今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
今回は逆に彼が「ギルドナイト」じゃない場合はどうするかという話です。
シチュエーションは「アルバストゥル編」と同じで「焚火」ではなく「ライトクリスタル(ランプ)」の方を採用しています。
ある日ベナトールは、【ジォ・テラード湿地帯】で狩りをしていた。
ここは【ミナガルデギルド】のハンターが【沼地】、それ以外、主に【ドンドルマギルド】のハンターが【旧沼地】と呼ぶ狩場である。
依頼内容のターゲットは【フルフル】だったので洞窟を中心に探していた彼は、ふとある洞窟の奥で、何やら人の騒ぎ声が聞こえているのに気が付いた。
明らかに戦闘中の声ではない。
おまけに笑い声なども聞こえて来た。
不審に思ってそろそろと中に入って行くと、奥の方に明かりが見えた。
鍾乳石に隠れながら近付いて行くと、どうやらハンター達が大勢集まって酒盛りをしていると分かる。
その場所は少し広まっており、天井の一部が崩れて外の外気が入って来ているからなのか、あまり寒さを感じなかった。
外は夜で、月は出ているものの今現在は霧に隠れて薄暗闇である。
が、その中は【ライトクリスタル】がいくつか配置されてあるせいで、昼間と変わらないくらいに明るかった。
ふと見ると、少し暗がりの光が陰る辺りに、【蒼火竜】及び【桜火竜】の素材が無造作に並べられてあった。
剥ぎ取ったばかりのようで、まだ生々しい血が付いている。そしてそれは、必要な分どころか甲殻も鱗も全部剥いだんじゃないだろうかと思える程の量があった。
こいつら、【ギルド】所属のハンターじゃねぇのか?
ベナトールは大きな鍾乳石の隙間から様子を見ながらそう思った。【ギルド】所属のハンターならば、これ程過剰に剥ぎ取りをする事は許されていないからである。
だとすれば、密猟団である可能性が高い。
一旦引き上げて【ギルドマスター】に報告した方が良いな。
そう思ってそっとその場を離れようとしたその時――。
「誰だっ!」
しまった!
ベナトールは舌打ちした。すぐに逃げようと駈け出したが、それより早く捕まってしまった。
「……。貴様ハンターだな?」
カシラと思われる、【ラージャン】の金毛の敷物の上に座って高圧的な態度で岩壁に寄り掛かっている者の前に連れて行かれると、彼はそう言った。
「どこの所属だ?」
「【ドンドルマギルド】だ。おめぇらは【ギルド】所属じゃなさそうだが、密猟者なのか?」
「……。鋭い野郎だな。それが分かってんなら生かして帰す訳にはいかん。ハンター同士仲良く出来るかとも思ったんだが、残念だな」
そう言うとカシラはスッと手を上げた。
【太刀】を持った者がベナトールの横に進み出て、上段に構えた。
「殺(や)れ」
命令と共に彼の首目掛けて【太刀】が振り下ろされる。
腕を取られて跪いた状態だったベナトールは、力任せに腕を振り解いて同時に横転して避けた。
たちまちその場にいたカシラ以外の全員が、それぞれの獲物を構えて囲む。
一斉に掛かって来るのを持ち前の動体視力と素早さで避けていく。
「……ほぉ、素早いな」
カシラが感心したように呟くと、「止まれ野郎共!」と号令した。
「おめぇ使えそうじゃねぇか。俺らの仲間にならんか?」
「断る……」
「【ハンターズギルド】に尻尾振っても制約ばかりで自由にならんだろうが? もっと窮屈な思いせずに好きなだけ狩りてぇと思わねぇか?」
「……。俺は今の境遇に満足している。それに元来【ハンター】というものは過剰に狩って生態系を壊すものじゃなく、生態系を守るものだ。要は生態系のバランスブレイカーな訳なのだよ。それを密猟してまで好きなだけ狩ろうなんぞ勘違いも甚だしいぜ。そんな輩と仲間になれだと? 片腹痛いわ」
「そうか……」
残念そうに言ったカシラは、「ならば話は終わりだな。殺れ!」と再び命令した。
ベナトールは攻撃を掻い潜りつつ、【ライトクリスタル】を割っていった。
外と同じ暗さにして、少しでも逃げる時間を稼ぐためである。
そうしながら少しずつ洞窟の入り口の方へ移動して行った彼は、隙を見て逃げ出した。
「待てぇっ!」
追い掛けて来たがすぐに闇に眼が慣れなかったせいなのか、なんとか逃げ果せる事に成功する。
無事に【ドンドルマ】まで帰り着いたベナトールは【ギルドマスター】に報告し、功績を認められてランクが一つ上がった。
少し経って、『【ジォ・テラード湿地帯】をアジトにしていた密猟団が全滅したらしい』という噂を聞いたベナトールは、これで命を狙われずに済むと内心ホッとしたのであった。
彼は「ギルドナイト」になる前から優秀なハンター(という設定にしている)なので、こんなピンチでも切り抜けられるのでしょうね。
それに「ハンター」としての考え方が「真面目」なので、密猟団に誘われたとしても揺らがないんだと思います。