今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】   作:沙希斗

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なんだか不穏な空気が……!

他のシリーズでは「ガノトトス」は海にも進出しているようですが、「フロンティア」では「MH2(ドス)」がベースなので今でも淡水魚のままです。


【サムライ】の住む国(2)

 

 

 

 【シキ国】に到着すると、【サムライ】ハンターや出身国の者達は、それぞれに散らばっていった。

 【サムライ】ハンターは、これから他のハンターと協力して国の方々に向かい、現地の武士などと共に【ガノトトス】を退治していくつもりだという。

 とにかく生息地域が湾全体に広がっているために、少しでも多くとの要請が出ているのだ。なのでハンターはこれからも派遣されて来るだろうとの事。

 

 四人も取り敢えず宿を取ろうとしたのだが、「その前に上様に会って頂きたく……」と言われたため、使者に連れられて城への道程を歩いていた。

 

 そんな四人を、物珍し気に民の者と思われる人物達が見ていたが、顔を合わせると建物に隠れたり、恐ろし気に顔を背けたりしていた。

 

「なんだよ俺らはバケモンかよ。けったクソ悪ぃな」

「余所者のハンター自体が滅多に来ませんからなぁここは。業者もたまに見掛ける程度でござるし……」

「それで余所と積極的に交流してるって言えんのかぁ?」

「ははは、まだまだ進展の途中でござるからなぁ」 

 

 城下町と思われる場所には沢山の建物が並んでいたのだが、その建物が大陸では見た事のないものばかりだった。

 どうも全ての家が木で出来ているらしく、一階建ての平べったいものが多い様子。

(『平屋建て』というらしい)

 

 壁が土で出来ているというのもそうだったが、それよりも不思議だったのは屋根で、なんだか石かレンガを平らに加工したような物を屋根一面に敷き詰めているのである。

 

「随分重そうな屋根のようだが、潰れねぇのか? 家の骨組みも全部木なんだよな? これら」

「あぁこれは【瓦】というものでしてな。見た目よりは軽いのでござる。石に見えますが、実は陶器のように土に水を加えて練り、あの形に加工して火で焼いて作るのでござる」

「並べてるだけに見えるけど、あれで雨風入って来ないの?」

「そう見えますが、隙間の無いように継ぎ目を上手い具合に重ねてあるのでござる」

「へぇ~~!」

 

 

 そうやって説明してもらいながら歩いていた時の事。

 ベナトールとアルバストゥルが、急に立ち止まって怪訝な目で辺りを見回した。

 

「どうかされましたかな?」

「二人共、どしたの?」

「……。街道を歩き始めた頃から気付いてはいたんだが……」

「……あぁ。狙われてんな」

「なんですって!?」

「嘘だ。誰もいないじゃないか」

「いるぜ、そこここに潜んでな」

「ここまであからさまな殺気を向けられて気付かねぇとはな。おめぇらよくそれでハンターやってられんなぁ」

「くっふふ、随分楽しそうなご挨拶をしてくれるじゃねぇか? 【シキ国】ってのは余所者に対して戦闘を申し込むのが礼儀らしい」

「面白ぇ、来いよてめぇら。受けて立ってやっからよ」

「お待ちくだされ! 拙者は何も――」

 

 言い掛けた使者の言葉を遮るように、何かが飛んで来た。

 それは正確にアルバストゥルを狙ったものだったのだが、彼は軽く首を倒しただけで避けてしまった。

 

「く、クナイ!?」

 地面に刺さった物を見て、使者が驚愕の声を上げる。

 

「なんだそりゃ?」

「【忍者】の武器でござる!」

「なんだその【忍者】ってのは?」

「【将軍】や【家老】に仕える忍びの者で……って危ないっ!」

 

 話す傍から次々にその【クナイ】とやらが飛んで来る。中には星型のようなものもあった。

 

「危ねぇのはおめぇらだ。おい二人は下がるかこいつ護るかしてやれ!」

「了解!」

 声を揃えたカイとハナは、使者を庇いながら一旦下がった。

 

