今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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もしも(パラレルワールド)シリーズ、「アルバストゥル編」。
シチュエーションは「ハナ編」と同じですが、今回は王道といいましょうか、「暗殺者」らしい演出をするために明り取りを「焚火」から「ライトクリスタル(ランプ)」に変えております。


もしもアルバストゥルが【ギルドナイト】だったら

 

 

 

「【マスター】、お呼びでしょうか」

 ある日【ギルドマスター】の部屋に褐色の肌と青い髪の逞しい青年がやって来て、足元に跪いた。

 

「アレクトロ。お主に密猟団のカシラを始末して欲しいんじゃがの」

「畏まりました」

「アジトについては以下の通りじゃ。しくじるなよ?」

 

 アルバストゥルはアジトの場所や見取り図が書いてある紙を渡された。

 

「……。団員と戦闘になった時は?」

「致し方なし、じゃろうのぉ。逃がすにしても相手は密猟団じゃ。全員違反者として扱うしかないじゃろうしのぉ」

「では、そうなったら全員始末しても良い。と?」

「そうなるじゃろうのぉ」

「了解致しました」

 

 

 密猟団のアジトは、【ジォ・テラード湿地帯】の洞窟にあった。

 【ミナガルデギルド】のハンターが【沼地】、それ以外、主に【ドンドルマギルド】のハンターが【旧沼地】と呼ぶ狩場である。

 

 暗く寒い洞窟は【フルフル】が好む場所ではあるのだが、ここは天井が一部崩れており、外気が入り込んで寒くないのを利用して活用の場にしているらしかった。

 

 今密猟団は酒盛りの真っ最中のようだ。

 

 今は夜で外では月が出ているが、現在は霧に隠れて薄暗闇になっている。

 だが中は【ライトクリスタル】を数か所配置してあるせいで、昼間と変わらないくらい明るい。

 

 少し暗がりの、光が陰る辺りに本日犠牲になったであろう、【蒼火竜】及び【桜火竜】の素材が無造作に並べられてあった。

 剥ぎ取ったばかりのようで、まだ生々しい血が付いている。しかも【ギルド】所属のハンターと違い、必要な分どころか甲殻も鱗も全部剥いだんじゃないだろうかと思える程の量があった。

 

 洞窟の奥、壁際に【ラージャン】の金毛の敷物をしいて寄り掛かっているのが多分カシラだろう。

 

 パシュッ!

 

 と、微かな破裂音のようなものがしたと思ったら、唐突に【ライトクリスタル】の一つが割れた。

 

「なんだぁ?」

 訳が分からないというように団員の一人が呟く。

 

 そうしている間にも次から次へと【ライトクリスタル】が割れていき、アジトの中はとうとう外と同じ暗闇になった。

 前触れもなく起こった出来事に慌てる団員達の声が聞こえる。

 

「えぇい落ち着け! すぐに目が慣れる!」

 

 カシラであろう声が響くと団員達は落ち着き、大人しくなった。

 

 が、彼らの目が外の闇に慣れる前に事態は動いた。

 

「ぎゃあぁっ!?」

「ぐわあぁっ!?」

 あちこちから次々に悲鳴が上がり、団員達は訳も分からずに死んでいった。

 

「なんだ!? 何が起こっている!?」

 薄暗闇の中、何かが自分達に襲い掛かっているようだというのだけは分かる。影が素早く動き回っていたからだ。

 だが【それ】が【モンスター】であるのか【人間】であるのかを判断する間は無かった。

 

 その時霧が晴れ、偶然にも月の光がアジトの中の光景を浮かび上がらせた。

 

 生き残った者が見たものは、無造作に転がった血塗れの死体。

 それらは今まで酒を飲んだり談笑していたりと楽しげにやっていた同じ場所にあった。

 

 そしてその中に佇んでいるのは、布製に見える黒い服と黒いピッタリした皮ズボン、白い羽の付いた黒いつば広帽子という、おおよそ狩場には似付かわしく無い恰好をした者。

 黒いベストの下のシャツは元々白かったようなのだが、返り血で染まってしまっている。

 

「ぎ、ギルドナ――!?」

 

 恐怖に震えつつも声を上げた者は、最後まで言う事すら許されずに【サーベル】で喉を切り裂かれ、驚愕のまま絶命した。

 

 

「……。後はお前だけだぜ」

 

 一人だけ残されたカシラに向かい、相手は初めて声を発した。

 目深に被ったつば広帽で影になり、口元しか見えないが、声からして青年だろうと分かる。

 

 その肌は、褐色をしていた。

 

「……あ……。あぁ……」

「どうした声も出ねぇか? 少しは反撃したらどうだ? 処刑対象さんよ」

「て、手下は関係無かっただろう!? 何も殺さなくても――」

「甘ぇな。【ハンターズギルド】が密猟者を見逃すはずがねぇだろぉ? 例えこの場から逃げ果せたとしてもな」

 

 彼はそう言いながら、ゆっくりと【銃】をカシラに向けた。

 

「密猟及び過剰な剥ぎ取りの罪で【ギルドナイト】が貴様を処刑する。あばよカシラ」

「やめ――!」

 

 パシュッ!

 

 【サイレンサー】を取り付けた事による発砲音が抑えられた音がして、カシラは額に穴を空けて崩れ落ちた。

 

 

 

 

 




「フロンティア(現在)」でも夜になると「ライトクリスタル」もしくは「ノヴァクリスタル」と思われる光る結晶をカウンターに設置して明り取りとしているようなので、少なくとも「フロンティア」の世界では「ランプ」と言えば「火ではなく、光る結晶を使うもの」なのかもしれません。
なので、私もこちらの方を採用しております。

「銃(リボルバーガン)」には「サイレンサー」は取り付けられないらしいんですが、多分この場合の「銃」というのは私達がイメージするものではないのでしょうね。

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