今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
アルバストゥルは今、【火山】に来ている。
そして【バサルモス】を追い回している。
何故こんな事をしているかというと、【武具工房】でこんなやり取りがあったからだ。
「【親方】、〈ガード性能〉の上がる装飾品を作りてぇんだが」
「それなら【鉄壁珠】と【天壁珠】だな」
「【鉄壁珠】は組み込んだ事あるから知ってる。スキルポイントは確か1、だったよな?」
「あぁそうだ。【天壁珠】の方はポイント3もある優れものだぜ。だがスロットが2つ必要になるぞ」
「ふぅむ……」
自分の持つ防具のスキルポイントやスロットの数などを考え、それらと照らし合わせるアルバストゥル。
そして、スロット2つを使っても大丈夫だなと判断した。
「なら【天壁珠】を作るわ」
「ガッテンだ。……おっと素材が足りねぇな」
その足りない素材と言うのが【岩竜の涙】だったのだ。
【岩竜の涙】というのは【バサルモス】の涙腺の辺りで稀に発見される淡い桃色をしている鉱石の事で、宝石であるかのように綺麗なので装飾品としても使われる物である。
しかしこの鉱石は【落とし物】でしか手に入らないという特徴がある。
【バサルモス】が【落とし物】をするのは岩に擬態して背中だけ出して地面に潜っている時に、脅かして飛び出させた時のみ。
しかも必ずしも落とすという訳では無く、何も落とさなかったり体表に付いていた【カブレライト】などが落ちるだけ、という事もあるのだ。
なのでうっかり討伐でもしてしまうと二度と手に入らない。
という事でアルバストゥルは擬態時に脅かしては【落とし物】を確かめ、何も落とさなかったり【岩竜の涙】以外だったら一度エリア外に出、再び擬態するのを待って入り直してまた脅かす、という事を先程から繰り返していたのだった。
同じ場所であまり脅かすとその場所が危険と判断して移動してしまうため、こちらも追い掛ける。
予め【ペイントボール】を付けてはいるが長い時間だと臭いが消えてしまうため、時折投げてはそういう事を凝り返した。
稀に見付かるという程なので一個体で早々見付かる訳はなく、【落とし物】自体もそんなにしないので落とさなくなったと判断した個体はサッサと見切りを付けて討伐もしくは捕獲する。
そしてそういう依頼があればその通りにしたが、無い場合はそのままにして帰った。
何度やっても中々見付からない(落してくれない)のでこちらも泣きたくなった頃、ようやく必要数が揃ったので【武具工房】へ持って行く。
他の素材は【錆びた甲殻】と【修羅原珠】で、なので【塔】で採掘したり【古龍迎撃】で【クシャルダオラ】が来襲した時に参加しといて良かったと彼は思った。
出来た【天壁珠】を空いていたスロットにはめ込む。
スキルポイントを調節して、〈ガード性能+2〉のスキルを手に入れる。
このスキルは前にも手に入れていたのだが、今使っている武具でも欲しかったのだ。
実際はこんなに悠長な事はせず、「落とし物」をしてそれが「岩竜の涙」だったら狩猟し、それ以外ならリタイア、という事を繰り返してました。