 それを追い掛けるように飛び掛かって来た黒い影を、ベナトールが手首の返しだけで叩き払う。

 相手は呻き声と共に吹っ飛んで落ちた先で動かなくなったが、殺す気はないのでそのまま放って置く。

 

「おい危ねぇだろ」

 いつの間にか短めの【太刀】のようなもので襲って来た者を躱したアルバストゥルは、その柄を払って飛ばしながら胴に平手を入れた。だが本気で入れると肋骨が折れてしまうので、突き飛ばすぐらいの勢いにした。

 

「ふむ、素早いな」

「だな。だが俺らの敵じゃねぇ」

「どう見ても味方じゃねぇ事は確かだが、【敵】かどうかはまだ分からんよ」

「なんでだよ? どう考えても敵だろうがよ本気で殺しに来てんぞこいつら」

「いや『本気に見せているだけ』かもしれん。近くで雇い主が見ている気配がする」

「へぇ、そいつが誰か大方察しがついてんだろ? オッサン」

「まあな。お前も勘づいてるんじゃねぇのか?」

 

 次々に襲って来る【忍者】とやらを躱したり吹っ飛ばしたりしながら、二人はそんな事を話していた。

 

 余裕たっぷりに避け続け、少しも相手の攻撃が当たらないベナトールに対し、アルバストゥルの方は避け切れずに【刀】(後になって使者に説明を受け、太刀ともいうと言われたが、ハンターの【太刀】よりも短い物)や【クナイ】が掠る事があった。

 だが重装備と人間用の武器で攻撃されていたお陰で、幸いにも掠ったくらいでは自分の鎧に引っかき傷程度の傷が付くぐらいで済んでいた。

 

 見極めが付いているのか、彼らは二人しか襲わなかったので、カイとハナは時々流れ弾のように飛んで来る【クナイ】や星形の物(【手裏剣】というらしい)だけ使者に当たらないように気を付ければ良いようだった。

 使者は本当に何も知らないのか、ただただ怯えて二人の戦闘を見守っていた。

 

 

「よぉ、いい加減に避けるの飽きたんだが、殺して良いか?」

「それを俺が許すとでも思っているのか?」

「良いじゃねぇか一人ぐれぇ。ついうっかりって事でよ」

「……。それでどうなるかが分かっているなら好きにしな」 

「バッカだな冗談に決まってんだろうが。ほんっとクソ真面目だよなぁあんたってよ」

「ふん……」

 

 だが、飽きて来たのは事実だったので、アルバストゥルは声を張り上げた。

 

「よぉ! そろそろお遊びに付き合わすのやめてくんねぇかなぁっ! もう俺らの実力分かっただろぉ? 狩猟前に無駄な体力使わせねぇでくれるかなぁっ! いい加減にしねぇと『ついうっかり』やらかしちまうぜぇ? 【将軍】さんよぉっ!」

 

「ほっほ、バレておったか」

 

 その時声と共に、正面に担ぎ棒で担がれた人間一人が入れるくらいの大きさの、豪奢な箱のようなものがやって来た。

 それを見るや否や今まで闘っていた者や使者、街道の端で建物に隠れながら恐ろし気に戦闘を見ていた民の者と思われる人々が、慌てた様子で平伏した。

 

「バレバレだっつの!」

「これアレク殿! 上様に無礼であるぞ! 控えて下されっ!」

 

 使者が血相を変えて注意している。

 

「よいよい。無礼を働いたのはこちらの方なのじゃ。ちと噂の腕を見てみたくなってのぉ。良い見物であったぞ」

 箱の引き戸をうやうやしく開けられた【将軍】は、そこから嬉しそうに顔を覗かせながら言った。

 

 見た目から言うとベナトールとそれ程変わらないくらいの年齢だろうか? 特徴的な後頭部からそそり立つような【髷】をしており、

禿げているのか剃っているのか額から頭頂部にかけて一切髪が無かった。

 

