今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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「シリーズクエスト(ベテラン)」で配信されていた「クレア叙情詩」の続き「復活の章」です。

少し長め(六千字超え)です。


《クレア叙情詩(復活の章)》

 

 

 

「【復活の妃リナーシタ】の名前は、《クレア叙情詩》に馴染みがない方でも知っているほど有名ですね」

 

 そう言った【ミズキ】は、次のように語り始めた。

 

 

 【リナーシタ】は、【束縛の王レストリ】の妻だった。

 【レストリ】亡き後、前線に立って人々を導き、【モンスター】に抗い続けた。

 

 だが攻撃を受け、幾度も力尽きた。

 

 しかし、その度に復活を遂げ、まるで不死の体を持つかのような活躍を見せる。

 それを見て人々は彼女を【復活の妃】と呼んだ。

 

 彼女や彼女の国が最後にどうなったかは、《叙情詩》には語られていない。

 だが何度も立ち上がるその姿勢が、人々の心を打ったという。

 

 

「演劇では、彼女が初めて復活した場面、有名な【ティガレックス】討伐のシーンをラストシーンにして、締め括るんですって」

「絵本とかでも一番の見せ場として描かれる場面なんだよね~~!」

「うんうん。あの場面カッコ良いもんねぇ」

「というわけで、《クレア叙情詩・復活の章》の再現のため、【ティガレックス】一頭の討伐をお願いします」

「お~~!」

 

「やっと最後か……」

 張り切る二人を尻目に、アルバストゥルはやれやれという感じで受けた。

 

 

 夜行性で夜にしか出て来ないので【砂漠】でも【ホットドリンク】はいるのだが、【雪山】の寒さよりはマシだろうと、【砂漠】を狩場に選ぶ。

 アルバストゥル自身としてはどちらのフィールドでも良かったのだが、一応気を遣ったのだ。

 

「さて、いよいよ仕上げだぜ」

「君には随分と助けられたよ。感謝している」

「まだ礼を言うのは早いぜ? 今回の狩りで犠牲が出んとも限らんしな」

 

 そう言われて騒めく劇団員達に、アルバストゥルはニヤリと笑って見せた。

 

「意地悪ねぇ、最後ぐらい安心させてあげたらどうなの?」

「最後まで気を引き締めろって言いたいんだろ」

「俺は現実主義なだけだ。こっちは命張ってんだから気を引き締めるのは当然の事だっつの」

「はいはい、頑張ってね」

「おめぇらは良いよなぁ、キャーキャー言って適当に攻撃して逃げ回ってりゃ済むんだからな」

「失礼ね! ちゃんと麻痺させてあげてるでしょっ!」

「どれだけこかしてると思ってんだよ!」

「へいへい、世話になってます」

「何よその言い方。あんた私の〈広域+2〉でどれだけ救われてるか知ってるくせにぃ」

「オレの粉塵でもそうだけどね。まぁ素直じゃ無いからしょうがないね」

 

 三人のやり取りに慣れて来た劇団員達は、これで仲が良いんだろうなと思う事にした。

 

 

 だだっ広い【砂漠】を永遠に歩き通さなければならないのではと劇団員達が身も心も折れかけた頃、【それ】はいた。

 砂だけの世界の中で遠く霞んでいるそのシルエットは、間違いなく【ティガレックス】のものだった。

 

「取り敢えず安全な所で見てろ」

 言い置いて、向こうから近付く前に駈け出すアルバストゥル。

 

 やがてシルエットがこちらを向き、四肢を踏ん張って吠えたのが見えた。

 

「よぉデカ頭、遊ぼうぜ!」

 そんな相手に臆するどころか嬉しそうに声を掛けるアルバストゥル。

 それに答えるかのように、相手は砂の塊を放り投げた。

 

「早速それかよ」

 簡単に避けつつそのまま向かって行く。肉迫し、急停止しながら抜刀攻撃。

 怯んだのを見て切り上げ、横薙ぎ。

 その間に二人は反対側で闘っている。

 

 身体を丸めるようにして構えた【ティガレックス】は、それらを蹴散らすように身体全体を回転させた。

 その動きを読んでいた三人はとっくに離脱している。

 

「ほれ噛み付いてみろよ」

 アルバストゥルは挑発するようにわざと眼前に出ている。それに乗った相手が噛み付こうとすると、合わせるようにチョンとガードし直後に横に斬った。

 

