今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
なのでこの話の中に出て来る「シキ国」は、あくまでも「世界地図を見て私が勝手に想像したシキ国」です。
「MHX」などに出て来る「シキ国」とはまったく別ものと思ってください。
ちなみに「私の世界のシキ国」は、「日本風の文化を持つ戦国時代ぐらいの国」という設定です。
なので民族もそれっぽい感じになっています。
原文が長いため、いくつかに分けて投稿します。
【ハンターズギルド】が認定している【称号】の中に、【サムライ】というものがある。
これは各ギルドのある大陸とは別大陸にある【フォンロン地方】から、更に海を隔てて南に下ると見えて来る島国【シキ国】からもたらされたものらしい。
というのも【ハンターズギルド】の発祥地である【ミナガルデ】もしくは【シュレイド地方】(諸説あり)に、その昔この国から流れ着いた鍛冶職人がおり、その者が当時の鍛冶ギルドの長をもって『神の腕』と言わしめて教えを乞う程だったそうで、その彼の称号を忘れないように【ハンターズギルド】が取り入れたものだと言われている。
【シキ国】から伝わった鍛冶技術は今でも伝承されており、特に【太刀】を作る時などに発揮されているとか。
【ジォ・ワンドレオ】には【双剣】の技術が伝わったとされ、今でもその街は【双剣】発祥の地としてハンターの中でも名高い。
そんな極東の島国からでもハンター生活その他を始めるために各市町村にやって来る者はおり、それ程多くはないにしても【ドンドルマ】で出会う機会があったりするので、ベナトールの仲間内でもたまに話が出る事がある。
なにせその国の出身者には誰にでもすぐに分かる様な特徴があったからである。
まず見た目だが、黒髪黒目の黄色人種である事が多い。
そして普段着もしくは各地に到着して間もない頃などに、【着物】と呼ばれる奇妙な民族衣装を着ている。
これは一枚布をただ繋げて作っただけのようなものを器用に体に巻き付けて羽織るように着る服装らしく、【帯】と呼ばれる幅広の長い布を胴に巻く事で固定するのだとか。
【帯】は女性物の方が幅が広く、胸の下あたりから骨盤の上あたりまであるものもある。
それを体の前ではなく後ろ側で結び、女性物は蝶のような形で結ばれている。
履物も変わっていて、ブーツのようなものでは無くて親指と人差し指だけで挟んで固定するような平べったい【草履】というものか、もしくは同じようにして履く木で出来て靴底に二本足の付いた【下駄】というものを履いていた。
口調もかなり特徴的であり、特に男性は一人称を「拙者」と言う者が多く、語尾に必ず「ござる(御座ると書くらしい)」を付けて話す。
各地に馴染むと服装や履物は郷に従うようなのだが、特に特徴的な男性の口調はそれ程変わらなかったので、一言でも会話を交わした者はすぐに見抜く事が出来た。
髪型は、男性は【サムライスタイル】と呼ばれる長い髪を後頭部で纏めて結う【髷(まげ)】という結い方をした者が多く、女性もそんな結い方か、もしくはそのまま長く背中に流したもの。
なんでも特に女性の髪は命に等しいらしく、切る者も少ないので長い者だと引き摺る程伸ばしていたりする。だがそのままでは流石に狩猟では邪魔になると見えて、狩りの時だけ短くまとめたり兜の中に押し込んだりしているようだ。
男性も女性もくせ毛があまり無いような直毛が多く、特に女性の艶やかな黒髪は色っぽいので【シキ国】出身者以外でもファンが多い。
武器は【太刀】か【双剣】を好み、【弓】を使う者は《サイト(照準器)》や《スタビライザー(発射振動、衝撃避け)》の付いた物よりも、ただ木を曲げただけのように見える【和弓】と呼ばれる部類を使う方が、彼らの中では使い勝手が良いそうな。
【ボウガン】を使う者でも【鬼ヶ島】のような、弓の反動で弾を飛ばすタイプではない物が好まれるようだ。
鎧は【暁丸】【茜丸】のような【武者鎧】と呼ばれるタイプを好むため、その素材である【ラオシャンロン】が狩れるようになるまではひたすらランク上げに務めるのだとか。
彼らに考慮してか、最近【ハンターズギルド】の【武器工房】で研究を重ね、他の素材を使って作る【着物】に似た防具が出回り始めたため、そちらを着る者も。
その姿が格好良いと思う出身者以外の者もおり、特に【着物】に似た防具を着るハンターも多くなって来た。