「オッサンは余裕ありまくりかもしんねぇけどよ、俺はけっこうギリギリだったんだぜぇ? 怪我してっつうか、殺されでもして狩猟に支障が出たらどうするつもりだったんだよ?」

「そんな腕ではなかろう? そうであればわざわざそなたまで襲わせなかったぞ」

「ケッ。全部手の内みてぇで胸糞悪ぃぜ」

「アレク、実力認められてんだから、少しは喜んだらどうなのよ?」

「そうだよ。オレらは始めから蚊帳の外だったんだし」

「そなたらは使者を護ってくれると分かっておったからな。それにこの二人と比べるのはは分が悪かろうて」

 

 手を上げて【忍者】を下がらせた【将軍】は、こう言った。

 

「先に帰って置く故、城に来い。改めて謁見いたす」

 使者に「頼むぞ」と告げて引き戸を閉める合図をした【将軍】は、平伏する使者を残してゆっくりと去って行った。

 

 

 山の上にあったので遠くからでも見えていたのだが、この国の【城】というのもまた変わっていた。

 

 城下町で見ているような平屋建ての家を大きく豪華にし、屋根を派手にして上に重ねたような造りをしている。

 その足元には大きな石を積み重ねて出来た、【石垣】と呼ばれる崖のようになっているものがあった。

 それを土台にして城が立っているので、随分高い。

 

 最初これをよじ登るのかと思ったが、そうではなくてそこまでに続く道があり、石垣をぐるっと回り込んだようなそれを登って行く。

 城、つまり建物の手前まで来ると木で出来た大きな扉付きの門があった。

 

 一行が辿り着くと重々しい音と共にその門が開き、正面に【天守閣】と呼ばれる城の本体のようなものが見えた。

 【本丸】とも言うらしい。

 そういう事を道々使者に説明してもらいながら進み、城の中へ。

 

「おっと、ここから先は土足厳禁でござる。御履き物を御脱ぎ下され」

 

 使者に促され、【土間】と呼ばれる土場で【グリーヴ】を脱いだ四人は、板を並べて作られた場所に上がって案内されるままに長い廊下を歩いて行った。

 

 外に面した渡り廊下で、庭には小さな池やら大小様々な石を配置したもの、形良く整えられた植物やらがある。

 反対側には【襖】と呼ばれる木の板に紙を貼り合わせたような引き戸がずらりと並んでいる。その紙一枚一枚に様々な絵が描いてあり、ベナトール以外がしょっちゅうキョロキョロしていた。

 

 【襖】が開いている所、というよりは【襖】で仕切られた所が部屋のようになっており、床には【畳】という糸のような細長い植物(【イグサ】というものらしい)を並べて縫い付けたようなものを敷いている。その植物独特の香りがして、なんだか変な気分だった。

 

 その【襖】に描かれている絵が今までよりも明らかに豪華絢爛になっている場所まで案内され、待つように言われる。

 木で出来た正面の壁にも煌びやかな絵が描いてあり、一段上がった特別に見える場所がある。どうやらここが【謁見の間】らしい。

 

 

 少し待って【将軍】がやって来た。

 

 胡坐のままでいたら使者に「正座して下され」と言われて座り方を教わった。

 しかし鎧を着けたままでは上手く出来なかったので、大陸で行う脱いだ兜を抱えた片膝立ちで頭を垂れ、敬意を表する。

 

「よう参った。面を上げよ」

 

「ははっ!」

 ベナトールがそう言って顔を上げたので、残りの三人も真似して顔を上げた。

 

 無地の【着物】に目立つように紋が付いている。エンブレムだろうか? 