 【天ノ型(てんのかた)】の、【ガード斬り】という技である。

 

 攻撃を受ける直前にガードし、その反動を利用して斬る事によって、溜め斬りに相当する攻撃力になるカウンター技なのだ。

 

 短い悲鳴を上げて怯んだ相手は、忌々し気に頭を振った。

 反撃に出ようとした【ティガレックス】は、しかしそのまま固まった。ハナによる麻痺が決まったのだ。

 

「カチ割ってやる!」

 【嵐ノ型(らんのかた)】で溜め、思い切り【大剣】を振り上げる。頑丈な下顎骨はそれだけでは割れなかったが、大きな裂傷が出来た。

 

 麻痺が解けたとほぼ同時に相手が横様に倒れた。カイが後ろ脚を連続攻撃していたためだ。

 

「もっかいこけやがれぇ!」

 叫んだアルバストゥルは起き上がる直前に前脚を溜め攻撃したが、爪が砕けただけでこかせる事は出来なかった。

 

「あぁ! もう少しだったのにぃ」

 カイが残念そうに言っている。どうやら尻尾を斬ろうと頑張っていたらしい。

 と、【ティガレックス】が飛び退った。

 

 ギャオォ~~~!!!

 

 特大の咆哮。

 それと同時に目の周り、手先などが赤くなった。

 

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

 それに合わせて二人が跳ね飛ばされた。バインドボイスの衝撃波を受けたらしい。

 

「吹っ飛んでんじゃねぇっ!」

 なるべく自分にヘイトを向けさせるために連撃を叩き込むアルバストゥル。目の端で二人が起き上がったのを確認し、内心ホッとする。

 

 が、それも束の間突進し始めた先が劇団員達のいる方向だと分かって彼は血の気が引いた。

 

「なるべく散れ!」

 叫びながら追い掛ける。彼らは大慌てで左右に散った。

 

 ここが避難範囲の広い【砂漠】で助かったと思いつつ、アルバストゥルは突進の勢いを止めずに滑りながらも方向転換した相手の前に立ち塞がった。

 

「ぐおぉお!!」

 高速で向かって来る巨体を【大剣】で受け止める。だが勢いを殺し切れずにずるずると下がらされてしまう。

「おぉおぉ!!」

 両腕が折れるのではないかと思う程の力が掛る。ギシギシと筋肉が悲鳴を上げ、そのまま筋線維や血管が弾け飛ぶのではと思ってしまう。

 それよりも――。

 

「た、【大剣】が持たねぇ……!」

 ミシミシと鳴っている【大剣】の、刃が徐々に欠けていく。

 

「ぬおぉお~~~!!」

 【大剣】が折れたら体を張ってでも止めると覚悟をした彼だが、幸いにもその前に相手が力比べに負けてくれた。

 力を抜いて止まった瞬間にこちらも力が抜けて膝を付きそうになったものの、そんな事をしている場合ではないと踏み止まる。ぜぇぜぇと息を切らしつつも歯を食い縛り、踏み込んで斬り上げたが、やはり刃が欠けた分切れ味が落ちてしまって甲殻の表面に傷を付けた程度にしかならなかった。

 

 追い付いた二人が攻撃を加えた事でヘイトが自分から逸れたのを利用して一旦離脱し、隙を見て【砥石】を掛ける。

 切れ味が戻ったのを確認し、ついでに念のために【元気ドリンコ】を飲んだ。

 スタミナを回復するためである。

 曲げ伸ばしをして腕が折れたり筋線維が痛んだりはしていないようだというのを確かめて、アルバストゥルは再び前線に躍り出た。

 

 その頃にはカイが尻尾を斬り飛ばしていたようなので、尻尾は気にせずに頭や前脚を中心に攻撃する。

 怒れる巨大な顎(あぎと)の眼前で平然と攻撃を加えている彼を見て、劇団員達は戦慄すら覚えた。

 

 

 劇団員達のためになるべく【閃光玉】は控えて攻撃をしていた分走り回られたが、二人が痺れさせたりこかせたりしてくれていたので溜めチャンスも結構あった。

 止めが誰になったか分からないぐらい最後はほぼ同時だったので、相手が倒れた時は三人で顔を見合わせて笑ってしまった。

 

