今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
ハンターが纏う防具に組み込まれるスキルの中に、〈審判〉というスキルがある。
このスキルポイントがプラス二十に働くと〈女神の抱擁(四分の一の確率で受けるダメージが無効)〉になり、マイナス二十に働くと〈死神の抱擁(八分の一の確率で強制的に戦闘不能)〉になる、というスキルである。
小心者のハンターは〈女神の抱擁〉もしくはそれよりは効果は薄いがスキルポイント十で発動する〈女神の施し(八分の一でダメージ軽減)〉を付けたりするのだが、命知らずな者は逆に、〈死神の抱擁〉もしくは十六分の一で戦闘不能にさせられる〈死神の裁き〉をわざと付けて、キャンプ送りのスリルを楽しむ事がある。
このスキルは『ダメージを受けると発動する』ため、例え普段ならば取るに足らない【ランゴスタ】の一刺しや、【ケルビ】や【アプケロス】などの【草食種】の頭突き、うっかり【小樽爆弾】に巻き込まれたり【火山】で間欠泉などに巻き込まれたりするだけでも強制的にキャンプ送りになってしまうのだ。
そして、あえてそのスキルを付けてクエストに挑むという、命知らず(というか馬鹿)限定のような依頼を出すのも【ハンターズギルド】の良い所(?)である。
「うっひゃあっ!? こっち来んなあぁっ!」
情けない声を出して、カイが【ランゴスタ】から逃げ惑っている。
場所は【火山】。依頼は『【バサルモス】を狩猟して来い』というものだった。
「その頭で泣きそうな声出しても気色悪いだけだぜ」
アルバストゥルが笑っている。
この依頼を受けた者は全員〈死神の抱擁〉が頭防具のみで付く【スカルフェイス】という兜を強制貸与されており、文字通り外見が骸骨そのものの顔になっているために、そんな声を出そうものなら違和感ありまくりなのだ。
「…………」
と、突然ベナトールが無言のまま倒れた。
「きゃっ、ベナどうしたの!?」
慌てた声を上げるハナの目の前で、彼は猫車で運ばれて行った。
唖然として見送っている側にいたのは【ガミザミ】。どうやらそいつが出て来た時に当たってスキルが発動したらしい。
「やっぱオッサンでもダメか。やべぇなこのスキル」
自分も当たったら怖いので、速攻で【ガミザミ】をやっつけながら言うアルバストゥル。
だがその口調は明らかに楽しんでいる。
「さて、三乙しねぇ内にサッサとやっちまおうぜ」
『三乙』とは『三回戦闘不能になってキャンプ送りになる』事を指す。参加した者全員で合計三回戦闘不能になると、クエストを失敗したと見なされて強制的に帰還させられるのだ。
これはどの【村】でも【街】でも等しく採用しているシステムで、これによってハンターの命を護る意味合いもある。
【ハンターズギルド】が創立してから脈々と受け継がれて来ているシステムであるが、その目が行き届いていない、ギルドに報告されていないような市町村がもしあるのならば、もしかしたらそこでは未だにこのようなハンターを護る制度というのは成り立っていないのかもしれない。
そうこうしている内に見付けた【バサルモス】は、地図で言う《7》にいた。
「せぇ~~の!」
擬態して背中だけ出している【バサルモス】にそっと近寄り、溜めるアルバストゥル。
その絶妙なタイミングを見計らったかのように、硬直している彼の背後に近寄って来たものがいた。
「あうっ!?」
アルバストゥルは背中にチクリとした痛みを受け、溜めた姿勢のまま力尽きた。
そして猫車で運ばれて行った。
「わはは、笑ってたヤツが刺されてやんの」
カイが大笑いしている。つまり【ランゴスタ】に刺された事でスキルが発動してしまったのだ。
「【ランゴ】めえぇ!!!」
彼が【ベースキャンプ】で怒りの声を上げたのは言うまでもない。
「『三乙』目の奴が負けな」
帰って来たアルバストゥルがそんな事を言っている。
「いやこれそんな勝負じゃないだろっ」
「……。面白い、受けて立とうじゃねぇか」
「ちょっとベナ、なに乗ってるのよっ」
「やっぱオッサンだぜ。そう来なくっちゃな」
「いやおかしいよね!?」
「負けた奴は一番高い食材で奢りな」
「いよっし! 頑張るっ♪」
「ちょっとカイ、張り切ってんじゃないわよっ」
結局、この謎の勝負に負けて高い食事を奢らされる羽目になったのは、言い出しっぺのアルバストゥル自身だった。
今でも「武具を貸与されるクエスト」というものは時折配信されるのですが、このクエストのように「遊び(?)」感覚で参加出来るものは無くなってしまいました。
まあ仲間同士で「縛り」を付けて遊んだりはしているようですので、わざわざギルドが提供する必要も無くなったのでしょうね。