 上着はそれが目立つようにか地味なのだが、下半身に着けている【袴】と呼ばれるものは派手だった。

 

「遠路はるばる御苦労であったな」

「御心遣い、痛み入りましてございます」

「長旅で疲れたであろう。今宵はゆるりと我が城で休むがよいぞ」

「それは余りにも恐れ多い事でございます。我らのような者をそのようにお気遣い下さられずとも、城下町で宿を取りますれば……」

「余はそなたらを持て成したいのじゃ。先程の無礼の詫びのつもりで、どうか受けてくれんかのぉ?」

 

「……。では、御言葉に甘えて……」

 

 使者のすがるような目を視界の端で捉えたベナトールは、渋々という感じで言った。

 あの様子では命令が無くとも切腹し兼ねないと思ったからである。

 

「おぉ、感謝いたすぞ!」

 

 嬉しそうな【将軍】を見て内心で溜息を付いたベナトールだったが、他の三人は豪華な【城】で一晩過ごせるとあって、わくわくして目を輝かせていた。

 

 

 その晩は無礼講で、【シキ国】式の宴が開かれた。

 

 だだっ広い【畳】の部屋(【座敷】というらしい)に脚付きの膳が直に並べられ、どうやら椅子とテーブルではなくて【畳】の上でそのまま食べるらしい。

 酒が入っている器は【徳利】と呼ばれる筒状の陶器で、【盃】と呼ばれる小さな皿の裏に環状の脚が付いたような物に受けて飲むようだ。

 掌で添えて持つようなそれは、ベナトールが持つと小さ過ぎて指でつまんでいるように見えた。

 

 余談だが、この国では【ブレスワイン】はあまり飲まれていないとの事。宴の酒は【キノコ吟醸酒】だったが、城下町では【黄金芋酒】が多く飲まれているらしい。

 

 【黄金芋酒】といえば大陸では『酒の中の王様』と言われる程滅多に手に入らない幻の一品なのだが、ここでは庶民でも飲んでいる程一般的な酒なのだとか。

 聞くと素材の【黄金芋】が畑でつくられていて、大抵の庶民はその素材の育て方と酒のつくり方を知っているとの事。大陸では気候が合わないのか【黄金芋】が育たないので、この国もしくは極東でしか生息出来ない植物なのかもしれない。

 

 枠のある膳の中には大小の皿が入れてあり、そこに様々な御馳走が乗っては運ばれて来た。

 島国なので魚料理が多いようだ。

 

 やや淡泊な味付けの料理に舌鼓を打っていると、何故か白い目で見られた。

 どうやら手掴みでがっついているのがこの国では恥ずかしい事らしい。

 

 改めて見てみると、持て成す側の者は皆先細った短い二本の細い棒を右手に持ち、器用に操って先で挟んでは口に運んで食べている。

 【箸】という物らしいそれは自分達の膳の中にも添えられている。

 

 が、真似したり使い方を教わったりしても具合が悪くて中々使えない。

 終いには指が攣ってしまったので、アルバストゥルは諦めた。

 ちなみにこれをすぐにマスターして器用に食べ始めたのはカイであった。

 

 落ち着いた頃を見計らって、【将軍】が二度ほど手を叩いた。

 すると奥の【襖】が一気に開き、そこにはずらりと派手な【着物】を来た白塗りの女性達が並んでいた。

 

 彼女らが四人の前にしずしずと進み出ると独特な拍子と音の楽器が奏でられ始め、目の前で踊り始めた。

 それはゆったりと舞うような踊りで、艶やかな雰囲気のものだった。

 綺麗さに惚けて見ていると、「ささ、御一つ」などと言いながら酒を注がれたり、「ささ、御一緒に」などと言いながら女性達が踊りに誘ったりし始めた。

 

 ベナトール以外が見様見真似で踊ったり(アルバストゥルは無理矢理二人に引きずり込まれて踊らされたり)して盛り上がったりしている内に、何故かハナだけ別室に連れて行かれた。

 

 時間が掛かっているので何をしているのだろう? と少し心配になった頃に戻って来たハナは、嬉しそうに目をキラキラ輝かせながら【着物】を着ていた。

 どうやら着せてもらったらしい。

 

