩猟シーンの参考にするため、本物の狩猟の様子を、一座の皆さんに見せてあげて欲しい、というものです」

「……。見るのは勝手だが、命の保証はせんからな」

「アレク酷ぉい」

「大丈夫だよハナ。こんな事言ってるけど被害に遭わないような立ち回りはちゃんとする奴だから」

「ほんっと素直じゃ無いわねぇ」

「……ケッ!」

 

 そんな性格を知っている【ミズキ】は、にこやかに笑っている。

 

「本物を見てリアリティを追及する! う~ん、プロフェッショナルですね~」

 彼女は感心したようにうんうんと頷くと、更に興奮して言った。

 

「そして、聞いて驚かないでくださいよ! 今回、C.P.T.が演じる劇は、なんとあの有名な物語……。《クレア叙情詩》なんですって! きゃー! きゃー!」

「えぇっ!? それは凄い! きゃー! きゃー!」

「へえぇ! それならもっと張り切らなくっちゃね♪」

 

「おめぇら興奮し過ぎだっつの!」

 呆れて突っ込んだアルバストゥルだったが、《クレア叙情詩》をイマイチ理解出来ていなかった。

 

「ええっ、知りませんか?」

 三人はそんな彼の様子を見て、信じられないというような顔をしている。

 

「『破滅の帝』と呼ばれた男【エスティン】や、その眷属たちの、壮大な物語なんですけど」

「オレも実は詳しくは知らないんだけど、確か四章から成る物語だったはず?」

「うん合ってるよカイ。アレク【復活の妃リナーシタ】っていう名前、聞いた事ない?」

「【リナーシタ】……」

「四つの章の最後に登場する勇敢な女性のことなんですよ。わたし、彼女の物語が大好きでして、徹夜で書物を読みふけったり、お友達と語り合ったりしたものです」

「それ分かる! カッコいいもんねぇ!」

「やっぱ【リナーシタ】が一番有名だよね。オレも彼女の話なら知ってるよ」

「まぁ、俺も名前ぐらいなら……」

「そんな《クレア叙情詩》ですが、C.P.T.の皆さんは、どのように演じるのでしょうか」

 

 【ミズキ】は「う~ん、楽しみですね~」と目をキラキラ輝かせている。二人も同調しているが、アルバストゥルは若干引いていた。

 

「《クレア叙情詩》は遥かな太古より語り継がれているため、事実なのか創作なのかすらわかりませんが、今となってはどうでもいいことです」

「大人向けの小説から子供向けの絵本まで、いろんな書物が出てるよな」

「うん。私綺麗な装飾の本持ってるよ。昔おじいちゃんに買って貰ったの。うんと小さい頃は、何回も『読んで!』っておじいちゃんにせがんでたの覚えてる。自分で読めるようになってもずっと繰り返し読んでたから、今ではボロボロになっちっゃってるけど」

「人の心を打つような狩猟シーンが四つの章それぞれに登場しますから、それを順番に再現していきましょう」

 

 【ミズキ】の言葉に、二人は「了解!」と張り切っている。

 

「まずは、最初のお話。【エスティン】という男性が活躍する、その名も《破滅の章》です」

 そして【ミズキ】は、昔語りをするように遠い目をしながら話し始めた。

「それは、遠い遠い昔。人々の生活も、文化も、現代とはまったく異なる時代のこと――」

 

 

 静かな土地に、【エスティン】は住んでいた。

 彼は、【モンスター】の捕獲が得意であった。

 そして捕獲した【モンスター】を労働力として、あるいは外敵から身を護るために上手く使役していた。

 

 そんなある日、痛ましい事件が起こる。

 捕獲したはずの【モンスター】が大暴れし、愛する恋人の命を奪ってしまったのだ。

 

 その日から、【エスティン】は変わってしまった。

「【モンスター】は共存するような存在などではなく、人にとって害悪である、滅ぼすべき存在だ!」

 彼は【モンスター】を憎み、何かに取り憑かれたように狩り続けた。

 最後に立ちはだかったのは、【茶色の竜】であった――。 

 

 

 ここまで話すと【ミズキ】は、「C.P.T.の皆さんは、その茶色の竜を【エスピナス亜種】として解釈することにしたそうです」と言った。

「というわけで、いよいよ本番です。まずは、《クレア叙情詩・破滅の章》。【エスピナス亜種】一頭の討伐をお願いします」

「了解っ!」

 

 張り切った二人が声を合わせるのを、冷めた目で見つつアルバストゥルは受注した。

 

 

 【エスピナス亜種】は今の所、【古塔】の頂上付近での目撃例しかない。

(一応【峡谷】での目撃例もあるにはあるのだが、滅多に報告されないので【古塔】で探した方が早い場合が多い)