「ありがとう。今度こそ礼を言わせてくれ」

「別に礼を言われる筋合いはねぇよ。俺はただ依頼通りの仕事をしただけだ」

「だが君が体を張って護ってくれたお陰で、私達はほぼ無傷で済んだのだ。それは感謝させてくれ」

「あんたらがどうにかなったら信用を失うからな。護るのも仕事の一環だっただけだ」

 

「そのためには自分の身を捨てても良いというのかね? 他人を護るために?」

 

「ただ俺以外が傷付くのを見たくねぇだけだ。それが身内か他人かは関係ねぇ。護るべき相手がいれば護る。それが誰であろうとな」

「見上げた精神だね」

「アレク、カッコ良いっ♪」

「茶化してねぇでサッサと帰るぞ!」

「はいはい、照れ屋さん」

 

 そう言ったハナを問答無用で斬り上げるアルバストゥル。

 劇団員達は「ひどいぃ~~!」と言いながら遠くに飛んで行くハナを見て、唖然としていた。

 

 

「お疲れ様でした!」

 三人が帰ると、【ミズキ】は最後の報酬素材をアルバストゥルに渡した。

 

「これで、【怨嗟の大骨】が揃ったのではないでしょうか」

「ったく、チマチマ出し惜しみしねぇで最初に全部渡しとけよなぁ、どうせ全部同じ素材だったらよ」

「やぁねアレク、こんなデッカイ骨一気に渡されたら持てないでしょっ」

「まぁそりゃそうかもしれんが……」

「持て切れないからってオレに渡されても困るよ?」

「私も困るよ?」

「おめぇらほんっとに筋力ねぇのな」

「いや【ミズキ】も困るよ? 一気に持てないよと思うよ? てか用意するのも大変だよ? カウンター狭そうだし」

 

 【ミズキ】は苦笑いしながら、「【復活の妃リナーシタ】が使用していたという【大剣】を今こそ再現する時です」と言った。

 

「この素材でそんなもんが作れるのか!?」

「わぁ、是非作って見せてくれよアレク」

「そりゃ良いんだけどよ、先々代の座長が持ってたんだろこれ、どっからこんなもん手に入れたんだろな?」

「《クレア叙情詩》を研究してて探し当てたとか?」

「んじゃそんな貴重なもんをなんでハンターなんかにくれるんだ?」

「【大剣】の素材って分かって、宝の持ち腐れにするより使ってもらいたいって思ったんじゃない?」

「なるほど。なら遠慮なく使わせてもらうかな」

 

 素材を【武具工房】に持って行くと、まず作製出来たのは【復活妃リナーシタ】の名前を冠する【大剣】だった。

 それは素材の【怨嗟の大骨】をそのまま削って【大剣】の形にしたような、無骨で何の飾り気も無い物だった。

 

【挿絵表示】

 

 強化していっても形は結局最後まで変わらず、だが代わりに【束縛王レストリ】【破壊将ディストル】【破滅帝エスティン】と、まるで物語を遡るかのように四人の英雄の名を冠して変わっていった。

 それにつれて攻撃力と切れ味が上がっていき、最終強化の【破滅帝エスティン】では攻撃力1392にもなり、長めの青ゲージが付いていた。

(匠スキルで〈切れ味+1〉を発動させると長めの白ゲージが出た) 

 

 ただし会心率は-で、しかも強化ごとに下がっていくらしく、【リナーシタ】では-10%ぐらいだったものが、【エスティン】では-40%にもなってしまった。 

 

【挿絵表示】

 

「まぁ、攻撃力高ぇからいっか」

 割り切って担いで行くと、待っていた三人が歓声を上げた。

 

「さて、物語は以上で終了です。【C.P.T.】の皆さんも、最高の劇を演じると張り切ってらっしゃいましたよ」

「そうしてくれねぇと、死ぬ思いして体張った甲斐がねぇんだがな」

「アレク頑張ったもんねぇ、【エスピナス亜種】の時はホントに死ぬかと思ったよ」

「燃えて毒らされて溶かされてたもんね。あれは凄まじかった」

「スキルがあったからな。かなりきつかったが、まぁそれであいつらが全滅せずに済んだから無問題だぜ」

「ホント、あの時点で全滅してたら《叙情詩》の再現どころか【C.P.T.】の存続さえ無くなってたもんねぇ」

 

 それを聞いて安堵した様子の【ミズキ】は、「それにしても、この《クレア叙情詩》、考えさせられるものがありますよね」と言った。

 