彼らはかつて出身国の鍛冶職人が大陸にもたらした【サムライ】という称号をすでに持っているか、持っていずともこちらで取るかしてその称号を誇りに思っており、その称号の取得条件を満たして上のランクに上がり、他の称号を貰える名誉を得ても頑なにその称号で通していた。
さて、そんな【シキ国】から使者が来て、【ギルドマスター】に謁見を乞うた。
前もって【伝書鷹】による連絡があったので、特別室で対応する。
その際ベナトールにも声が掛ったのだが――。
「――という事で、ベナトール殿に御同行願いたいのでござる」
「何故こ奴なのじゃ? 他にハンターはいくらでもおるぞい。G級ならまだしも、その条件ならばHR上位でも事足りる。何故こ奴に拘る?」
「上様の御心中までは分かり兼ねまする。とにかく『是非に』と言う事でしたので……」
「ふむ……」
ちなみに、『上様』というのは【将軍】という職に就いているお偉方の呼称なのだそうな。
【シキ国】の中では、いわばこちらで言う【王】のような、国を支配する者を指すのだという。
その者は別名【戦の神】とも言われるように、戦、すなわち戦争となれば大規模な軍隊を率いて自らを持って出陣し、勝てばその地域を支配下に置く事が出来る権利があるのだとか。
【シキ国】では内乱が勃発する事があり、未だに各地で諍いが絶えないのでそれらを力ずくで押さえて軍による支配を広げる必要があって、それらを纏めるのが【将軍】なるものの役割なのだとか。
全体的に支配出来た者を『天下取り』と呼び、以後その者に忠誠を誓う事で国内の均衡を保つのだという。
ところが近辺になって、ほぼ環状の形になっている島国が囲む湾内に【ガノトトス】が棲み、条件が良かったのか中で大繁殖したらしくて湾内の各地で目撃されるようになった。
一般人はおろか【武士】と呼ばれる軍人も手が出せず、これでは戦どころではなくなった。
慌てて大陸に渡っている出身国のハンターを呼び寄せようとしたものの、大陸は余りにも広く、また各地に散らばっているために月日が掛かり過ぎるという事で、取り敢えず一番近くの【ハンターズギルド】本部のある【ドンドルマギルド】に連絡せよとの通達が出、まずは【伝書鷹】で連絡した。
【シキ国】の場所から言えば【ジャンボ村】が一番近いのだが、そこは小さな村で村付きのハンター以外はいないので、ギルド本部から直接派遣してもらった方が早いとなったのだそうな。
更に【ベナトール】の名が遠い【シキ国】にも届いていたらしく、『噂では相当腕が立つらしいから見てみたい』と【将軍】が言い出した。
それで使者まで派遣されたのだとの事。
「しかしのぉ、【シキ国】は遠い。【気球】で行くにしてもすぐに行って戻るという訳にはいかん。ましてや【ガノトトス】の大狩猟ともなれば、いかに短時間で仕留められたとしても場合によっては何ヶ月も掛かってしまう。そんな中々帰って来れない国へ、重要な任務を任せている者を行かせるのはのぉ……」
「お願いでござりまする、お連れ出来ないとなれば、拙者は切腹せねばなりません。この命は上様に捧げている身故惜しくはありませぬが、使命を果たせずに死ぬのは真に口惜しうございます」
ちなみに『切腹』というのは、忠誠を破ったなどして上からの命令により彼ら独自の方法で自殺する事を言う。
なんでも短刀で自らの腹を一文字に割き、看取る者などが【太刀】でその首を斬り落とす(『介錯』というらしい)のだとか。
「……。切腹覚悟で来たとなれば、仕方あるまいのぉ……」
「真(まこと)でございますか!?」
「良いんですかい? 当分の間帰って来れなくなるかもしれませんぜ?」
「代わりはおるのじゃ。それにお主ばかり頼るのも、儂の悪い癖じゃでな」
「御厚意、感謝の極みでございまするぅ!」
使者は、床に額を擦り付ける程に平伏した。
「では命令じゃベナトール。仲間と共に【シキ国】へ行ってまいれ」
「……。何故あいつらを?」
「条件ランクを満たしているからに決まっておるじゃろう。それにあ奴らを【シキ国】には行かせた事が無い。良い機会じゃし、良い経験になるはずじゃて」
「レインには、なんと?」
「『【シキ国】に出陣する』と。じゃが待つのが嫌と言うなら連れて行ってやれ。彼女も知見を広められるでな」
「承知しました」
「――という訳なんだわ」
出発するのは各準備が整い次第という事だったので、その間にアルバストゥルはレインに話した。
「行ってらっしゃい」
「待ってて良いのか? 今回は随分長くなるかもしんねぇぜ?」