 なので劇団員の人達を連れて頂上まで登らなければならない。

 

「はぁ、はぁ、ちょっと休ませて、くれないか……?」

「あんたら体力ねぇなぁ」

 息切れしている劇団員を見て、アルバストゥルはからかった。

 

「……はぁっ、【ハンター】の体力と、同じに、しないでくれ、ないか?」

「そうよアレク、一般人とハンターを同じに考えちゃ可哀想よ」

「特に君と同じとは思われたくないね。体力あり過ぎなんだから」

「いやおめぇらが体力無さ過ぎなだけだろうがよ」

「少なくとも【B.A.コンビ】と一緒にされたら誰も付いて行けないと思うんだけど……」

「なんだそりゃ?」

「【ベナトール・アレクトロコンビ】の略に決まってるでしょ」

「変なコンビ名で呼ばねぇでくれるかな? ってか、こんなのSRとかGRとかならザラにいるし」

「そんな化け物連中と一緒に組みたくないもんだな」

「安心しろ、おめぇらにゃ一生届かねぇランクだよ」

「とにかくさ、この辺で一度休憩にしようよ。オレお腹すいちゃった」

「おめぇの燃費悪過ぎなんだよ」

「丁度良いじゃん。お昼にしましょっ」

「ありがとうございます。助かります……」

 

 やれやれというふうに劇団員達が座り込んでしまった。もうちょっとやそっとじゃ動かないぞという雰囲気である。

 

 アルバストゥルは内心で舌打ちし、安全のために遠くでウロチョロしていた【ギアノス】をやっつけた。

 この場所は【ギアノス】だけでなく時折【リオレウス亜種】などが降りる事もあるため、警戒しつつ弁当を広げる。

 劇団員と二人はワイワイ言いながら食べていたが、アルバストゥルだけ気を張り詰めていた。 

 

 

 頂上に着くと、【エスピナス亜種】は上手い具合にエリアの端、つまり塔の縁あたりで寝ていた。

「入り口付近の壁際から絶対に移動しないで下さいね?」

 そう念を押して向かって行く。

 

 寝坊助の【エスピナス亜種】はいくらぶった切っても中々起きなかったが、溜め斬りを二発ほど当てるとようやく起きてくれた。

 

【挿絵表示】

 

 寝ている時でもそうだったが、どちらにしても怒らせなければ硬くてまともに攻撃出来やしない。

 だが怒っていないとこの種類は基本的には害がなく、ただのったりのったり歩いたりうざったそうに尾の先を振るか噛み付くかするぐらいしかしないため、全身の棘に気を付ければ一般人でさえ触れるのではないかと思う程大人しい。

 

 しかしやはりその全身にある棘そのものが武器になり、ただ歩いている所に当たるだけでもこちらは傷付けられてしまうので、その危険を冒してでも劇団員達に触らせるという事は出来ないだろう。

 生物好きのアルバストゥルとしては怒らせないままただ観察していたいと思う程(彼にとっては)可愛げのある【モンスター】ではあるのだが、そんな事は言ってられないので傷付くのと弾かれまくるのを覚悟で攻撃し、怒らせた。

 

 ボエェ~~~!

 

 耳を劈く程大きくはあるものの気の抜けたような鳴き声を発し、体や棘に赤い模様を浮き出させる【エスピナス亜種】。興奮して血管が拡張した証拠である。

 この種類の咆哮には正面にいると風圧(というよりは直線的な呼気の塊)が発生して飛ばされるという特徴があり、アルバストゥルは念のため、劇団員達に当たらないようにわざと正面で受けてガードした。

 

 【エスピナス系】の【モンスター】は、(怒っているせいもあるのだろうが)やたらと速い突進を繰り返す。

 しかも【ティガレックス】のように、突進終わりにこけずに踏ん張ってそのまま切り返して突進して来る事もあるのでやっかいである。

 

 当然突進中は危険なので、相手がやめてくれるまで攻撃出来ない。

 比較的狭いエリアならば追い掛けるにしても割と短い距離で済むのだが、【古塔】の頂上は何も障害物の無いだだっ広い石畳の広場のようになっている。

 なので、相手は縦横無尽に広い範囲を駆け回ってしまう。

 しかも完全に狙って来るというよりは、怒りに任せてただ駆け回っているだけなんじゃないかというような時もあるため、立ち位置によっては狙われていない者が突進に巻き込まれてしまうという場合があるのだ。

 

 だからなるべく劇団員達の場所に行かないように誘導しながら突進をさせていたアルバストゥルだったのだが、とうとう入り口付近の壁際の方向へ向かって行くようになり――。

 

「ぎゃあぁ~~~!!!」

 絶叫が起こったが壁際なので逃げようのない劇団員達に茶色い巨体が弾丸のように迫って行き――!

