今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
ベナトールの「仕事」について書いてたら、もし他のキャラが「ギルドナイト」だったとしたらどんな風になるだろう? と考えるようになりましたので、書いてみたんです。
「【マスター】、お呼びでしょうか」
ある日【ギルドマスター】の部屋に端整な顔立ちの青年がやって来て、足元に跪いた。
「カイ、お主、女装が得意じゃったの?」
「……得意という訳ではありません、素で女に間違えられる事が多いだけです」
そう答える彼は、平伏したまま不満気な顔をしている。
「くっふふ……」
分かっていた【ギルドマスター】は抑えた様に笑うと、次のように言った。
「あのなカイ。お主に密猟団のカシラを始末して欲しいんじゃがの、そ奴が色仕掛けに弱いという報告があるのじゃよ」
「……。つまり、オレに女装して近付け、と?」
「まぁ無理に女装まではせずとも良いがの。じゃが、どうせ間違えられるなら間違えられたまま潜入出来ればやりやすいと思うたまでじゃ」
「……。分かりました。では、それに近いような格好で行って来ます」
「バレたらバレたで構わんが、任務だけは失敗せんようにな」
「了解しました」
密猟団のアジトは、【ジォ・テラード湿地帯】の洞窟にあった。
【ミナガルデギルド】のハンターが【沼地】、それ以外、主に【ドンドルマギルド】のハンターが【旧沼地】と呼ぶ狩場である。
暗く寒い洞窟は【フルフル】が好む場所ではあるのだが、ここは天井が一部崩れており、焚火をすれば暖かいのと密閉じゃないので煙が抜け、従ってそれを嫌がる【モンスター】が寄って来ないのを利用して活用の場にしているらしかった。
今密猟団は酒盛りの真っ最中のようだ。
少し暗がりの、火がチラチラと照らす辺りに本日犠牲になったであろう、【蒼火竜】及び【桜火竜】の素材が無造作に並べられてあった。
剥ぎ取ったばかりのようで、まだ生々しい血が付いている。しかも【ギルド】所属のハンターと違い、必要な分どころか甲殻も鱗も全部剥いだんじゃないだろうかと思える程の量があった。
洞窟の奥、壁際に【ラージャン】の金毛の敷物をしいて寄り掛かっているのが多分カシラだろう。女を侍らせているから。
そして彼女らをよく見ると、鎖で繋がれているのが分かった。
恐らく近くの【街】や【村】で攫って来て、無理矢理使役させているに違いない。
「ふぅ……」
大きな鍾乳石の隙間からそんな様子を窺っていたカイは、聞こえないようにそっと溜息を付いてから出て行った。
今彼は襟とポケットと袖口がレースになったシャツと、柔らかそうなズボンを履いている。完全に女装する事はやめたのだが、この格好なら女に見えなくもなかったからだ。
「よぉ姉ちゃん、見ねぇ顔だな?」
「どこから来た?」
近付く彼を見付けて酒臭い息を吐きつつも、一応警戒する団員達。
「あああのぉ……。道に迷って彷徨ってたら、洞窟が見えて、それで奥から明かりが漏れててたものですから……」
おずおずというように、話す。
もちろん不安げな顔を忘れずに。
カイの地声は元々高い方だったが、それでも意識して高めの声を出した。
「おぉそうか! それはさぞや不安だったろう。遠慮せずに焚火に当たるが良い」
団員達は疑うのをやめ、その代わりにねっとりとした眼差しで彼を舐るように見ながら、中に招き入れた。
「あ、ありがとうございます……」
カシラの顔を火が照らす所まで近付くと、顔色が変わった。
そうして驚いたように見詰めた後、下卑た笑いにゆっくりと歪んでいった。
「そいつは?」
「へい、なんでも道に迷ったようで……」
「そうかそうか! 俺がこいつらを仕切っているカシラだ。もうちょっとこっちに来い」
カシラは嬉しくて堪らないというような顔をしながら、乱暴にカイの腕を掴んで引き寄せた。
「あっ……」
わざと情けない声を出して引かれるままにカシラの胸に倒れ込むカイ。
一応抵抗してみたが、やはり当たり前のように放してくれなかった。
「中々上物じゃねぇか」
カシラはカイの顎を掴んで呟いた。
怖くて堪らないというような演技をするカイ。
「そう怖がるな。大人しくしておれば悪い様にはせん」
「本当に……?」
「あぁ、本当だ」
そんな様子を見ながら、団員達はニヤニヤ笑っている。
ちらりと目を移すと、鎖に繋がれている女達が悲しそうな目で彼を見ていた。
「あああのぉ……」
「……ん? なんだ?」
「この、女の人達は、鎖に繋がれているようですが……」
「あぁこいつらは俺の奴隷だからな。逃げんように繋いでいるのよ」
「可哀想……」
「可哀想なものか。抵抗するからこんな事になるのだ」
カシラは「それよりも……」と言うと、再び下卑た笑いを浮かべた。
「彷徨ったにせよこんな所まで来たら当分帰れまい。その間に楽しませてくれ」
そう言うとカシラは酒臭い息を吐きながら、彼に顔を近付けていった。
「い、いや!」
「ほれ大人しくしろぃ」
「いやです! 放しむぐっ!」
カイは唇で無理矢理口を塞がれ、押し倒された。
パンッ!