「今までだって何ヶ月も帰って来ない日はあったもの。今更よ。でも必ず帰って来てくれるんでしょ」
「まぁ大繁殖してるっつっても通常種の【ガノトトス】だしなぁ。余程ヘマしねぇ限りは死にゃしねぇとは思うんだが……」
「なによ、自信無いの?」
「そういう訳じゃねぇよ。ただ『絶対』っつう言葉を信じてねぇだけだ。今までも飽きる程言ってっけどよ、ハンターっつうのはいつ死ぬか分からんような、いやむしろいつ死んでもおかしくねぇような職業だからな」
「分かってるわ。だってそれを生業としているあなたを私は好きになったのだもの。その覚悟は出来てるつもりよ」
「……。やっぱおめぇも来いよレイン。置いてくの心配だ」
「前の事思い出したんでしょ。駄目よ、余計な事考えずに狩りに集中してね? 私には力強い味方が付くそうだから大丈夫よ」
「どういうこった?」
「【ギルドマスター】様からの伝言で、『残るなら目立たない警護を付ける。陰で護るから安心するように』と言われたのにゃ」
「うっわぁ、また随分と特別な保護を……」
「そんなに特別な警護なの?」
「多分な。俺もよう分からんが」
彼女には「【ギルドナイト】が付く」とは口が裂けても言えないので、誤魔化した。
「なによ、あなたもよく知らないんじゃないのぉ」
「わははは。だがな、オッサンぐれぇの連中だと思うぜそいつら」
「ホント!? なら安心ねっ♪」
「ただし『陰で護る』っつってるぐれぇだから、もし姿を見掛けなかったとしても怪しむなよ? もしかしたら今でもどっかで見守ってるかもしんねぇぞ」
アルバストゥルはわざとらしく周囲を見回した。
「うそだぁ。だって部屋の中じゃない」
「そいつ、幽霊だったりしてな」
「怖い事言わないでよぉっ!」
「ご安心くださいませにゃ、家ではボクが責任持ってお守りいたしますにゃ」
「そういやおめぇがいたか……」
「忘れないで下さいにゃっ!」
「悪ぃ悪ぃ。だが確かにおめぇがいるなら安心かもな。任せたぜフィリップ」
アルバストゥルは、【彼】の頭にポンと手を置いた。
「お任せ下さいませにゃっ!」
フィリップは髭をピンと張り、力強く言うと自分の胸を叩いた。
アルバストゥルはニッと笑いながらその頭をわしゃわしゃした。
出発の朝、見送りに来たレインと熱い抱擁と軽いキスを交わし、「じゃ、行って来るぜ」と【気球】に乗り込む。
その脇でカイとハナが「じゃあ行って来るから♪」「いやオレも行くから当たり前のように乗って手を振らないでっ!」などとコントをかましていた。
この二人はわざとじゃなくて素でこういう事をするので突っ込みに困る。
ベナトールが、レインからやや離れた位置にいる一般人に周囲に悟られないような目配せをし、彼も同じように目配せを返していた。
ただ一人それを察したアルバストゥルだけが、これも周囲に悟られないように口元をそっと上げた。
「おはようございます。皆様よろしくお願いします」
【気球】で待っていた【シキ国】の使者が挨拶してくれ、最終確認の後、一行は【ドンドルマ】を飛び立った。
デッキには里帰りする【シキ国】の者や移動業者、要請を受けた他のハンターなどもおり、ぐんぐん小さくなっていく見送りの者らと手を振り合っている。
やがて見えなくなると、お互いに自由に行動し始めた。
「失礼だが……。そなたは【サムライ】でござるか?」
談笑のざわめきが飛び交う中、その内の一人がカイに話し掛けて来た。
【太刀】を背負っているのを見て気になったのだろう。
「いいえ、確かに称号は持っていますが、その称号には拘りはありません」
「左様か……。いや急に話し掛けて失礼つかまつった。ちと親近感が湧いたものでな」
「いえいえ、貴方は里帰りですか?」
「それもあるが、目的はそなたらと同じでござるよ」
「あぁ、出身国のハンターさんでしたか」
「いかにも。故郷の危機とあらば、帰らぬわけにはいくまい」
「ご苦労様です。愛国心が強いんですね」
「我らの忠誠心は固いのでな。島国を出たのも本拠地でハンターとして修行するために上様から許可を頂いたからでござるし」
「ねぇ、『上様』ってどんな方なの?」
ハナが割り込んで来た。
「偉大な御方でござるよ。島国故本来ならば閉鎖的な民族であるにもかかわらず、積極的に外交を推し進めておられる。国内政治だけのやり方では内乱を沈められないとのお考えで、他所のやり方も学ぼうとしておられるようだ。だからそれまでの【将軍】よりも、国外に出る民に寛容であられる。ただし、明確な理由がある者に限り、でござるがな」