「物語に登場した英雄たちが、【モンスター】を滅ぼそうとしていたのには、共通の理由 があったと思うんです。それは、大切な人や国を守ること。この《叙情詩》から学べるものがあるとすれば、人の絆の力なのではないでしょうか?」

()()()()()、ねぇ……」

 

 アルバストゥルは、違和感があったが黙って置く事にした。

 

「家族や仲間との結びつきは、人間だけに備わった特別な力だって、歴代の英雄がそう言っているようにわたしは思えました!」

 

 そこで「う~ん」と考えた彼女は、「何か見落としていることがあるような気もしますけど、今のところはこれが結論です!」と言った。

 

「【C.P.T.】の皆さんも、わたしと同じような解釈をしていたようですから、そのメッセージが上手く表現できて、今度の公演が成功すると良いですね」

 

 と、そこに伝書鷹が舞い降りて来た。

 

「あれ……? 言ってるそばから、座長さんからの連絡が届きましたよ。公演はまだのはずですけど、何でしょう……?」

 

 脚に止めてある小さな筒から丸められた紙を取り出して読んでいた【ミズキ】は、「こ、これは……!」と驚愕したような表情になった。

 

「ど、どうしたの!?」

「皆さん、大変な事実が明らかになりました……」

「な、なになに!?」

「全四章だと思われていた《クレア叙情詩》に、まだ続きかあったんですって!」

「えぇっ!?」

「そ、そうなんだ!」

「常識を覆す事実を突き付けられて、歴史家や文学者の皆様も大騒ぎですよ!」

「だろうな」

「それって、今までの本とかも書き換えないといけないって事だよね!?」

「そうなるよね!?」

 

「そもそも、《クレア叙情詩》の【クレア】って、何のことだと思いました? 最後まで出てきませんでしたよね」

 

「そういやそうだな」

「うん。そう言われればおかしいわね」

「わたしも、幼馴染の名前に似てるな~くらいにしか思ってなかったのですが、実は五人目の英雄の名前なんですって。そう、《クレア叙情詩》には、幻の《第五章》があったんです!」

「なるほどな」

「それで《クレア叙情詩》なのかぁ~~!」

「なんか納得ぅ」

 

「なんと、【束縛の王レストリ】と、【復活の妃リナーシタ】の間には、一人娘の【クレア】がいたのですよ!」

 

「娘の名前なんだ!」

「娘の名前だったのか……!」

「いや~、知りませんでした。わたしも《クレア叙情詩》には、けっこう詳しいんだけどなー」

「まぁ、研究者も知らんぐれぇの情報だしな。おめぇが知ってたら逆に凄ぇと思うぜ」

「うん。尊敬するわ」

 

「この情報を提供してくださったのは、【C.P.T.】の練習を見物にいらした、先々代の座長さんです」

 

「その人、もう来てるんだね」

「やっぱ大事な演目だし、気になるんだろうな」  

「何でも、《クレア叙情詩》が誤って解釈されているのが我慢ならず、正しい情報を教えてくださったとか……」

 

 【ミズキ】は不思議そうに、「解釈が間違っているって、どういうことでしょうね」と言った。

 

「歴代の英雄たちは、人間の絆の強さを教えてくれたのではなかったのでしょうか……?」

 

 アルバストゥルは、なんとなくだがその章の内容が分かった気がした。

 

「その答えは、次のクエストによって、明らかになるそうです」

「まだクエ受けにゃならんのかよ」

「先々代の座長さんが言われた正しい解釈を明らかにするため、もうしばらくご協力をお願いします」

 

「……。へいへい」

 アルバストゥルは溜息をついた。

 

「なんかワクワクするぅ」

「オレも♪」

 二人は対照的であった。

 

「《クレア叙情詩・創生の章》、【王女クレア】の狩猟を再現したクエストを、今すぐ受注されますか?」

 

 【ミズキ】はクエスト内容を言わなかった。

 

 

 

 




「この章で終わりだと言ったな。あれは嘘だ」(ミズキ)
てか、「ミズキ」は知らなかったので、この場合は「C.P.T.」の創設者のセリフなのかもしれませんね。

この「大剣」は「ベナトール」しか持っていないので彼に装備してもらって撮影しています。
といっても後ろ姿なので分かりませんがね(笑)
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