その時乾いた破裂音がしたと思ったら、ずるりとカシラの体がカイからずれ、地面に転がった。
見ていた女が悲鳴を上げたが、団員達は現実を見ていないかのように驚愕の表情で固まった。
転がったままピクリとも動かなくなったカシラの胸の中央付近に小さな穴が空いており、そこから溢れた鮮血が、見る見るうちに血溜まりを作っていく。
「あぁ、なんて事を……! ごめんなさい……」
カイの手には片手で持てるサイズの【ライトボウガン】が握られており、銃口からはまだ煙が立ち上っていた。
「おお、お前……。お前よくも……!」
ようやく現実を理解したらしい団員の一人が言う。
と、団員の中に、カイの持つ【銃】の存在を知っている者がいた。
「それは【銃】!? 貴様、き、貴様もしかしてギルドナ――」
「ストップ! その言葉は禁句でしょ?」
【ギルドナイト】と言い掛けた者の言葉を遮って、その者に銃を向けるカイ。
そうしつつ、内心吐きそうになりながら袖で口元を拭った。
「さて。処刑命令を受けたのはカシラだけなんだ。抵抗しないなら君達は見逃してあげなくもないんだけど……」
「ふざけるな!」
「ブチ殺してやる!」
「どうせ君達烏合の衆でしょ? それとも烏合の衆だから無駄死にを選ぶのかな? だったら烏合の衆らしくせいぜい頑張って抵抗する事だね」
煽る様なカイの言葉に激昂しない者はこの中にはいない。ただし女達を除いて。
「舐めやがって!!」
団員達はそれぞれの獲物を構えた。
カイは素早く目を走らせて、彼らの持つ武器種を確認していった。
【片手剣】【双剣】【太刀】【ライトボウガン】……。
狭い所で不向きな【太刀】は無視するか。こいつと【ライトボウガン】は、仲間を巻き込むのに使えるだろ。
そう決めて、いきなり発砲した。
声を上げる間も無しに【双剣】の者の額に穴が空いた。
それを戦闘合図に一斉に向かって来るのを躱しながら走り、鍾乳石の裏に隠れる。
隠れながら撃っていると【散弾】を装填した【ライトボウガン】に破壊されたので、飛び出して撃ちつつ走り、倒れている【双剣使い】から獲物を拾う。
一般人のふりをしていたので【ギルドナイトセイバー】を持って来れなかったからだ。
狭い中での乱闘で女達に弾が当たるのを恐れたカイは【銃】を仕舞い、以降は【双剣】での戦闘へ切り替えた。
彼女らに当たらない軌道で【ライトボウガン】の発砲を誘い、仲間に当てる。
同じように【太刀】の薙ぎ払いを誘って仲間を斬らせたりした。
人数が少なくなってくると自分から積極的に動き、「巻き込みご苦労」と、今まで仲間を巻き込むように誘っていた【太刀】や【ライトボウガン】も仕留めていった。
「……。ふぅ」
血塗れの屍の中でただ一人佇みながら、溜息を吐くカイ。
「怖がらせてごめんね。大丈夫だったかい?」
カシラの死体を弄って鍵を見付け、鎖に繋がる枷を外そうと女達に近付いたカイだったが……。
「きゃあぁ! 来ないでぇっ!」
「いやあぁっ! 殺さないでえぇっ!」
返り血を全身に浴びているカイを見て、鎖一杯に抵抗し、暴れる。無理もない事ではあるのだが、これでは枷の鍵穴に鍵が入らない。
「仕方ないな」
呟いたカイは彼女らを一旦気絶させてから枷を外した。
隠して置いた気球に(一人用なのでぎゅうぎゅう詰めになったが)女達を乗せて一旦【ドンドルマ】まで帰り、【ギルドマスター】に報告。
落ち着くまで保護してから各住居に彼女らを送り届けるのは同僚に任せる事にした。
長く合わせる事で顔を覚えられたくなかったのと、あれ程怯えられては自分では送れないと思ったからである。
処刑対象以外を殺した事については致し方なしというのと、ハンターの武器を使った事実と素材の剥ぎ取り方の報告でその者らが違反者扱いされたため、お咎め無しになった。
友人曰く、「カイは男らしい性格」らしいんですが、なので「女扱いされる」のは非常に不満らしいんですが、「私の中のカイ」は「しょっちゅう女に間違えられる程の美貌とハンターらしからぬ華奢な体型の持ち主」なので、きっと「ギルドナイト」になっていたとしたら色仕掛けで任務を執行するんだろうなと(笑)
てか、「ドス」時代に友人が操作していた「カイ(kai)」自体が元々甲高い声の持ち主だったんですよ。
もう掛け声聞いてたら耳が痛いくらいの(笑)
なのでそんな声で「男らしい」と言われてもねという感じです。