 その内の何人かが轢き殺されるのを覚悟してきつく目を閉じた刹那、硬いものと金属同士がぶつかり合った音を間近で聞いた。

 

「ウロチョロ、してんじゃ、ねぇっ!」

 力んだ声に目を開けた劇団員達は、【大剣使い】のハンターが、【エスピナス亜種】の突進をガードで止めて力比べをしているのを見た。

 

「たた、助かった……」

 その背中を見ながら長い安堵の息を吐いて、劇団員達はへたり込んだ。

 

「すまん、すぐに移動させるから……」

 そう言った彼は、無理矢理【大剣】で相手を押し返すと同時に鼻先にある目立つ一本角に一撃入れた。

 たったそれだけで角が折れ、相手が怯んだのを見て驚愕する劇団員達。

 

「ほれこっちだ焼きナス。余所見してんじゃねぇ!」

 そのまま誘うように挑発し、別の方向へ走って行く。

 それに乗った相手は、彼を追い掛けて離れていった。

 

「よ~し良い子だ。そのまま向こうへ行くんじゃねぇぞ」

「あ~冷や冷やした。ガード間に合って良かったね~~!」

「おめぇもガード出来るんだから協力しろよなぁ」

「こんな馬鹿デッカイやつを【片手剣】の盾でガードしたら吹っ飛んじゃうでしょおっ!」

「オレはガード出来ないでしょおっ!」

「いやおめぇには聞いてねぇから」

 

 そんな事を言いながら闘っていると、相手が大きく身を反らし、そのままの姿勢で力を溜めるようにして静止した。

 

【挿絵表示】

 

「まずい! 【渾身の一撃】が来るっ!」

 三人は慌てて相手から大きく距離を取った。

 【エスピナス亜種】は長い溜め姿勢の後、垂直に飛び上がりつつ真下に特大のブレスを吐いた。

 それは広範囲に広がって爆発して消えた。

 それに合わせて緊急回避をしていた三人は、ホッとして再び近付いた。

 

 通称【渾身の一撃】と呼ばれているこの溜めブレスは、爆発する範囲が広く、威力も大変高いために非常に危険な技である。

 しかし予備動作が分かりやすい上に長い溜めがあるため、例え攻撃動作がどうしても遅くなる重い武器で攻撃中でも、すぐに武器を仕舞って離脱すれば充分に間に合うのだ。

 

 ちなみに溜め攻撃には二種類あり、今行ったブレスを吐くというものと、体を曲げて構えた状態で長く溜め、その力を全て解放するかのように体全体を使って大きく回転しながら巻き込む攻撃とがある。

 

【挿絵表示】

 

 どちらも即死級の威力があるので注意が必要ではあるが、二種類共に長く溜めてくれるために避ける事は容易である。

 そしてどちらも溜め動作中には集中したいためなのか目を閉じている事が多いため、溜め解除を狙って【閃光玉】を投げても見てくれない。だから溜め中は解除させようと慌てて色々やるより素直に逃げた方が良い。

 

 良いのだが、よりによって、ブレスの爆発範囲が劇団員達に掛かる位置で溜め始めた事があった。

 

 まずい!

 

 アルバストゥルはそう思った。

 このまま巻き込まれれば劇団員達は全滅である。

 彼は瀕死になる事を覚悟で劇団員達の前に立ちはだかり、「なるべく俺の後ろで固まれ!」と促した。

 

 直後にブレスが投下され、彼らはたちまち爆発に巻き込まれた。

 

「ぐおぉっ!!」

 アルバストゥルはガード姿勢で爆発を受けた。

 

【挿絵表示】

 

 このブレス爆発は威力が凄まじく、通常ならばガードは不可能である。ガードしようとしても捲られて爆発に巻き込まれ、下手をすれば即死してしまう。もし極めて防御力の高い防具を身に着けていた事で生き残ったとしても、火と毒と、亜種特有の防御力低下を伴う重酸のダメージに襲われる。つまり大火傷を負い、猛毒に侵された上に防具を腐食させられるわけである。

 

 それをアルバストゥルは無理矢理にでも受け切った。

 なぜなら彼の防具には〈ガード性能+2〉のスキルが付いていたからだ。

 

 このスキルは通常ではガード不可能な攻撃でも受け切れるという効果がある。

 ただし、受けた者へのダメージは半端なく、重傷あるいは瀕死は免れない。

 それを知りながら、彼はあえて受けた。そうしないと劇団員達が全滅するからだ。

 