「今までの【将軍】は外交には反対だったの?」
「かつては『鎖国』といって、一切の外交を絶った時代もあったようなのでござるよ。だから今でも民の中には他所の者とは交流したがらない者もいるのでござる」
「そうなのかぁ……」
「【家老】と言いましてな、総務取締役に当たる、いわば政治の補佐役を務める者の中にも『開国』、つまり外交に反対の者は未だにおられるようで、上様も気苦労が絶えぬとの事。それを慮ると嘆かわしい限りでござる」
「ふぅん、大変なんだねぇ」
そんな事をつらつらと話している内に、遥か遠くに微かに【シキ国】の島が見えて来た。
「わぁ、地図で見た通りのホントに輪っかみたいだねぇ!」
「輪っかってお前。『環状』って言えよ。つっても完全に輪が繋がってる訳じゃねぇけどな」
「だから船で行く時も、湾の奥まで入れるようだな」
「船だけじゃなくて、【ガノトトス】もね」
「外洋と比べて余程強い風が吹かない限りは荒波が少ないだろうから、繁殖もしやすかったんだろうね」
「しっかし、本来なら淡水魚竜であるはずの【ガノトトス】が、よく死なずにこんな遠いとこまで来れたよな」
「【モンスター】の適応力はかなり早ぇからなぁ。環境に合わせて体質を変えるのなんざお手の物だろうぜ」
「だよな。今回は通常種のようだが、それはたまたまで【変種】やら【特異個体】やらが大繁殖してたらたまったもんじゃなかったな」
「【変種】までなら大丈夫だけど、【特異個体】だったら私達参加出来ないとこだったね」
「HCはSR持ってねぇと狩猟許可下りねぇからな」
「通常種以外のものとは、それ程やっかいなものなのでござるか?」
「あんたはHRなんだっけ?」
「左様。一応上位ではあるのでござるが……」
「ランクいくつだ?」
「恥ずかしながら、まだ76でござる」
「別に恥ずかしがる事はねぇが、HRは100になった途端に再び世界が変わるぜ。【変種】といわれる通常種とは肉質の違う【モンスター】と対峙出来るってのもあるが、何よりそいつらから剥げる素材が通常種とはまったく別のものになるという事が大きい。狩場で採取出来る植物に【センショク草】という、武具を染められるものが採れる事があるっつうのもな。まぁこれは余談に入るけどな」
「……。【変種】自体は今まで対峙していた上位種がすんなり狩れていればそれ程苦戦しねぇだろうが、【特異個体】はそうはいかん。なにせ下位の攻撃力が通常種の上位よりあるからな。それに攻撃方法にも違いが見られるのだ。だからかなり手強くなっている」
「舐めてかかると下位でも簡単に三乙するぜ。いや冗談抜きで」
「ひえぇ……!」
「そんな【モンスター】相手に一人で挑むんだもん。ほんっとあんたらって頭おかしいわよねぇ」
「あのなぁ、言っとくがオッサンぐれぇのランクになったらんな奴ゴロゴロいんだぜ? そんなバケモンと一緒にすんなよな。実際俺まだGRじゃねぇし」
「SRってだけで私らから見れば充分に化け物よ。ねぇカイ?」
「だねぇ! でも、ちょっとは羨ましいかなぁって」
「安心しな、おめぇらにゃ当分到達出来ねぇよ。なんせ手強さがまったく通常種とは違うからな。そのためのランクだし、新たな【型】の伝授なんだからな」
「……拙者、付いて行けないかも……」
四人の会話を聞きながら、【サムライ】と思われるハンターは引き攣った笑いを浮かべていた。
何度も書いておりますが、今現在の「モンスターハンターフロンティアZ」では「SR」というランクは消滅しております。
というかあるにはあるのですが、「HR」の中に組み込まれているというのか、「凄腕」と呼ばれる「HR5(旧HR100)」になって「秘伝書(更なる狩りの極意が書かれた書物の事。武器種ごとに存在し、新しい型である天ノ型、嵐ノ型、GRでは極ノ型が使えるようになる)」を伝授される事で自動的に「SR」も上がるような仕組みになったようです。
ちなみに「SR(スキルランク)」というのは武器種のスキル(攻撃値など)を上げる目的で設けられたものです。
要は「武器種上達ランク」なので、「同じ武器種を扱う」度にランクが成長する仕組みになっております。
なので得意な武器種があるなら、それを使えば使う程その武器種に得な恩恵を得られるようになっています。
ただしG級のSR(GSR)は「武器種ごと上げる」必要があるため、武器種を変えて使うような人はその武器種のGSRを全部1から上げなければならないのでとても大変です。