「わぁ……!」

 感慨の声を漏らしているカイに、ハナは言った。

 

「どう? どう? 似合う?」

「うんっ! すっごく綺麗だよ♪」

「ホント!? 嬉しいっ♪」

「……。『馬子にも衣裳』」

 

 ボソッと呟いたベナトールの言葉を聞き逃さなかったハナは、「それどういう意味?」と無邪気に尋ねた。

 

「……まぁ、似合わねぇもんも似合うというこったな」

 彼はニヤリとして言った。

 

「どっちなのよぉ」

 

 

「やっぱ、レインも連れて来りゃ良かったな……」

 はしゃぐハナとそれに見惚れているカイを見ながら、アルバストゥルは少し羨まし気に独り言ちた。

 

「連れ添いの御方が、おありなのですか?」

 それを聞き付けたのか、酌をしていた女性の一人がアルバストゥルに尋ねた。

 

「……。まぁ、そんなとこだ」

 あまり自分からは積極的に話さない性格のアルバストゥルは、ぶっきらぼうに答えた。

 

「それでしたら、【着物】を一式差し上げますので、お土産に持って帰ってはいかがですか? きっとお喜びになりますよ」

「んな大袈裟なもん荷物になるだけだっつの」

 

 彼は着ている女性の【着物】を見て言った。派手で引き摺るくらいに長いそれは、レインが着ても思うように動けないだろうと思ったのである。

 

「でしたら短めの物を御用意しましょうか。【着物】には色々御座いますし、こう見えて畳めばかなり小さく纏まるんですよ」

「良いじゃないアレク、せっかくだから貰っちゃいましょうよ」

「そうだよ。オレも見たいな、レインの【着物】姿♪」

 

 いつの間にか聞いていたらしい二人が促す。

 

「……。ふむ。彼女なら、『馬子』にはならんかもな」

「だからそれどういう意味なのよぉ」

 

 なんとなく意味が分かったアルバストゥルは、「カイ、おめぇが着ても『馬子』じゃねぇかもな」とからかった。

 

「え? そう思う?」

「いや喜ぶとこじゃねぇだろ。意味分かって言ってんのか?」

「お召しになってみます?」

「いや乗らなくて良いから!」

「やめとけカイ。殿の前で襲いたくない」

「オッサンも想像すんなよ危ねぇな!」

「ふむ。確かによう似合いそうでは、あるな」

「貴方までやめてもらえませんかね?」

 

 そんな風に打ち解け合って(?)いる中で、ふいにベナトールの目が鋭くなった。

 

 直後に【将軍】に酌をしていた女性の首を後ろから引っ掴み、それを折りつつ投げ捨てた。

 何が起こったか分からない様子だった【将軍】は、あらぬ方向に首を曲げたまま動かなくなっている彼女の右手に握られていた短刀に気付いて悲鳴を上げた。

 つられて女性達の悲鳴も上がる。

 

「し、しし、刺客か!?」

「恐らく」

「ちくしょう、気付かなかったぜ」

 

 何故か悔しそうなアルバストゥル。

 

「どど、どういう事っ!?」

「多分あれだ、俺らの仕業っつう事にして【将軍】暗殺でも企てられたんだろ」

「そんなの酷くないか!?」

 

 言ってる傍から銃声が上がる。幸い誰にも当たらなかったようなのだが、それを合図に庭から鎧武者共が雪崩れ込んで来た。

 

「おいおい、えらく大袈裟な事になった来たな」

「……。刺客が失敗したら俺ら共々始末するように、どうやら既に計画済みだったらしい」 

 

 女性達が悲鳴やら逃げ惑うやらして騒ぐ中で、【将軍】を庇いつつ身構えていた三人は、切り掛かろうとした武者共が直前でたたらを踏んで一斉に止まったのを見た。

 

 彼らは一様に一点だけを見てたじろいでいる。

 

 そこには、胡坐をかいて腕組みをしたまま嬉しそうに口の端を釣り上げて彼らを見ているベナトールがいた。

 