「ぐあぁあ~~~!!!」

 当然のように彼の体は燃え上がり、それと同時にシュウシュウと白い煙を上げ始めた。

 彼の体は焼け爛れ、壊死し始め、その上に防具を溶かされた。白い煙は重酸によって防具が溶けていく煙である。

 

 目の前でその光景を見た劇団員達は、この世の地獄を見たかのように騒然としている。

 

「アレクうぅ!!」

 それでも踏ん張っている彼に、ハナとカイは絶叫しながら必死で【生命の粉塵】を投げ続けた。

 そのお陰でどうにか倒れる事だけは免れたアルバストゥルは、喘ぎつつも後は自力で回復アイテムと【漢方薬】を飲んだ。

 

「だだ、大丈夫なのかい!?」

 目の前で惨事を見ていた劇団員達は、一息付いた後残念そうに溶けた鎧を眺めている彼にそう声を掛けた。

「俺が大丈夫じゃなきゃあんたら全滅しちまうだろぉ? ま、なんとかなっから心配すんな」

 そう言われても、あんな脅威を見せられては安心出来ないと劇団員達は思った。

 後の二人は身体を張る彼を見て、調合分の【生命の粉塵】が足りるかなと考えていた。

 

 そんなふうに誘導しつつも危険が及びそうになるとアルバストゥルが盾になり、攻撃を続けて討伐成功。

 部位破壊箇所を全て壊された相手が倒れ伏したのを見て歓声を上げる劇団員達を尻目に、アルバストゥルはサッサと剥ぎ取りをして帰って行った。 

 

【挿絵表示】

 

自分達のせいで機嫌を損ねたのかと心配する劇団員達に、二人は言った。

「愛想の無いのはいつもの事だから心配しないで下さい」

 

 

「お疲れさまでした!」

 帰って来た三人に、【ミズキ】は言った。

「【C.P.T.】の座長さんから頂いた【怨嗟の大骨】をお受け取りください」

 

 それは恐らく【モンスター】の骨だと思われる物だったのだが、奇妙に捻じれた形をしており、見様によっては気味が悪かった。しかも耳を近付けてみると声のようなものが聞こえるのだ。

 【ミズキ】が言うには「怨嗟の声」なのだという。

 そのせいなのか二人は持つのを嫌がり、結局アルバストゥル一人が受け取った。

 

「なんでも、先々代の座長さんから受け継いだ素材なんだそうですよ」

「いくら由緒ある物といってもねぇ……」

「それにしても、座長さん、大喜びでした。『これで本物さながらの討伐シーンを演じられる』って。よかったですね~!」

「お蔭でこっちは死にかけたがな」

 

 【ミズキ】は彼の溶けた鎧を見て戦闘の凄まじさを想像したのか、気の毒そうな顔をした。

 

「体張って頑張った甲斐があったじゃないか。皆さん絶賛してたよ? アレクの事」

「あれは俺がガードしなきゃあいつらが全滅するから仕方なくだな……」

「何だかんだ言って、護ってくれるから好きっ♪」

「言っとくが俺は迷惑してんだぜ? あいつらがいねぇとどれだけ狩猟が楽だったか」

「分かってて受けたんでしょ?」

「てめぇが勝手に俺を巻き込みやがったんだろうが! 俺は下りたって良いんだからな」

「まぁまぁ、そう言う事言うなよアレク。この素材、きっと大きいから【大剣】の製作に使えるんじゃないかな」

 

 そう言われて少しだけ興味が湧くアルバストゥル。

 

「チッ、仕方ねぇな。そんなに言うなら最後まで付き合ってやんよ」

「あ、最終的にどんな【大剣】になるのか知りたくなったんでしょ」

「現金だなぁアレクは」

「うるせぇよ」

 

 【ミズキ】はクスクス笑いながら、物語の続きを話し始めた。

 

「ちなみに、【モンスター】を狩り尽し、小さな国を興した【エスティン】は、いつしかこう呼ばれるようになりました」

 そこで一度切り、思惑ありげに「【破滅の帝エスティン】と」と言った。

「人々は彼を英雄として崇めましたが、一方で、彼の思想を快く思わない者も確実に増えつつあったのです……」

 

 そして「これが、《クレア叙情詩・破滅の章》。すべての始まりの物語です」と章の終りを告げた。

 

 

 




「エスピナス亜種(通称茶ナスもしくは焼きナス)」がフロンティア固有種なので載せようと思って撮影したんですが、「パートナー」が一人しか雇えない関係で「ハナ」がいない事になってしまいました(笑)
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