今日も元気にメゼポルタ広場からお届けします。【完結】 作:沙希斗
魚釣りといえば、「あれ」ですよね(笑)
「ねぇベナ、【サシミウオ】っておいしいの?」
「なんだ食った事ねぇのか? 生でも食えるから最高だぞ」
「生じゃなくて、ちゃんと焼いてよぉ」
「んな面倒臭ぇ事出来るかよ。
「野蛮人……」
という事で、今日は【サシミウオ】を釣りに来ている。
【砂漠】の【ベースキャンプ】には古井戸があるのだが、そこに飛び込むと地図で言う《7》への最短距離になる。
【ホットドリンク】が無いと少々寒いが、【ベースキャンプ】からすぐに行けるため、ベナトールはここでよく釣りをした。
二人で仲良く並んで釣り糸を垂れていると、ベナトールの浮きがつんつんと動いた。
が、合わせる事が苦手な彼は、完全に浮きが沈む前に竿を持ち上げては魚に逃げられている。
反面、意外にもハナの合わせが上手く、初めてなのに次々と魚を釣り上げては「おもしろぉ~~い♪」などと言っている。
もっとも、目的の【サシミウオ】を釣る事は忘れて、食い付いた魚を手当たり次第に釣り上げているだけではあるが。
「ベナぁ、エサが無くなった」
「あのなぁ、狙って釣らねぇからだろう?」
呆れてそこらを探っていると、出て来たものは蛙。【釣り蛙】と呼ばれている。
「これでおっきな魚が釣れるかな?」
「まあ、釣れるにゃ釣れるが……」
ベナトールは言葉を濁した。
「なによ? 釣れるんならいいじゃない」
ハナは【釣り蛙】を付けてもらって水に投げ入れた。
今んとこ、【奴】の影は見えねぇから良いかな。
ベナトールは戯れに、ハナの釣り針に【釣り蛙】を付けてやったのだが……。
「ベナ~~! おっきいの釣れたよぉ~~~!」
ハナが暴れ回る巨大な【魚】を、尻餅を付きつつ釣り上げたのだ。
あちゃ、やはりいやがったか……。
ベナトールは苦笑いした。
ハナは陸上に打ち上げられ、ビッタンビッタン跳ねている【魚】を見て興奮し、「ねぇねぇ、これ世界記録じゃないの!? あたしすごい? ねぇすごい!?」などとはしゃいでいる。
「確かにすげぇが、これは【魚】じゃねぇぞ? ハナ」
説明しようと口を開いたベナトールは、起き上がった【魚】が、息を吸い込んだのを見た。
慌ててハナを掻っ攫って横転すると、相手はピシュウッ! と今ハナがいた辺りに水鉄砲のようなブレスを高速で吹き掛けた。
「えぇ!? なになに? 【魚】ってブレス吐くの!?」
まだ理解していないハナが、素っ頓狂な声を上げている。
「これは【魚】じゃなくて【モンスター】なんだよハナ。【ガノトトス】といってな。【魚竜種】の仲間だ」
「え~~~? 【魚】じゃないのぉ!?」
「残念だったなハナ。世界記録はお預けだ」
兜の中でニヤニヤ笑いながら、ハナの頭をポンポンと叩くベナトール。ハナは膨れている。
「という事で、危ないから高台に上がってな」
【ガノトトス】を油断無く見据えながら、指示を出すベナトール。
ハナは頷くと、後ろにある崖のツタに取り付いた。
と、【ガノトトス】がそれを狙ってブレスを吐いた。
ベナトールが立ち塞ぎ、我が身を盾にしてそれを防ぐ。
脇腹を貫通したブレスは勢いを殺され、ハナまでは届かない。
ベナトールは脇腹をやられたぐらいではビクともしないが、例え心臓を貫通したとしても、避けるつもりはなかった。
彼女が高台に上がったのを確認すると、ごろりと横に転がりつつ、回復する。
高台ならもうブレスが届かないからである。
誘うように頭付近をうろうろし、ブレスの時に最大溜め、あるいは【縦3】と言われる3連続の縦振りをお見舞いする。
その内相手は気絶したが、一度や二度の気絶ぐらいで参るような【モンスター】じゃない。
「がんばれ!!」
ハナは高台で、定期的に湧く【ランゴスタ】一匹を「えいっえいっ」と勇敢にも(笑)切り付けながら、ベナトールを応援している。 特に危なげ無く討伐したベナトールは、【ガノトトス】の腹を裂いて言った。
「おぉハナ、丁度【サシミウオ】を食ってるようだぞ。どうだ取って帰るか?」
「やだ! そんなの食べられるわけないでしよぉ」
「なぜだ? 胃に入れば同じだろうが」
「ベナとはちがうのっ!!」
相変わらず嚙み合わない二人であった。
「ガノトトス」は「一人でいる時のみ」釣れる「モンスター」なので、「パートナー」といても釣れません。
なので、釣り上げるシーンは撮影出来ませんでした。
話の中ではブレスを食らったベナトールが「ビクともしない」となっていますが、挿絵では(システム上)吹っ飛ばされてます。
なので、微動だにしていない姿を脳内再生しといて下さい(^^;)