「くっふふ、どうした? 何をたじろいでいる? 遠慮せずに纏めて来い。俺が相手をしてやる」

 

 彼らは完全に怯えている。

 無礼講とはいえ武器の携帯は許されなかったため、丸腰だったにもかかわらず、である。

 

 自分が微塵も動いていないのにじりじりと引き下がる様子を見て、ベナトールは言った。

 

「どうした。命令されて死ぬ覚悟で来たのだろうが? それともたかが四人と高を括っていたか? 生憎だがな、貴様らなど俺一人の能力にすら及ばんよ。闘う事すら出来んぜ」

「な、なな、なんだと……!?」

「くくっ、声が震えているぞ隊長。ほれ命令してみろ。『かかれ』とな」

「ぐ……っ!」

「命を無駄にしたくねぇなら帰るが良い。死にてぇなら纏めて掛かって来な」

 

 殺気すら出さずに自然体で話している彼だったのだが、彼らは悔し気な顔をしつつも【刀】を下ろした。 

 

「ほぉ、己の技量は弁えていると見える。こちらとしてはつまらんが、まぁ良いだろう。……帰って雇い主に伝えろ。『いつでも相手になってやる。ただし他の者に指一本でも触れれば直接殺しに行く』とな」

 

 

 「……た、たた……大儀であった……」

 

 武者共が引き上げた後、【将軍】は震える声でやっとそれだけ言った。

 完全に腰を抜かしているようである。

 

「ほえぇ、大迫力……!」

「ささ、流石ベナ……」

「少なくとも二十人はいると思ったんだが、あの数を闘わずに一掃すんだもんなぁ、やっぱ他の奴とは話しにならんよなぁ」

 

 三人の感慨を無視して、ベナトールは【将軍】に聞いた。

 

「どこの敵方ですかな?」

「……いや、敵方というよりは『開国』に異を唱える連中であろう」

「つまり、身内と?」

「左様。残念ながら、な」

 

 【将軍】は悲し気に顔を伏せた。

 

「大方、裏切って敵方に付いたか、余を殺めて後継者に『鎖国』を進めさせる魂胆だったのだろう」

「……。俺でよろしいのであれば、首謀者が分かるまでしばらく【影】として御付きしましょうか?」

「それは真か!?」

「御望みとあらば……」

 

「おいオッサン、来た目的忘れてねぇか?」

「いかに大繁殖をしているといっても、【ガノトトス】の狩りなら三人で事足りる」

「まぁ、そりゃそうなんだがよぉ……」

「不安ならば地元のハンターに協力してもらえ。あの【サムライ】だけじゃなくて、他にも何人か帰路に着いていたはずだ」

「……。分かった。頑張ってねベナ」

「あれ? 今回は素直だねハナ。ごねないの?」

「だって、『上様』のお命も大事だもん」

「ほぉ? 成長してんじゃねぇかハナ。やっぱカイを取っただけあんな」

「茶化さないでっ! 取った取られた関係なしに、ベナは特別なのっ!」

「へいへい」

 

「余が招いたばかりに、このような事態に巻き込んですまぬな」

「まぁ、流れでこうなっちまったんだから仕方ねぇっすよ殿さん。こっちはどうにでもなりますから、御心配無く」

「そうそう。ベナが付くなら百人力だしね」

「千人、いや万人力かもしんないよ」

「あまり過大評価してもらっても困るぞカイ」  

「軍隊に匹敵すっかもな。場合によっちゃそれ以上かも……」

「煽るなチビ助」

「人前でチビ助呼ばわりすんじゃねぇ!」

「わはは、とにかく励め」

「御意!」

 

 四人は声を揃えた。

 

 

 

 




日本人(シキ国出身者)ならば当たり前の「日本家屋」や「お城」、仕来りなども、「(私の世界の)シキ国」以外の者から見ればおかしなものに見えるはずだと思って、こんな書き方になりました。
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